BI(ビジネス・インテリジェンス)とは?機能や導入の基準を解説

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

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BI(ビジネス・インテリジェンス)とは?機能や導入の基準を解説

BI(Business Inteligence)とは、企業に蓄積されている膨大なデータを収集・分析し可視化させるための技術・ツールのことです

AI専門家やプログラマーが扱うものではなく、あくまでも経営に関わる者たちが企業に関わるあらゆるデータについて共通認識を持ちディスカッションできるよう、下記のようにわかりやすく自動でデータを集計・レポーティングしてくれる仕組みになります。

BIレポーティング例(出典:Hubspot|Power BI Integration

BIを用いることで、経営において重要な判断を迫られるとき、勘や経験に頼るのではなく、データに基づいた判断を下すことができるのが最も大きなメリットの一つです。

本記事では、BIツールの特徴や活用方法、導入を成功に導くためのポイントを解説します。BIツールの導入を検討している企業の担当者は、参考にしてください。

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データを意思決定の判断軸としたマーケティング手法や経営手法である「データドリブンマーケティング」について知りたい方は、別記事「3分でわかる『データドリブンマーケティング』とは?基本の考え方やよくある課題を解説」で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。

BIツールとは?特徴的な機能について

BIレポーティング例(出典:Hubspot|Power BI Integration

BIツールを理解するためには、まずはBIが持つ機能を把握し、活用の流れを頭の中でイメージすることが大切です。

本章ではまず、データの収集からレポーティングまでの流れに沿って、BIのデータ分析の特徴をお伝えします。

段階特徴
データ収集特徴1:データソースと連携したデータ抽出
データ分析特徴2:OLAP分析
特徴3:データマイニング
特徴4:シミュレーション
データの可視化特徴5:レポーティング

特徴1:データソースと連携したデータ抽出(データ収集)

記事の冒頭で述べたように、BIツールは企業に蓄積された膨大なデータの収集から可視化までを一気通貫して行う特徴があります。そのため、各部署・部門で使用されている「基幹系システム(ERP)」などのデータベースと連携し、まずはデータを抽出する必要があります

連携を行うシステムには、主に以下のようなものがあります。

  • 生産管理システム
  • 売上管理システム
  • 在庫管理システム
  • 財務 / 会計システム
  • 勤怠管理システム
  • MA(マーケティングオートメーション)
  • SFA
  • CRM

ただし、ここで注意しなければいけない点が2つあります。

1つ目は、各システムによってデータのフォーマットが異なる点です。BIツールで効率良く分析を行うためには、異なるフォーマットを同一のスキーム(分析のしやすい状態)に変換することが求められます。この各システムから、データを抽出・変換・アップロードする工程を「ETL(Extract, Transform, Load)」と呼びます。

ETLは、データ分析のプロセスにおいて、最も労力と時間を要します。SQLやJavaによるプログラミングで、データの抽出を処理することも可能ですが、ETLの工程を自動化する「ETLツール」を用いることで、当プロセスの簡略化・ヒューマンエラーの防止・ノンプログラミングでのETLを可能にします。

そのため、BIツールの導入と別途で、ETLツールの導入を検討しなければいけないケースもあります。

2つ目は、基本的にはデータは一定期間を過ぎると格納場所から削除されてしまうことが多い点です。基幹系システムをはじめとする企業で用いられるシステムには、データベース(データを格納する場所)が存在します。

各システムのデータベースから、BIツールに直接データを抽出することも可能ですが、各システムのデータベースは、システムが滞りなく動くために設計されており、データを長期間にわたり蓄積することを主な目的としていません。またBIツールの分析にあたり、長期の売上や市況の変化の分析から得られる知見は非常に重要なため、何らかの方法でこのデータを保持しておく必要があります。

そのため、データを長期間にわたり保管するためのデータベース「DWH(データウェアハウス)」または「データマート(※)」を用いるのが一般的です。

※DWHから特定の目的に沿ってデータを抽出・加工したもの

DWHは、各システムのデータを1つに集約できる巨大なデータベースです。基本的には、データの削除を行わず、ストレージのある限り、過去のデータを蓄積し続けることができます。また、時系列順にデータを保管することが多いことや、データのサブジェクト(テーマ・主題)ごとにデータを保管できることから、BIツールでのデータ分析に適しています。

▼関連記事
DWHの基礎知識からデータ分析の流れについて知りたい方は、別記事「データウェアハウス(DWH)とは?特徴や分析方法、具体例を解説」で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。

特徴2:OLAP分析(データ分析)

OLAP(オーラップ)分析とは、BIツールのデータ分析機能の一つです。データベースに蓄積された大量のデータを瞬時に集計・分析し、リアルタイムに結果を返答できます

OLAP分析の特徴は、「売上」「日付」「製品」「店舗」「天候」「年齢」「性別」など、複数の軸をもつ多次元的なデータベースを生成し、様々な角度から分析が可能です。

分析されるデータを組み立てると下記のような四面体になることから、OLAP Cube(オーラップ キューブ)とも呼ばれます。

出典:OLAP.com

例えば、天候によって売れる商品は異なるのか?店舗によって人気の製品が変わるのか?といったデータから予算と実際の費用を比較したいなど、データを多次元配列ならではの様々な視点から切り取って、経営に活かすことができます。

特徴3:データマイニング(データ分析)

データマイニング(Data Mining)とは、直訳すると「データの発掘」を意味します。一見すると相関関係のない大量のデータを、統計的に処理することで、データの法則性や関連性を導き出す分析機能です。このように仮説ありきでデータを深堀することも、BIが得意とする領域になります。

データマイニングの利用法の一つに、「マーケット・バスケット分析」があります。POSデータ(※)やECサイトのトランザクションデータから、買い物かご(バスケット)の中身を分析することで、特定の商品と一緒に購入されている商品を発見する手法です。

※ レシート単位で一意(ユニーク)なID(トランザクションID)を用いた売上データ

有名な話に「おむつとビール」があります。アメリカのスーパーマーケット・チェーンが、販売データをマーケット・バスケット分析を用いて分析した結果、おむつを買いにくる顧客はセットで、ビールを購入する傾向があることを発見しました。

これは、母親から子供のおむつの買い出しを頼まれた父親が、ついでにセットで半ダースのビールを購入していくケースが多いことから、このような傾向が生まれたと推測されます。

このように「おむつとビール」という、一見すると相関関係のない事柄に対して、データマイニングを用いることで、人的な分析や知見ではなかなか見つけ出せない、意外な法則や関連性を導き出すことができるので、BIツールを経営に活用する大きなメリットと言えるでしょう。

エクセルを用いて、データマイニング分析をすることもできますが、膨大なデータを分析するには、大変な時間や工数を必要とします。

特徴4:シミュレーション(データ分析)

シミュレーションとは、過去のデータをもとに、将来の予測をする機能です。プランニングとも呼ばれ、予算編成や売上予測などに活用されます。

シミュレーションの代表的な分析手法に「What-if分析」があります。What-if分析とは、特定の条件が変わった時に、どのような結果になるのかを導き出す分析です。例えば、為替レートや販売価格・需要などが変化したときに、売上にどのような影響が出るのかを見ていくことができます。

特徴5:レポーティング(データの可視化)

最後にご紹介するのが「レポーティング機能」です。BIツールのダッシュボードを用いて、データを可視化することができます

ダッシュボードでは、BIツールで行った様々な分析結果を、グラフや表を用いて視覚的にわかりやすく確認できます。日々の業務の中で、データを追い続けるのは、かなりの労力を必要とします。ダッシュボードを確認するだけで、一目でリアルタイムの状況を把握できるのは、BIツールの大きなメリットです。

BIツールの導入をおすすめする企業

ここまでBIツールでできることについて解説しましたが、BIツールは全ての企業で必須のツールかと言えば、そうではありません。

BIツールは、利用するユーザーやデータ量、使用するツールによって価格は異なりますが、最低でも10万円程度のランニングコストに加えて、初期の導入コストがかかってきます。また、BIツールを日々確認するためのリソースや、分析の内容によってはデータアナリストといった専門知識を有した人材、ならびにBIツールを正常に動作させるための保守を行う人材の確保が必要になってきます。

このようなコスト面も踏まえて、十分な費用対効果が得られるのかを吟味し、導入を進めていかなければなりません。

導入すべきかの基準としては、以下の3点が挙げられます。

  • 分析に必要なデータが揃っている
  • 分析やレポート作成に膨大な人的リソースを割いている
  • データはあるが、経営判断にうまく活かせていない

1. 分析に必要なデータが揃っている

BIツールを活用するためには、そもそも分析し得るデータ(’高品質なマスタデータ)がなければ、意味がありません。

例えば、CRMやSFAを社内に導入していても、各部署の担当者が「項目に対して正確に情報を入力していない」「情報が最新に更新していない」「そもそも分析に必要な項目のデータ収集をしていない」といったことが起きていれば、BIツールで分析ができないだけでなく、時に誤ったインサイトを導き出してしまう可能性があります

Mtame社が、2018年に「22~45歳のBtoB企業の営業職に属する人」に対して実施した調査によると、「案件を管理するために入力しなければいけないシステムや管理表にきちんと入力できていますか?」というアンケートに対して、「徹底している」と回答した営業担当者は、わずか38%に留まります。

つまり多くの企業で、データが不正確・データがそもそも入力されていない可能性があるのです。このようなケースで、BIツールを導入し、得られた分析結果を経営判断を下すのは非常に危険と言えるでしょう。まずは現場レベルで、データ入力の重要性を浸透させ、入力を徹底させることから始める必要があります。

BIツールを導入する際には、分析に必要な情報が社内に蓄積されているかを必ず確認しましょう。

2. 分析やレポート作成に膨大な人的リソースを割いている

BIツールの最大のメリットは、膨大なデータを素早く分析し、分かりやすくレポーティングできることにあります。

企業によっては、分析にExcelを用いることもありますが、膨大なデータを高速で処理するのには向いおらず、分析に時間やリソースを割いてしまいます。またExcelはレポート作成機能を持たないため、レポーティングの際には別途工数が必要です。

このように現状、Excelを用いて分析をしているが、膨大なデータの分析に時間がかかているという企業はBIツールに移行することをおすすめします。

3. データはあるが、経営判断にうまく活かせていない

データ自体は社内に蓄積されているが、経営にうまく活かせていない企業もBIツールを活用することで大きなメリットを得られます。先にもお伝えしましたが、BIツールは「データマイニング」や「シミュレーション」といった高度な分析機能を持ちます。

これらを活用することで、社内に高い分析スキルを持った人材がいなくても、経営判断において有益な知見を導き出してくることができます。

BIツールの活用事例

ここからは、実際にBIツールを活用することによって、経営判断や業務改善に役立てている事例を解説します。

事例1:繊維機械の稼働データをBIツールで可視化し、保守サービスの品質を改善

繊維製品の製造に用いる繊維機械の開発〜販売を行う「村田機械株式会社」では、顧客に納品した繊維機械の稼働データを、本社のデータベースに蓄積し、BIツールを用いて分析することで、繊維機械の保守や製品設計に活かしています。

かつてはExcelを使ったVBA(Excelの操作を自動化するプログラミング)分析を行っていましたが、稼働データという膨大なloTデータを取り扱うために、高度な分析スキルを持つ一部の担当者しかデータ分析ができない、データ分析に時間がかかってしまう、高負荷で画面がフリーズしてしまうといった問題が発生していました。

BIツールを導入することで、分析業務を効率よく行うことが可能になっただけでなく、顧客の工場でトラブルが発生した際に、社内に蓄積された稼働データを分析、あらゆるトラブルの要因を特定してから現場に向かうといったことができるので、保守サービスの品質を向上させることができるようになりました。

参考:機械の稼働データをQlik Senseで可視化!ビジネス部門でのIoTデータ活用で、業務効率が劇的に改善 | アシスト

事例2:航空会社のフライトデータを活用し、安全性の向上に

出典:JAL

日本を代表する航空会社である「JAL(日本航空株式会社)」では、フライトの安全性向上のためにBIツールが活用されています。当社では、機体に取り付けられたセンサーから得られるフライトデータや乗務員からの報告、運行情報などのデータを分析しています。

フライト中の機体からは、巡航速度や高度・位置・天候・風速など様々なデータが得られ、10時間のフライトでは3~4万レコードのデータ量が蓄積されます。これらをExcelで分析していましたが、分析に膨大な時間がかかることから、BIツールの導入を決定しました。

BIツールを用いた分析により、データ分析をスピーディに行えるようになっただけでなく、今まで見えていなかった安全性に関する様々な発見し、施策に活かせるようになりました。

例えば、航空機のフライトには、安全に着陸する際には一定の風速内でなければいけないという「横風基準」というものがあります。従来は、全ての空港で一律の横風基準を設けていましたが、フライトデータを分析することで、個々の空港の立地や周辺の建物の状況などを加味して、それぞれの空港で最適な横風基準を設けることができました。このことで、安全性を向上させると共に、フライトの定時性も向上しています。

フライトデータの他にも、乗務員からの報告といったデータなど複数のデータを組み合わせて分析することで、安全性の向上に寄与しています。

参考:JAL、70 万便のフライトデータから目的のデータ抽出、他データと組み合わせて安全性向上に活用

BIツールの導入を成功に導くためのポイント

BIツールは、その高度な分析能力や処理技術など非常に優れたツールですが、闇雲に導入をしても明確な効果が得られる訳ではありません。導入の目的を明確にすることや、得られた知見をしっかりと施策に移すことが大切になってきます。

導入の目的を明確にする

最近ではクラウド型で安価なBIツールも増えてきたことから、以前よりもBIツールの導入ハードルは低くなりました。実際にBIツールを導入したという企業も増えていますが、明確な目的がないままBIツールを導入しても、はっきりとした効果を得られることはあまりないでしょう。

そもそも、企業のどんな課題を解決したいのかによって収集すべきデータが異なります。導入前に目的を明確にしなければ、実はデータ自体が社内になかった、といったことにもなりかねません。

BIツールは経営分析をはじめ、営業分析・人事分析などあらゆるシーンで活用することができます。このように利用用途の幅広いBIツールだからこそ、「どう使えば良いかわからない」となりがちです。導入前には目的をしっかりと定義し、どのように活用すべきかをイメージしましょう。

分析結果から施策を実行・振り返りをする

BIツールの導入目的は、決して分析やレポーティングではないはずです。分析やレポーティングを通して、得ることができた知見を、施策の実行に活かすことによって初めてBIツールの導入価値が生まれます。また実行した施策に対して振り返りを行い、PDCAサイクルを回していくことが大切です。

代表的なBIツール3選

最後に、企業に導入されることの多い代表的なBIツールを紹介します。

Tableau(タブロー) 

出典:Tableau

Tableau(タブロー)は、全世界で70,000社以上の導入実績を持つBIツールです。

ビッグデータ、SQLデータベース、スプレッドシート、Googleアナリティクスや Salesforceなど多くのデータソースに対応。直感的で使いやすいビジュアライゼーションや、キーボードを使わずにマウスのドラッグ&ドラックで基本的な操作が完了することから、現場レベルの担当者が自ら分析できる「セルフサービスBIツール」として高い評価を受けています。

データポータル (Google)

Googleデータポータルは、Google社が無料で提供するBIツールです。Googleアカウントがあれば誰でも利用することができます。ただし、対応しているデータソースは、Google アナリティクス、Google広告、Google BigQuery等のGoogle サービスを中心に、MySQLなどの一部のデータベースに連携が可能です。

Power BI(マイクロソフト)

出典:Power BI

Power BIは、マイクロソフト社が提供するBIツールです。基本的にはノンプログラミングで分析を開始できるので、現場レベルの担当者でも扱うことができます。また、「昨年の製品ごとの売上は?」と話し言葉でコメントするだけで、適切なグラフやチャートを回答してくれる機能も搭載しています。

まとめ|BIを活用し、データに基づいた経営判断を

本記事では、BIツールでできることや活用の流れ、導入を成功に導くためのポイントについて解説しました。

データマイニングやシミュレーションをはじめとするBIツールの分析技術や、表やグラフを用いたビジュアライゼーションによって、今までになかったビジネス的な知見を得ることができます。

BIツールは業者や業界を問わず、様々な分析を行うことができますが、導入の際には目的をしっかりと定義することや、施策の実行までの仕組みを作ることが大切です。

この記事を書いたメンバー

MASAHIRO NISHI

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

1983年生まれ。大手不動産賃貸事業会社におけるWebディレクション・デジタルマーケティング業務後、インターネット専業広告代理店・株式会社電通デジタルにてアクセス解析・DMP・レコメンデーション・BIツールなどの導入・活用支援に取り組む。 2019年7月よりMOLTSに参画し、2020年より子会社KASCADEを設立し、取締役に就任。データに基づくサービス改善、ビッグデータ活用のコンサルティング、インハウス運用、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援する。

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