リードナーチャリングは、「見込み客の育成」を意味する言葉で、日本では2015年頃から広く知られるようになりました。

リードとは、自社の製品やサービスに興味関心を示してくれている「見込み顧客」に過ぎません。これらのリードに対して、受注に至るまで適切なコミュニケーションを取り、購入へのモチベーションを高めて「育成」するのが、リードナーチャリングの役割です。

本記事では、リードナーチャリングとは何か?といった基礎知識から、企業の成功事例、そして実際に始めるステップについて、当領域で50社以上の支援をしてきた弊社の視点からわかりやすく解説をしていきます。

「リードナーチャリングの言葉の意味がわからない」「なんとなく意味はわかるけれども、実際に何から取り組めば良いか分からない」というマーケティング担当者は、ぜひ参考にしてください。

リードナーチャリングとは

リードナーチャリングとは、直訳すると「見込み客(リード)の育成」を意味します。獲得したリードに対して、メール配信・架電などを通して、継続的にコミュニケーションを取り続けることで、購入意欲を高めていきます。

インターネットが普及した現代において、企業は展示会やセミナーといったオフラインのイベントだけでなく、Web広告やコンテンツSEOといったオンラインの施策を通じて、より多くのリードを獲得できるようになりました。

この獲得した大量のリードの中には、今すぐ受注につながるホットリードも存在しますが、その大半が「とりあえず資料請求してみた」「今すぐには商材やサービスを必要としていない」といった、購入意欲の低いリードの場合がほとんどです。

これら購入意欲の低いリードを、すぐに商談に繋がらないからと放置するのではなく、抱えている課題のヒアリングや興味関心に沿った情報を適切に提供することで、自社の商材やサービスへの関心度を高め、最終的に商談へとつなげていくことがリードナーチャリングの目的です。

最近では、リードの一元管理ができるマーケティングオートメーションの導入や、社内にインサイドセールスの組織を作ることで、体系的にリードナーチャリングに取り組む企業が増えています。

プロこそリードナーチャリングを重要視する理由

企業がリードナーチャリングに取り組むべき理由は、今まで商談につながらず無駄になっていたリードを有効に活用することで、商談を生み出すことにあります。

今まで、Web広告やコンテンツSEOによってマーケターが獲得したリードを、営業がバトンを引き継ぎ、架電を行い商談につなげるのが一般的なフローでした。

しかし、いざ営業が架電を行なっても相手が電話に出ない、アポイントを獲得できないといった理由で、せっかく獲得したリードが放置されてしまい、大きな機会損失を招いているという課題がありました。

例えば、Web広告や展示会で発生するリードが月間で100件あったとします。架電を行なった結果、30件のアポイントを獲得できたとしても、残りの70件は無駄なリードとなってしまいます。これが仮に、リード獲得のCPAが1万円だったとすると、70万円の損失が生まれることになります。

この損失を減らすことこそが、リードナーチャリングの大きな役割と言えます。

実は、アメリカのマーケティングコンサルティング会社「Sirius Decisions」が行なった調査によると、営業担当者が「見込みなし」と判断して、フォローを行わなかったリードの約8割が、2年以内に競合他社から製品を購入していることが分かっています。

つまり、放置されているリードの中には、アプローチしたタイミングで購入へのモチベーションが高くなかっただけで、潜在的なニーズを抱え、最終的に顧客となり得るリードが多く存在するのです。

企業はついリードをいかに多く生むかに注力しがちですが、リードナーチャリングを通して、獲得したリードを最大限活かすことに目を向ける必要があるでしょう。

リードナーチャリングの5つの手法

では、リードナーチャリングとは具体的にどのような手法で行われるのでしょうか。ここらはリードナーチャリングの手法を5つ紹介していきますが、特に用いられるのが「メール」と「電話」を使ったコミュニケーションです。

1.Eメール

リードナーチャリングの手法として最も一般的なのが、Eメールを活用したものです。

特定のセグメントにメールを配信する「セグメントメール」や、資料請求日や会員登録日といったある時点を起点として、スケジュールに沿ってあらかじめ用意していたメールを配信する「ステップメール」などがあります。

メールコンテンツの制作やシナリオの設計は必要ですが、比較的少ない工数・予算で始められるのがメリットです。

2.電話(テレマーケティング)

リードに架電を行う「テレマーケティング」も、リードナーチャリングによく用いられる手法です。顧客と直接会話ができるため、一方的に情報を提供するのではなく、どんな課題を抱えているのかをヒアリングすることで、顧客一人ひとりに合ったコミュニケーションが可能になります。

ただし、インサイドセールスをはじめとする架電の担当者を設ける必要があることや、多くのリードにアプローチするためには工数がかかってしまうというデメリットがあります。

3.Webサイト(コンテンツの出し分け)

Webサイトのコンテンツを顧客ごとに出し分けることで、リードナーチャリングを行う手法もあります。例えば、メールを見て訪問してきたユーザーや、すでに会員登録済みのユーザーなどを判別して、バナーやテキストの異なるページをユーザーに表示します。

顧客が求めているであろう情報をWebサイトに表示することにより、離脱率の低下やコンバージョン率アップが期待できます。

4.セミナー

製品への興味や関心が高い顧客に対して、有効なのがセミナーの開催です。直接会場まで足を運んでもらうため、メールや電話よりも顧客が熱心に耳を傾けやすく、質の高いセミナーを開催できれば、受注やアポイントメントの獲得につながる傾向が強くなっています。

ただし、開催をするたびに会場を抑える費用や、準備の工数がかかってしまうのが懸念点となっています。最近では、オンライン上でセミナーを開催するウェビナーも広がりつつあるので、そちらも検討してみると良いでしょう。

5.リターゲティング広告

リターゲティング広告とは、自社のWebサイトやLP(ランディングページ)に一度訪れたことのあるユーザーに対して、その後の行動を追跡して広告(バナー)を表示することで、再度WebサイトやLPへの訪問を促す広告手法です。

短期間で接触機会を増やすことで、ユーザーの購入意欲を煽ることが可能です。

リードナーチャリングを始めるための4つのステップ

ここからは、リードナーチャリングを始めるための具体的なステップについて解説をしていきます。

リードナーチャリングは実際に施策を始める前に、リードがどのような属性で、今どんな状態にあるのかをしっかりと見極めた上で、セグメントを分ける必要があります。

闇雲に施策を始めても、効果的なリードナーチャリングは期待できません。正しいステップを意識することが大切です。

STEP1:対象となるターゲットを理解する

まずは、リードナーチャリングの対象となるターゲットを明確に定めて、ターゲットの理解に努める必要があります

獲得したリードには、さまざまな業種・職種・役職といった異なる属性のリードが含まれています。誰に向けてリードナーチャリングをすべきなのかを定義して、具体的なユーザー像をイメージするために「ペルソナ」の設計を行いましょう。

このペルソナの設計が曖昧だと、読者のニーズに沿った情報を提供することができず、効果的にリードナーチャリングを行うことができません。

例えば、同じ会社のマーケティング部門に属する2つのリードに対して、メールを配信する場合でも、それぞれの役職が「責任者」と「部下」であれば、ターゲットに刺さるメールのタイトルや内容は変わってきます。

対象となるターゲットは誰なのか、またターゲットとなる人たちが日々のどんな業務を行なっていて、どんな課題を抱えているのかを理解することを心がけましょう。

STEP2:リードのステータスを見極める

次に、リードのステータス(状態)を正しく見極める必要があります。

例えば、「10回架電したものの繋がらなかったリード」「まだ架電をしていないリード」「既に営業担当者がサービスの説明を終えて好反応を得ているリード」では、提供すべき情報や、取るべきコミュニケーションの仕方が変わってきます。

リードの属性だけでなく、リードが今どのような状態なのかを判断して、セグメントしていくことが大切です。

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別記事「マーケティングオートメーションのシナリオとは?考え方とワークフレームを解説」では、獲得したリードのスコアリングやそのセグメントに基づいた、具体的なシナリオの作り方について、インサイドセールスのプロの視点から説明しています。合わせてご覧ください。

STEP3:セグメントを作る

STEP1〜STEP2の工程を経て、実際にセグメントを分けていきましょう。なお、管理するリードの総数にもよりますが、セグメントを作っていくフェーズでは、基本的にはMAツールが必須となります。

マーケティングの担当者が「エクセル」などの集計ツールを使って管理する場合もありますが、営業との連携がスムーズにいかずに、アポイントをしたのにも関わらず、ステータスが変更されていないままになっているといったことも発生しかねません。

MAツールを導入することによって、リードを一元管理することができ、マーケター・営業担当者双方の業務負担を減らすことが可能になります。

セグメントを切り分ける際に注意をしたいのが、「細かくセグメントを分けすぎない」ことです。

仮に、1,000個のリードがあれば、1,000種類のセグメントを作り、1つ1つ施策を出し分けることも理論上は可能です。しかし、実際は工数がかかり過ぎて、採算に見合わないケースがほとんどです。

リードの属性やステータスを加味して、多くても10種類程度のセグメントに分けて、管理していくことがおすすめです。

STEP4:施策の効果測定を行い、改善につなげていく

STEP3で分けたセグメントごとに、施策を実施していきます。大切なのは、リードナーチャリングの施策を実施して終わりにするのではなく、顧客の反応の測定を欠かさずに行い、ナーチャリングフローの改善につなげていくことです。

顧客の反応は、実際に施策を打ってみないと分からないことがほとんどです。施策の効果検証やフィードバックを通して、高速でPDCAサイクルを回していく体制を作る必要があります。

リードナーチャリングの2つの活用事例

ここからは、実際にリードナーチャリングの事例を見ていきましょう。

事例①:放置されていたリードからSALを創出

BtoC向けの不動産を取り扱うA社では、MAツールを活用して、リードナーチャリングのフローを構築。対象となるターゲットにメールを配信し、リンクをクリックしたリードに対して、インサイドセールスが即座に架電を実施する仕組みを整えました。

数年前にアポイントメントを打診して断られたリードや、商談化したものの失注してしまったリードなど、リサイクルリードを有効に活用することで、月間で約50件のSAL(マーケターから営業担当者に引き継いだ案件)を創出することに成功しました。

事例②:アポ打診を断られたリードのフォロー体制を構築

BtoB向けのWebサービスを展開するB社では、Webサイトや広告から発生したリードに対して、インサイドセールスが架電を行い、訪問の実施もしくはセミナーへの誘導を促していました。

しかし、一定数のリードでは「タイミングが合わない」「今すぐのニーズが強くない」とい理由から、訪問・セミナーともに打診を断れてしまうケースがありました。これらのリードを放置するのではなく、相手方との認識をすり合わせた上で、期間をあけて架電する仕組みを整えました。

取得すべきデータを明確にしておく

リードナーチャリングは、顧客の反応をしっかりと見極めて、最適なコミュニケーションを取り続けることが大切です。

その際に重要なのが、顧客の反応を見極めるために、取得すべきデータとは何なのかといった視点です。特に、電話で顧客とコミュニケーションを図っていく時には、この視点が欠かせません。

メール配信であれば、開封率やクリック率、コンバージョン率といった定量的なデータをもとに、ナーチャリング施策の効果を計測できますが、電話の場合は、「架電をした際に顧客とどんな会話ができたのか」といった、定性的な情報から顧客の反応を見極めることが求められます

この取得すべきデータが曖昧だと、顧客の反応を何となくでしか捉えることができず、効果検証を行うことが難しくなってしまうので注意が必要です。

架電の際に「サービスの概要を説明することができたか」「顧客の抱えている悩みを聞き出すことができたか」「アポイントの打診をすることができたか」など、あらかじめ記録すべきデータを定義し、しっかりとログを取っていきましょう。