よく言われる「コンテンツは資産になる」が正しくないと思う理由

よく言われる「コンテンツは資産になる」が正しくないと思う理由

コンテンツは資産になるので、とにかく数を増やしたい――。

クライアントからこのような話を聞く機会は未だにあります。しかし、これまで様々なコンテンツマーケティング支援をしていた経験から指摘させていただくと、「コンテンツは資産」という認識は誤りです。間違った認識のままコンテンツを増やしていくと、むしろビジネスの足を引っ張る「負債」と化すおそれがあります。

今回は、その理由を解説していきます。

コンテンツは本当に「資産」と呼べるのか

オウンドメディアやコンテンツマーケティングにこれから参入したい責任者、担当者とお話していると、「コンテンツは資産になるから、数も大事にしたい」という声は未だに耳にします。

ここでいう「資産」は、経営や会計で使うときのような厳密な意味の資産ではありません。「コンテンツは資産」論を唱える人の頭の中でイメージされているのは、おそらく「広告への投資」との対比でしょう。広告はお金でユーザーを買う仕組みですが、期間が限定されていて、集客効果はいずれなくなります。また集客したければ、再び投資が必要です。その意味で、広告は一時的に効果を発揮する「フロー型」です。

それに対してコンテンツは「ストック型」であり、一度つくっておけば消えてなくならず、継続的に価値を発揮し続けていくように見えます。そのようなイメージを預貯金や証券のように金融資産と重ねて合わせて、「コンテンツは資産」ととらえる人が多いのでしょう。

話を進めるために、ここでも「持っているだけで価値を発揮し続けるもの」をひとまず資産と呼ぶとします。

では、コンテンツは本当に持っているだけで価値を発揮し続けるのでしょうか?

結論からいうと、「価値を生むものもあれば、生まないものもある。また、価値が増えるものもあれば減るものもある」。つまり、価値があるかどうか、そしてそれを発揮し続けられるかどうかはコンテンツ次第。一度持てば毎年それなりの利回りが期待できる金融資産とは、似て非なるものです。

ビジネスの課題解決に貢献しないコンテンツは資産なのか

価値のあるコンテンツとそうでないコンテンツは何が違うのか。これにも普遍的な解はありません。コンテンツの価値は、「そのコンテンツでビジネスのどのような課題を解決したいか」によって変わるからです。

たとえばリード獲得を目的としてコンテンツを作成するとしましょう。10万UUに達しても、リードが全く獲得できなければ、そのコンテンツは価値があったとはいえません。また、認知を高めることを目的としたコンテンツで、全く読まれなければ、これも価値があったとはいえないでしょう。

採用目的のコンテンツならどうでしょうか。コンテンツを読んで入社意向が高まったり、スカウトをかけたときに返答率が上がったときに、はじめて価値があったと評価できるでしょう。まさにコンテンツの価値はビジネス上の目的次第です。

そのことを踏まえると、価値のあるコンテンツとそうではないコンテンツの正体も見えてきます。ビジネスの目的に合致して効果を発揮していれば価値があり、そうでなければ価値がないということです。

あたりまえのことを指摘しているように思われるかもしれませんが、「コンテンツは資産」ととらえると、資産を増やすことが目的化して、コンテンツを使って何を解決すべきかという視点が抜け落ちてしまう傾向があるのです。「コンテンツは資産だからとにかく数を増やしたい」というクライアントは、その典型例です。いくら本数を増やしても、それが価値に直結するわけではないことに注意してください。

もちろん目的に合致していても、低品質では価値がありません。なかには低コスト・短期間でコンテンツの数を揃えようと、全くの素人である現場の営業担当にユーザーのヒアリングや撮影、コンテンツ作成を任せる会社もあります。

本業が忙しい営業担当が片手間につくった結果、写真は証明写真のような仏頂面で、文章も営業資料をそのままコピペしたようなつまらないものに。そんなコンテンツを見て、自分も問い合わせてみたいと思うユーザーがどれほどいるでしょうか。

まずはビジネスの目的に合っていること。そして目的達成に貢献できる品質があること。その2つが揃ってはじめて価値のあるコンテンツといえます。

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コンテンツが負債化する3つのパターン

たとえビジネス上の目的を十分に満たさなくても、あって損になるものではないのだから、コンテンツの数は少ないより多いほうがいいのではないか。そのような疑問を抱く人がいるかもしれません。

しかし、この考えも「コンテンツは資産」論の弊害といえます。コンテンツが株や債券のような金融商品なら、たしかにあって邪魔になることはありません。ただ、コンテンツは価値を生まないどころか、存在することで価値を毀損する「負債」になるケースがあります。そこが株や債券と本質的に違うところです。負債化には3つのパターンがあるのでご紹介しましょう。

品質の低さがビジネスの足を引っ張る

たとえば採用コンテンツが暗い印象を与えるものなら、単にターゲット層の心を動かさないどころか、むしろ「こんな雰囲気の職場で働きたくない」と敬遠されるかもしれません。あるいは、toCの認知度を高めるためにコンテンツを作成したのに、配慮に欠けた文言があって炎上してしまったらどうでしょうか。このようにコンテンツがビジネスの足を引っ張るケースはいくらでも考えられます。

低品質の割合が大きいと全体が低評価に

直接的にネガティブでなくても安心できません。低品質コンテンツが多いと、コンテンツSEOに悪影響を与えるおそれがあるからです。

それまで3000~4000記事あった某メディアが、低品質コンテンツを大量に削除して掲載を約2000記事に絞り込んだら、検索順位が上がったという事例がありました。このことから、全体のコンテンツの中で低品質コンテンツが占める割合が検索順位に影響を与えているという仮説が成り立ちます。

たとえるなら低品質コンテンツは、地域の空き家のようなものです。価値の高い家があっても、まわりが空き家ばかりで荒廃していれば、街全体の不動産価値が下がり、きちんと手入れしている家の価値も下がります。低品質コンテンツも同じ。直接の害がなくても、まわりまわって優良コンテンツの価値を毀損していく可能性があるのです。

メンテナンスコストは、隠れた負債

街の価値を高めるためには、空き家があれば更地にしてきれいな家を建てる、人が住んでいなくても手入れを続けてまた入居できるようにする努力が必要でしょう。ただし、メンテナンスにはコストがかかります。コンテンツも同様で、オウンドメディア全体の価値を維持したければ人とお金をかけてメンテナンスする必要があります。

そのコストも、隠れた「負債」です。「多ければ多いほどいい」という発想で低品質コンテンツが大量生産されていくと、あとでメンテナンスに苦しむことが目に見えています。それならば最初から数にこだわらず、高品質なコンテンツをつくることにこだわったほうがいい。3~4本つくるのに必要なリソースがあれば、それを1本に注ぎ込むべきです。

コンテンツの目的と価値を問い続ける姿勢が必要

コンテンツは、眠らせておいても勝手に価値を生み出してくれるような種類の資産ではありません。価値が生まれるように、絶えず手入れが必要です。手入れをサボったり、役目が終わったものを放置しておくと、価値を生むどころか負債になります。

そのリスクを考えずに「とにかく数を」と考えるのは非常に危険です。負債で苦しみたくなければ、数にこだわらず、目的に合致した高品質なコンテンツをつくることに集中することをおすすめします。

お恥ずかしい話ですが、MOLTSもすべて完璧にできているわけではありません。クオリティ面で失敗して効果が出ていないものもあるし、失敗がわかったのにメンテナンスできずに放置されているものもあります。

ただし、少なくても最初に目的を明確にして、それに沿って設計することは怠っていないつもりです。「コンテンツは資産だからとにかく増やせばいい」と思考停止しないで、「どうすれば目的に対してコンテンツの価値を出せるのか」と問い続ける。オウンドメディアやコンテンツマーケティングの担当者には、そのマインドが必要だと思います。

編集:村上敬

著者情報

SAORI NAGATA

永田 さおり

Media Planner

業界歴7年。オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。得意領域はコンテンツSEO。これまで100社以上のクライアント支援を経験。

担当領域の
サービス

  • コミュニケーションプランニング
  • BtoBマーケティング
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