成果を最大化するMAのシナリオ設計|作成方法とフレームワーク
この記事でわかること
- MAのシナリオ機能とはどのようなものか
- MAで効果的なシナリオを作成するために必要な「カスタマーセグメント」の作り方
- MAのシナリオ設計フレームワーク
マーケティングオートメーション(MA)のシナリオとは、リードを育成(リードナーチャリング)するための道筋を決め、その道筋でどのような情報提供をするかを設定できる機能のことです。
「何となくは分かっているものの、具体的にイメージができない」「どのようなシナリオを設計すれば成果に繋がるのかが分からない」という方も多いのではないでしょうか。
実際に、弊社がお取り組みをさせていただく企業の多くがMAを導入されていますが、シナリオ設計に関して以下のような課題をお持ちの方が多いように見受けられます。
- MAのシナリオがそもそも何かがよく分かっていない
- 使ってみたいが、そもそもの考え方や設計方法が分からない
- 施策を実施しているものの、成果が上がらない
そこで本記事では、MAのシナリオを深く理解するためにもそもそもMAとは何かを解説しつつ、シナリオの設計方法を解説していきます。
「これを真似すれば良い」というテンプレートはありませんが、リードとの適切なコミュニケーションを考えるためのフレームワークや分析方法についてをお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
なお、MAのその他の機能や活用方法については、以下の記事で解説しています。
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- インサイドセールスを立ち上げたいものの、何から始めたら良いのか分からない
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MAのシナリオ機能とは
一般的にいわれるシナリオとは、映画・テレビなどの脚本をイメージされることが多い言葉ですが、MAで用いるシナリオは、「計画を実現するための筋道」に近しい意味合いを持っています。
MAのシナリオとは、リードを育成(リードナーチャリング)するための道筋を決め、その道筋でどのような情報提供をするかを設定できる機能を指します。
シナリオでは、サービスや事例の紹介、セミナーの案内などの情報提供と共に、フォームからの登録を通じてリードの情報を収集することで、商談する際に必要な情報を事前にヒアリングすることが可能です。
MAのシナリオ分岐例
MAのシナリオは、事前に設定した道筋に沿ったメールの自動送信と、そのメールに対するリードのリアクションによって自動的に道筋を分岐させる機能があります。
道筋の分岐とは、メールを開封し、セミナーに申し込みを行ったリードにはこのメールを送る、申し込みがないリードには再度セミナー案内のメールを送る、といったものです。
この機能により、リードのリアクションに応じて内容の異なるメールを送ることができ、その結果、シナリオがファネルとして機能します。
ファネルを通過したリードはリードナーチャリングが完了したとみなして、こちらも営業にトスアップする、といった動きができるようになります。
MAのシナリオの必要性
「事前に設定した道筋に沿ったメール配信を行う」というだけであれば、MAの他の機能で行うことが可能です。
ただ、そのメールのリアクションによって対応を変える場合は、シナリオを活用するのがおすすめです。
シナリオ以外の機能で、リードのリアクションに応じた対応を行う場合は、リード情報を1件ずつ閲覧し、メールに対するリアクションを確認し、リアクションの内容によって次回の案内を変えるといった、非常に時間のかかる作業になってしまいます。
そこでシナリオ機能を活用し「どのような属性のリードに」「どのような情報を」「いつ与えるのか」を予め設計し、リードに適したコミュニケーションを自動で行えるようにすることで、効率の良いリードナーチャリングが実施できるのです。
私が普段から行うMAのシナリオ活用例
私は普段、MAのシナリオを以下のシーンで活用します。
- PUSHで商談化を狙う:5通のステップメールを送り、リードがすべてを開封をした場合に、インサイドセールスに通知が行く
- PULLで商談化を狙う:リードが3日連続で自社サイトに訪問した場合に、インサイドセールスに通知がいく
一般的なシナリオ設計でイメージされる、複雑なメールの分岐設定などは、基本的に行いません。シナリオの設定や分析・改善などがしやすくなるように、極力シンプルな設計にするようにしています。
複雑にしようと思えばいくらでもできるかもしれませんが、そうなると、その瞬間の考え方や気分で設定してしまいがちです。あとから見たときに、その意図や妥当性などを再度考え直さなければならないこともあるため、無駄が生じてしまいます。
このような理由から、私がクライアント支援に入る際も、上記のようなシンプルな設計を行うことがほとんどです。
MAのシナリオは、必ずしもユーザーの動きに合わせて複雑に分岐させなければいけないわけではありまん。後にMAのシナリオを使った支援事例を載せているので、ぜひ参考にしてください。
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MAのシナリオ設計をするための準備
ここからは、MAのシナリオ設計のやり方を解説していきます。
しかし、いきなりシナリオを考えるのではなく、まずは「カスタマーセグメント」というものを作成し、以下のようなことを定義する必要があります。
- ナーチャリングの対象はどのような属性のリードなのか
- そのリードはどのようなニーズを持っていると考えられるのか
- そのリードたちに対して、どのような「情報」を「いつ」与えるのか
カスタマーセグメントとは、リードに「有益な情報だ」と感じてもらうことを目的に、属性(どんな人なのか)やニーズ(どんな情報を欲しているのか)などを基に、セグメントすることを指します。
例えば、営業部のマネージャーに情報を発信する場合と、広報部の一般社員に情報を発信する場合、内容はそれぞれ異なるでしょう。さらに、営業部のマネージャーと一口に言っても「営業マンの採用を行いたい」「時流に合った効果的な営業方法を知りたい」など、ニーズは様々です。
そのため、リードに「有益なメールだ」と感じてもらうには、属性でのクラスター(塊)や、ニーズでのクラスターを設け、それに基づいた情報を提供する必要があります。
MAのシナリオ設計に活用するカスタマーセグメントの作成方法
まずは以下の内容を参照し、カスタマーセグメントを作成していきます。
- 属性(どんな人なのか):業種、役職、職種
- ニーズ(どんな情報を欲しているのか):リードを獲得した経路、過去の質疑応答
属性の分析方法:業種、役職、職種を確認
まず、リードの属性(どんな人なのか)は、リードの「業種」「役職」「職種」を確認しましょう。これらの属性によって、興味を示す情報が異なるからです。
例えば「BtoBマーケティングの最新事例」というコンテンツは、マーケティング担当者であれば興味を持つかもしれませんが、経営者にとってはそこまで興味を引かれる内容とは言えないでしょう。
一方で、「100億円の事業を3年で作った社内醸成の秘訣」といったコンテンツならどうでしょうか。今度は、マーケターにとっては関係ない話に聞こえるかもしれませんが、経営者であれば興味を持つ内容だと考えられます。
このように、属性の違いによってどのようなコンテンツに興味を持つのかが異なるため、属性でのクラスターを設け、それぞれに適した内容を考える必要があります。
ニーズの分析方法:リードを獲得した経路、過去の質疑応答内容を確認
次に「リードがどのような情報を求めているのか」を分析するため、まずはリードを獲得した経路を確認しましょう。
例えば、検索でサイトに流入して問い合わせをしたのか、それとも展示会でサービス説明などを受けて名刺交換したのかによって、どのような情報を求めているかが異なります。
前者であれば、LPやホームページ上の情報に興味をもったと考えられるため、何が書かれているのかを確認するのがよいでしょう。後者であれば、その時の会話内容を参考にするのが有効です。
過去の会話内容を参照するには、CRMやSFAを利用します。「特定の属性に該当する人は、どのような流れで受注に至ったのか」を明らかにしましょう。
- そのリードはどのようなフローで商談までたどり着き
- どのような質疑応答を行い
- その結果、受注しているのかどうか
もしCRM/ SFAの情報が、10万件以上などの膨大な数になってしまう場合は、受注企業を契約金額やLTV(顧客生涯価値)でフィルタし、デシル分析を行うのがおすすめです。
※デシル分析:顧客の購入金額などを元に、顧客を上位から10等分して、グループごとに分析を行う手法
デシル分析によって、契約金額が高い顧客層(高売上層)や、高LTV層は、どのようなフローで商談/ 受注まで至ったのかを確認します。さらに、同時に低売上層や低LTV層の分析も行うことで、高低の差が明確になり、「どのような情報を提供したリードは高層になりやすいのか」を判断することができます。
これらの分析結果を基に、特定の属性はどのような質疑応答を行っているのか(興味がある情報は何か)、どのような課題を解決すためにサービス/商品を契約しているのか(ニーズは何か)を明確にすることができます。
MAのシナリオ設計フレームワーク
カスタマーセグメントの作成ができたので、ここからはシナリオ設計に入っていきます。
大きく分けて、以下の2STEPで進めていきましょう。
- カスタマーセグメントを元に、MAに登録されているリードをセグメント分けする
- 情報提供の順番、コンテンツ、分岐を設計する
STEP1:カスタマーセグメントを元に、MAに登録されているリードをセグメント分けする
まず、ここまでの分析で明らかになった属性やニーズを基に、MAに登録されているリードをセグメント分けします。
この時に気を付けなければならないことは、役職や職種が不明確なリードの扱いです。これらのリードには、セールスからの架電や個別メールを通じてヒアリングを行うことをおすすめします。
なぜなら、MAを扱う上で最も気を付けなければならないことは、オプトアウト(=離脱)させないことだからです。
仮に、適当にセグメントした結果オプトアウトされてしまったら、1リード獲得にかかるCPAの分、会社に損害を与えることになってしまいます。
もちろんオプトアウトを0にすることは非常に難しいことですが、それくらいの気持ちでリードに向き合っていただきたいと思います。
STEP2:情報提供の順番・コンテンツ・分岐方法を設計する
次に、CRM/ SFA分析で明らかになった会話内容から情報提供の順番を決め、シナリオに落とし込みます。
提供する内容は、商談内で行われた質疑応答や、分析結果から読み取れる高売上層/ 高LTV層の課題から考えていきます。
最後に以下の3点を考慮した上で、シナリオの分岐を設定していきましょう。
- その情報を与えた結果、リードにどのようなアクションをしてほしいか
- そのアクションの結果、自社はどのようなアクションを起こすのか
- 最終的に達成したい目的(ゴール)は何か
これらをよく考えたうえで、コミュニケーションが一方通行にならないように、シナリオの分岐を設計する必要があります。
- インサイドセールスを立ち上げたいものの、何から始めたら良いのか分からない
- マーケティングリードのアポイント獲得率、受注率を向上させたい
- 営業に精通したメンバーがおらず、現在行っている施策やKPIが正しいのか分からない
MAのシナリオ設計に関する2つの事例を紹介
ここからは、これまで私ががMAの活用について支援させていただいた企業の事例を参考に、シナリオの活用方法や成功例を見ていきましょう。
事例1:MAに蓄積されたデータを徹底分析してシナリオを作成、その結果リード獲得件数が138%増加
株式会社エルテスは「デジタルリスクに、盾を。」をキャッチコピーのもと、SNS炎上といった企業が抱えるデジタルリスクを解決するためのサービスを展開しています。
当初から、事業拡大のために母数の限られた顕在層だけでなく、マーケティング活動による潜在層へのアプローチが必要だと考え、MAツールを導入していました。
しかし、マーケティング部門のリソースやノウハウが不足していたことで、MAツールを活用しきれず、メルマガを配信するだけのツールに留まっていました。
そこで、始めに現状の課題を洗い出した上で、MAツールで何ができるのかを再確認。契約に繋がりそうなリードを、MAツールで自動抽出できる状態を目指すために、以下のステップでMAツールの有効活用のための土台を構築しました。
- Excelにエクスポートしたリード情報をもとに、受注につながりやすいリードを定義
- リードがMAツール上でどのような動きをしているかをすべて分析し、可視化
- 分析した結果と営業へのヒアリング内容に基づき、MAツール上でセグメントやシナリオを設定
強固な土台を作り上げたMAツールを軸に、メルマガやホワイトペーパー、セミナーといった施策を展開した結果、昨対比で獲得リード件数を138%アップさせることができました。
さらに、営業(フィールドセールス)のメンバーからは、MAを中心としたホットリードの共有により、効率的なアポイント獲得が取れる状態になり、社内のマーケティング組織を構築することに成功しました。
事例2:業界ごとに異なるメールが配信されるように設定、ハウスリストから月10件ほどのホットリードを創出できるように
画像・動画解析エンジンの構築サービス「AMY INSIGHT ソリューション」を始めとしたAIサービスを展開するAutomagi株式会社が行った、MAの活用事例を紹介します。
Automagi社では、さらなる事業拡大を目的に、MAを使ったマーケティング戦略を考える必要がありました。
まず行ったのは、ターゲットの明確化と選定です。MAやSFAに蓄積されていた、受注データや商談に進んだ企業の情報などを参考に、アプローチする業界を定め、ターゲットのペルソナを描くところからスタートしました。
その後は具体的なマーケティング施策を考え、実行に移していきます。同社にはHubSpot(MA)に蓄積していた顧客データと、セミナー運営のノウハウが資産として蓄積されていたので、これらを活用してシナリオを設計し、以下の施策を行いました。
- HubSpot(MA)からハウスリストに対してステップメールでナーチャリングを行う→ホットになったリードへ架電→商談化
- Facebook広告でセミナーの広告を配信してセミナーへ集客→ホットになったリードへ架電→商談化
なお、これまでは業種や業界を絞らずに集客し、多くの方が興味を抱きそうな企画でセミナーを開催していました。しかし、Automagi社のサービス内容に関する考え方やニーズは、業界ごとに異なります。そこで、ハウスリストにセミナー案内メールを送る際は、業界ごとに異なるメールが送信されるように設定し、それぞれに対して適切なコミュニケーションを試みました。
このような取り組みによって、早くも月10件ほどのホットリードを創出。その後は月30件のホットリードの獲得と月2件の商談獲得が実現できる見通しです。
まとめ|MAのシナリオを正しく設計して、各リードと最適なコミュニケーションを取ろう
MAのシナリオ設計をうまく活用することで、各リードと適切なコミュニケーションが取れるようになり、効率よくナーチャリングを行えるようになります。
MAのシナリオの作成は以下のような流れで進めていきます。
- カスタマーセグメント(誰にどんな情報を配信するか)を作成する
- カスタマーセグメントに基づいて、MAに登録されているリードをセグメント分けする
- カスタマーセグメントの分析で明らかになったニーズや会話内容を元に、「情報提供の順番」「コンテンツ」「分岐」を設計する
なおシナリオ設計は難易度が高く、複雑な分岐などを設定すると、分析や改善などがしづらくなってしまい、無駄が生じることも多いです。
そのため私は普段から、なるべく以下のようなシンプルなシナリオを作ることを心がけています。
- PUSHで商談化を狙う:5通のステップメールを送り、リードがすべてを開封をした場合に、インサイドセールスに通知が行く
- PULLで商談化を狙う:リードが3日連続で自社サイトに訪問した場合に、インサイドセールスに通知がいく
ぜひ参考にしてみてください。
よくある質問とその回答
BtoBマーケティングで成果を上げたいのですが、どのようにすれば良いですか?
BtoBマーケティングで成果を上げるためには、リードの創出、リードナーチャリング、リードクオリティケーション、商談・受注を繰り返し進めていく必要があり、本質的な意味で成果を得るには、顧客ニーズの把握や良好な関係構築が欠かせません。
BtoBマーケティングで目指すべき成果を見据えながら、営業・マーケティングなど各部門での連携をしながら、長期的に継続できる運用体制が必要です。
BtoBマーケティングを新たに取り組みたい、成果が出ない現状を打破したいという担当者様に、MOLTSでは成果にこだわったBtoBマーケティング支援を提案しております。
まずは一度「BtoBマーケティングの支援内容」をご覧ください。
MAのシナリオの設計方法を教えてください。
MAのシナリオは、以下のステップで作成していきます。
- カスタマーセグメント(誰にどんな情報を配信するか)を作成する
- カスタマーセグメントに基づいて、MAに登録されているリードをセグメント分けする
- カスタマーセグメントの分析で明らかになったニーズや会話内容を元に、「情報提供の順番」「コンテンツ」「分岐」を設計する
いきなり配信内容や分岐を作成するのではなく、まずはそもそも「誰に」「どのような情報を配信するのか」を考えましょう。
主にCRMやSFAを使った分析を行い、どのようなコミュニケーションを取れば商談につなげることができるのかを、設計する必要があります。
詳細は「MAのシナリオ設計をするための準備」をご覧ください。
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