CRMを導入してもLTVが上がらない理由と、もう一度見直したい5つのコミュニケーション
通販・EC企業の方と情報交換をさせていただく中で、「新規顧客獲得コスト(CPO)が上がってきている」というお声をよく耳にします。
そのため、企業として利益を出していくために、獲得したお客様に対してCRM施策を行い、LTVを向上させることが重要になってくるわけですが、「CRM施策を実施しているのにLTVがなかなか上がらない」といったお話もこれまたよく耳にします。
では、なぜLTVが上がらないのか―― その理由として挙げられるのが、一つひとつの施策が点でのアプローチになってしまい、お客様に対して線のコミュニケーション設計ができていないことです。
お客様は買っていただいた商品を使い始めていただいているのか、正しく使えているのか、どのくらいの頻度で使っているのかなど、お客様の状況にあわせてコミュニケーションを設計していく必要があるのです。
そこで今回は、CRMに悩む通販・EC企業のマーケティング担当者の方向けに、よくあるLTVが上がらない理由や、私自身の経験からどうCRMでのコミュニケーション設計を行うべきなのかについて、まとめてみました。
改めて確認したい、CRMとは何なのか
CRM(Customer Relationship Management)を日本語に訳すと、一般的には「顧客関係管理」もしくは「顧客関係マネジメント」と表現されますが、要するに一度購入してもらったお客様に二度三度とリピートしてもらうために、顧客とコミュニケーションをとって関係構築を行うことがCRMです。
たとえば化粧品や健康食品のように定期的に使用(飲用)し消費する商品であれば再購入いただくために、またアパレルや家具など中長期使用する商品であればクロスセルを行って関連商品を購入いただくためなど、購入して終わりではなく、購入後も顧客とコミュニケーションを行うことでリピート購入に繋げていくことが可能です。
通販・ECビジネスで利益を上げるには、以下4パターンの方法が考えられます。
- 新規顧客獲得コスト(CPO)を下げる
- 商品原価を下げる
- フルフィルメント費を下げる
- LTVを上げる
競合他社が多ければCPOを下げるのは難しく、商品原価は品質に影響してしまうため下げにくいでしょう。また、フルフィルメント費は作業員の人件費や物流倉庫等の設備管理費なども大幅な削減が難しい要素です。
そうなってくると、利益拡大のためにはいかにLTVを上げるかが重要であり、CRM施策を成功させれば自ずと利益を増やしていくことができるのです。
- LTV = 平均受注単価 × 平均購入回数
また、新規顧客と既存顧客では、施策に対してのCVRが異なります。すでに購入経験がある既存顧客のCVRは新規顧客のCVRよりも高い傾向にあるため、新規顧客の獲得施策ばかりに注力するのではなく、いかに既存顧客のLTVを高めるか、すなわちCRMに注力することが事業成長には欠かせないのです。
CRMを導入してもLTVが上がらないよくある理由
CRMの重要性は理解していて、実際にCRM施策を展開しているといった場合でも、「LTVがなかなか上がらない」といったご相談をよくいただきます。なぜCRMを導入してもLTVが上がらないのか―― その理由は大きく下記の3つが挙げられます。
理由その1. 既存顧客の細分化ができていない
既存顧客といっても、1回目購入、2回目購入、3回以上購入とお客様の購入回数ごとに行うべき施策は異なります。しかし、顧客のターゲティングを新規顧客と既存顧客の2つにしか分けておらず、既存顧客に対して一律に同じ施策を展開してしまっているケースは多く見受けられます。
1回しか購入したことないお客様は、まだ商品理解、ブランド理解が浅いお客様が多いでしょうから、まずは商品を正しく使っていただき、満足いただくためのコミュニケーション設計が求められます。
一方で複数回利用しているお客様は、すでに商品理解ができている状態のため、商品やブランドへのロイヤリティを高めるような情報を定期的にお伝えすることが大切です。
このように、コミュニケーションの内容はお客様の購入回数によって変えるべきであり、最低でも1回購入のお客様と2回以上購入のお客様は別のターゲットとして分類し、施策を実施すべきです。
理由その2. CRMを「販促活動」だと勘違いしている
導入コストの低いステップメールやメルマガ発行が中心で、コストが高いDM送付やアウトバウンド(電話)によるCRM施策を行わないというケースも珍しくありません。しかし、注意すべきはCRMは販促活動ではないということです。
CRMは顧客との関係構築が目的です。そのため、お客様の商品やブランドへのロイヤリティを高めるためには、優良顧客向けのバースデーDMであったり、アウトバウンドによる商品説明が有効であったりもします。
また、メールを閲覧しないお客様もいるでしょうから、F2引き上げのDM施策を行うなど、様々な顧客接点に対してオフライン施策も交えて行うことが理想です。コスト重視で施策を判断するのではなく、「お客様に喜ばれるコミュニケーションは何か」という視点で施策を展開することが大切なのです。
理由その3. 他社のCRM施策をそのまま流用している
「ターゲット属性や商品ジャンルが一緒だから」といって、競合他社のCRM施策をそのまま流用しても必ず成果に繋がるとは限りません。
ターゲット属性や商品ジャンルが一緒に見えても、お客様が解決したい課題や悩みが違えばコミュニケーションの内容も変わるでしょうし、たとえば同じ美容ジャンルだとしても、1週間で効果実感がある商材と1ヶ月で効果実感がある商材、また効果実感がない商材では、伝えるべき内容が異なります。
そのため、自社のお客様はどういった悩みを抱えているのか、どのタイミングでどういった情報を知りたいのかなどを精査し、自社の商品に適したCRM施策を展開することが求められます。
もう一度見直したいコミュニケーション設計の5つのポイント
冒頭で述べたとおり、CRMとは顧客とコミュニケーションをとって関係構築を行うことです。そのため、CRM施策の立案のためには「自社のお客様に対してどういったコミュニケーションを行うべきか」といったコミュニケーション設計が重要です。
そこで私自身が考える、CRMにおけるコミュニケーション設計で見直すべき5つのポイントが以下になります。
01. ターゲットは誰か
商品を利用し始めたばかりの新規顧客と、複数回購入している既存顧客では、当然ながら取るべきコミュニケーションは異なります。また同一の商品でも、購入に至った流入経路によって訴求が異なれば、お客様の抱える悩みや課題も違うでしょう。
そのため、「コミュニケーションを取るターゲットは誰か」ということをしっかりと明確にする必要があります。
そこで、コミュニケーション設計においては、自社のお客様を新規顧客、継続顧客、優良顧客、休眠顧客、離脱顧客に分けて考えることが大切です。これらの分類は購入頻度や最終購買日からの経過日数をもとに行っていきます。
そして訴求内容や獲得媒体ごとにお客様の抱えるお悩みや年齢などの属性は異なるため、よりターゲットを細分化する場合は、新規獲得時のクリエイティブのお悩み訴求、価格訴求などの訴求軸で分類したり、チラシや新聞、またリスティング広告などの獲得媒体別で分けたりする場合もあります。
02. どのチャネルでアプローチすべきか
ターゲットが明確になったら、次に考えるべきがチャネルです。メールやLINE、そして同梱物やDM、SMS、アウトバウンド(電話)などの様々なチャネルに対して、最適なチャネルを選んでいきます。
なお、コスト重視でチャネルはメールしか考えていないというケースも多く見受けられますが、ターゲットの年齢層や各チャネルの平均開封率、また到着スピードやコスト、さらには載せられるコンテンツの情報量や双方向性などから総合的に判断すべきでしょう。
- 獲得媒体はどこか?
- ターゲットの年齢層は?
- 伝えたいコンテンツは何か?どのくらいの量か?
- 質問などもその場で受けるように双方向である必要があるか?
たとえばシニア層に対してアプローチしたい場合は、メールやLINEよりも、同梱物やDMなどの印刷物のほうが反応率が高い傾向にあります。また、利用に際して取扱説明が必要な商品であれば、その場でお客様の疑問・質問に答えられる電話やチャットでのコミュニケーションも効果的です。
競合が多い商品ジャンルでは、他社と差別化するために複数チャネルでフォローアップすることも有効でしょう。
03. どのコンテンツを訴求すべきか
ターゲットやチャネルごとに、利用者の声や商品の使い方ガイド、また開発秘話やブランドストーリーなど、どういったコンテンツを届けるべきかは異なります。
たとえばロイヤリティの高くない新規顧客に対しては、企業やブランドの理念を語るコンテンツではなく、「商品の使い方」といったライトなコンテンツのほうが良いでしょう。一方で、ロイヤリティの高い継続顧客に対しては、「開発者の声」や「ブランド理念」といったコンテンツが有効です。
そして、毎回同じコンテンツを届けていてはお客様が飽きてしまいますし、企業側が伝えたいことを詰め込みすぎてしまうと、訴求内容が薄れてしまいかねません。ターゲットにあわせて、コンテンツの内容と量をコントロールすることが大切です。
- 新規顧客(1回目購入):商品の使い方、継続利用者の声、第三者評価
- 継続顧客(2回以上購入):企業・ブランドの歴史、理念、開発者の声、製造者の声
- 休眠復活:継続者の声、商品利用を再開した方の声
04. どんなオファー(特典)が適切か
続いて考えるべきが、オファー(特典)です。割引やポイント還元をオファーにしているのをよく見かけますが、そうしたオファーは利益率を圧迫するだけで、LTVを健全な形で高めることはできません。そこで重要になってくるのが、お客様のエンゲージメントを高めるオファー設計です。
特にロイヤリティが高い継続顧客に対しては、継続利用のお礼状とあわせてサプライズでプチギフトを送ることで、よりお客様との関係構築に繋げていくことが可能です。
- 新規顧客(1回目購入):初回送料無料、初回限定〇〇%OFF、返品交換無料保証
- 継続顧客(2回以上購入):サプライズプレゼント、プチギフト
- 休眠復活:復活応援割引クーポン、限定〇〇%OFF
05. どのタイミングが適切か
最後に考えるべきポイントが、コミュニケーションのタイミングです。たとえば効果実感を得られる商品であれば、効果を感じた、または感じる手前でのコミュニケーションが必要です。また、効果実感のない商品であれば、定期的な利用促進のための啓蒙コミュニケーションが必要で、自社の商品やターゲットにあわせたタイミングをしっかりと見極めることが求められます。
そして、上述の通り商品によって効果実感を得られるのが数日後なのか、1ヶ月後なのかは異なります。そのため、競合他社の展開するCRM施策をそのまま同じ内容、同じタイミングで自社でも展開することは避けるべきでしょう。
- 商品購入1日後:購入のお礼と担当者のご紹介
- 商品購入3日後(商品到着タイミング):商品、同梱冊子などの説明コンテンツ(開封促進)。商品の使い方コンテンツ
- 商品購入30日以降:商品啓蒙コンテンツ、継続利用者の声、アウトバウンドでのアンケート
なお、アップセル、クロスセルに繋げようと、高頻度でコミュニケーションを取ってしまいがちですが、それではお客様に嫌がられてしまい、LTV向上は見込めません。
購入から最初の1ヶ月はF2引き上げを行わず、効果実感を感じるタイミングの前後で「変化はありませんか?」といった問いかけや、商品を正しく使っていただくための情報提供を行い、まずは商品継続利用の必要性を納得いただくコミュニケーションが大切です。
おわりに
今回、CRM施策を展開していく上でのコミュニケーション設計において、抑えるべき5つのポイントをご紹介させていただきました。
- ターゲット
- チャネル
- コンテンツ
- オファー
- タイミング
そして、これらの5つを考える上で大切なのは、カスタマージャーニーを設計し、各フェーズでのお客様の心理状況を理解することです。
商品購入前にどういった不安を抱えていたのか、商品利用開始後のお客様の心情はどう変化するか、そうした不安や心情に対してどういったコンテンツ、オファーが最適なのかなど、カスタマージャーニーがあることで、より体系的にどうコミュニケーションすべきかが見えてくると思います。
また、上述の通りCRMは販促活動ではないため、どの施策が良かったか悪かったのかはすぐにはわかりにくいでしょう。そのため、CRMは短期的な効果を見るのではなく、長期的に効果検証をしていくことが必要で、アンケートなどで顧客満足度の推移で測ったり、LTVの変化で評価したりもします。
MOLTSでは、こうしたCRMのコミュニケーション設計や施策の評価についてのご相談も受けておりますので、お気軽にご連絡ください。
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