BtoBのオウンドメディアを立ち上げる際の注意点ってなんですか?

BtoBのオウンドメディアを立ち上げる際の注意点ってなんですか?

「マーケティング一問一答」では、事業責任者やマーケターにとってよくある悩みや課題をその道のプロに投げかけ、成果を出すためのアドバイスとして発信しています。 

今回は、オウンドメディア領域で8年間成果を出し続けているメディアコンサルタントの寺倉そめひこが、BtoB領域のオウンドメディア立ち上げについて回答します。

寺倉そめひこ Media Consultant / Business Producer


1987年、京都生まれ。藍染職人から2013年株式会社LIGに入社。同社でメディア事業部部長、人事部長を経て、2015年9月からは執行役員を務める。2016年3月にデジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立し、独立。オウンドメディア、コンテンツマーケティングのアドバイザリー、インハウス化支援、運用代行を軸にし、事業開発、営業組織教育、組織開発など幅広く支援の幅を広げ、累計50社以上の事業成長に貢献する。

▼BtoBオウンドメディアに関わった事例
「0から年間数万件の法人リードを生み出す組織へ」ネオキャリアがインバウンド文化へ変化していく5年の歴史
半年間で「リード数10倍以上、受注率3倍増」と、爆速でBtoBベンダーのマーケ施策が成長したワケ

Q:BtoBのオウンドメディアを立ち上げる際の注意点ってなんですか?

A:オウンドメディアはあくまで施策のひとつ。他の施策や事業の特徴をみて、本当に必要かどうかを適切にジャッジすること。そして、やると決めたら勝つまでやることです。

そもそもオウンドメディアが必要か、適切にジャッジせよ

僕はオウンドメディア領域に約8年間携わってきましたが、運用中のオウンドメディアの改善だけでなく、「オウンドメディアを立ち上げたい」といったご相談はまだまだ多くいただきます。

  • 自社サービスの契約数を増やしたい(そのためのリードが欲しい)
  • 自社のブランディングに繋げたい
  • 採用を増やしたい

……など、企業によって理由は多岐に渡りますが、オウンドメディアを立ち上げる際にまず重要なのが、「どうやるか」以前に、「やるかやらないか」のジャッジをすることとりわけBtoBにおいてはこの「やるかやらないか」のジャッジが極めて重要です。

というのも、BtoCの場合はオウンドメディアを運用していく中で、途中で目的自体を変えてしまうというのも行いやすいのですが、BtoBではターゲットが少ないため方向転換が非常に難しいからです。

企業というものは利益があって成り立ちます。だからオウンドメディアを立ち上げる目的は千差万別にせよ、最終的な事業貢献はマストだと我々は考えています。こうした事業の事業収益最大化のためにオウンドメディアを行う場合は、デジタル・アナログ関係なく、様々な施策がある中で、なぜオウンドメディアなのか?の強い理由が必要になります。

こう並べてみただけでも、オウンドメディアは数多くの施策の一部でしかないことは自明と思います。もちろんオウンドメディアで成果を出している企業も多いですが、同時に失敗しているケースも少なくありません。

オウンドメディアって、初期は「投資」です。広告と比較するとわかりやすいと思いますが、一朝一夕で効果が検証できないからこそ、短期的なアイディアで終わらせず、中長期的に勝ち切るまでやっていく根気強さが求められます。しっかりとした戦略や、その実行部隊がいないなら、もはや「負ける可能性が高いギャンブル」と一緒。しかし事業としてやるなら、そんな地に足着いてない賭け事はご法度ですよね。

だからまずは全体を設計してみて可能性があればGO。特にデジタルサービス、全国展開化、市場があることはもちろん、またビジネス的にも、他の施策的にも展開する必然性があればとことん攻めればいい。逆に、アナログサービス、地域展開、市場が狭いなら、BtoBでのオウンドメディアを展開するのは考えた方がいい。投資対効果があっていないパターンも正直たくさん見てきました。

ここから先は、具体的にどう設計すれば良いのかお伝えしますので、そもそも自社にオウンドメディアが必要なのか徹底して考えていただきたいです。

全体の設計は、事業収益最大化のためのフローから考えること 

オウンドメディアの全体設計で最も重要なのは「成果を明確にする」ことだと考えています。

とりあえず立ち上げてから考える積み上げ式は、諦めずに他をひっぱれる圧倒的な感覚のいいリーダーか、感情を揺さぶれるクリエイティブを作れる優秀なクリエイターがいなければほぼ失敗します。

では、どのようにその成果を明確化するのかというと、オウンドメディアで事業収益最大化させるまでのフローを可視化します。

オウンドメディアに関わる多くの方が見がちな指標に「リード」がありますが、これ、実はとてもトリッキーだと思っています。なぜならリード獲得だけではどう収益化に結びつけるか不明瞭だから。リード獲得して、そのリードどうするの?がわからないと、オウンドメディアに投資しても、企業利益には繋がらないですよね。だからリードはあくまでも中間指標として、どんなリードがどれくらい必要なのかは検討する必要があります。

現実的にリードを取れるのかも別議論です。

例えばデジタルサービス、全国展開、市場が大きい場合は、オウンドメディア領域では検索流入が結構有効だったりします。反対にアナログサービス、地域展開、市場が狭いなどであれば、そもそもの検索ボリュームが少ないので、検索を狙って戦っても勝つことができない。

他の施策、事業戦略とも合わせていく必要がある場合もあります。CMを打って指名クエリから刈り取る場合は、どうエンゲージメントを高めるのかを考えたオウンドメディアが事業収益の最大化になることもしばしばあります。

ちなみにMOLTSの場合は、インバウンドの引き合い獲得に重きを置いています。デジタルマーケティングを軸とし各分野に精通した経験豊富な実績を持つプロフェッショナルメンバーのみで構成されているため、個人にどう引き合いが入るようにするかが重要。なので、課題が生まれた時に「覚えてもらう」「覚え続けてもらう」ことで相談を受けられるようどう情報発信をするのか、が重要指標になっています。

ただ、逆にもっと規模が大きい企業だと、引き合いなんて言ってられず、とにかくどんどん湯水のように案件が湧き上がってくる状況を作ることが重要で。そのために、何をすべきかを考えるべき。繰り返しますがこのように、自社がどのようなリードをどれくらい必要としているのかによっても、あり方が違うというのは見えてきます。

オウンドメディアで成果を出すには、事業部との連携が必須

最後に、オウンドメディア立ち上げ前に検討すべきが、営業やカスタマーサクセス(CS)といった事業部側との連携です。

分かりやすく言うなら、リードの数が多くても受注率が圧倒的に低かったら、何かを見直す必要があります。本来は、どのようなリードや成果が欲しいのかから考えることが重要ですが、そうなっていないケースも多くあります。そういった際に何を変えるべきかというと、その答えは営業、CS、また事業戦略に答えがあるケースが大半です。

顧客とのコミュニケーションを変えたり、お問合せフォームを見直したりなど。またCSとの連携から、ユーザーにとって必要なコンテンツが見えてくることもあるため、事業収益最大化だけなく、コンテンツ設計のためにも必須です。

成果が決まれば柔軟に運用しながら、勝つまでやる

ここまで、オウンドメディアを立ち上げる難しさについて語ってきましたが、「競合が強いから」という理由で勝てないと決めつけているのであれば、それはもったいないです。

実際に僕が支援してきた中でも、年間運用コストが億を超えるようなサイズはほとんどなく、素人が0から立ち上げたオウンドメディアや運用がうまくいっていないメディアでジャイアントキリングを起こしたこともありました。

成果が定まったら、あとは勝つまでやりきるだけです。何度も言うように、広告との比較をとるとわかりやすいですが、即効性のないオウンドメディアは確実にロングランになります。

だから、成果が出るまでのストーリーラインに乗っているかどうか、正しく育っているかどうかを常に観測して、柔軟に運用していく必要があります。

著者情報

TAISHI TERAKURA

寺倉 大史

Media Consultant / Business Producer

業界歴9年以上。事業開発、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。藍染職人、株式会社LIGを経て、メディアコンサルタントへ。

担当領域の
サービス

  • コミュニケーションプランニング
  • BtoBマーケティング
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