部署ごとにWeb施策やKPIが異なる場合、全体のマーケティング評価はどうすべきですか?
デジタルマーケティングカンパニーMOLTSでは、事業責任者やマーケターにとってよくある悩みや課題をその道のプロに投げかけ、成果を出すためのアドバイスとして発信しています。
今回は、MOLTSでデータ分析マーケティングストラテジスト・データアナリストを務める西 正広が回答します。
1983年生まれ。大手不動産賃貸事業会社におけるWebディレクション・デジタルマーケティング業務後、インターネット専業広告代理店・株式会社電通デジタルにてアクセス解析・DMP・レコメンデーション・BIツールなどの導入・活用支援に取り組む。 2019年7月よりMOLTSに参画し、2020年より子会社KASCADEを設立し、取締役に就任。データに基づくサービス改善、ビッグデータ活用のコンサルティング、インハウス運用、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援する。
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Q:部署ごとで異なるWeb施策を手がけているため、別々のKPIで報告されます。全体のマーケティング評価はどうすべきですか?
A:部署・事業間の繋がりをデータで証明するために、KGIを頂点としたKPIツリーを作り、各KPIがどのような意味を持つかお互いに理解することが重要です。
全体評価を正しく行うKGI・KPIは設定されているか
そもそも論ですが、部署・事業を跨いだ全体評価に関するご質問をいただくということは、KGI・KPIを正しく設定できていない可能性が高いと考えられます。
本来であれば、最終的な事業目的とKGIがあって、それを達成するための中間指標としてKPIがあり、それを実行するために施策を走らせるというのが正しいあり方でしょう。
つまり理想は、KGIを頂点とした上記ツリーのように
- KGIの評価(全体)
- KPIの達成度(全体あるいは事業部・部門別)
- 施策の達成度(事業部・部門別)
と段階に分け、各KPIがどのような意味や役割を持つかお互いに理解した上で、全体を良くしていくためのディスカッションができるようにすることです。
しかし上記のような全体の繋がりが見えていないことも往々にしてあります。「担当者が得意だから」「トレンドだから」「部長がやろうと言ったから」といった事業の本質とはなんら関係のないきっかけで施策が選定され、結果的に各部門が“施策ありき”でバラバラに動いてしまいがちになります。
そうすると、それぞれが施策を走らせることはできても、全体評価をしにくくなってしまう訳です。ですので、まずは「事業として正しくKGIが設定されているのか」「KGIに繋がるように正しくKPIが設定されているのか」を精査する必要があります。
正確な評価のために徹底すべきは「現状分析」
各部門のKPIとKGIの繋がりが見えなくなってしまっているのであれば、まずは現状分析をしっかりと行ない、課題の場所を特定しましょう。
例えば、以下のように複数の観点から課題を整理します。
1. なぜその施策を行っているのか
各事業・部門が行っている施策の目的をヒアリングします。施策の目的が曖昧になってしまっている場合や、「トレンドだから」などの理由で施策遂行自体が目的化してしまっている場合は、そもそも施策継続の必要性を検討し直すべきです。
2. 目的達成のために正しいKPIを設けられているか
次に、目的の達成度を測るために何をKPIとしているかまとめていきます。
ここで、実際の目的とKPIに乖離が見られる場合もあります。例えば、ブランド認知を高める目的でInstagramを行なっているが、KPIに「商品購入数」をおいている場合など乖離があると言えるでしょう。認知目的であれば、購入より手前の「閲覧(Impression)」や「いいね数」といったアクションを指標におく方が現実的だからです。
3. 施策によってKPIが改善されているか
施策がKPI改善に貢献しているか評価しましょう。効果が出ていない場合は原因を探し、改善に寄与しそうなアイデアがないか、他の施策へ投資すべきか等を検討しましょう。
なお目的やKPIの設定が正しくても、施策によって現状が改善されていなければ、事業・部門間の共通測定・評価を行う前に具体的な戦術を見直すべき場合もあります。
4. KPI同士の繋がり、KGIとKPIの繋がりは適切か
最後に、それぞれの部門ごとのKPI同士の繋がり、KGIと各KPIの繋がりを見ていきます。KGIを達成するために設けたKPIに漏れや重複がないか、本当にKPI全てを達成した時にKGIが達成できるかを判断します。
データはKPIを達成できていない犯人探しをするための数字ではない
今までご説明したステップで現状把握をした時点で、もしそれぞれの部門でKPIの追い方や考え方が不明確になっている場合や、KGIとの繋がりを見ることができていない場合は、トップダウンでKPIを再考しましょう。
例として、ECサイトで売上高をKGIとすると、サイト流入数・CVR・1回あたりの購入数を掛け合わせて計算できるためそれぞれをKPIとおくことができます。さらに、サイト流入数であれば広告経由・自然検索経由(SEO)・SNS経由に分けることができますので、担当部門ごとにそれぞれの流入数をKPIにおけるでしょう。また、広告の場合は費用対効果を考慮してCTRやCPCといった指標も共に追いかけます。
このように各KPIとKGIの繋がりを可視化することによって、各部門がKPIを追う理由や、自部門の施策が全体に与えうる影響がわかるようになります。
ただし注意したいのは、データはあくまでも各事業部・部門が協力してKGIを達成するために見る指標だということです。
KPIとKGIの繋がりを可視化すると、各部門で「流入数は達成できているのに、CVRが悪い」などといった分断が起こったり、成果が出ていない犯人探しをしてしまったりして、むしろ各部門の連携がしづらくなるということが往々にしてあります。こういった認識違いが起こらないよう、トップダウンで認識統一をする必要があります。
協力するために、あえて自部門だけではコントロールできない指標をおくのもあり
このように全体のKGIやKPIを見ていくときに重要なのは、ただ数字を見るだけではなく、数字の間にどのようなアクションやコミュニケーションが隠れているのかを確認して、協力していくことです。
こういった部門ごとの協力体制を築くための手段として、他にも「あえて自部門ではコントロールできないような指標をおく」という方法があります。
例えば、マーケティング部門ではリード数だけではなく、インサイドセールスの「案件化数」も指標として持っておく。すると、マーケティング部門だけではリードの案件化までをコントロールできないため、案件化率を高めるために、インサイドセールスが求めているリードがどのようなものなのかをコミュニケーションする機会ができます。そして、リード数だけを追うのではなく、インサイドセールスが案件化できるようなリードを創出するためには、どういうマーケティング活動が必要なのかを考えられるようになります。
施策ごとの評価は、貢献度ではなく成長率でのジャッジが好ましい
最後に、それぞれの部門が行なっている様々な施策を平等に評価するためには、ある地点におけるKGIへの貢献度を相対評価するのではなく、施策単体のビフォーアフター、つまり成長率で評価しましょう。なぜなら、施策によって効果の出方やタイミングが異なるからです。
例えば、セッション数を増やすための施策として広告運用やSEOなどがありますが、全ての施策において同じようにセッション数が増えるわけではありません。SEOの場合、即効性はないものの、正しく施策を続けていけば徐々に効果が右肩上がりになり、日々コンスタントな流入を見込めます。一方、広告運用の場合は配信が行われたタイミングで一時的にセッション数が上がることは容易に考えられるため、正しい評価とは言えません。
その他、KGIに対して特定の施策の貢献度や成長率が著しく悪いのであれば、評価を下げるのではなく、そもそもその施策を行う是非や予算配分を検討し直す必要があるケースもあります。
全体の評価が適切に行われれば、より一層協力体制を組みやすくなり、事業のKGIを達成しやすくなるでしょう。KGI・KPI・各施策の繋がりを見直して、適正な効果測定と評価を行いましょう。
もしも現在、部署ごとのKPI設計にお困りでしたら私たちMOLTSへ相談してみませんか。デジタルマーケティングに精通したプロフェッショナルたちが、貴社に最適なご提案をさせていただきます。
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