積極的な露出をせず、年600件のお問い合わせを獲得するマーケティング会社7つの施策
デジタルマーケティングの支援を行う「MOLTS」では、おかげさまでお問い合わせ(資料DLなどを除く、純粋な案件相談のみ)のペースは年々右肩上がりとなっており、いまでは月平均50件を超えるようになってきました。
この数字が多いのか少ないのかはさておき、我々はまだ20人弱の規模でしかなく、プロジェクトの平均継続期間としては約1年間と比較的長期で続く案件が多いため、お問い合わせの量としては十分(やや過多)。
ただ、お問い合わせを獲得するために、広告を活用したり、露出を増やしたり、SEOに注力したりなど、いわゆる一般的なWebマーケティングに積極的に取り組んでいるというわけでもなく。
それでも年間600件ペースのお問い合わせを獲得することができるのは何故なのかー。
今回はMOLTSが実践しているお問い合わせ獲得の基本的な考え方から、具体的に取り組んでいる7つの施策まで赤裸々にご紹介いたします。
つくるべきはジャズ型組織。多種多様なメンバー同士のセッションで最高の成果を出していく
そもそもMOLTSとはどういった会社なのかというと、私たちは特定の領域特化型のエージェンシーではありません。オウンドメディアや広告運用、解析、BtoBマーケティング、データ活用、クリエイティブなど、様々な領域のプロフェッショナルが集まり、特定の手段にとらわれず、様々な角度から成果最大化のためにアプローチするデジタルマーケティングカンパニーです。
言わば指揮者がいるオーケストラ型ではなく、皆が並列でアイコンタクトでセッションするようなジャズ型の組織を理想としていて、様々な得意領域を持ったプレイヤーたちが、プロジェクトのミッションのもと、自らが考える最高のアウトプットを掛け合わせていける組織をつくっています。
たとえば、以前にテレワークに関する様々なソリューションを提供する株式会社ブイキューブさまをご支援させていただいた際は、データ分析の領域でまず西が入ったのですが、その後複数にまたがるサイト全体の戦略設計が必要だということで筆者である寺倉が加わります。
私が全体設計をした後はプロジェクトから離れ、実際に設計した戦略を実行していく上でのオウンドメディア領域を永田、コンテンツ制作では青波、さらにその後は広告領域で松尾、組織のチューニングに山崎が加わっていくなど、各領域のプロフェッショナルが集結して、プロジェクトのミッションだけお互いに握り合い、個々の領域に責任を持って計6名以上のメンバー(+外部パートナー)が推し進めていきました。
▼参考
3半年間で「リード数10倍以上、受注率3倍増」と、爆速でBtoBベンダーのマーケ施策が成長したワケ
もちろんメンバー1人のみで完結する場合もありますが、プロジェクトのミッションに対して、必要に応じて様々な領域のメンバーが集結し、臨機応変にプロジェクトを進めていくのがMOLTSの特徴です。
そういう組織なので、専任の営業メンバーはいません。それはいまの組織規模では必要ないということはもちろん、最大限の成果を提供してクライアントの課題を解決するためには、柔軟に対応できる “余白” が必要だからです。
仮に営業メンバーを置いた場合、受注時の要件でプロジェクトは進んでしまい、ほかのプロフェッショナルな知見が入りづらくなるといった、ある意味セクショナリズム的な不具合が発生してしまいかねません。
提供するものが決まった商材やサービスではなく、手段にとらわれずにクライアントの課題解決を行うことがMOLTSの提供価値ですから、お問い合わせや社内からの引き合いに対して、各領域のプロフェッショナルなメンバーが柔軟に反応し、商談や提案、そして収支管理含めてプロジェクトに参加できるような体制で行っています。
そして、こうした体制を維持するために、案件のお問い合わせの入り口にはこだわっています。
サイトからのお問い合わせでなく、知人から相談されることに注力する
営業不在のスキームを成り立たせるための根本思考としてあるのが、「相談してもらえるポジションに立つ」ということです。
MOLTSではサイト経由での新規のお問い合わせを約1/3ほどいただきますが、知り合い、または知り合いの知り合いなど、身内からの相談や紹介という形で生まれるリードを重要視しており、約2/3がそれにあたります。
なぜなら営業が不在なので、各メンバーがプレイヤーとしても活躍する以上、提案や説明といった営業活動に割く時間を短縮する必要があります。その場合、データ上、サイト経由のお問い合わせより、深く知ってくれている方からの直接の相談や紹介の方が受注率が高く、営業コストがかからないため、我々のあり方には直接的な相談が適していると考えています。
例えば、Facebookのメッセンジャー2〜3往復で案件を受注することもありますし、提案資料をつくることがないケースが大半です。最近まで会社概要すらつくっていませんでした(これはずぼらでした、すごく反省)。
誤解がないように補足しておきますと、サイト経由のお問い合わせを軽視したり否定しているわけではなく。お問い合わせを頂けること自体がとても有難いことですので全力で対応させていただきますが、あくまで施策としてアプローチするべきコアな対象を知人に置くという意味です。
相談してもらうポジショニングで大事なのは「脳内SEOで1位を獲得し続ける」こと
相談してもらうためのポジショニングを行うためにMOLTSが大切にしているのが、繋がりのない人に情報を発信するに注力せず、知人の脳内SEOで1位を獲得し続けることにコミットすることです。
何か課題が発生したときに、人は頼れる企業や人を頭の中でまず頭の中で思い浮かべます。その際に、真っ先に相談したくなるポジションをつくることを「脳内SEOで1位を獲得する」と表現しています(SEOも生業にしているのでしっくりくる言葉を使っています)。
そして脳内SEOで1位を取るために必要なことは、これまでの経験上、素晴らしい体験を提供することが8割で、残りは継続した認知獲得のためのPR活動から始まると思っています。
つまり、目の前のプロジェクトで、MOLTSに依頼したらプロジェクトで成果が出たという素晴らしい体験を提供することが最も重要であり、オンラインでのコミュニケーションは「知人に覚え続けてもらうために発信するサブ的な役割」として捉えています。
目の前の成果こそが紹介に繋がると言える根拠
2018年10月から2021年9月の3年で関わった、半年以上プロジェクトが継続されたクライアント担当者(恐らく)全員に対して、以下のようなアンケートを実施しました。(回答者数= 141名)
1.成果向上率計測:MOLTSがプロジェクトに関わって、求めていた事業・マーケティング成果は向上したましたか(しそうですか)?
はい:91%
どちらとも言えない:4%
いいえ:5%
2.紹介想起率計測:MOLTSが関わった領域において、知人から相談があった場合、MOLTSを紹介したいと思いますか?
はい:89%
どちらとも言えない:9%
いいえ:3%
どちらも「はい」と100%と言ってもらえていないのは我々が見直すべき部分ではありますが、成果向上率と、紹介想起率はニアリーな結果になっています。この状況をつくり続けていると、クライアント側で課題が生まれたときや、クライアントに同様の課題の相談が寄せられた際に、自然と相談や紹介が入る状態になっていきます。
つまり、我々のスタンスでもっとお問い合わせ数を増やしたい場合は、目の前のプロジェクトでさらなる成果を出すこと、また関わる人の数を増やすこと大切になっていきます。
一人じゃなく、全員が体験を提供することが重要
なお、MOLTSは相談の窓口がひとりに依存せず、全員に相談がくる状況を理想としています。何故なら相談が来る人が固定化されてしまうと、その人の肩書きはどうであれ、収益を作る起点として役割が固定化されていくからです。また、その人が得意とする領域の案件が増えてしまうからです。
我々が作りたい組織はそうでなく、それぞれがクライアントに成果を提供し、脳内SEOで1位を獲得し、皆が得意とする領域での相談や紹介が増えることで、様々なセッションが生まれる組織です。
なので、誰かが仕事をとるために頑張るのではなく、皆に相談や紹介が入るようにすることは非常に重要な要素。今現在、フロントに立ち、1年以上在籍しているメンバーは全員に相談が寄せられるようになっています。
MOLTSが実践するリード獲得のための具体的な7つの施策
ここまでで、すでにMOLTSの考えるお問い合わせ獲得戦略は単に露出云々の話ではないと感じていただけたかと思います。それでは、「脳内SEOで1位を獲得し続ける」という戦略のもと、具体的にMOLTSが実践するリード獲得のための施策をご紹介します。
なお、施策の方向性としては大きく2軸、
- A.クライアントとの成功体験をつくるための体制作り
- B. 知人とのオンラインコミュニケーション施策
に分けて考えており、Aの「クライアントとの成功体験をつくるための体制作り」として前半5つ、そして後半2つがBの「知人とのオンラインコミュニケーション施策」として、計7つの具体的な施策をご紹介します。
01. プレイヤー個々が独立して動くための会計システムにする
それぞれの案件で成果を出すには、案件を担当するメンバー個々が頭を使い、どうすれば成果が最大化されるかを考えて行動することが重要です。それは、どういった施策を実施するかだけでなく、案件そのものの設計から担当メンバーが考える必要があることを意味します。
そこでMOLTSでは独立採算制を設けており、メンバーはみな「売上 – 売上原価 = 売上総利益 」の管理、組み立てを自身で行なっています。
独立採算制は言わば、マーケティング従事者としての基礎をつくるものだと思っています。何もしなくても案件が来るということはありませんから、継続的に売上をつくっていくためには自身をプロダクトとして捉え、目の前の案件でどう動くべきか、また新規案件を獲得するためにどうすべきかを考え、行動することが必至のアクションとなっていきます。
そして、メンバー個々にとっては安定した収支の組み立てに繋げていくためにも、継続受注や新規紹介が生まれるよう、クライアントの成果体験に繋げるための価値を発揮するという意識が自然と高まっていきます。
02. Result Drivenなカルチャーをつくる
続いてが我々が大切にしている言葉である「Result Driven」、すなわち成果にこだわるカルチャーをつくることです。これは、01で紹介した仕組みがあれば基本的に成り立つものではありますが、あえて言語化したり、風土を作ること、発信することも重要だと思っています。
成果にこだわるカルチャーを実際にクライアントに体験してもらうことで脳内SEOで1位を獲得することはもちろん、社外に発信していくことで、相談される際の期待値も変わります。期待値が変われば、社内の認識も変わり、カルチャーの醸成も加速していき、我々が求めている相談が増えていきます。
このサイクルを回し続けることが、我々のようなエージェンシーにおけるカルチャー醸成にとって重要だと思っています。
結果として、現在では、施策を任されることが多い現場担当者からでなく、数字責任を負う経営者、事業責任者、マーケティング責任者からの相談が約90%になっており、成果を期待されている状態になってきていると感じています。
03. 「パッケージ提供」「同情」「値決め固定」はしない
MOLTSでは、各人がよりマーケティング従事者として育つ、成長するように、3つの禁止事項を設けています。それが「パッケージ提供禁止」「同情禁止」「値決め固定禁止」の3つです。
まずパッケージ提供禁止。成果を提供しようと思ったら、クライアントの事業モデルはもちろん、業界、またクライアントの企業カルチャーさえも把握した上で展開した方が成果は出やすいです。企業や自身が作ったパッケージを提供するのでなく、常に自分自身をプロダクトとしておいて、何を提供すれば成果に近づくのかを考えるようにするため、提供内容のパッケージ化を禁止しています。
次に、同情禁止。人は基本優しいので、リソースが空いている人がいれば自然とその人に案件を渡そうとする人がでてきます。ただ、それは成果獲得とは無縁の話であり、社内外問わず最高のメンバーでプロジェクトに挑むことがMOLTSとしての価値です。むしろ、リソースが空いている人は、その事実に対してどうアクションするのかを考え、実行することが重要であり、育っていきます。情で仕事を渡してしまうと、その人を甘やかしていることにしかならないし、何より成果が最大化するための打ち手ではない、だから同情は一切NGとしています。
最後に、値決め固定の禁止。マーケティングを行う上で値決めは重要な要素です。会社として人日やプロジェクト単位の値決めを固定化させて、その重要な要素を考えさせる余白を失わせるのは、我々のようなマーケティング会社からすると学びの機会損失だと考えています。「クライアントに価値を提供するなら、自分の値決めくらい自分ですべき」との思想から、固定化を禁止し、都度柔軟に値決めをするようにしています。
些細なことですが、基礎体力を高めないとスポーツ選手として活躍できないのと同様、全員がある一定ラインでマーケティング従事者としての基礎体力を身につけるために、禁止事項として上記を置いています。
04. MNA(Make the Next Action)を徹底する
様々なご相談をいただく中で、支援領域や費用感、またリソースなどの問題から、時にはお断りが発生してしまうことはしばしばあります。当然ながら、そこで終わったら機会損失でしかないですし、何よりご相談いただいたお客様にとっても課題が解決できずにお困りの状態になります。
そこでMOLTSが徹底しているのがMNA(Make the Next Action)で、お断りをする場合でも、顧客の次のアクションを提示することを大切にしています。たとえばMOLTSのパートナー企業を紹介したり、その領域に知見のある方を紹介したり、またときには依頼先を見つける方法をアドバイスして、お断りをします。
そうすることで「とりあえずMOLTSに相談すれば、MOLTSが解決できなくても、解決手段を教えてもらえる」と思っていただけるため、また別の機会のご相談に繋がっていきます。
05. 社内リレーション構築のための情報開示を行う
冒頭でもお伝えしたとおり、MOLTSでは様々なメンバー同士のセッションで最高のアウトプットを出していくことを重視しています。しかし、仮にMOLTSのメンバー同士がお互いにどういったことが得意で、何ができるのかといったことを理解していなければ、理想とするセッションは生まれないです。
そこで常時どういった引き合いがあるのか、どういった案件を受注したのかなど、すべての案件情報が垂れ流しになるグループチャットをつくっています。誰が、どのような案件を得意としているのかを大体把握していけるというわけです。
そして新規の引き合いがあったときにも、「こういった提案もできるね」と気づいたメンバーが声がけする機会が生まれたり、それぞれが把握できているからこそ「この案件一緒にやりませんか」といった声がけが生まれたり、知見がある人からの助言が飛んだり、最終的にはクライアントに対しても提案の幅を広げていくことができます。
こういった社内カルチャーの醸成によってジャズのセッション形式でプロジェクトを進めていくからこそ、様々な角度から成果最大化に繋がっていきます。
06. 相談確度を高める事例記事の蓄積
続いて、オンラインコミュニケーション施策として取り組んでいることのひとつが、事例記事の蓄積です。
MOLTSの既存のクライアントからご紹介を受けたお客様が「MOLTSってどんな会社なんだろう」と調べたときに、MOLTSがどういったことができるかをWeb上でわかるようにすべきです。
しかし、ただ「オウンドメディアマーケティングができます」と発信していても、具体的に何ができるかがイメージしづらいですから、事例コンテンツを通じて、クライアントのどういった課題に、どう取り組み、どういった成果が生まれたのかを発信することを心がけています。
07. Facebookでの情報発信
最後にご紹介するのが、Facebookでの情報発信についてです。知人の脳内SEOで1位を取ることだけを考えれば、多くの人に情報を届けるよりも、知人に対してアプローチすることに注力するだけで十分です。
ターゲットを知人に置いた時、今現時点だと、Twitterでなく、知人との繋がりが多いFacebookで適切にリーチすることの方が役割として適切だと思い、Facebookのみアカウントをつくって展開しています。
僕ららしいあり方を模索して
いかがでしたでしょうか。例えば「オウンドメディア コンサル」「オウンドメディア 運用代行」などで上位化させたりなど、いくつかオンライン上での取り組みを過去に行っていたことはありましたが、結局僕らにアジャストするのは今のあり方だなと思っています。
経営、マーケティングのスタイルは様々にあっていいものだと私は思っていますので、あくまで、MOLTSが行なっていることを紹介しました。
また、このモデル、経営スタイル、事業のまま成立するのは、感覚として30〜50名規模までが限界で、規模拡大をエージェンシー事業だけで行う場合は、何かを変えないといけない状況になりそうだと感じています。
ただ、オンラインコミュニケーションだけがマーケティング活動だと捉えられることはまだまだ多く。そういった方に、1つの例として、お問い合わせを獲得する施策はオンライン上だけでなく、体制やカルチャーを変えるだけでも成り立つ側面もあることが伝われば嬉しく思います。(仕事が行いやすくなるので)
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