クライアントから「業者扱い」されないために

最近、他の支援会社ではたらく後輩たちから「クライアントから “業者扱い” されてしまう」という相談をたびたび受けました。

私も支援会社歴が長いので、「業者扱いされたくない」という気持ちはよくわかります。クライアントが上・支援会社が下というコミュニケーションが続けば、担当者はどんどん疲弊してしまう。しかも、問題はそれだけじゃありません。

業者扱いされると、支援会社もつい「指示されたことだけをやればいい」モードに入りがちです。いつしかクライアントの「御用聞き」と化してしまう。そうなれば、期待以上の大きな成果なんて生まれません。それに「御用聞き」ならいくらでも替えがきくので、取引も長くは続かない。このような、クライアントも支援会社もハッピーじゃない案件をいくつか見てきました。

THE MOLTSという支援会社でクライアントの成果に向き合ってきた自分の経験上、「クライアントと支援会社が協働し、物事を成し遂げていく本当の意味でのパートナーになること」は、クライアントの成果を生み出すために欠かせない要素の一つだと思っています。私が「お客様」ではなく必ず「クライアント」と呼ぶのも、両社に上下関係はなく「同じチームの仲間であること」を意識づけるために意図してやっていることです。

ということで当記事では、後輩たちのお悩みに対する回答も兼ねて、クライアントとパートナー関係を築くために私がふだんから心がけていることを紹介します。

パートナーになるために、絶対に欠かせないもの

前提として、自分のノウハウや実力が不足していてクライアントにまったく価値を提供できていないのなら、それは「業者扱い」されても仕方ありません。自分の実力を高めるしかない、の一択です。

ですが、仮に十分に価値提供できる実力が備わっていたとしても、クライアントと支援会社が同じ「ミッション」に向かっていなければ、「業者扱い」は生まれます

ここで言う「ミッション」とは、特定の期日までに成し遂げることです。

  • 3年間でメディア事業部の売上を3億円にする
  • 1年間でインバウンド経由の商談を100件創出する
  • 半年間で知人経由での受注を5件創出する など

たとえば、「半年間でリードを100件獲得する」というミッションを掲げたマーケティング部門があるとします。社内のリソース不足につき、「SEO記事の制作」を支援会社に依頼することになりました。このとき、支援会社のミッションはつい「依頼された記事を期日内に納品すること」「求められたキーワード1位をとること」などになりがちです。

一方で支援会社もひっくるめて「半年間でリードを100件獲得する」という同じミッションに立ち向かうチームになれていたとしたら、いったいどんなことが起きるでしょうか?……「もっとこんなキーワードを狙ったほうがいい」「そもそもコンテンツSEOより先に広告を強化したほうがいい」「組織のここを教育するために動こう」といった建設的な議論や行動が自然と生まれますよね

もちろん「クライアントから任された業務を遂行する」という仕事も重要。でも、もし業者扱いが嫌なのであれば、「役割からくる自分のミッションでなく、クライアントと同じミッションに向かって協働する”チーム”になること」は絶対に欠かせない。

そして、それができていれば誰も「業者扱い」などせず、自然とパートナーになっています。

だから私は、プロジェクト開始前に必ず「ミッション」を立てて、クライアントと認識をあわせるようにしてます。

クライアントの「やりたいこと」はあえて聞かない

プロジェクトメンバー全員が一つになれる最適な「ミッション」は、そのときの課題やリソース、会社のフェーズ、対峙する担当者のレイヤーによって異なります。だから「ミッション」設定はめちゃくちゃ難しい。私もいまだに模索してます。

ただ一つだけ、明確なコツがあります。

それは、クライアントの「やりたいこと」を鵜呑みにしないこと

THE MOLTSを創業してすぐのころ、前職でオウンドメディアを伸ばした経験があったせいか、「オウンドメディアの立ち上げを手伝ってほしい」という相談を多くもらいました。実績のない会社に声をかけてもらえるなんて、とてもありがたかった。だけど私は、半数以上のクライアントに「いま立ち上げるのは止めたほうがいい」と提案しました。これは、クライアントの成果創出を第一に考えた結果です。

たとえばオウンドメディアだと、こういう相談がよくあります。

▼A社の場合

やりたいこと:事業と採用のために自社のよさを伝えるブランディングメディアを作りたい

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ヒアリングで聞いた背景:インターネット上で「〇〇社はテレアポがしつこい」と散々叩かれていて、評判が悪い。しかし、アウトバウンド営業を辞めるわけにもいかない。だからこそコンテンツ発信を通じて、自分たちをもっとよく見せていきたい。

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私からの提案:血が流れているところにお化粧をしても、止血はできません。だからブランディングメディアの立ち上げよりもまず、インバウンドマーケティングをやりましょう。お問い合わせを増やし、テレアポを減らしても業績が上がる仕組みを作りましょう。仕組みが整ったら、ブランディングメディアを検討しましょう。

ミッション:1年間でインバウンドで商談を月100件創出する仕組みを構築する

▼B社の場合

やりたいこと:リード獲得のためにコンテンツSEOに取り組みたい

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ヒアリングで聞いた背景:新規事業を立ち上げたいが、キャッシュが足りない。キャッシュを稼ぐためには既存のBtoB支援事業の売上を伸ばす必要がある。会社は創業1年、社員は代表のみ。マーケティングにかけられる予算は月30万。既存事業は比較的ニッチな商材であり、高単価ではない。

 ↓

私からの提案:既存事業は仮に検索上位がとれたとしても月何十件もリードが発生する市場ではなく、くわえて現在の企業体力で毎月30万円の予算を捻出し続けるのは大変です。また、コスト以上にリソースも取られます。よってコンテンツSEOではなく、まずは周囲の知人からリファラルリードが生まれるように動きましょう。

ミッション:半年で知人経由での受注を5件創出する

あくまで私の場合における一例ですが、このようにクライアントの「やりたいこと」と、問題を解決するために「やるべきこと」は必ずしも一致しません。もちろん一致することもありますが、経験上、オウンドメディアの相談なら半分以上は一致しないものです。

だからクライアントにヒアリングをおこなうときは、「やりたいこと(要望)」ではなく、「なぜそれをやりたいと思ったのかと、関わる周辺の情報(背景)」をとことん深掘りします

どんな相談であれ、最終的な目的は「自社の売上利益を伸ばすこと」がほとんどです。このゴールに対して現在の予算やリソースはどうなっているのか、これまでどのような取り組みをしてきたのか、事業(経営)状況はどうか、組織カルチャーはどうかなど、どんな課題を感じているのかを深堀りすれば、やるべきことは自ずと見えてきます。

「パートナー」であることにこだわり続けた結果

クライアントの「やりたいこと」に対して、「弊社ならこの金額でお手伝いできます。これだけ実績もあるので安心してください」と提案するほうが正直めっちゃラクですし、受注率も高いものです。

ですが、クライアントに成果を提供することを第一に考えるなら、「やりたいこと」に応えるだけの提案はしません。たとえ超有名企業の予算が潤沢な案件であったとしても、安易に飛びつかない。成果を出すために「やるべきこと」を、私は提案します。

資金も顧客基盤もなかった創業当初は、この営業スタイルにしんどさを感じることもまぁありましたし、いまでも正直涙を流すことはあります。ですが、信じてやり続けていたら、クライアントの成果が生まれたのはもちろんのこと、信頼関係が築かれ、リピート案件や紹介案件が途切れないようになりました。

こうした一つひとつの提案や、一つひとつのプロジェクトへの向き合い方が「自社のブランディングにつながっている」と信じているし、カルチャーとして社内のメンバーにも伝播すると思っています。だからこそこれからも、「クライアントに成果を提供すること」「クライアントのパートナーになること」に私自身こだわり続けます。

共通のミッションを掲げることなしに、クライアントと本当の意味でパートナーになることはできません。だからもしあなたが「業者扱い」されたくないのなら、クライアントに求められていることでなく、クライアントが何を追いかけているのかを知り、共通のミッションを作ることから始めてみると、うまく物事が進むかもしれません。

著者情報

TAISHI TERAKURA

寺倉 大史

Media Consultant / Business Producer

業界歴9年以上。事業開発、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。藍染職人、株式会社LIGを経て、メディアコンサルタントへ。

担当領域の
サービス

  • コミュニケーションプランニング
  • BtoBマーケティング
  • コンテンツマーケティング
  • オウンドメディア
  • SEO
  • アクセス解析
  • WEBサイト制作

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