「業績目標」を掲げない理由
THE MOLTS(旧MOLTS)は、2016年の創業以来、売上や営業利益などの「業績目標」を掲げていません。
一時期、試験的に掲げてみたこともありましたが、結局取り下げました。
この話をすると、「業績目標を掲げないと不安じゃないか」「どうやって計画を立てるのか」「何を指標として追いかけるのか」など、さまざまなご質問をいただきます。
業績目標を掲げるかどうかは、どちらが「正解」というわけではなく、企業としての在り方が異なるだけだと思います。業績目標を掲げている企業は多くありますし、むしろ上場企業を含むすばらしい企業のほとんどは業績をベースに計画を立てています。
そのなかで、私たちはなぜそうしないのか。
これはあくまで「BtoB支援事業」に限っての話ですが、私たちの役割は「クライアントの事業成長」に貢献することです。だからこそ自社の業績目標を定めると、「矛盾」が生じてしまうことがあると感じています。
数字は「魔物」だから
私は以前、業績目標を “掲げる” BtoB支援会社に勤めていました。
「クライアントに貢献しよう」という気持ちで日々仕事に励んでいましたが、いざ「目標数字を達成できないかもしれない」とき、なんとか数字を上げるために「本来必要ではない商材でも提案する」「リソースが空いているメンバーを取り急ぎプロジェクトにアサインする」といった行動をとってしまったことがありました。
このように、数字は「魔物」です。目に見えるからこそ、追いかけたくなります。追い込まれるとつい、「クライアントの事業成長」より「自社の業績目標の達成」を優先してしまいがちです。
BtoB支援会社の経営者やマネージャーの役割の一つは、「クライアントの事業成長」と「自社の業績目標の達成」が矛盾しないようコントロールすることである、とも言えます。
しかし私たちはコントロールするのではなく、「そもそも根本から取っ払ったらいいじゃないの?」と考え、「業績目標を掲げない」という選択肢をとることにしました。
個々人がパフォーマンスを出し、クライアントの事業成長に貢献できた結果として、自社の業績が上がる。つまり業績は成果指標でなく、結果論として捉えるようにしています。
個々人のパフォーマンスを最大化させる仕組み
「業績は結果」と捉えると、逆に何に注力するのかを考えなければなりません。THE MOLTSではその解を「個々人のパフォーマンスを最大化させること」にしています。さまざまな仕組みを用意していますが、わかりやすい例は「個人独立採算制度」です。
簡単に説明すると、個人単位でP/Lを用意し、その組み立て責任を本人に与える仕組みです。なお、メンバー全員がフロントに立っているわけではなく、社内間で容易に発注しあえる環境(社内売買)も用意しています。
実際にやってみるとわかるのですが、「目先の利益」ばかり追い求めれば、収支はいっこうに安定しません。逆に「発注者への貢献」を第一に考え行動していれば、プロジェクトは継続し、新たな相談も生まれます。
また、入社後は「社内外からどうやって機会を創出するのか(案件を獲得するのか)」に向き合わざるを得ないため、改めてマーケティングを考えるきっかけにもなり、メンバー自身が強くなります。
詳細:3年以上続けている「全員が独立採算で成り立つ会社」の仕組み
ちなみに弊社には月に1回、プロジェクトの内容や成果を全社に共有する機会があります。
入社1年未満のメンバーによる発表からも、「どうしたらクライアントに成果を提供できるのか」というマインドでプロジェクトに向き合い、試行錯誤していることがおおいに伝わってきます。
こうしたTHE MOLTSらしいマインドが育まれているのはおそらく、個人独立採算など「仕組み」だけの影響ではありません。「企業理念に沿った行動ができているか自分自身で振り返ってください」と強制しているからでもありません。日々のコミュニケーションや意思決定のなかで、「カルチャー」が紡がれているからこそだと感じています。
「エピソード」がカルチャーを育む
たとえば先日、代表が全社に対して謝罪と改善案を表明していました。1プレイヤーとして、THE MOLTSの看板を背負っているにもかかわらず、とあるプロジェクトで成果を出せなかったことに対し、「本当に申し訳ない」と頭を下げていたのです。これは、代表自身がいかに真剣に成果へ向き合っているのかが感じられるエピソードだと思います。
また、最近入社したばかりのメンバーが先輩の商談に同席したとき、「THE MOLTSは自社の売上を優先しないんだ」と改めて感じた、と話していました。なんでもその先輩は、提案すれば受注できる状況だったにもかかわらず「最短で成果を出すためには我々ではなく、この企業とパートナーを組むほうがおすすめです。すぐに紹介します」と平然と話していたそうです。
私自身にも、こんな体験があります。
もう5年ほど前になりますが、とある予算の大きなプロジェクトで、クライアントからハラスメント的な発言を受けていました。この案件を逃せば売上が大きく下がってしまうこともあり、一部我慢しながら仕事を続けていたんです。しかしこの状況を知ったTHE MOLTSのメンバーは、起きている事実をヒアリングした上でハラスメントだと判断し、「すぐにでも取引を止めろ」「そのクライアントと本当に美味い酒が飲めるのか? 飲めないような仕事はするな」と言ってくれました。
このエピソードを通じて、私が優先すべきものはなにか、改めて学びました。
このように、ふだんからメンバーの言葉や行動に表れていること、強烈な体験があることで「カルチャー」は自然に紡がれるものだと考えています。
私たちの会社はまだまだですし、至らない点も多くあります。むしろ、足りていないことだらけです。
ですが、個々人のパフォーマンスを高めるための仕組みづくりと、紡がれるカルチャーを大切にする。この根底は、これからもずっと変わらないと思います。
すべては「美味い、酒を飲む。」ために
これらの取り組みはすべて、企業理念である「美味い、酒を飲む。」から生まれています。
そもそもTHE MOLTSでは、「どんな事業をやるのか」「誰と働くのか」よりも先に、「企業理念」が生まれました。
背景を聞くと、代表は次のように答えます。
―― 起業するとき、「自分はなにをやりたいのか」を純粋に考えたんですよ。
解決したい社会課題も、取り組みたい事業もパッと思い浮かびませんでしたが、唯一やりたかったのは、「プロジェクト」でした。成し遂げることを決めて、チームで追いかける。大きなミッションを達成できたら、みんなで称賛し合いながら祝杯をあげる。そんな体験をこれから先の人生もずっと繰り返していきたい。
それに、プロジェクトをともにした仲間って5年10年経っても関係が途切れず、当時のエピソードを肴にしながら楽しく飲めるんですよね。
こうした思いを僕自身の言葉で、カッコつけることなく純度100%で落とし込み生まれたのが「美味い、酒を飲む。」という企業理念です。
この言葉は当初、多くの人から笑われました。ですが僕らしくあるために、掲げたものは一切ブラしませんでした。
当然、美味い酒は1人じゃ飲めません。自分で自分のケツを拭ける、成果で語れる奴らと肩を並べたい。そんな仲間が成果を出せる組織にするために、個人独立採算などといった仕組みを作っていきました。
また、「美味い、酒を飲む。」という企業理念と相反する意思決定が生まれる可能性があり、僕自身がコントロールしきれないと思ったので、支援事業をやるなら「業績目標は立てない」と決めた次第です。
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これがもし事業会社だったら、業績目標を作っていたかもしれません。また、何度も言うように、業績目標を立てるのは大切なことです。
ただこれまでも、これからも、あくまで私たちTHE MOLTSは「業績目標を掲げない」という在り方を貫いていくと思います。
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