オウンドメディアの費用対効果を高めるには?考え方を解説

田島 光太郎

Media Planner / Consultant

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オウンドメディアの費用対効果を高めるには?考え方を解説

「オウンドメディアの費用対効果は高い」「他のWebマーケティング手法に比べると、特別優れているわけではない」など、さまざまな媒体でオウンドメディアの費用対効果に関する議論がされています。

しかし、我々はオウンドメディアの費用対効果は、一概に高低を決められるものではなく、運用目的や得たい成果により異なると考えています。オウンドメディアだから高い低いではなく、戦略や運用次第で高くもなれば低くもなります。

お問い合わせや資料請求といったリード獲得を目的とするケース、採用力強化を目的とするケース、ブランディングを目的とするケースなど、オウンドメディアができることは幅広く、これらを同じ尺度(もの指し)で測ることはできません。

本記事では、オウンドメディアの費用対効果に関する考え方や、運用目的別の指標について解説していきます。

費用対効果を考える前に、運用の目的を定義する

費用対効果の算出は一般的に、費用対効果 = 効果 ÷ 費用という式が用いられます。かけたコストに対して効果が得られたか、つまり費用対効果が高いかどうかは、「儲かるか=利益が出るか」に言い換えることができます。

例えば、オウンドメディアから月100万円の売上が発生し、毎月の制作費が100万円以上かかっている場合、1ヶ月のコストが収益を上回っているので、費用対効果は悪いと言えるでしょう。しかし、このオウンドメディアにおいて同じコストで売上を積み上げていく、あるいはコストを下げていくことができれば、長期的には投資回収ができ、費用対効果は「良い」と言える状態になっていきます。

オウンドメディアは手段の一つであり、運用目的もさまざまです。事業貢献によって売上を生み出していくのか、他施策よりも効率的に集客しコストを抑えるのか、目的が違えば求める効果も異なります。課題解決の手段としての是非を検討するためにも、オウンドメディアの運用目的を定めることが重要です。

【よくあるオウンドメディアの運用目的の例】

  • リード獲得の最大化
  • サービスの認知度向上
  • 企業やサービスのブランディング
  • 採用力の強化

オウンドメディアの費用対効果の考え方

オウンドメディアの費用対効果を実際に考えるときに重要なのは「利益が出せるか(かけたコストに対して売上が上回るのか)」と「他施策に比べて獲得単価が低いか」の2点です。利益が出せていて、他施策と比べて獲得単価が低ければ、当然オウンドメディアの「費用対効果は高い」と言えます。

では具体的に費用対効果をどのように見ていくのか、オウンドメディアの目的別で見ていきましょう。

1. リード獲得の最大化が目的の場合

オウンドメディア運用目的として、特にBtoBオウンドメディアに多いのが、お問い合わせや資料請求といった「リード獲得」を目的とするケースです。

このようなケースでは、受注単価や受注率を加味して、オウンドメディアから何件のリードが発生すればよいのか、つまりオウンドメディアで目指すべき成果目標を定めることが重要です。

例えば、発生したリードからの受注率が20%で、受注単価20万円だったとします。

  • リードが20件の場合、リード20件×受注率20%=受注4件で、売上80万円
  • リードが25件の場合、リード25件×受注率20%=受注5件で、売上100万円

オウンドメディアの制作費として、人件費40万円+外注費60万円=100万円かかっていた時、リードが25件以上取れれば黒字、25件未満であれば赤字になる計算となります。

つまり、このオウンドメディアで目指すべき成果目標は「25件のリード獲得」です。現在かけているコストで25件のリードが獲得できれば費用対効果は「高い」という計算になります。

ただし、オウンドメディアは即効性のある施策ではないため、運用してすぐに月25件のリードが獲得できるわけではありません。さらに、月100万円のランニングコストだけでなく、メディア制作費などの初期コストも必要となるため、これらを加味して中長期的な計画が必要です。いつまでに何件のリードが見込めて、それまでに十分なコストがかけられるかをあらかじめ試算しておくことで、オウンドメディアの費用対効果を判断できます。

買い切りのサービスを想定して例に出しましたが、SaaS系のビジネスやサブスクリプションサービス・ECサイトにおいては、一人のユーザーが生涯でどれくらい利益を生み出すのかという「LTV(顧客生涯価値)」の観点も加味して費用対効果を算出します。

2. 認知拡大やブランディングが目的の場合

サービスやブランド自体の認知拡大・ブランディングを目的として、オウンドメディアが運用されるケースでは、費用対効果の算出がやや難しくなります。そもそもなにをもって「認知拡大できたか」「ブランディングできたか」を定める必要があるからです。認知拡大やブランディングと言っても、最終的には事業の売上に貢献することが目的のため、売上との関連性で考えるのが良いでしょう。

認知拡大やブランディングの定義、成果指標の置き方はケースバイケースですが、ここでは既にコンバージョンが発生しているサイトに認知拡大施策を行い、さらなる集客を見込んだケースで考えてみましょう。

現状のオウンドメディアでは、訪問者の1%がお問い合わせに繋がることが分かっており、現状訪問者は1,000人程度(CV10件)だったとします。認知拡大のための施策を100万円かけて行い、プラス5,000人の獲得ができ、その5,000人のCV率が0.5%だとすると、25件のCV増が見込めます。

  • 5,000人×CV率0.5%=受注25件

先ほどの例とおなじ、受注率20%受注単価20万円だとすると、認知拡大施策のコストをペイできる計算になります。

  • リード25件の場合、リード25件×受注率20%=受注5件で、売上100万円

新規の獲得ユーザー数を成果指標として考えたときに、予算100万円を使って5,000人以上を獲得できれば、費用対効果は見合う計算になります。

3. 採用力の強化が目的の場合

採用力の強化を目的とする場合、現状の採用コストと比較して、オウンドメディアの費用対効果を算出します。中間指標として、以下のような指標が置かれます。

  • アプローチ数、リーチ数
  • エントリー数
  • 面談数

採用コストと比較する場合、まずは既存の求人サイトやエージェントを使って採用したケースにおいて、一人当たりいくらの採用コストがかかっているのかを計算しましょう。オウンドメディア運用を通じて採用したケースと比べることで、費用対効果を見極めることができます。

一例として、求人サイトへの掲載と、人材採用を目的としたオウンドメディアを開設するケースを考えてみます。自社のカルチャーや社員の様子、自社が持つ独自のノウハウや世界観を発信することで、より自社に適した人材の獲得を目指すとしましょう。

それぞれ運用を行った結果、コスト・エントリー数・面談数・採用数で、以下のような違いがでたと仮定します。

求人サイトオウンドメディア
1ヶ月のコスト80万円200万円
エントリー数30名10名
面談数10名8名
採用数1名3名
採用1人にかかったコスト80万円66.6万円


すでに一定のフォーマットが決まっている求人サイトに比べると、コストがかかるもののオウンドメディアは自由度高く運営できます。たとえば、デザインやUIも含めサイト全体で一貫した世界観を作ることもオウンドメディアならではです。

すでに求職意識が高い人が多く閲覧する求人サイトよりはアプローチできる人数も限られますが、その分自社のカルチャーにマッチした人材を集めることが可能です。

上記数値はあくまで一例ですが、仮にコスト高となったとしても、結果的に採用単価を抑えることができれば、オウンドメディアの費用対効果は高いといえます。

エントリー後にもコンテンツを熟読してもらうことで理解度を深めるなど、通過率や内定率を高める工夫も組み合わせてみましょう。

ただし注意して欲しいのは、そもそもの採用目的を見失わないことです。オウンドメディアを通じて採用した人材が、その後自社にマッチしたのか、パフォーマンスが優れているのかといった点も十分に加味しないといけません。

オウンドメディアの成功事例

オウンドメディアの費用対効果の考え方をご紹介しましたが、実際に費用対効果を高めてオウンドメディア運用をしている事例をご紹介します。

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レイビー|運用から2年で総額数億の受注を産むメディアへ

出典:レイビー

資産運用を主目的とするマンションの土地仕入、企画・開発、販売、管理までをワンストップで提供している株式会社グローバル・リンク・マネジメント。同社が運用する不動産投資に関するオウンドメディア『レイビー』は、運用から2年で総額数億の受注を産むメディアになりました。

当初オウンドメディアは運営されていたものの、月間PV数は2,000〜3,000程度にとどまっており、いかに見込み客数を最大化させてリード獲得へと繋げていくかという課題がありました。

見込み客の集客を増やすために、まずは「キーワード設計に基づいて毎月10本の記事公開をする」という行動量をKPIにして運用を開始。日々の運用を経てキーワードの上位表示を増やしながら、CTAの設計・作成も行うことでCVへの導線を強化していきました。

さらに、単なる見込み客(リード)で終わらせず、受注につなげていくためにインサイドセールスを強化。SFAデータの分析を行い、顧客のニーズを捉えてメールマガジンを配信することで、リードからの商談数を確実に増やしていきました。

その結果、運用からわずか2年で資料請求は10倍以上に増加し、受注数も改善されたことで、年商数億円を生み出すメディアへと成長。いまではオウンドメディアが集客の柱の1つになっています。

▼関連記事
本事例について詳細は別記事「「徹底した顧客の追求」で未経験でもわずか2年で年商数億円に成長した不動産投資メディア」にございますので、是非こちらも合わせてご覧ください。

HR NOTE|運用から5年で年数万件の法人リード獲得

出典:HR NOTE

採用支援から人材サービス、またHR Techサービスに至るまで、30を越える事業を展開している株式会社ネオキャリア。2016年にHR Techサービスの「jinjer」の集客基盤として立ち上がったオウンドメディア『HR NOTE』は、運用から5年で、ゼロから年数万件の法人リード獲得するメディアへと成長しています。

もともと同社はテレアポ文化が根強く、オウンドメディアの知見が十分でないことから、オウンドメディア経由でリード獲得に結びついていないという課題を抱えていました。

そこで、「リード数を最大化し、着実に成約に繋げること」を目的とし、外部パートナーをアサインしてオウンドメディアに力を入れていきました。具体的には、ターゲットユーザーである人事担当者を効率的に集客するべく、課題解決軸でコンテンツSEOを拡充。愚直に運用し続け、1年後には単月100件のリードを獲得するメディアへと成長しました。

さらに『HR NOTE』をjinjer以外のサービスにも横展開することで全体のリード数を増やし、SFA(営業支援システム)で営業との連携を強化することで受注率を高めるなど、施策を重ね、オウンドメディアの成果を積み上げていきます。

その結果、運用から5年たった今では年間数万件の法人リードを獲得できるメディアへと成長。もともとアウトバウンド中心だった同社がインバウンドカルチャーへとシフトしつつあり、今では全社的にインバウンドに力を入れるようになりました。

▼関連記事
本事例について詳細は別記事「「0から年間数万件の法人リードを生み出す組織へ」ネオキャリアがインバウンド文化へ変化していく5年の歴史」にございますので、是非こちらも合わせてご覧ください。

収益軸を増やして投資回収のタイミングを早めるケースも

オウンドメディアの費用対効果を高めるには、「売上を上げる」または「コストを抑える」という2軸の方法があります。

売上を上げる観点では、リード獲得や購入数の増加といった事業貢献の軸以外にも、直接的にオウンドメディアからの収入源を作ることで、投資回収のタイミングを早めるケースもあります。直接的な収益とは、アフィリエイト広告のような成果報酬や、バナー掲載や記事広告などの広告掲載料が挙げられます。

オウンドメディアといえどどのようなメディアでも直接収益化できるとは限りません。バナー掲載など広告枠を販売する場合は、どれだけ露出できるかが販売力となるため、一般的には月間PV数が大きいメディア、もしくは固定ファンを一定数抱えているメディアなど、他企業が広告枠を買うような相当の影響力がある状態でなければ収益は出せません。

また、アフィリエイト広告で収入を得やすいのは、PV数よりも購買意欲の高いユーザーが集客できているメディアです。BtoC(対消費者)メディアで運用されることが多く、リスティング広告、もしくは自然検索経由で集客するケースが多いです。

コスト削減は本来の運用目的を見失わないように行うべき

オウンドメディアの費用対効果を高めるために、「売上を上げる」他に、もう1つの「コストを抑える」方法も考えるべきでしょう。オウンドメディアにかかるコストは様々ですが、一般的には人件費やコンテンツ制作費がかかることが多いです。

人件費を削るために「社内に運用担当者をつけない」または「兼任で回す」や「安い費用で外注する」という選択肢を取る企業も少なくありません。しかし、そのように人件費を削ったことで質が担保できず効果が得られなければ、費用対効果はむしろ低くなってしまいます。

よくあるのが文字単価を1〜3円などで設定し、大量にコンテンツを制作する方法。SEOでの上位表示を狙い、多くのトラフィックを集めるために、このような意思決定がされることがあります。しかし、オウンドメディアではコンテンツの量以前に、適切にユーザーとのコミュニケーションを図ることが重要です。そのためには、ターゲットとは誰なのか、またどんな悩みを抱え記事にたどり着いたのかなど、コンテンツ一つひとつに対して、深い洞察(ユーザー理解)が欠かせません。これらができないのであれば、いくら記事を量産しても意味がありません。

社内でこのような深い洞察をした上で、的確に指示を出し、外部パートナーをコントロールできるのであれば問題ありませんが、低単価で記事制作を丸投げしてしまえば質の高いコンテンツを制作することは困難です。

コストを削減するときも、その方法で目的を達成できるのか、成果は十分に期待できるのかと言った視点を忘れないようにしましょう。

まとめ|戦略次第でオウンドメディアの費用対効果は高まる

オウンドメディアの費用対効果は運用目的や得たい成果により異なり、戦略や運用次第で高くも低くもなります。ただ、短期で成果を追い求めると費用対効果が低いという判断になりがちです。オウンドメディアは即効性がないので、中長期的な視点を持って費用対効果を考える必要があります。

また、オウンドメディアはあくまでもユーザーとのコミュニケーション手段の一つであり、ユーザーを無視したコンテンツではどんなに記事数があっても成果を出すことは不可能です。成果を出すために必要な指標を正しく設けた上で、ユーザー理解を深めてコンテンツを発信することで、費用対効果を高めていきましょう。

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オウンドメディアの戦略について、詳しく知りたい方は別記事「オウンドメディアの戦略・設計の立て方|事例から読み解く成功パターン」をご覧ください。

この記事を書いたメンバー

KOTARO TAJIMA

田島 光太郎

Media Planner / Consultant

1990年、大阪生まれ。新卒入社した企業にて新規事業となるオウンドメディアの運用に立ち上げ期から参画。コンテンツディレクターとして企画〜制作〜分析などに携わり、開設約2年半で月間400万ユニークユーザー規模へと成長。コンテンツSEOを軸としたメディアのグロース、マネタイズ運用を経て、2018年5月より株式会社MOLTSへ参画。子会社の株式会社KRAFTに所属し、現在はオウンドメディア・コンテンツマーケティングを用いたプロジェクトの立ち上げ・戦略設計、インハウス運用支援、運用代行を行う。2020年9月より同社執行役員に就任。

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