株式会社MOLTSの田島光太郎です。

今回取り上げるテーマは、「オウンドメディアの設計」です。 ここでいう「設計」とは、サイト制作ではなく、あくまでマーケティング手段としてのオウンドメディアの設計です。オウンドメディアをどのように設計すれば成果を出せるのか、あるいは事業課題の解決に向けてどのように設計すればよいか、といった観点で考えます。

適切な設計方法はオウンドメディアを運用する企業によって、あるいは運用目的によってそれぞれ異なるでしょう。いずれも正解といったものはありませんが、本記事では、筆者が「オウンドメディアの設計」を行うケースを想定し、実際に設計を行うステップや大切にしている考え方をご紹介していきます。

  • これからオウンドメディアを立ち上げたい
  • オウンドメディアを運用しているが、戦略的な運用ができていない
  • 改めてオウンドメディアのあり方を見直したい、リニューアルを検討している

といった、インハウスで運用されている方々に参考になるよう取りまとめてみました。設計する際に押さえておきたいポイントとして、ぜひご一読ください。

オウンドメディアのコンサル支援・運用代行の内容と事例|MOLTS

オウンドメディアマーケティングにおける「設計」を考えてみる

設計の具体的なステップに入る前に、オウンドメディアにおける設計とはなにを意味するのかを考えてみましょう。

一般的に「設計」が指す意味合いは、「計画を立てること」や「図面に表すこと」などとされます。オウンドメディアをマーケティング手段のひとつとして捉えるとすれば、「マーケティング課題を解決するためのオウンドメディアの設計」であり、そのための「計画」と置き換えることができます。

そのため、オウンドメディアを用いて事業課題をどのように解決に導くかという観点で設計していくことが重要です。(あるいは、そもそもオウンドメディアが適切か、も議論されるべきでしょう)

事業課題の解決に導くためのオウンドメディア設計、つまり事業にとって良い結果をもたらすための計画を立てると考えると、オウンドメディアがもたらす成果はさまざまです。

  • 既存事業と連携した売上、利益の拡大
  • メディア単体での売上、利益の拡大
  • 自社サービスの認知拡大
  • 見込み顧客からのお問い合わせの獲得
  • 新規顧客との接触機会の創出
  • 新規事業のための利益確保

など、オウンドメディアの運用目的によってさまざまですが、これまで50社以上の運用に携わってきた弊社から見ると、オウンドメディアの可能性は非常に幅広いと感じます。

だからこそ、どのような課題を解決したいか、という観点からオウンドメディアの設計を考えていきましょう。

オウンドメディア設計のステップ

1. オウンドメディアの運用目的、成し遂げたいミッションはなにか?

まずは、オウンドメディアがどこへ向かっていくのか、オウンドメディアの成すべきミッション(使命)はなんなのか、目指すべきゴールともいえるオウンドメディアの運用目的やミッションを定めていきます。すでに運用されている場合は、チームメンバー全員の認識を合わせるステップと置き換えても構いません。

定めたミッションに対して達成状況を定量的に計測し、進捗を把握できるよう、成果指標を設定しておきましょう。結果を良し悪しが判断でき、再現性をもってさらなる拡大につなげられるためです。

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ミッションをあらかじめ定義しておくことは、設計や運用フェーズにおけるすべての判断基準になります。オウンドメディア自体、やれることは本当にさまざまありますが、なにが最適な手段となるかはすべてミッションに紐づきます。

解決すべき課題の優先度、とるべき戦略、運用体制など、あらゆる意思決定の基準となるため、必ずチーム全体でミッションの認識をあわせましょう。

【これまでに携わったオウンドメディアのミッション設定の一例】

  • 立ち上げから単月利益1,000万円へと成長させる
  • 認知獲得からクロージングまでできるWebサービスにする
  • 自社サービスのリード獲得件数の最大化
  • 観光市場の開拓および認知度No.1メディアにする
  • アウトバウンド文化を、インバウンド文化へとシフトする

2. 成果達成までの戦略、ストーリーをフェーズごとに設計する

目指すべき先を定義できたら、続いてその達成に向けたストーリーを描いていきます。

戦略の設計においてはリソースをどこに投下するかが大切です。「やる」と決めたことにことに振り切るためにも、同時に「やらないこと、諦めること」も明確に定めましょう。あれもこれもと欲張りになると、かえって中途半端になってしまいます。すでに運用しているが成果が出ていないというオウンドメディアにおいて、やるべきことを絞るだけで運用がうまく回りだしたケースもあります。

成果まで最短距離を走るためには、どこにリソースを投下すべき、どこで戦うべきかを定めることが戦略設計において重要なポイントです。

たとえばBtoB向けオウンドメディアにおいて、「リード獲得」を目的としてメディア上の「お問い合わせ数(CV数)」を成果指標とした場合、CV数獲得に向けた戦略を設計していきます。例外もありますが、比較検討系のキーワードで検索結果の上位獲得をすることで継続的な流入、継続的なCVを獲得できるコンテンツSEOを用いた戦略が相性が良いです。

この場合、ユーザーとのタッチポイントを「検索」と定め、問い合わせにつながるであろうキーワードの上位獲得に注力するという意思決定を行い、同時にそれ以外の集客チャネルを諦める、という捉え方です。

もちろん、アクションの部分だけでなく、時間軸で見ても「いまやること」「いまはやらないこと」といった具合で分けることができます。たとえば、「立ち上げから1年は基盤づくりに注力する」などと決め、そのうえで、

  • 初月はキーワード設計を徹底的に行う
  • 2ヶ月〜6ヶ月目は、ひたすら新規コンテンツを作成し、運用体制を構築する
  • 7ヶ月目〜12ヶ月目はメンテナンスにシフトし、CV獲得に注力

と、計画を時間軸で区切っていきます。もちろん、上記はあくまで一例であり、適切なフェーズの切り方は目的によって異なります。仮に1年よりも短期的にCV獲得が必要であれば、「初月からメンテナンスに注力」が最適なケースもあるでしょう。

いずれにせよ、いつまでに、どのくらい、なににリソースを投下するのか、といった観点でやること、やらないことの設計を行いましょう。そのバランスこそが戦略設計のキモです。

【これまでに携わったオウンドメディアの戦略設計の一例】

  • 将来の顧客となりうる潜在層のリーチ最大化を軸としたコンテンツ設計
  • マネタイズ設計から行い、広告収益モデルと基盤としたメディア戦略を構築
  • リード獲得につながるキーワード設計と良質なコンテンツを量産できる制作体制の構築
  • 顕在層〜潜在層までアプローチできるキーワード設計と回遊性を考慮したサイト構造の設計

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現状を把握し、課題分析を行うことも重要

弊社がオウンドメディア運用のコンサルティングに入るケースでは、すべてが立ち上げ段階とは限りません。すでに運用を行なっているもののうまく成果がでていない、といったご相談をいただくこともあります。

そのようなケースでは一から設計を行うのではなく、まずは直近の課題解決に着手します。その方が求める成果の獲得につながりやすいためです。

もちろん、ここまでの考え方と大きく変わりはありません。果たすべき目的と成果指標をすり合わせ、そのためのストーリー設計を見直していきます。その際、課題となっているのが、指標設計なのか、戦略設計なのか、あるいは戦略に基づいた実行プランや体制なのか、といったネックポイントを探っていきます。

うまく戦略が立てられていない、指標が定められていない、といったケースでは、改善すべき指標を明確に定め、それ以外の指標を見ないよう指示出しすることもあります。前述のとおり、やるべきことと同時に、やらないこと・諦めることを決めるのも戦略の一つだからです。

3. タッチポイントの設計

成果までのストーリーを描いたら、オウンドメディアにおけるユーザーとのタッチポイントを設計していきましょう。タッチポイントとは顧客との接点や接触する場所を指すもので、ユーザーに情報を届けるために考えておくべき重要な設計箇所です。オンラインではWeb広告の媒体やオウンドメディアなど、オフラインでは店舗スタッフや商品そのものなどがあります。

このとき、設定したペルソナのカスタマージャーニーから考えると設計しやすくなります。

カスタマージャーニーを考えるフレームワークのひとつであるAISASをベースに、認知獲得〜興味関心〜比較検討〜アクションといったフェーズに分けて考えた場合、

  • どのような状況で、どのような課題を抱え、どのようなアクションを起こすか(情報ニーズの整理)
  • そのとき、ユーザーとどのようなタッチポイントを築けるか(チャネル、メディア)
  • どのような情報を提供すべきか(コンテンツ企画、コンセプト設計)
  • どのような態度変容を起こすか(コンテンツのゴール)
  • なにをもって成否を測るか(KPI設計)

などといった情報を整理していきます。

カスタマージャーニーマップのイメージ

上図は実際に使用したカスタマージャーニーマップに一部加工を加えたものです。項目名に決まりはありませんが、「だれに、いつ、どこで、どのような情報を届け、どのように成果を得るか、なにを以て達成とするか」が分かるように整理しましょう。

オウンドメディアがタッチポイントとなり得ることがわかれば、コンテンツマーケティングの文脈に落とし込んで考えることができます。ユーザーが求める情報ニーズに併せてコンテンツを企画・設計し、未認知から認知へ、認知から興味関心へ、興味関心から比較/検討へと次のフェーズに態度変容を起こす仕掛けを用意しましょう。

それらをカスタマージャーニーとして整理したうえで、オウンドメディア全体で成果獲得までの流れを設計します。成果獲得までの流れについては、サイトマップやコンテンツマップで整理していくと良いでしょう。まさに「設計図」のようなイメージです。

コンテンツ設計の一例

各コンテンツにそれぞれの役割を持たせ、オウンドメディア全体で成果を獲得していくことこそが、オウンドメディアマーケティングの肝です。ターゲットユーザーとのタッチポイントを整理し、成果獲得のためのオウンドメディアのあるべき形を組み立てていきましょう。

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【タッチポイント設計の一例】

  • サービス検討ユーザーにフォーカスして、検索流入を主軸にしコンテンツを設計
  • サービス未認知層に向けてInstagramを主軸に設計し、そこで発生する検索行動に対してオウンドメディアを設計
  • 未認知〜サービス検討に至るまでを自然検索を中心に設計、接触機会を増やし指名検索で流入する仕組みを設計

コンテンツ一つひとつも丁寧に設計していく

オウンドメディア全体だけでなく、コンテンツ一つひとつの設計も大切です。

たとえばコンテンツSEOの場合、キーワード設計およびコンテンツ設計が戦略のカギを握るといっても過言ではありません。キーワード設計がコンテンツSEOの戦略設計であり、コンテンツ設計がその成否を左右します。

記事執筆前に設計する構成シートのイメージ。執筆前に入念な設計をおこなう

弊社がコンテンツ制作に携わる場合も執筆前の設計を重視しています。目的となる成果の獲得のためのコンテンツとなるため、設計なくして成果の獲得にはつながらないと考えます。

設計方法についての詳細は別記事に委ねるとして、ここではコンテンツにおいても設計が重要であることを強調しておきます。

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4. モニタリング環境の構築

成果指標を定め、達成までのストーリーを描き、そのためのオウンドメディアを設計したら、あとは実行あるのみです。まずは定めた戦略に沿って行動量を積み重ねていきましょう。

その際に大切になってくることは、検証・振り返りのステップです。つまり、やったことの結果が良かったのか、悪かったのか、それがどの程度良い/悪いものなのか、を把握し、改善へとつなげることが大切です。

数々のオウンドメディア運用に携わってきたなかで、やはり重要なのは、可能性を広げ続け、成長し続けることだと考えます。そのためには、継続的かつ戦略的な運用が必要です。検証・振り返りは、再現性を以てオウンドメディアを運用するために欠かせないステップなのです。

検証・振り返りを行ううえでは、定量的にモニタリングできる環境を構築しておくと便利です。「お問い合わせ数」「キーワードの検索順位」「指名検索数」「コンテンツ制作本数」など、見るべき指標はフェーズによってさまざまですが、いずれも数値で把握ができ、施策の結果が反映されるものが望ましいです。

データレポートの一例。検索クエリ×ページごとに流入状況を把握している

GoogleでもデータポータルのようなBIツールを無料で提供しており、かんたんに数値状況を一覧で把握することができます。ただ、ツールを使用すること自体が目的にならないよう注意したいところです。便利で高機能な分、多くの指標を見ることができますが、指標が多すぎるのは得策ではありません。

戦略設計と同じく、指標設計も見るべきもの、見なくてよいものを振り分けるようにしましょう。

設計はあくまで計画の段階。すべては実行・改善あるのみ

最後に、オウンドメディア運用における重要なポイントをお伝えします。ずばり、実行・改善あるのみです。

ここまでオウンドメディア設計のステップについて述べてきましたが、設計はどこまでいっても設計でしかありません。住宅建築でも、設計図ができたからといってその顧客は満足しません。むしろ、設計図ができあがってようやくスタートといえるでしょう。

その中には実行部隊としてチームを作ったり、各メンバーに役割を与えることも「設計」の要素として必要になってきます。

このような体制やフローを整理しておくことも、「設計」の範囲といえる

オウンドメディアもまた然り、いくらキレイな戦略を描いたところで、実行しなければなにも意味はありません。十分な行動量を以て実行し、改善を積み重ね続けることで、ようやく成果の獲得につながっていきます。

しかし、設計なくして行動ができないのもまた事実です。迷いなくチーム全員が同じ方向に突っ走れるのも、向かうべき先があるからこそです。設計フェーズも実行・改善フェーズもどちらが欠けてもいけませんし、両方が機能するオウンドメディアこそ、成功を勝ち取れるといえるでしょう。