未経験者に広告運用を任せたいのですが、どう教育すれば良いですか?

菊池 真也

Marketing Strategist / Consultant

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未経験者に広告運用を任せたいのですが、どう教育すれば良いですか?

デジタルマーケティングカンパニーMOLTSでは、事業責任者やマーケターにとってよくある悩みや課題をその道のプロに投げかけ、成果を出すためのアドバイスとして発信しています。 

今回は、大手企業からスタートアップまで幅広く事業成果の獲得を軸とした運用型広告のコンサルティング、インハウス支援を行ってきた菊池真也が回答します。

菊池 真也  Marketing Strategist / Consultant


1982年生まれ。広告代理店で100社以上のリスティング広告を運用し、株式会社アイレップにて総合通販、大手人材会社の運用型広告コンサルタントを経験。中小から大規模の広告運用を経験したのち、GMOペイメントゲートウェイ株式会社にてEC企業の集客支援を行う組織を構築。2018年3月にMOLTSへ参画し、子会社STAUTに所属。業界問わず、また大手企業からスタートアップまで幅広く事業成果の獲得を軸とした運用型広告のコンサルティング、インハウス支援を行う。2020年3月よりSTAUTの代表取締役に就任。

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Q:未経験者に広告運用を任せたいのですが、どう教育すれば良いですか?

A:短期で自らPDCAを回せる機会を与え、自分ごと化させることにフォーカスすべきです。

指示待ち人間にさせないことが重要

未経験者に広告を任せるなら、当然ながら広告運用にきちんと理解がある人がマネジメントをする必要がありますが、結論をお伝えすると細かくタスクに落として教育するようなマイクロマネジメントはせず、未経験者自身にできるだけ早い段階からPDCAを回してもらうことをおすすめします。

なぜなら、広告運用が未経験のまっさらとした状態から細分化した指示を出し続けてしまうと、彼らが自分で考える機会を失い、運用に関する指示待ちをしているだけの人間が育ってしまうからです。指示を待っているだけで自分で考える力がなければ、半年や1年経過した後でも一人前の広告運用者にはなれません。

ですので未経験者を教育する立場にある方は、できるだけ早く独り立ちさせるために、新人自らが仮説と検証を繰り返す機会をいかに与えていくかにフォーカスすべきと考えています。

広告費用を自分のお金のように考えて広告運用を行えるようにする

運用広告の教育の場面で、「経営者視点で広告運用しましょう」や「予算を自分のお金のように扱いましょう」と言ったことを新人に伝えている人も多いと思いますが、いきなり新人にそれを求めても自分ごと化できないと思っています。

では、どうするのかというと私が未経験から広告運用を1人で回せるようになるのに一番近道だと思っているのは、「身銭を切って広告を出稿してみる経験」です。新人教育という意味では少し極端な話になるかもしれませんが、実際に私が新人の頃にもやりましたし、周りに聞いてみると同じようなことをやって成長したという人は多いです。

Web広告運用の良いところは、少額から始められて、データを見ながら確実にPDCAを回せるところだと思っています。自分で無料ブログを立ち上げて、比較記事などを作り、アフィリエイトリンクを貼る。そして、それをランディングページにしてリスティング広告を出稿する。月に1万円でも良いので自分のお金を使って、どれだけリターンが返ってくるかを学ぶことで、広告運用に必要なPDCAを回す力をかなり養うことができます。

なぜかというと、広告運用の仕事というと、Google広告やFacebook広告といった広告媒体を使いこなすことが重要と思っている人も少なくないと思いますが、実際にはもっと幅広いスキルや知識が必要だからです。広告文やクリエイティブを考えるだけでなく、ユーザーが広告を踏んだ後にどうやって成果に繋げるか、CVポイントをどう定義して計測環境を整えるか、事業モデルからどういうKPIを策定し入札調整をするか…そういったビジネス全体を知っておくことが重要だったりします。

自分でサイトを運用して広告で収益を得られるような仕組みを作るところまで行けば、こういった全体像を経験として身につけることができます。しかも、自分のお金でやることで、自分ごとになって必死でどうすれば良いのを考えて、早く投資回収できるように高速でPDCAを回せるようになるのです。

成長が早い人たちの共通点は、手段を目的化しないこと

その他にも、これまで様々な人が経験の少ないところから1人で広告運用できるようになるのを見てきましたが、どういう人が伸びていたかというのを思い出すと、下記のような特徴がありました。

  • 探究心が強い人
  • 仮説設定が上手な人
  • 違和感に気づく人 など

例えば、マネージャーが新人に目標CPA1万円で広告入稿の指示をした時に、入札単価を本当は100円のところを誤って1,000円で依頼してしまったとします。この時に言われたまま1,000円で広告を作るのか、「目標CPAに対して、この入札単価はおかしいぞ?」と違和感を感じることができるかによって、成長スピードは全く異なるのです。

この成長が早いたちには、仕事を自分ごととして捉えられており、手段を目的化していないという共通点があると感じています。

似たような話として、ドラッカーの『マネジメント』の中にも出てくる有名な話に「三人の石切り工」があります。

三人の石切り工の昔話がある。彼らは何をしているのかと聞かれたとき、第一の男は、「これで暮らしを立てているのさ」と答えた。第二の男は、つちで打つ手を休めず、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしているのさ」と答えた。第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっているのさ」と答えた。

P.F.ドラッカー 『マネジメント』より

ドラッカーはこのエピソードについて、経営者候補となりうるのは、三人目の男のように仕事に自分なりのミッションとビジョンを明確に持って働くことができる人だと主張しています。

経営者だけでなく広告運用者においても、いかに自分ごとで考えられるかが重要です。そのため広告運用未経験者のマネジメント・教育側としては、作業を教えるのではなく、いかに新人に自分ごととして動いてもらえるようになるかがもっとも重要と言えるでしょう。

マネジメント側は最初から正解を求めすぎず失敗を許容する

では、マネジメント側がどうすれば良いのかというと、まずは小さく広告運用を始めさせてあげて、少しずつ成果を出せるようにしてあげるのが良いと思います。それを繰り返して少しずつ額や規模を大きくして、成果も大きくしていくという繰り返しです。

もちろん、最初から成功する人は少なく、最初の頃はかけた広告費で思ったような成果がでないということもたくさん起こります。とはいえ、失敗を恐れて行動できなくなれば、成長は見込めません。

私はよく1つの課題に対して「なぜを3回繰り返し、施策は3周回そう」と伝えます。事業スピードの観点から1回で施策の良し悪しを判断することもあると思いますが、新人の表層的なデータを読み取ったレビューはミスリードであるケースが多く、施策も1回で終わってしまうと再現性がなくなってしまいます。

マネジメント側は許容範囲を超えるような失敗をしないように管理しつつ、小さな失敗は許して、成功に繋がるように見守ることが重要です。

戦略はマネジメント、戦術は広告運用者が考えて実行する

実際にどこまで新人に任せて、どこまでマネジメントをするのが良いのか?ということに関しては具体的には会社の風土やカルチャーにもよります。

ただここまででお伝えしたように、未経験者に広告運用を自分ごと化して一人前になってもらうには、戦略はマネジメントが行い、具体的な戦術は新人に任せるのが良いと考えています。例えば、マネジメントは実際の事業目標から適切なKPIを設計し、マーケティング予算を算出。また3ヶ月や半年といった中長期的なスパンで最終的に新人が果たしておきたいミッションを明確に伝えます。

あとは、事業に支障の出ない上限予算と上限CPAだけを決めたら、具体的にどう予算を使うのか、どういう風に広告を回していくのかは新人に考えて動いてもらいます。

広告運用では「失敗せずに一人前にはなれない」と言って過言ではありません。中長期でミッション達成できれば、小さな失敗は許容範囲という教育が良いと思います。

未経験者の広告運用スキルの判断方法

ここまで実務として広告運用を任せながら新人教育をする、いわゆるOJTでの教育方法をご紹介しましたが、その他にも下記のような広告運用者の教育メソッドがあります。

教育方法の例1:「アカウントディスカッション」

アカウントディスカッションというのは、数人のチーム全員で同一の広告アカウント画面を見ながらディスカッションを行うことを言います。

実際には、もっとも広告運用のスキルや経験に長けているメンバーやマネージャーが、どういう視点でアカウントを見ていて、どこからドリルダウンして打ち手に導いて広告運用しているのかというのを、全員で同じアカウント画面を見て解説を聞いたり話し合ったりします。

広告運用に関する本や記事は世の中にたくさんあるため、新人はフレームワークや考え方を知識として身につけやすいですが、実務ではどういう作業をすれば良いのかというのが分からなかったりします。

そこで、実際に先輩がどのようなことを行っているのかをリアルタイムで見て、スキルを身につけていく方法です。

教育方法の例2:アウトプットを評価して、振り返る機会を増やす

新人がレポートの報告、マネジメントはそのアウトプットの評価をし、振り返りをする機会を作るという教育方法もあります。

具体的には、実際のデータをレポーティングさせて、目標とのギャップはどうだったのか、その要因と対策として何ができるのかと言うところまでを報告してもらいます。マネジメントは、一連の事象の捉え方や課題の抽出、分析の仕方や改善方法に問題がないかを評価します。

マネジメントが納得できるラインまで何度も指摘をし、新人はPDCAを回しながらレポーティングを行う。これらを繰り返し、新人が1人でも広告運用で成果を出せるようになるまでレベルを引き上げていきます。

例3:新人が自分で一次情報を調べる習慣を作る

新人に分からないことがあった場合には、Googleの公式ブログやオンライン試験サイト、GoogleやYahoo!広告が出すヘルプページなどの一次情報を調べる習慣を作っておくというのも重要です。

私のこれまでの経験でも、何か分からないことを質問されたときに「ヘルプ見た?」と聞くと見てないと言うことが多々ありました。未経験者は当然分からないことだらけですが、不明点全てを教育者に聞いてしまっては人件費がかかり過ぎてしまいますし、多くのことは公式が出しているサイトに載っています。

その他にも個人のブログやSNSなどでも広告運用に役立つ情報は載っていますが、古い情報や誤った情報もあるため、注意が必要です。まずは一次情報がある公式サイトで正しい情報を確認して実践できるようになった上で、ブログやSNSで情報で深堀していくのがおすすめです。

正当な評価とキャリアパスの提示でモチベーションを上げることも重要

実際の教育方法について何パターンかご紹介しましたが、実は広告運用の仕事は未経験から教育しても、すぐに辞めてしまう人が多いと言うのも事実です。

と言うのも、ここまでで紹介してきたように、広告運用では何度も何度も失敗しながら泥臭くPDCAを回すことが重要です。それが人によっては飽きてしまったり、疲れてしまったり、きちんと評価されないと将来が不安になってしまったり…といったのが原因で仕事が続かないというケースは数多く見てきました。

一定数辞めてしまう人がいると言うのは仕方ないかもしれませんが、マネージャーとしてできることとしては①広告運用に対する社内の評価は適正に行うこと、そして②キャリアパスのロードマップを見せることだと思っています。

自分が行っている広告運用という仕事がどのように評価されて、さらに数年後どういうキャリアを描けるのかという未来が見えれば、モチベーションアップにも繋がるでしょう。

未経験者に広告運用を任せるにあたって、ただただ広告運用をやってもらうだけというのでは、中長期で広告運用ができる体制には育っていかない可能性が高いです。まず自分ごとに考えて広告運用を回せるように仕事を任せてあげて、小さな成功体験を増やしてあげましょう。そして運用目標と評価をリンクさせることで会社の中長期の方針と個人のキャリアプランをすり合わせる機会を定期的に設けると良いでしょう。

この記事を書いたメンバー

SHINYA KIKUCHI

菊池 真也

Marketing Strategist / Consultant

1982年生まれ。広告代理店で100社以上のリスティング広告を運用し、株式会社アイレップにて総合通販、大手人材会社の運用型広告コンサルタントを経験。中小から大規模の広告運用を経験したのち、GMOペイメントゲートウェイ株式会社にてEC企業の集客支援を行う組織を構築。2018年3月にMOLTSへ参画し、子会社STAUTに所属。業界問わず、また大手企業からスタートアップまで幅広く事業成果の獲得を軸とした運用型広告のコンサルティング、インハウス支援を行う。2020年3月よりSTAUTの代表取締役に就任。

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