専門分野で自信があったジュニアの私が、レベルの低さを痛感して学んだこと
私はGoogle Analytics4(GA4)などのアクセス解析ツールの導入や活用といった、マーケティングに欠かせないデータの計測周りを専門にしている。特にGA4周りの領域については、転職前からそれなりの自信を持っていた。その専門性を買われて採用されたのだから、きっと即戦力として活躍できるだろうと期待していた。
ところが、実際に新しい職場で働き始めると、自分のレベルの低さに愕然としてしまった。正確に言うなら、自分が見ている景色と、周りの先輩たちが見ている景色が全く違うことに気づいたのだ。
その衝撃的な気づきは、転職後最初のMTGで訪れた。
技術だけでは見えていなかった本質
転職前の私にとって、GA4の導入はそれ自体がゴールだった。クライアントから依頼されたツールを適切に設定し、データが取得できる状態にすることが私の仕事だと思っていた。データとして取得できそうなものは一通り設定しておく、クライアントから指定されたものは確実に計測できるようにする。それで特に違和感はなかった。
ところが、新しい職場での最初のMTGに参加した時、私が「ゴール」だと思っていたものは、単なる「序章」だということに気づいた。
「このデータを計測してどうしたいのか」「その先にあるゴールは何なのか」「そこから逆算して何が必要なのか」。先輩たちは常に最終的な成果から逆算して、計測設計を考えていた。私が大切だと思っていた「導入の完了」は、彼らにとっては本当のマーケティング活動の準備段階に過ぎなかった。
クライアントにとって、計測の設定はこれから行うマーケティングの序章にすぎない。この当たり前の事実に、私は転職するまで気づかなかった。自分が専門だと思っていた分野で、実はとても浅い部分しか見えていなかったのだ。
その時の自分を振り返ると、技術的なスキルはそれなりにあったのかもしれない。でも、その技術をなぜ使うのか、どう活用するのかという本質的な部分が完全に抜け落ちていた。まさに「木を見て森を見ず」の状態だった。
レベルの低さを知ったことで始まった変化
この衝撃的な気づきを得てから、私は仕事への取り組み方を根本から変えた。
まず、クライアントのマーケティング活動の上で必要になってくるものは何かを、しっかりと協議してから計測するようになった。以前のように「とりあえず取れるデータは取っておく」のではなく、「このデータをどう活用するのか」を明確にしてから設計に入るようにした。
「なんとなくいりそうなもの」は、極力取得しないことにした。これは以前の私からすると大きな変化だった。データは多ければ多いほど良いと思っていたが、実際は目的のないデータは雑音でしかない。必要なデータを見極める眼を養うことの方が、よほど重要だった。
そして何より、そのデータをどのように活用するのかを想定した上で、データ計測の設計をするようになった。単純にツールを導入するのではなく、その先にあるマーケティング戦略や施策の成功をどう測るかまで考えて設計する。
この変化は、私に大きな手応えをもたらした。まず、クライアントにも自分にも納得感があった。「こういう理由があるからこれを取得している」という明確な理由があることで、クライアントには説明しやすく、自分も仕事に確信を持てるようになった。以前は何となくやっていた作業が、明確な意図を持った戦略的な仕事に変わった。
そして、自分の視野が格段に広がった。計測周りの仕事をしているにも関わらず、その先のマーケティング全体のことまで考えるようになった。
「レベルの低さを知る」ことの真の価値
今振り返ってみると、この「自分のレベルの低さを知る」体験は、私にとって非常に価値のあるものだった。
レベルの高いマーケターがすぐ近くにいる環境で、まだまだ全然だと思っているが、仕事をする上でものごとへの考え方が根本的に変わった。技術的なスキルだけでなく、なぜその技術が必要なのか、どう活用すべきなのかという本質的な部分を考えられるようになった。
自分のレベルの低さを知ることは、確かにショックだった。でも、それは成長の出発点でもあった。自分より優秀な人たちに囲まれて「まだまだだ」と感じる環境にいる方が、結果的には大きな成長につながる。
今の私は、自分の専門分野であっても常に学び続ける姿勢を持つことができている。そして、技術的なスキルだけでなく、その技術をどう活用すべきかという戦略的な視点も持てるようになった。
自分のレベルの低さを痛感したあの体験が、実は最も価値のある成長の機会だったのだ。
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