BtoB企業で「組織」を動かすにはまず「管理会計」を見よ
こんにちは、THE MOLTSのコンサルタントの田島です。
今回は、自身の仕事への向き合い方を大きく見直すきっかけをくれた、とある先輩コンサルタントによるBtoBマーケティングプロジェクト実績を紹介します。
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舞台は、30以上の事業部を持つ数千人規模の大手企業。アウトバウンド営業文化である組織にBtoBマーケティングを浸透させるという、難易度の高いミッションでした。
ここで先輩コンサルタントが最初にとったアプローチは、意外にも「100%インバウンド経由で売上が成り立つ部署を、まずは1〜2個作ること」。結果、無事数年で企業全体にBtoBマーケティングが波及し、マーケティング専門部署も誕生。インバウンド比率は大幅に向上しました。
……私はこの話をはじめて聞いたとき、「全社浸透が目的なのに、なぜたった1〜2事業部だけを攻めることからスタートしたのか?」と疑問を抱きました。
彼の局所的な戦い方は、なぜ成功したのでしょうか。
その秘訣は、はじめに「管理会計」に着目した点にありました。
管理会計から読み解くメンバーの行動原理
BtoBマーケティングを導入するとき、多くの人は施策の検討や体制構築にまず注力しがちです。しかしこの先輩は、「真っ先に管理会計を見るべき」と主張します。
なぜなら、BtoBマーケティングは営業部門や生産部門とも密接につながっており、単体で考えることが難しいから。その企業の組織のあり方を管理会計から紐解かなければ、全社展開することが難しいから、とのこと。
たとえばこのクライアントは、 “毎月” “事業部門ごとに” 損益を計算し、経営に報告する会社でした。
「(先輩コメント)私がこの企業の事業責任者だったら、毎月の利益を出すことに必死。いま行っていることがベストだと信じて日々数値を追いかけているから、BtoBマーケティングのような訳のわからないものを導入しようとは一切思わない。ただし、業績にダイレクトに跳ね返ってくることさえ分かれば、興味は持ちやすい」
たしかに、単月でP/Lを見ている事業責任者に「半年待てば成果が出るかもしれない施策」を提案したところで刺さりません。数字へのインパクトが見えないと検討の土台にすら挙がらない。さらに予算の出どころも各部門となるため、コストがかかる何かを全社導入しようとすると現場との折り合いがなかなかつきません。
このように「管理会計」は、組織の意思決定プロセスやメンバーの行動原理に強い影響を与えます。
これらの前提を踏まえると、当クライアントにおいては「1企業のBtoBマーケティング」として捉えるのではなく、「30企業のBtoBマーケティング」と捉えたほうが現実的です。いきなり全社を対象にアプローチすることがいかに非効率か、管理会計を見ることで気付かされました。
組織内バイラルを生み出す仕掛け
「(先輩コメント)くわえて、長年アウトバウンド営業をおこなってきた企業なわけだから、BtoBマーケティングの良さをいくら論じたとしても見向きもされない。 本当に価値があるという “証拠” を示さなければ、まず信用されない」
世間一般的に有効と言われているインバウンドマーケティングも、このクライアントにとって価値があるかどうかは別問題。1,000の理論を語るよりも、社内で生まれた確かな証拠を一つ提示するほうが信用に値することは明らかです。
「(先輩コメント)全体で証拠を生み出すこともあるが、30事業部で1歩前進するよりも、1事業部で10歩前進する方が価値ある証拠を生み出せるときがある」
たしかに、多くの事業部を相手にして薄く広く進めるよりも、協力的な1〜2事業部でコンパクトに動いたほうが圧倒的に早く、よりインパクトある証拠(≒数字)を作りやすい。だからこそ先輩は、まず1〜2事業部に絞ってコミットしたのです。
このアプローチは、見事に成功しました。プロジェクトの早期段階で100%インバウンド経由で売上を創出する1つの事業部が誕生。その費用対効果を社内に広報した結果、多くの事業部においてBtoBマーケティングへの見方が「懐疑」から「興味」へ変わり、自然と広がっていきました。
このように、組織の5〜10%で証拠をとにかく作り、それを社内に報じることを繰り返せば、各事業責任者たちが興味を持ちます。バイラルを作る仲間が増え、浸透率が20%、50%と急速に広がっていく。そんな好循環が生まれるわけです。
あらゆる選択肢は、ときに最短ルートを走る妨げになる
最後に、「他にも有効な選択肢はあったのか? 全社対象のアプローチは、やっぱり可能性ゼロだったのか?」という私の素朴な疑問を先輩にぶつけたところ、次の回答をもらいました。
「(先輩コメント)仮に10の選択肢があったとしても、あれこれ手を付けるのではなく1つを選んで実行することが重要。プロジェクトメンバー全員が最もよいと信じた道を全力で突き進むこと。それが最短ルートになる」
たとえ理論上は最適な選択肢があったとしても、プロジェクトメンバーがその選択肢に本気で取り組めなければ、最短ルートにはなり得ません。他の選択を考える余裕すらなくなるほど没頭し、選んだ道を正解にしていくこと。この大切さに、私は改めて気付かされました。
さいごに
正直なところ最初はあまりピンときていませんでしたが、結局のところ、実行する人や組織が動かなければ成果は出ない。だからこその「まずは1〜2事業部から攻める」という初手だったのだと、いまは深く納得しています。
BtoB企業における組織の行動原理を読み解くためには、まず「管理会計」を見よ。
この学びを、今後のクライアントワークにしっかり活かしていきたいと思います。
著者情報
KOTARO TAJIMA
Media Planner / Consultant
業界歴8年以上。BtoBマーケティング、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。コンサルタント・PMとして戦略設計、インハウス化・グロース支援を行う。
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