7席のBARのHP制作に100万円は高いのか?をコンサルタントに聞いてみた

SNSで、ある投稿が目に止まった。

「7席のBARを開業するのに、HP制作で100万円かかるとなった場合、高いのか?安いのか?」

なんとなく「高いな」と思った私は、社内のコンサルタントにこの話を振ってみた。すると返ってきたのは、予想外の答えだった。

「いろんな解釈があっていいと思うが、私は高いとも言えるし、安いとも言える。場合によっては、そもそも議論にすらならないと思う。」

その説明の中で出てきた「クリエイターはコミュニケーションの最終走者」という言葉が、妙に引っかかった。この言葉の意味を理解した時、私は「制作費が高いか安いか」という問いそのものが、もしかしたら間違っていたのかもしれないと思うようになった。

※あくまで、非クリエイターのマーケティングのコンサルタントが語った内容であり、誰かや何かを否定するのでなく、このような考え方もあるという観点からの紹介です

クリエイターは「作る人」なのかという問い

話を聞くと、その先輩は以前、知人のコピーライターと一緒に「クリエイターとは」の定義を独自解釈で言語化したことがあるらしい。私にとってクリエイターは「何か物を作る人」という程度の認識だったが、彼らが出した定義は全く違った。

「クリエイターとは、コミュニケーションの最終走者」

リレーの最終走者のように、それまでに積み上げられた全てを受け取り、ターゲットに適切に届けることが役割。その前には、事業戦略を考える人、マーケティング設計をする人、ブランドの核を定義する人など、様々な「走者」がいる。どれだけ前の走者が優れていても、最終走者がバトンを落としてしまえば、ゴールには辿り着けない。

先輩はどれだけ優れた事業戦略があっても、どれだけ緻密なマーケティング設計があっても、それが人に届き、理解され、心を動かし、行動を促す形に変換されなければ、そのクリエイティブに価値はないのではないかと思ってしまうようだ。

クリエイターは、その一連のコミュニケーションを担う物をつくる。

サイトだけではない、コンテンツ、デザイン、音声、映像…

対象となるブランドが得たい成果をベースに伝えたい価値や世界観を、見る・聴く・触れることができる具体的な表現に落とし込む。その時に大事なのは「表現が美しいか」だけではなく、「相手とブランドを繋ぐコミュニケーションになっているか」だと、先輩は語った。

例えば、どれだけ洗練されたデザインでも、ターゲットに刺さらなければそれはノイズでしかない。逆に、シンプルな表現でも、相手の欲望や痛みに寄り添い、最短距離で本質を届けられるなら、それがクリエイティブの価値なのではないか、と。

だからこそ、クリエイターに求められるのは、もちろんつくるスキルも必要だが、それだけではないのだろう。

先輩の説明では、例えば以下のような力が必要になるという。

  • ブランドの核を理解する力(何を約束する存在か、どこを守りどこを攻めるか)
  • 市場の文脈を読む力(ターゲット、ステークホルダーは何を求め、何に抵抗を感じ、どこで接触するのか)
  • その2つを翻訳し、形にする力(誤読されず、一貫性を持って届ける設計)

様々な解釈があり、様々な答えがあることは十分に承知の上で、それでも先輩の言葉を聞いて、クリエイターの仕事は「物を作ること」ではなく、「コミュニケーションを作ること」なのではないかと感じた。

7席のBARのHPに100万円は高いのか

先輩の話を踏まえると、冒頭の問いへの答えが見えてくる。

「7席のBARのHPに100万円」が高いか安いかは、「BAR」「7席」という情報だけでは判断できない。判断するには、そのBARが「コミュニケーションを通じて何を成し遂げたいのか」を知る必要がある。

100万円が「高い」場合

例えば、常連客だけで回しているBARだとしたら、どうだろう。

新規の顧客を積極的に集める必要がなく、オーナーがSNSで十分に情報を発信できていて、予約もDMで完結している。そんな状況なら、Webサイトを通じて達成したい「コミュニケーションのゴール」が曖昧だ。

ブランド(BAR)と市場(顧客)の接点として、Webサイトが本当に必要かどうかすら問われるだろう。必要性が低いのに100万円かけるなら、それは高いと言わざるを得ない。

100万円が「安い」場合

一方で、このBARが「特別な体験価値」を届けることを重視していて、その世界観を正確に伝える必要がある場合はどうだろう。

例えば、このBARが

  • バーテンダーが20年かけて磨いた技術と哲学を持っている
  • 扱うお酒は希少なヴィンテージばかり
  • 店内は隠れ家的だが、訪れた人は必ず「特別な時間」を体験できる
  • BARだけでなく、副次的なビジネスも連動しているため、1人あたりの単価が高い

こういった価値を、Webサイトを通じて丁寧に言語化・視覚化し、「ここに行きたい」と思わせる体験設計ができるなら、100万円は決して高くないだろう。むしろ、そのコミュニケーション設計が売上や顧客体験の質に直結するなら、安いとさえ言えるかもしれない。

つまり、金額の妥当性は「どのようなコミュニケーションを作るべきか」によって定まり、初めて判断できるのではないか。先輩の話を聞いて、私はそう考えるようになった。

そもそも「Webサイトを作る」が正解とは限らない

さらに、先輩はコミュニケーションの観点で考えると、Webサイト自体が不要な場合もあると言っていた。

Instagramだけで世界観が伝わり、DMで予約が完結するなら、それで十分かもしれない。食べログに掲載されているだけで、検索から来店までの導線が成立するなら、独自サイトは不要だろう。

大事なのは、目的とターゲット、ないしステークホルダーによって手段を制限する必要はない。手段ありきで考えると、コミュニケーションがブレる。これも先輩の言葉だ。

ブランドが伝えたいこと、市場が求めている情報、そしてそれを届ける最適な接点。この3つが揃って初めて、「Webサイトに100万円かける」という判断が生まれるのだろう。

逆に言えば、この3つが揃っていない状態で「とりあえずWebサイトを作ろう」と考えるのは、コミュニケーション設計としては間違っているのかもしれない。

「作ること」ではなく、「コミュニケーションに責任を持つこと」

冒頭のSNSの投稿を見た時、私は何も考えずに「100万円は高いな」と思った。

でも、先輩の話を聞いて気づいた。私は「作ること」だけを見ていた。Webサイトという”モノ”の制作費が100万円という数字だけを見て、高い安いを判断しようとしていた。

でも、先輩の言葉を借りれば、クリエイターの仕事は「依頼されたものを作ること」ではない。

ブランドと市場を正しく接続し、コミュニケーションを成立させ、その結果に責任を持つこと。それがクリエイターの役割なのではないか。だからこそ、「何を作るか」の前に、こう問わなければならないのだろう。

  • なぜ作るのか
  • 誰に届けるのか
  • どう届けるのか
  • それは本当にWebサイトである必要があるのか…

これらの問いに答えられて初めて、クリエイターは「コミュニケーションの最終走者」として、価値をゴールまで届けることができる。それらを把握する、解釈する、目的を満たすためのコミュニケーションに、固定の価格はなく、ケースバイケースであると先輩の話を聞いて、私はそう理解した。

この話を聞いて、私は社内でクリエイターがリスペクトされている理由が分かった気がした。マーケターの私がどれだけ戦略を練っても、どれだけ設計を整えても、最終的なコミュニケーションを作ることはできない。最後に形にして届けてくれるのは、クリエイターだ。信頼できるクリエイターがいるからこそ、価値あるコミュニケーションが生まれるのだとわかった。

「クリエイターを雑に扱うマーケターがたまにいるが、私は好きじゃない」という言葉が印象に残る。

ほぼ誰にも見られない1ページに、150万円

ちなみに、この話を聞いた後、先輩は面白いエピソードを教えてくれた。

THE MOLTSは以前、ほぼ誰にも見られない1ページを作るために、150万円を支払ったことがあるらしい。

そのページのコミュニケーションの対象は、社外の顧客ではなく、コアメンバーだった。当時THE MOLTSが大切にしていた想いや考え方を言語化し、忘れないようにするためのページ。外部に公開するわけでもなく、SEOで集客するわけでもない。ただ、自分たちが前を向き続けるための、羅針盤のようなページだ。

「そのページは、150万円以上の価値があると思ってる。1ページ、誰もほとんど見ないとしても」

先輩はそう言った。

確かにそうかもしれない、と私は思った。それで経営陣が迷わず前を向き続けられるなら、安いものだ。むしろ、そのコミュニケーションがなければ、もっと大きな損失が生まれていたかもしれない。

これこそが先輩の言う「コミュニケーションに責任を持つ」ということなのだと、私は理解した。

問うべきは「どれだけの価値があるか」

7席のBARのHPに100万円かける価値があるかどうかは、結局「そのコミュニケーションに、どれだけの価値があるのか」という問いなのだろう。

先輩が教えてくれた「コミュニケーションの最終走者」という言葉は、私に新しい視点を与えてくれた。制作費の高い安いを議論する前に、まず「届けるべきコミュニケーション」が何かを問うこと。そして、そのコミュニケーションが成立した先に、どんな価値が生まれるのかを考えること。

その視点がなければ、どんなクリエイティブも、ただの”モノ”にしかならない。先輩の話を聞いて、私はそう考えるようになった。

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