なぜ私の上司はマネジメントが下手くそなのか
私の上司は、よく「おれはマネジメントができない」と言っていた。本人もそれを自覚していて、冗談めかしてネタにするような人だ。
一方、私には別の悩みがあった。上司の説明を聞いても、「日本語として聞こえるのに、意味が分からない」のだ。
上司はよくたとえ話をしてくれる。
「それって、家の設計図みたいなものだよ」「健康診断の結果が悪かったら生活を改善するのと一緒だよ」。話を聞いているときは「なるほど、そうか」と理解した気になる。
でも、いざ実行しようとデスクに戻ると「あれ、何だっけ?結局、何をすればいいんだっけ?」と固まってしまうのだ。たとえ話は分かりやすかったはずなのに、具体的に何をすればいいのか分からない。この壁にぶつかることを繰り返していた。
これは能力の問題なのか。それとも、何か別の原因があるのか。
細谷功さんの『具体と抽象』という本を読んで、ハッとした。原因は、思考の世界が全く違っていたことだった。
※ちなみにこの記事は、上司との会話の中でお互い爆笑しながら気づいたことを書いています。上司から「私がマネジメントが下手な理由として記事にしてほしい」とオーダーされて作っているもので、仲良しですのでご安心ください(笑)
思考の世界が全く違っていた
細谷さんの本の中に、分かりやすい例が紹介されていた。社内の会議室でイベント後の会話。
Aさん(具体派):「本は本棚に返して、お皿は食器棚に戻して、椅子・机は倉庫に返して、文房具は総務部に持っていって……」
Bさん(抽象派):「要は『片付けろ』ってことですね」
Bさん(抽象派)にとって、Aさんの具体的な列挙は「要するに片付けるってことでしょ」と感じてまどろっこしい。
さらに、逆のパターンも紹介されていた。
Bさん(抽象派):「この部屋のもの片付けて」
Aさん(具体派):「え、抽象的で分かりません。本やお皿はどの棚に返すとか、具体的に教えてください」
Aさん(具体派)にとって、「片付けて」という抽象的な指示だけでは、何をどこに片付ければいいのか分からないのだ。
この例を読んで、ハッとした。
まさに私の上司はBさんタイプ(抽象派)だった。私はAさんタイプ(具体派)だった。
上司と私は、思考の世界が全く違うのだと気づいた。
私の上司のマネジメントが「下手くそ」な理由
上司がマネジメントが苦手なのは、能力の問題ではない。「求められている役割と脳の得意な使い方が噛み合っていない」だけだった。
抽象的な思考をする上司は、物事の「共通点」や「本質」を一瞬で掴むことができる。個別の事例を見た時に、「これって、あの時のケースと同じパターンだな」「全部繋がってるな」と、過去の経験と紐付けて理解する。
一方で、個別具体の「今月これをやりたい」「この施策をどうするか」といった「点」の話には、あまり関心が向かない。背景や文脈から「全体」を捉えることを重視するからだ。
このため、上司が話すのはいつも「抽象化」された本質だった。しかし、私が求めていたのは「では今月、誰が何をどう実行するのか」という具体的な手順だ。
ここにギャップがあった。
マネジメント(管理)に求められるのは、まさにその「点」の積み重ねだ。今日・今週・今月の具体的な実行管理。日々の進捗確認、スケジュール調整、個別のタスク管理、数値の追跡。一つ一つの細かい作業を積み重ねて、計画通りに物事を進めていく役割だ。
この翻訳作業が、上司にとって非常に疲れる作業なのだと気づいた。上司にとっては「概念から導き出せる当たり前のこと」を、一つ一つ具体的な言葉にして説明するのは、思考を逆方向に動かす作業だからだ。
違いに気づいたことで、歩み寄れるようになった
この違いに気づいてから、対処法を実践するようになった。
「どうすればいいですか?」と丸投げするのではなく、「おっしゃる意図はこういうことですよね。であれば、手順AとBのどちらで進めましょうか?」と選択肢にして確認する。打ち合わせの後には、必ず「今日の話を具体的なタスクに落とすと、こういうことですか?」と確認するようにした。
上司は「そうそう、それ」または「ちょっと違う」と返してくれるので、ズレが減った。
この違いに気づいたことで、以前より話が理解できるようになった。
上司に「このタイトルで記事を書いてほしい」と言われた時、最初は戸惑った。でも、書いてみて分かった。この違いに気づけたこと自体が、私にとって大きな学びだった。
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