指名が増えたのに、なぜあの企業の受注率は下がったのか
問い合わせフォームに「自社のことを以前から知っていましたか?」という項目を設けて、受注率を計測している企業がいくつかある。
広告で見た、記事を読んだ、評判を聞いたなど、何らかの接点で 「もともと知っていた人」 と、ニーズが発生して問い合わせる際に 「初めて知った人」。それぞれの受注率にどれくらい差があるのかを見ているのだ。
あるB2B企業(A社)では、もともと知っていた人からの受注率が、初めて知った人の10倍も高かった。
10倍だ。つまり、初めて知った人からの受注率が3%だとしたら、もともと知っていた人は30%になる。やっぱり、受注率を上げるためには認知拡大が大事なんだなと思った。
ところが、だ。別の会社(B社)では真逆のことが起きていた。もともと知っていた人からの問い合わせの受注率が、初めて知った人よりも低かったのだ。
なぜ同じ「もともと知っていた人」なのに、結果が分かれたのか
いったい何が、この違いを生んでいるのか。
調べてみて気づいたのは、顧客の期待値と実際の会社の姿が一致しているかどうかが、受注率に影響を与えているのではないか、ということだった。
「もともと知っていた人」の受注率が10倍高かった会社(A社)と、逆に低かった会社(B社)。取り組みの違いはこうだった。
まず、A社は、広告やSEOといった施策よりも、「知人に想起してもらえること」に注力していた。
困ったときに「あの会社に相談しよう」と真っ先に思い出してもらえるよう、目の前の仕事で成果を出すこと、事例をしっかり発信すること、知人に対して誠実に情報を届けることを大切にしていた。
目の前のクライアントに全力で向き合い成果を出す。その積み重ねが紹介につながったり、具体的な支援事例を知ってもらえたりと、知人に「あの会社はこういうことをやっている」という具体的な情報として伝わっていく。
一方のB社は、認知拡大施策に積極的に取り組んでいた。
自社サイトで記事を公開しながらも、Xや、Tiktok、instagramなどでも活発に情報を発信。幅広いサービス展開と豊富な実績を前面に打ち出して、ターゲットに広く認知されることに力を入れていた。その結果、多くの人に知られるようになり、問い合わせも増えていた。
A社とB社を比べてみて、一つのことに気づいた。
A社のことを知っている人は、成果や事例を見聞きしている。だから、「自分の依頼したい内容も同じように解決してもらえるだろう」という現実的な期待値を持った問い合わせになる。この期待値は、実際の成果に基づいているので、A社の実態に近い。
一方、B社のことを知っている人は、認知拡大施策で幅広いサービス展開と豊富な実績を目にしている。その結果、「どんな規模のプロジェクトでも対応してもらえそう」「どんな領域でも相談できそう」という過度な期待値を持った人も問い合わせをする。
つまり、A社は期待値と実態が近く、B社は期待値と実態にギャップがある。
「知っている人」は、様々な経験から、その会社に対する期待値を持っている。その期待値と実際の姿が一致していれば、「思った通りだ、ぜひお願いしたい」となりやすい。一方でズレていれば、「思っていたのと違う」となって、受注に至らないことが増えるのかもしれない。
もちろん、受注率に影響する要因は価格、タイミング、競合、提案内容など他にもたくさんある。ただ、期待値と実態のバランスも要素の一つなのかもしれないと思った。
知っている人の受注率がバロメーターになる理由
そう考えたとき、以前先輩に聞いた話を思い出した。
「相手が持つ期待値は、広告やコンテンツ、SNS、セミナーといったマーケティング活動だけで作られるわけではない。
商品・サービスの質、営業担当の対応、問い合わせへの返信速度、事例記事の内容、日々の情報発信。あらゆる接点での経験が積み重なった結果として形成されていく。
しかも、相手が持つ期待値は、相手のタイミングで積み重なっていくもの。それは『結果』であって、直接コントロールできるものではない。」
先輩の話を思い出して気づいた。「知っている」というのは、企業活動全体の結果だ。だとしたら、「知っている人からの受注率」を見れば、会社全体で作っている期待値と実態が一致しているかが分かるのではないか。
知っている人の受注率がバロメーターだと気づいてから、自分の仕事が「どんな期待値を作っているのか」を考えるようになった。広告一つ、記事一つ、返信一つ。すべてが誰かの期待値を形成していることを意識して誠実に取り組んでいきたい。
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