HubSpotとSalesforce、どっちを選ぶ?私が実際に使って分かった5つの判断軸

こんにちは、THE MOLTSのCRM/SFAコンサルタントの村田です。

先日、HubSpotとSalesforceのリード管理の違いについてメルマガで書いたところ、読者の方から「今まで読んだどの記事よりも違いがわかりやすかったので、メルマガにしておくのは勿体無い。記事にした方が良い」というお声をいただきました。

そんな反響をいただくなかで改めて感じたのは、 「どちらを選べばいいかわからない」という相談の多さです。CRM/SFA導入のご相談をいただく際、必ずと言っていいほど「どのサービスがいいか提案してほしい」と聞かれます。

今回は、長年Salesforceを使ってきて、今年2月からHubSpotも実際に使っている私の経験をもとに、どちらがどんな企業に向いているのかを具体的にお話ししたいと思います。

なぜHubSpotとSalesforceの使い分けが重要なのか

「CRMやSFAって、結局どれも同じでしょ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも実際に両方使ってみると、リード管理の考え方が根本的に違います

Salesforceでは、リードは専用のオブジェクトとして存在し、条件を満たせば「取引」「取引先責任者」「商談」にコンバートされます。この構造によって、「どの営業フェーズにいるのか」「どんな商談フェーズにいるのか」をシステム上で明確に分析・可視化することができます

一方、HubSpotでは、リードという専用オブジェクトは存在しません。すべての人物データは「コンタクト」として一元的に管理されます。代わりに「ライフサイクルステージ」というプロパティによって、コンタクトの状態を「Lead」「MQL」「SQL」「Customer」などに分類します。

どちらが良い悪いではなく、企業の営業プロセスや管理方法によって、合う合わないがはっきり分かれるというのが私の実感です。

私が実際に使ってわかった根本的な違い

用語の違いが与える影響

実際にHubSpotを使い始めて最初に感じたのは、用語の違いでした。Salesforceでは「商談」と呼んでいたものが、HubSpotでは「取引」。「取引先責任者」が「コンタクト」。

「たかが用語の違いでしょ?」と思われるかもしれませんが、これが意外と大きな影響を与えるのです。とくに大人数でシステムを使う場合、馴染みのない用語というだけで「なんだか使いにくい」と感じて、結果的にシステムが定着しないリスクがあります。

システムに慣れていない方やキャッチアップに時間がかかる方が多い組織では、この点も考慮する必要があると感じています。

データ管理の精度について

HubSpotの「すぐに使える」という利便性は確かに魅力的です。運用リソースが限られているなかで、すぐに仕組みを回し始めたいプロジェクトチームには最適だと思います。

ただし、状態変更のトリガーや判断基準が複雑になると、レポートや営業活動の精度に影響するリスクがあります。実際に私たちの会社でも、ライフサイクルステージの更新基準が曖昧になってしまい、社内全員でデータクレンジングを行うことがありました。

一方、Salesforceは構造上、プロセスごとの詳細設定やカスタマイズが可能で、大量のリード情報や複数部門でのやりとりを機能的に管理・追跡したい場面に適しています。

MA機能の使いやすさ

MA(マーケティングオートメーション)機能については、HubSpotの方がシンプルでわかりやすいというのが率直な感想です。

SalesforceでMA機能を使う場合、Account Engagementの追加契約が必要になりますが、Account Engagementには完了アクションやエンゲージメントスタジオ、オートメーションルールなど様々な機能があり、逆に複雑に感じることもあります。

HubSpotならSales Hubの契約だけで、メール配信から開封状況のトラッキング、シナリオ作成まで一通り対応できるのは、コスト面でも運用面でも大きなメリットだと思います。

相談事例から見える判断パターン

実際にいただいた相談事例をもとに、私がどのような判断をしているかをご紹介します。

事例1:HubSpotを提案

クライアントの課題は、営業活動や顧客管理が各担当者に依存していることでした。情報の属人化や引き継ぎの非効率が大きな問題となっており、SFA/CRMおよびMAツールの導入を検討されていました。

従業員数1,500名以上という大規模な会社でしたが、私がHubSpotを提案した理由は、MAによるメール配信や開封状況のトラッキングが重要な要件だったことです。

Salesforceの場合、Account Engagementの追加契約が必要になりますが、HubSpotならSales Hubの契約だけで全て対応可能です。休眠顧客アプローチやシナリオ作成などMA要素の希望が多く、実際の利用ユーザーは7名と少数だったことも決定要因でした。

事例2: Salesforceを提案

このクライアントは某SFAツールを導入されていましたが、営業戦略に活用するため、営業部長の指示でCRM情報収集をされていました。「自社に最適なCRMがわからないため提案してほしい」というご相談でした。

私がSalesforceを提案した理由は、まず50名以上という利用人数の多さと、営業活動の管理をしっかりやりたいという明確な要望があったことです。さらに組織図の表示機能という具体的な要望もありました。

既存システムを使いこなせていない課題もあったため、システムの簡素化や定着化を図るという観点で、Salesforceの画面フローやアクションプランを活用すれば、入力補助などの簡素化も対応できると判断しました。

事例3:HubSpotを提案

こちらは、今までシステムを使用せずに顧客情報を管理されていたコンサルティング会社でしたが、顧問先が増えたことでSFA導入の必要性を感じておられました。社利用と顧問先への提案の両方を想定されていました。

HubSpotを提案した理由は、1人での利用という規模感にマッチしていたことと、将来的にMAも使っていきたいという要望があったことです。顧客管理や商談管理のリードタイムが短く、そこまで作り込む必要がないという状況も、HubSpotのシンプルさに適していました。

提案時に必ず確認する3つのポイント

これらの事例を通じて、私が提案時に必ず確認するポイントは以下の3つです。

1. MA機能を使うかどうか

MA機能が重要な要件かどうかで、判断が大きく変わります。メール配信、開封率の追跡、リードナーチャリングなどが必要な場合、HubSpotの方がコスト効率が良いケースが多いんです。

2. 何を目的としてそのシステムを入れたいか

単純な顧客管理なのか、複雑な営業プロセス管理なのか、受注後の業務管理まで含むのか。システムに求める機能の範囲によって、適切な選択が変わります。

3. 既存システムがある場合、なぜ定着化しなかったのか

これは非常に重要なポイントです。過去の失敗要因を把握せずに新しいシステムを導入しても、同じ問題が繰り返される可能性が高いからです。

「操作が複雑すぎた」「現場の業務フローに合わなかった」「サポートが不十分だった」など、具体的な要因を明確にしてから提案するようにしています。

あなたの会社に合うのはどっち?診断チェック

ここまでの内容を踏まえて、簡単な診断チェックを作ってみました。

HubSpotが向いている会社

  • MA機能(メール配信・開封追跡・リードナーチャリング)が重要
  • CRM/SFAをシンプルに使い始めたい
  • とりあえず基本的な顧客管理・商談管理から始めたい
  • 初期コストを抑えたい
  • 運用リソースが限られている

Salesforceが向いている会社

  • 複雑な営業プロセス管理が必要
  • 顧客・商談・活動以外の業務管理も含めたい
  • 組織図表示などABM機能が必要
  • 将来的な拡張性を重視したい
  • カスタマイズ性を重視したい
  • 既存の複雑なワークフローに合わせたい

もちろん、これは一つの目安です。実際の判断には、業界特性や具体的な業務フローなど、さまざまな要因を考慮する必要があると思います。

さいごに

HubSpotとSalesforceの使い分けは、「どちらが優れているか」ではなく、「どちらが自社に合っているか」 が重要だと思います。規模が大きいからSalesforce、スタートアップだからHubSpotという単純な判断ではなく、MA要素の重要度、利用人数、将来の拡張性など、複数の観点から総合的に判断することが大切です。

ただし、最終的な判断は個別の事情によって大きく変わりますので、具体的なご相談があればいつでもお声がけください。

著者情報

著者の写真

ASAMI MURATA

村田 麻美

CRM/SFA Consultant

業界歴8年以上。Salesforce導入ベンダーでPM・SE、外資系企業でテクニカルコンサルタントを経験。SI事業立ち上げや業務システム開発、CRM・SFA導入支援を手掛ける。

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