事業の停滞期を成長機会に変えるためによく使う7つの視点シフト

停滞期に直面する企業は少なくありません。売上が頭打ちになり、新施策の効果が薄れ、競合との差別化が困難になる。そんな状況に立たされた時、多くの経営者が「もう打つ手がない」と感じてしまうことはしばしば生じます。

私自身、いくつかのプロジェクトを通じて停滞期に向き合ってきましたが、別の角度から見てみると興味深い発見がありました。停滞は「今までのやり方が限界に達した」というサインとも読み取れ、次のステージに進むための準備期間として活用できる可能性があるんです。実際、停滞期を経て変革を遂げた企業の事例も見てきました。

今回は、停滞期を成長機会に変えるために私がよく使う「7つの視点シフト」をご紹介します。これらは実際の現場で試してきた中で、一定の効果を感じることができた考え方です。

企業が陥りがちな「成長の落とし穴」

「とりあえず今までのやり方を続けていれば、いずれ回復するだろう」

私の経験では、こうした考えが企業を長期停滞へと導いてしまうケースを見てきました。停滞する企業には共通点がありそうです。初期の成功体験に囚われ、同じ手法を繰り返してしまう。市場環境は激変しているのに、戦略だけが過去に固定されてしまっているのです。

さらに深刻に感じたのは、ある程度の規模になると組織全体がリスク回避型になってしまうことでした。「失敗したら責任問題になる」という恐怖が、イノベーションの芽を摘んでしまう。結果として、安全策ばかりを選び、ジリ貧への道を歩むことになってしまうケースもありました。

しかし、いくつかのプロジェクトを通じて感じたのは、「停滞=悪」という固定観念こそが最も問題だということです。停滞期は次の成長のための必要な準備期間かもしれません。この視点の転換ができるかどうかが、企業の未来を左右することもあるように思います。

なぜ視点を変えることが大切なのか

私が見てきた停滞期に陥った企業の中には、「もっと頑張る」「もっと投資する」「もっと人を増やす」という「量的拡大」で解決しようとするところも少なくありませんでした。ただ、これは根本的な解決にはならないケースがあります。

停滞期の突破には「質的転換」が時に必要だと感じています。今までの延長線上ではなく、全く違う次元で物事を捉え直す。この「視点のシフト」こそが、停滞期を成長機会に変える鍵になる可能性があります。

私がよく使う7つの視点シフト

1. 制約を創造性の源泉に変える

「予算がない」「人材が足りない」「時間がない」。現場ではこんな声をよく耳にします。

ただ、私の経験では、制約こそが創造性を生み出す最高の触媒になることがありました。あるプロジェクトでは、広告予算が大幅に削減されたことで、逆に顧客との直接的な関係構築に成功したんです。お金をかけられないからこそ、本質的な価値提供に集中せざるを得ず、結果として以前よりも高いロイヤリティを獲得できました。

無限のリソースがあると、人は無駄な施策も含めてすべてを実行してしまいがちです。しかし制約があるからこそ、本当に重要なことが見えてくることがあるんです。

具体的には、現在の制約をすべてリストアップし、それを「前提条件」として受け入れることから始めるのが有効でした。その上で、「この制約があるからこそできること」を探す。この思考の転換が、ブレークスルーを生み出す可能性があります。

2. 顧客の不満を宝の山として扱う

顧客からのクレームが増えてくると、多くの企業はこれを「問題」として封じ込めようとする傾向があります。

ただ、私の経験では、不満の声こそが成長のヒントの宝庫でした。なぜなら、顧客が不満を言うということは、まだ期待している証拠とも言えるからです。本当に見放されたら、顧客は黙って去っていくだけなんです。

実際に、あるプロジェクトでは顧客の不満を徹底的に分析し、それをすべて解決する新サービスを開発しました。競合が無視していた「小さな不満」に徹底的に対応した結果、明確な差別化ポイントが生まれ、市場シェアを大きく伸ばすことに成功しました。

重要だと感じたのは、不満の背後にある「本当の願望」を読み解くことでした。表面的な不満に対処療法的に対応するのではなく、根本原因を解決する。このアプローチが、競争優位性を生み出す可能性があります。

3. 競合の成功を自社の実験データとして活用する

競合他社の新サービスが話題になったとき、経営者が焦り、嫉妬してしまうことがあるのも理解できます。

ただ、私の経験では、競合の成功は無料で手に入る貴重な実験データでした。彼らがリスクを取って実験し、成功した手法を、私たちはタダで学べるのです。

あるプロジェクトでは、競合の新サービスを徹底分析し、その本質的な価値を抽出した上で、自社の強みと組み合わせた独自サービスを開発しました。単純な模倣ではなく、「なぜそれが成功しているのか」という本質を理解し、自社の文脈に合わせて再構築したのです。

重要だと感じたのは、競合を「敵」ではなく「先生」として見ることでした。彼らの成功も失敗も、すべてが学びの材料。この視点の転換が、停滞期の突破口を開くことがあります。

4. 失敗を投資として計上する

「失敗したら責任問題になる」。こんな恐怖が組織全体を支配し、チャレンジを阻害してしまうケースを見てきました。

ただ、私の経験では、失敗は「コスト」ではなく「投資」だと感じています。失敗は「何がうまくいかないか」を明確にしてくれる貴重な情報。この情報なしに成功することは難しいんです。

実際に、あるプロジェクトでは「失敗予算」を明確に設定し、四半期ごとに必ず新しい実験を行うルールを作りました。「失敗してもいいから、学びを得ろ」という文化が根付いた結果、組織全体のイノベーション力が向上し、停滞期を脱することができたのです。

重要だと感じたのは、「賢い失敗」と「愚かな失敗」を区別することでした。仮説を立てて検証した結果の失敗は賢い失敗。一方、何も考えずに同じことを繰り返した結果の失敗は愚かな失敗。この区別が、組織の成長を左右する可能性があります。

5. 内部の対立を創造的緊張として活用する

営業と開発、若手とベテラン、本社と現場。組織が伸び悩む時期には、こうした対立が表面化してくることがあります。

経営者の中にはこの対立を「和を乱すもの」として封じ込めようとする人も少なくありません。ただ、私の経験では、対立こそが新しいアイデアを生み出す創造的緊張になることがありました。

あるプロジェクトでは、営業と開発の激しい対立から、両者の視点を統合した革新的なサービスが生まれたんです。営業の「顧客の声」と開発の「技術的可能性」がぶつかり合った結果、誰も思いつかなかった第三の道が見えました。

重要だと感じたのは、対立を「問題」ではなく「リソース」として捉えることでした。異なる視点があるからこそ、イノベーションが生まれる。このことを理解し、対立をマネジメントできるかどうかが、停滞期を脱する鍵になる可能性があります。

6. 過去の資産を新しい文脈で再定義する

「新しいことをしなければ」という焦りから、過去の資産を「古いもの」として切り捨てようとする企業を見てきました。

ただ、私の経験では、成功例の多くは既存資産の再定義から始まっていました。ある製造業の企業では、長年蓄積してきた品質管理のノウハウを、コンサルティングサービスとして外販し、新たな収益源を確立したという例もあります。同じ資産でも、文脈を変えれば全く違う価値が生まれるのです。

どの企業にも、気づいていない「埋もれた資産」が存在することが多いように感じています。長年の顧客データ、独自の業務プロセス、組織文化。これらはすべて、新しい文脈で再定義すれば、競争優位性に変わる可能性があります。

重要だと感じたのは、「何を持っているか」ではなく「それをどう使うか」という視点でした。同じ資産でも、使い方次第で無限の可能性が広がります。

7. 停滞を「充電期間」として戦略的に活用する

最後に、一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、私が大切にしている視点をお伝えします。

私が見てきた中では、無理に打破しようとする企業ほど、長期停滞に陥る傾向がありました。逆に、停滞を「充電期間」として受け入れ、戦略的に活用した企業は、その後大きく飛躍していることが多かったんです。

スポーツ選手がオフシーズンに基礎体力を鍛え直すように、企業も停滞期に「基礎工事」を行うことが有効だと感じています。組織文化の再構築、人材育成、システムの刷新、ビジョンの再定義。成長期には手が回らないこれらの基礎工事を、停滞期だからこそじっくり取り組めるのです。

実際に、あるプロジェクトでは停滞期を「次の10年のための準備期間」と明確に定義し、全社をあげて基礎能力の強化に取り組みました。その結果、次の成長期には競合を圧倒するスピードで成長を遂げることができたんです。

停滞は終わりではなく、次の成長のための助走期間。この視点を持てるかどうかが、企業の未来を分ける可能性があります。

まとめ:停滞は変革への招待状

停滞期は、決して企業の終わりを意味しないと感じています。

私が見てきた大きく成長した企業の多くは、停滞期を経験していました。そして、その停滞期にこそ、次の成長の種をまいていたのかもしれません。

今回ご紹介した7つの視点シフトは、すべて「見方を変える」ことから始まります。制約を創造性に、不満を宝に、対立を創造的緊張に変える。この視点の転換こそが、停滞期を成長機会に変える鍵になる可能性があります。

ただし、知識だけでは何も変わりません。大切なのは、小さくてもいいから行動を起こすことだと思います。

著者情報

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SAORI NAGATA

永田 さおり

Strategy & Project Manager

業界歴10年以上。オウンド・コンテンツマーケティングを中心に100社以上を支援。現在はデジタルマーケティングの立ち上げから実行、組織開発・コミュニケーション設計までの総合支援を行う。

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