プロフェッショナルとは何か、月1回の共有会で気づいたこと
THE MOLTSでは毎月、全社員が集まる実績共有会を開催しています。毎回2人のメンバーが、自分のクライアントワークや社内プロジェクトについて発表する場です。
発表を聞いていると、「ああ、このプロジェクトはすごいな」と素直に感じるものと、そこまでは感じないものがあります。もちろんどちらも真剣に取り組んでいるし、それぞれに成果を出している。クオリティが低いわけでもない。でも、何かが違う。
その違いが何なのか、正直、長い間言語化できないままでした。感覚的には分かっているのに、「すごい」の正体が掴めない。うまく説明できない。そんな状態が続いていました。
「すごいな」と感じるプロジェクトの共通点
ある時、ようやくその感覚が整理できました。「すごいな」と感じるプロジェクトに共通していたのは、そのチームがクライアントの会社を成果のために動かすことができているかどうか、という点でした。
例えば、ある施策の中でしっかり成果を出し、チームの連携もうまくいっている。そういうプロジェクトの報告を聞くと、「いい仕事をしているな」と素直に思います。でもプロジェクトの影響範囲は、最初に与えられた範囲からあまり変わっていない。
一方で「すごいな」と感じるプロジェクトは、最初に与えられた小さな支援範囲が起点だったはずなのに、いつの間にか枠を超えている。関わる人が増えていたり、クライアント側の意思決定の仕方や動き方自体が変わり始めていたり。発表を聞いていて、「このプロジェクトがなかったら、今はなかっただろうな」と感じるような広がりが生まれている。
ただ先に言っておきたいのは、今から話すことが「プロフェッショナルかそうでないか」の線引きではないということです。色んな在り方があるし、色んなやり方がある。その中で、私自身が共有会を通じて感じたことを整理してみたいと思います。
社内と社外の間にある、簡単には越えられない溝
この「動かす」がなぜ難しいのか。クライアントワークをしていると、「社内と社外の壁」に何度もぶつかります。
外部パートナーとしてどれだけチームを組んでいても、社内と社外には大きな溝があります。実際に長くクライアントワークを続けてきて、この溝の深さは何度も感じてきました。社内のコンテキスト、組織のルール、過去の経緯から来る判断基準、社内だけで共有されている空気感。
全社会議で「今、会社がこの方向に向かおうとしている」という意思決定が動いていても、その流れすら外部からは掴みにくい。クライアントワークをしている人であれば、多くの方が一度は感じたことがあるのではないかと思います。
この溝がある中でクライアントの中に入り込んで、成果に向かって組織を動かしていけるかどうか。
- 誰が、どこで、何を決めているのか(=社内の力関係)
- 決まったことが、実行に移る構造になっているか(=意思決定のクセや施策の流れ)
- 途中で止まるとしたら、どこで詰まるか(=過去に失敗した施策の背景)
このような、プロジェクトの”進み方そのもの”を掴めるかどうか。ここが、1つの大きな分かれ目だと感じています。
論ではなく証拠。溝を越える第一歩
では、どうすればその溝を超えられるのか。
いきなり「大きなことをやりましょう」と提案しても、それは難しい。プロジェクトにパッと入って、まだ何も成果を出していない段階で「もっと大きなことをやりましょう」と言ったところで、「まず目の前のことをやってほしい」と受け取られるでしょう。信頼関係も実績も築けていない状態ですから、当たり前のことです。
だからこそ、まずやることはとてもシンプルで、最初に与えられた役割の中でパフォーマンスを出すこと。
論ではなく、証拠。
どんなにロジカルな戦略を語っても、その企業で成果を出したという「事実」がないと、次のステップにはなかなか進めません。でも逆に、しっかりと成果を出していけば、周囲の見る目は確実に変わります。誰が見ても分かる形で積み上げていく。そして初めて、巻き込める範囲が広がっていく。
社内メンバーの事例を1つ紹介します。過去に支援していたある企業では、ゼロからメディアを立ち上げるところから始めました。最初はとにかく、目の前の成果を出すことだけに集中しました。数字が少しずつ積み上がっていくと周りの見る目が変わり始め、巻き込める範囲が広がっていきました。2つ目、3つ目のメディアへと展開し、新しい事業部門の設立にまで繋がった。単月で数億円の利益を生み出すところまで、チームで走り切りました。
今ではその企業で、役員や専務がプロジェクトに直接入っていなくても、支援したメンバーに「話を聞け」「戦略を相談しろ」と言ってくれるまでになっている。小さな証拠の積み重ねが、ここまでの信頼につながったのだと感じています。
成果の先に必ず現れる「次の壁」
ある一定の成果を出すと、「次の壁」が必ず現れます。
最初に与えられた役割や施策の中でしっかり成果を出していくと、ある時点で気づくことがあります。「この範囲の中だけでは、これ以上の成果にはつながらない」ということです。担当している領域の中ではうまくいっている。でも、その枠内でしか成果を捉えられなくなっていて、会社全体にとってもっとクリティカルな打ち手が、視野の外にあるかもしれない。
もっと大きな成果を出そうと思ったら、壁を越えていく必要が出てきます。今ある以上の権限、人的リソース、予算の確保。そうしなければ、次のステージには進みにくくなります。
- 自分たちの担当領域ではうまくいっている
- でも会社全体の成果には、まだ届いていない
- これ以上伸ばすには、他のチームや他の施策との連携が必要
こうした状態です。ここで初めて、「このままでは限界が来る」となるものの、この壁に気づくこと自体、簡単ではありません。目の前のことで精一杯になってそこまで想像が及ばないこともある。そして気づいたとしても、実現するのはさらに難しい。
クライアントサイドへの交渉、丁寧な根回し、トップから発信してもらうべき場面の見極め、マネージャーの協力が必要な場面への対処。全社総会で時間をもらえたら何を話すか、という具体まで考えないといけないこともあります。
しかも、関わっている人たちはみんな日常業務を抱えています。すでに予算も決まっているし、社内で組まれたコンテキストの中で動いている。そこにプラスオンしてもらったり、何かを変えてもらったりするのは、簡単なことではありません。
その文脈を理解した上で、「それでもこれは前に進めるべきだ」という自信を持ち、チームの勢いを作り、「そうだよね」とみんなが自然と耳を傾ける空気を作っていく必要があります。
壁の越え方に、決まった正解はない
ここで大事なのは、この過程は「定数」ではなく「変数」だということです。
ある企業でうまくいったやり方が、別の企業で同じように通用するとは限りません。組織構造も、権限の持ち方も、文化も背景も違う。どの会社、どのプロジェクト、どの人が相手か、によってやり方は全部違うように思います。
例えば、「自分の給料を上げたい」という同じ目的であっても、A社、B社、C社で取るべきアプローチはまったく異なる。それと同じです。
私が過去にうまくいった経験をそのまま別の現場に持ち込んでも、コンテキストがまったく違う以上、同じようにはいきません。逆もまた然りで、誰かが別の場所で成し遂げたことが、自分にそのままできるとも限らない。
だからこそ、純粋にすごいなと思うのは、その現場の変数を読み取りながら、最適な動き方を都度見つけていける人です。再現性のあるフレームワークをそのまま当てはめるのではなく、その場にしかない正解に辿り着ける力。過去の成功体験を手放して、目の前の状況に素直に向き合える力。
共有会で「すごいな」と感じるプロジェクトには、この力が発揮されていることが多いと感じます。結果として意思決定が止まりにくく、成果が伸び続ける。
組織を動かすこと自体が目的ではない
最後に1つ、大事だと感じていることがあります。
クライアントの会社を動かすこと自体が「目的」ではない、ということです。あくまで、「もっと追いかけるべきものがあるよね」「もっと目指していけるよね」という文脈の中で、自然とそうする必要性が出てくるだけです。
目の前の成果に向き合い続けた先に壁が現れ、それを超えるために結果として組織を動かしていくことになる。この順序が逆になると、ただの空回りになってしまいます。証拠も信頼もない段階で大きく動こうとしても、前には進めない。この順番を飛ばすことはできないと感じています。
色んな在り方があるし、何が正しいかは私にも分かりません。ただ私が強く感じているのは、目の前の仕事で証拠を作り、変数を読み、必要な人を巻き込み、壁を1つずつ超えていく。その地道な積み重ねの中にこそ、自分にとってのプロフェッショナルの在り方があるということです。
華やかなスキルでも、特別なフレームワークでもありません。私自身、まだまだ途上です。ただ、目の前の現場に向き合い続けることを大切にしたいと考えています。
著者情報
KOTARO TAJIMA
Media Planner / Consultant
業界歴8年以上。BtoBマーケティング、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。コンサルタント・PMとして戦略設計、インハウス化・グロース支援を行う。
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