コンテンツうるさいおじさんは、どんな視点でコンテンツを見ているのか
弊社THE MOLTSのマーケティング責任者である寺倉は、とにかくコンテンツにうるさい。
クオリティ管理者である彼に対して私は年間数十本のコンテンツの確認依頼を出していますが、一発で通ることは、まずありません。大量に赤入れされるならまだいいほうで。「ちょっと根本から見直しますね」とお蔵入りするパターンが、一番ツラい。
とはいえ、泣き言を言っても仕方ないものです。
赤入れの数を少しでも減らすために、お蔵入りの数を少しでも減らすために、コンテンツうるさいおじさん(寺倉)がふだんどのようにコンテンツに向き合い、どんな視点でフィードバックをおこなっているのかを聞いてみることにしました。
※ちなみに寺倉がフィードバックする際によく「コンテンツうるさいおじさんでごめんね。」ということからその愛称を活用しています
創業時から変わらない「実績記事」のあり方
―― 今回はふだん寺倉さんがどんな視点で記事をチェックしているのか、ぜひ教えてください。たとえば、実績記事の場合はいかがでしょうか?
「論より証拠」という言葉のとおり、実績の公開はなにより信頼につながると考えているため、数ある自社コンテンツのなかでも実績記事は大事にしています。
SNSからの流入も多少はありますが、基本はコーポレートサイト内を回遊しているユーザーからの流入がメイン。弊社に興味を持ってくださっている方々がざっと眺めて、「この会社は信頼できるだろうか」「どういうスタンスなんだろうか」「自分たちが持っている課題を解決してくれるだろうか」という疑問を解消する場所です。
そのため、実績を一覧で見たときに真っ先に目に飛び込んでくる「タイトル」は特に細かくフィードバックしています。パッと見るだけでも我々の在り方( Result Driven. ≒ 成果主義 )が伝わるよう、できる限りプロジェクトを通じて得られた成果を数字で盛り込むのがルールです。
また、テキストだけでなく、ビジュアルを介して相手に伝わるものもあります。
実績記事といえば企業ロゴの前で正面を向いて並んで撮る「アイキャッチ」が王道かと思いますが、弊社の場合、それはやりません。クライアントはミッションに向かってともに突き進んでいく仲間であるため、両社間のパートナーシップが感じられるような、和やかに会話している様子をアイキャッチに採用しています。そのほうが弊社のスタンスがより伝わると思っています。
こうした実績記事の方針は「美味い酒を、飲む。」という企業理念から落とし込んだものであり、タイトルや写真などのこだわりは創業時からまったく変わっていません。
最初の実績記事(2017年):
次に本文ですが…………(話が長かったので以下略)
コンテンツの設計は、目的に応じて大きく変わる
―― なるほど。続いてほかのコンテンツについても教えてください。最近公開した「代表退任記事」の場合はどうでしたか?
私の場合、「いち従業員としてTHE MOLTSを発展させるほうがうまくいく」という思いで代表を退任し、いち従業員になりました。しかし一般的に「代表退任」というと、「代表がその会社から抜ける」ように聞こえると思います。
事実とはまったく異なるのに「寺倉がTHE MOLTSから抜ける」と誤って捉えられてしまうのは、会社にとってのデメリット。そのため、特に私たちのことをすでに知ってくださっている方々に対して、できるだけ正しく「代表退任」の真意や背景を理解してもらうことがこの記事の目的でした。
上記のターゲットに届けるために、主な流入チャネルはSNS(X・Facebook)とメルマガに設定。くわえて、読んでくれた人が「いいね」「THE MOLTSらしいね」といったコメントを添えてシェアしたくなるよう設計して、PVではなくSNS上でのポジティブなシェア数をKPIとしました。そうすれば、「代表退任」という言葉が独り歩きすることなく、ポジティブな印象とともにこのコンテンツを広めることができると考えたからです。
実際に記事化するなかで、手伝ってくれた編集者に依頼したことは二つあります。
一つは、文字数を気にしないこと。
仮に10人クリックしたとしても、ほとんどの人はさらっと見て終わりで、最後までじっくり読む人なんてたったの数名です。しかしその数名にめちゃめちゃ共感してもらえたら、ポジティブなシェアが生まれる確率が上がるはず。そのため「長文は読まれないから」と無理にまとめようとせず、どれだけ長くても最後まで読んでくれる人に確実に理解してもらうことをこの記事では重視しました。
もう一つは、読み物として成立するよう、エモく綴ること。
小さな会社の代表退任記事なんて、そもそも読み物としてのおもしろさがないと、長くすると誰も最後まで読んでくれません。また、「自分にも同じような経験があるな」「たしかに自分もそう感じたことがあるな」と一つでも多く共感ポイントがあったほうが理解してもらいやすいだろうと考えました。そのためこの記事は、すべての章に具体的なエピソードを盛り込みつつ、形式ばった表現ではなく私らしい言葉で綴ることを意識しています。
あと補足ですが、「バッチバチのプレイヤーになります」という文章はエッセンス。初稿の段階では「プレイヤーになります」という表記でしたが、どうも弱かったので何度かやり直して、「バチバチ、いや、バッチバチで」とニュアンスを付け足し、より意図が伝わるよう工夫しました。こうした言葉一つひとつへのこだわりが、小さいですがコミュニケーションを加速させる後押しになったと感じています。
読ませていただいた。僕も今年からバッチバチのプレイヤーをやらねばになりやってますが、役員もマネージャーもクライアントの課題解決に最前線で全力取り組むのが、結果会社を成長させるドライブになると感じています。
— 谷口雅敏 / シンプリック代表取締役 (@massaro55) October 9, 2024
ちょっとしたご報告と、どの企業の参考にもならないTHE MOLTSの組織の考え方 |…
バッチバチな意思決定で痺れる
— 小山和之|designing (@kkzyk) October 9, 2024
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プレイヤーをバッチバチに最高に楽しむ大史がみたい! その1点。こっちもワクワクする。
— 松浦 シゲキ | コミュニケーションプランナー (@shigekixs) October 9, 2024
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コンテンツフィードバック時に総じて気をつけていること
―― 一つひとつの記事へのこだわりがすごいですね……!(話に終わりが見えない……!)最後に角度を変えた質問を。コンテンツにフィードバックするとき、どんなことに気をつけていますか?
現在自社コンテンツは隅々までチェックしているわけではなく、まずはいったん公開してみることも多いのですが、いざ私がチェックするときは、いろいろ考えながらフィードバックしていますね。
基本的には、どうやってコンテンツを届けるのか、いわゆるデリバリーと、コンテンツを読んだユーザーにどう動いてもらいたいのかの二つがきちんと設計されているかは見ます。あとは、読者から「さすがTHE MOLTSだな」というコメントが出るかがとても重要です。
「さすが」という感想は、「そもそも相手に期待していて、その期待を超えてきたとき」にようやく生まれます。まずはTHE MOLTSを知ってもらい、期待してもらい、そして超えていく必要がある。よって大前提として、継続的なコンテンツの発信が欠かせません。
また、リリースする際の「さすが」の基準はシンプルに、自分が1ユーザーだったときに「さすがだな」と感じるかどうか。私は「良いコンテンツ」の定義は読み手次第で変わるものだと考えているので、シンプルに自分やメンバーが良いと感じるか否かを重視しています。
創業当時は「Webサイトから月間100件CVを獲得」「ゼロから100万UU達成」などでふつうに喜んでいましたが、今の私にとっては「月間3000件CVを獲得」「業績何倍」「株価上がる」「新しい概念で市場開拓」といったレベルでないと、もう「さすがTHE MOLTS」とは思いづらい。だから、アウトプットのためには実務ベースの実績が必要なので、毎年THE MOLTSが実務で求めている水準は年々上がっています。
ちなみに、特定のSNSアカウントや媒体、THE MOLTSに対する各コンテンツの反応などは毎日ウォッチし続けています。反応を見れば、読み手がどういう状態で、どうコンテンツを受け取ったのかがわかり、ターゲットの解像度が上がります。「最低でも毎日Xをチェックするように」「公開したコンテンツの反応は必ず見るように」と編集メンバーへ指示を出しているのはそのためです。
恋愛に例えるならば、いきなり告白したところで玉砕しても仕方ありません。相手のことを深く知り、日々の対話を重ねて自分のことも知ってもらい、関係を築いていくなかで、自分の言葉が相手に刺さる確率を上げることができます。これはコンテンツでも同じで、相手の立場で考えることでようやく、コミュニケーションが作れるようになると思っています。
……とはいえ、私はクリエイターではないので、できることに限りはありますし、うまくいかないことの方が大半ですが。
コンテンツうるさいおじさんから得た学び
取材を終えて。
タイトルやアイキャッチ、本文の言葉一つひとつに意図があり、本当にいちいちうるさ……いや、コンテンツへのこだわりが深いことを感じた取材でした。もし私がいざゼロから実績記事を作ったとしたら、きっとアイキャッチは特に意図せずエントランスのロゴ前で撮影していたことでしょう。
なにより、「どんなシーンでこのコンテンツに触れるのか」というターゲットの解像度の高さに驚きました。寺倉はよく「カスタマージャーニーのなかでターゲットはいまどういう状態にあり、目的を達成するにはどんな刺激とストーリーが必要なのか考えることが重要」と繰り返し話しますが、自社コンテンツにもまさにその考え方が踏襲されていました。
「読み手目線が大切」なんて、私も頭では重々理解しています。ただいざ作り手になると、作り手だからこそ、ついつい読み手の立場がすっぽ抜けてしまいがちなことも身を持って痛感しています。何本も何本も記事を書き続けていると、「さすが!おもしろい!」と心から思えないものであっても、「業務だから」ととりあえず作ってしまう瞬間がつい生まれてしまうものです(そんなとき、当然おじさんは絶対にGOサインをくれない)。
なんのためのコンテンツなのか。そのためにターゲットとどんなコミュニケーションをとる必要があるのか。作り手のメガネを外し、いかに読み手の気持ちになれるか。コンテンツうるさいおじさんから得たこれらの学びは、いかにふだんの業務で実行していけるかが肝、ですね。
今後のコンテンツ作りも、気を引き締めてがんばっていこうと思います……!!!
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