「CV増やして満足しがち」なBtoBマーケターが読んだら、きっと背筋が伸びる話。

こんにちは、THE MOLTSに副業で関わっているライターです。

私は本業で長らくBtoBマーケティングを担っているのですが、慢性的に抱えている大きな悩みがあります。それは……ついつい「CVを増やして満足しがち」であること

その先の営業プロセスをどこか「自分の守備範囲外」と捉えていると言いますか……。

「営業は自分にはできない! 入口は頑張って増やすので、後はよろしくお願いします!」マインドと言いますか……。

これ、おそらくBtoBマーケターあるあるですよね。

結局のところ自分が一番コミットメントできるKPIがCV数だからか、「KGIは新規売上だよ」といくら言葉で表現しても、CV獲得→商談→受注というプロセスの後半戦にあまり意識が及ばず、どこか他人事感が抜けないんです(涙)。

そんななか、THE MOLTSには「CVを増やして満足」してようものならぶっ飛ばされそうな、営業やその他のプロセスにもどんどん入り込んでいく “BtoBマーケティング” のスペシャリストがいます。その名も、永田さおりさん。

そんな永田さんに、「どうしたらそんなにマーケティングの枠を超えて他の領域に突っ込んでいけるんですか?」と無邪気に質問してきました。

マーケティングの枠をはみ出した成功事例

―― はじめに、マーケティングから他の領域にはみ出した結果、大きな成果につながった事例を教えてください。

永田:一つ目に、株式会社ライフテックス様の事例を紹介します。もともと数年前からコンテンツSEOを支援していて、月間1,800件以上のCV獲得と年間3.2億円の売上創出を実現していました。しかし2024年、GoogleのコアアップデートによってCV数が毎月15%減っていく事態に直面。どれだけリライトしても、元のCV数の50%程度しか回復しないという危機的な状況でした。

そこで私はビジネスモデルから見直し、CV数ではなく「客単価」に着目。単純にCV数を増やすのではなく、CV1件あたりの価値(売上)を高めるべく、複数商品をパッケージングして客単価を上げにいきました。この結果、売上前年比1.5倍とV字回復できました。

このときもし私が「コンテンツSEO」しか頭にない人間だったら、「新しいメディアを増やす」といった解決策しか出せなかっただろうと思います。

永田:続いて、株式会社mtc.様のプロジェクトでは、ブランディングや営業、採用まで幅広く支援しています。

最初の依頼内容は、インバウンドリード獲得のための「オウンドメディア運用」でした。ですが流入を増やしたとて受け皿となるサービスページが「訪問者目線でそもそも何を頼める会社なのか、いまいちよく伝わってこないのではないか」という懸念があったことから、Webサイトのリブランディングを提案。コンテンツSEOと同時にリニューアルを実施しました。結果、約2,000件のリード獲得と80件の商談実現という成果を生み出しています。

また、「商談が増えても対応できる人が限られている」という課題も抱えていたので、採用担当がいないのなら私がやります」と、現在は採用もお手伝いしています。ダイレクトリクルーティングの実行やカルチャーブック策定までご一緒していますね。

―― 営業だけでなく採用まではみ出しているんですね……! コンテンツSEOのプロから、BtoBマーケティングのプロへと変貌するのに、なにかきっかけはあったのでしょうか?

永田:以前、自社サービスの責任者を任されたときの経験が大きいと感じています。そのサービスはもともとコンテンツSEOを軸に集客していたのですが、なかなか赤字を脱却できず困っていました。

「このままではいけない」と、改めて類似するサービスのマーケティング施策を徹底的に研究したところ、コンテンツSEOではなく「メルマガ」からCVにつなげるほうが筋が良いかもしれないと気づき、マーケティング手法を大きくシフトしたんです。その結果、パートナーの協力などもあり、なんとか黒字化まで持っていくことができました。

この「自社サービスをなんとかしなきゃいけない」状況下で自分が得意なコンテンツSEOを離れて施策を打ち成功したことが、「どんどん枠をはみ出していこう」というマインドを後押ししてくれていますね。

その気がなくても、越境せざるを得ない理由

―― それでは改めて、BtoBマーケティング支援において永田さんがマーケティングの枠をどんどんはみ出していく理由を教えていただけますか。

永田:シンプルに、いくらリードを獲得しても、売上が発生しないと意味がないからですね。1,000件のリードを取っても、最終的に1件しか受注につながらない、または改善していく学習に使えないのであれば、極端な話999件はムダになります。自分たちがとったリードが売上につながっているかどうか、受注までのプロセスをきちんと追いかける。そのなかでボトルネックを見つけたら、自ら解消しにいく。……そうやっていると、結局営業や商品企画、採用まではみ出さざるを得ないんです。

もちろん、コンテンツSEOなど依頼されたマーケティング業務をただ遂行するだけでも売上が伸びるケースはあります。ですが最小の努力で最大の成果を生み出せるような、より効率的な方法を見逃してしまう可能性が非常に高い。だからこそ、私はつねに「全体を俯瞰して見る」ことを意識しています。

現にBtoBマーケティングのプロジェクトにおいてプロセス全体を俯瞰してみると、マーケティング部門とは別の部門に大きな課題が見つかることがたびたびあります。

たとえば某社の場合、社内のパワーバランス上、営業部門のほうが声が大きく、「リードの質が悪い」「このままだと商談数が足りないからリード数を増やしてほしい」とマーケティング部門はいつも文句を言われていました。しかし実際に私が現場を深く見にいってみると、営業力不足のほうが明らかに課題であり、ニーズ顕在層のリードは十分な数集まっていたんです。

もし仮にこの課題に目を向けることなく、営業から言われるままにただリードを増やしたとしたら、ニーズ準顕在層・潜在層にターゲットを広げざるを得なくなり、ますます受注率は下がっていたことでしょう。

このように、自部署の状況にしか目が向いていないと「ムダ」が生まれがちです。

効率的に成果を生み出すためには、どの部門に所属していようが、リード獲得から受注までのプロセス全体を把握して、どこにテコ入れすると改善インパクトが大きいのか考えることが欠かせません。

枠をはみ出るときの現実的な課題と対策

組織の縦割り問題をどう突破するか

―― とはいえ現実問題、いざ他部署に入り込んでいくのってなかなか大変じゃないですか……。たとえば、「営業部門が非協力的でなかなかコミュニケーションがうまくとれない」とき、永田さんならどうしますか?

永田:「本質的な提案であればきっと相手も理解してくれるはず」という思いはあるものの、たしかに現実はそうスムーズにはいきません。特にメンバーやリーダークラスには「こうやるべき」と言っても聞き入れてもらえないことが多々ありますね。

非協力的な人に対して、私のような社外の人間が正面からアレコレ提案したとしても、なかなか響かないものです。よってプロジェクトを進行するうえでブロッカーになりそうな人がいる場合は、その人の上司とコミュニケーションをとりにいきます。直接交渉するのではなく、上から方針として落としてもらうわけです。

もっというと、どのプロジェクトにおいても組織におけるキーマン(その人がYESといえば予算が承認されチームが動くような人)を探し出して、関係性を築くことを徹底しています。とにかくこまめに相談したり、あえて小回りの効く施策でクイックに成果を出して、具体的な実績を持って信頼を獲得しにいったり。丁寧に、日頃からコミュニケーションをとるようにしています。

これら「社内調整」「日頃のコミュニケーション」は手間で遠回りに感じられるかもしれませんが、仕事を進めるうえで、つまりミッションを達成するうえで欠かせないものだと私は考えています。

「営業は私の仕事じゃない」マインドをどう変えるか

―― 「営業はやりたくない」というふうに、マーケティング以外のことに取り組むのに腰が重たいチームメンバーがいる場合はどうしますか?

永田:クライアントの前に出ることに抵抗があるメンバーがいたら、「お客様の生の声を聞いてマーケティングに活かしましょう」と説得することが多いですね。実際、「お客様の顔がわからない」とはつまり、「誰のためのマーケティング活動なのかわからないまま仕事をしている」ことと同義です。

企業規模にもよりますが、スタートアップなど小規模な営業マーケティング組織であれば、極論、営業もマーケティングもみんな両方やったほうが、顧客解像度が高い状態で施策が打てるので成果が出やすいと思います。

BtoBマーケティングはマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスで分業化することがある種のセオリーになっているかと思いますが、そこにとらわれ過ぎず、自分たちの組織にあった体制を模索することが重要ですね。

―― 「営業の知識がないから、受注率が高いのか低いのかも判断できない。だからコミュニケーションがとりにくい」なんて場合はいかがでしょうか?

永田:前提として、つねに相手と対等である必要はないと思っています。「わからないから教えてください」と素直に言えばいい。「教えてほしい」と言われて、邪険に扱う人はそういないじゃないですか。

「いま忙しいから」と断られることがあるかもしれませんが、それはおそらく、普段からコミュニケーションをとっていないからだと思います。やっぱりここでも、日頃のコミュニケーションが物を言いますね。

守備範囲を広げてもコミットメントを下げないために

―― ちなみに、そもそも自分がキャパオーバーで他部署にはみ出している場合ではない! なんてケースもありませんか?

永田:横断する部署が増えて守備範囲が広がっていくと、たしかに自分の負荷はどんどん上がります。しかし自分がタスクに溺れてしまうと、不測の事態が起きた場合にすばやくリカバリーできません。

そのため私は、自分にしかできない業務に注力し、あとは全部アシスタントに任せることを徹底しています。現在は9社支援していますが、無事にプロジェクトを前に進められているのは常時3人いるアシスタントのおかげです。

お恥ずかしい話ですが、私はGA4のレポートをうまく作れませんし、Excelの関数も苦手です。ただこれらは周囲にもっと得意な人がいるからこそ、あえて習得してこなかったスキルでもあります。ゼロからイチを作るような戦略の立案やクオリティ管理は必ず自分でおこない、コンテンツ制作などの実作業はアシスタントにどんどん任せる。このほうが、結果的に周りのメンバーの成長にもつながると考えています。

マーケティングの枠をはみ出てみると、こんないいことがある

―― 最後に、実際にあらゆる方面へ越境してみて、永田さん自身にはどんないいことがありましたか?

永田:まず、できることの幅が圧倒的に広がりましたね。「一国の城を任されても、まぁなんとかなるだろう」という感覚が日に日に増しています。結果として、いただく対価も上がっているし、付き合う人たちのレイヤーもどんどん上がってる。「私とは価値観が違うな」と感じる人も同時に増えましたけどね(苦笑)。

「自分の守備範囲はここまでだから、ここまでしかやらない」という考え方でもそれはそれでいいと思っています。ただ、もっと成長したい、いちマーケターではなく事業責任者や経営者になりたいのであれば、もっとプロセス全体を見る必要があると思います。リードは、あくまで点に過ぎませんからね。

取材を終えての学び

ミッション達成を本気で追いかけていたら自然と越境せざるを得ないし、自然と周囲とコミュニケーションをとらざるを得ない。……永田さんの言葉にはそんなメッセージが詰まっているようでした。

これまでマーケティングの枠をなかなかはみ出せなかったのは、「部署の壁を超えるのが大変だから」「得意ではないことをやるのは億劫だから」「リソースが足りないから」ではなく、シンプルに、ミッションに対する本気度がただ足りなかっただけなのかもしれません。

自分一人だとつい怠けてしまいがちなので、周りを巻き込み、「私たちが達成したいミッションはこれだよね」と言葉を掛け合いながら、これからの仕事に向き合っていきたいと思います。

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