生成AIを活用して、マーケティング戦略を作れるのか

私が生成AIを活用し始めた頃一つの疑問を抱いていた。「マーケティング戦略のような非定型業務は、AIで本当に作れるのだろうか」と。

この疑問を持つようになったのは、業務を定型業務と非定型業務に分けて考えるようになったからだった。それぞれ、以下のように定義している。

  • 定型業務:業務の流れや手順が明確に決まっており、繰り返し発生する業務のこと
  • 非定型業務:業務手順や内容が明確に決まっていない、状況に応じて柔軟な対応が必要な属人性の高い業務のこと

例えば、定型業務にはデータ入力、請求書作成、在庫管理、経費精算などがある。一方、非定型業務には戦略立案、新規事業企画、問題解決、クリエイティブ制作、顧客との複雑な交渉などが含まれる。生成AIは、定型業務を自動化しやすく、非定型業務は自動化しづらい側面がある。

ただ、それぞれの業務を明確に分けられるものではなく、かつ人によって捉え方も違う。

例えば、コンテンツ制作は、(それっぽい)コンテンツを作る = 定型業務として捉える人も、(目的のために価値ある)コミュニケーションを作る = 非定型業務として捉える人もいる、など。

その中で、誰がみてもマーケティング戦略は明らかに後者だ。経験や判断力、創造性が求められる非定型業務の代表格と言える。

だからこそ私は疑問に思った。非定型業務を自動化できるのか?AIで本当にマーケティング戦略を作ることができるのだろうか。

一発出しは不可、全プロセスを実装する

実際にAIを使ってマーケティング戦略を作ってみることにした。ただし、マーケティング戦略といっても幅が広すぎる。そこで一般的なBtoBマーケティングに絞り、全体像を描き、現状でどのような施策をどのようなコミュニケーションで行うべきかを提案できるかをトライしてみた。

最初のアプローチは単純だった。「この企業のBtoBマーケティング戦略を考え、実際に行うべき施策を提案してください」という感じで依頼したのだ。結果は散々だった。出てきた提案は表面的で、どこにでもありそうな内容ばかり。クオリティが低くて見てられないレベルだった。

ただ、私自身がマーケティング戦略を立てる際にも一発で完璧なものを作っているわけではない。段階的にプロセスを踏んで、徐々に精度を上げていく。

そこで発想を変えて、私がどういうプロセスを歩んでマーケティング戦略を立てているのかを整理し、それぞれのステップごとにプロンプトを作り、それらを自動で進行する仕組みを構築してみようと思ったのだ。

具体的に作成したプロンプトは以下の通り。

  1. 対象企業の情報整理(定型化された項目に対してリサーチ)
  2. ターゲティング(どのような企業、役職が投資対象となるか)
  3. 競合リサーチ(最低3社の競合を、定型化された項目に対してリサーチ)
  4. ポジショニング(あらゆる観点で四象限マップを作る、どういうポジショニングを取るべきか)
  5. ペルソナ(複数人の日常の課題から購買・契約までのプロセスをストーリーとして抽出)
  6. カスタマージャーニーマップ(態度の設定と、各態度ごとの状態や刺激となる訴求は何か)
  7. 態度ごとの施策(事前にBtoB施策150を態度ごとにまとめたデータを作り、最適化配置)

特に最後の施策立案では、事前にBtoB施策150項目を態度ごとにまとめたデータベースを作成し、最適な配置ができるよう準備した。これらすべてを自動で繋げ、チューニングを繰り返し行えるようにした。

重要だったのは、それぞれのプロセスで私が普段実施しているものと同じレベルのアウトプットが出るよう、プロンプトを細かく調整したことだった。また、すべてのプロセスの結果をファイルとして保存するよう設計し、後から振り返りや修正ができる仕組みも整えた。

自動化された戦略をどう使っているのか、何を得られたのか

初期の仕組みは精度に問題があった。しかし、プロンプトを変更し続けることで「あれ、これいけるかも?」という手応えを感じるようになった。もっとやり込まないとな、とは思ったが、かなりいい感じになってきた。最終的には、悪くても85%程度、時にはそのまま出せるようなクオリティのものも生まれるようになった。

これらのアウトプットは完成した戦略ではなく、対象となる企業・事業の担当者とディスカッションするための資料として使う。初回に出す資料としては悪くない。AIが生成した内容をベースに、人間同士の議論を通じて戦略を練り上げていく。そういう位置づけで考えると、かなり使えるレベルになってきた。

ディスカッションで違う部分が見つかった時、または何か違和感を感じた時は、全プロセスで保存したファイルを見て修正を加えてしまえば、次のプロセス以降も自動化できるので、変更が容易となった。

さらに面白いのは、さまざまな要素を混ぜて思考を膨らませられることだった。例えば、競合分析に市場の傾向を加えて競合の推論に活用したり、ポジショニングをあらゆる角度で作り直してみたり、ターゲティングを変えた場合のシナリオを検証したりできる。

また、カスタマージャーニーマップを通じて、施策の方向性に合わせて外部ツールとAPI連携しSEOのキーワードを自動抽出したり、サイトのディレクトリ構造や、ページ構成における要素やコミュニケーションのベースを作ったり、態度ごとの企画や現状の施策との差分を抽出したりなど、一気に幅が広げられた。これを人の手でやっていたら結構大変な作業になる。

最も感動したのは時間短縮効果だった。従来、私がマーケティング戦略を立てる場合、ヒアリングから戦略構築まで3〜4日の実作業時間がかかり、期間としては1ヶ月程度をもらっていた。それが、生成に10分、修正を含めても1時間程度で完了するようになった。

この変化により、キックオフミーティングで戦略のベースとなるディスカッションができるようになった。プロジェクトが一気にスピードアップし、議論の濃度も向上した。これは本当に素晴らしい変化だと感じている。

AIは優秀な「ツール」であり、非定型業務の活用には経験値が必要

この一連の検証を通して、「AIでマーケティング戦略は作れるのか」という最初の疑問に対する私なりの答えが見えてきた。「作る」の定義次第だが、普通に作れている。ただし、当たり前だが最後に必ず人が確認し、人が判断する必要がある。

特に非定型業務においては、アウトプットの責任は人にある。AIはあくまでツールであり、人の確認なくして完成することはありえない。この原則は絶対に変わらないと思っている。

今年の4月頃にこのようなプロセスを作り続け、今ではかなりの業務を自動化できるようになってきたが、その中で思うことは二つ。

一つ目は、非定型業務の自動化においては、一回の生成で完璧を目指すのではなく、これまで行っていたすべてのプロセスを組み立て、必要な情報を用意することが重要だということ。自分が描いている通りのプロセスごとのアウトプットが出る状態を作れば、かなり高いレベルで再現できる。

二つ目は、ジュニアクラスのメンバーにはこの仕組みを渡せないということ。アウトプットの質や違和感を感じる能力がないと、適切なフィードバックができない。AIが出したものが正解ではないことを判断するには、人としてのビジネススキルや経験が不可欠だ。

現在もさまざまな案件でこのシステムを活用したり、日々改善している。プロジェクトの初期段階で戦略的な議論を開始できるようになったことで、クライアントとの関係性や提案の質も向上している。AIは確実に私たちの働き方を変える力を持っているが、それを活かすかどうかは結局のところ人次第なのだという学びになった。

著者情報

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TAISHI TERAKURA

寺倉 大史

Marketing Planner

業界歴10年以上。事業開発、オウンドメディア、コンテンツマーケティング支援を展開し、延べ100以上のプロジェクトを経験。藍染職人、株式会社LIGを経て、マーケティングプランナーへ。

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