RSAで「PDCA回さなくなる問題」をどう解決するべきか

運用型広告の現場で、よくこんな声を聞きます。

「RSA導入後、何を改善すればいいのかわからない」 「アセットのIMPしか見えないから、効果が判断できない」 「とりあえずアセットを増やしているけど、本当に意味があるのか」

RSA(レスポンシブ検索広告)が主流になってから、こんな悩みを抱える運用担当者からお声がけをいただきます。

特に2025年6月以前は、アセットレベルでは表示回数(IMP)のデータしか取得できず、クリック以降のパフォーマンスが見えない状況が続いていました。これにより、アセットの真の価値を測ることができず、改善の方向性を見失う運用担当者が急増したように思います。

私は運用型広告の業界で様々な立場を経験してきましたが、繰り返し目にするのが「RSAでPDCAが回せなくなってしまった」という問題です。

多くの運用担当者が改善の方向性を見失い、「Googleの自動化に任せるしかない」という諦めモードに陥っています。なぜこの問題は起こり続けるのでしょうか。

今回は、なぜRSAでPDCAが回せなくなってしまうのか、どう向き合うべきかを考察してみます。

そもそも「RSAでのPDCA」とは何か

この問題を理解するために、まず「RSAでのPDCA」とは何かを整理しておきます。

運用型広告における「PDCA」とは、大きく「仮説設定」と「効果検証」に分けて考えることができます。

従来の広告文では、「広告文A vs 広告文B」という明確な比較ができました。しかしRSAでは、複数のアセット(見出し・説明文)が自動的に組み合わされるため、「どの要素が良かったのか」「なぜ成果が改善したのか」を特定することが困難になりました。

さらに問題を複雑にしているのが、冒頭でも触れたデータの制約です。2025年6月まではIMP以外のデータが見えず、アセットの真の価値を測ることができませんでした。

つまり、RSAでのPDCAとは「限られたデータの中で、複雑な要素の組み合わせから改善ポイントを見つけ出し、継続的に最適化していくプロセス」と言えるのではないでしょうか。

では、具体的にどのような状況でPDCA停滞が起こるのでしょうか。よくある失敗パターンを見てみましょう。

なぜ「PDCA停滞」が起こるのか

現場で特によく聞くのが「改善しようという気持ちはあるけど、結局何もできずに時間が過ぎてしまう」という悩みです。

パターン1:IMP頼り改善パターン

アセット改善を行う際、IMPデータしか見られないため、「表示回数が少ない=悪いアセット」と判断してしまうパターンがあります。その結果、単純にアセットを削除し、新しい訴求を考える作業に終始してしまいます。

しかし、表示回数が少ないアセットでも、実際にはコンバージョンに強く寄与している場合があります。IMPだけで判断することで、本来価値のあるアセットを削除してしまい、結果的にパフォーマンスを悪化させてしまうのです。

パターン2:初期設定放置パターン

RSA導入時に「自動化が進んだから細かい調整は不要」と考え、初期設定をそのまま放置してしまうパターンです。気がつくと数ヶ月間、何も変更していない状態になっています。

この背景には「触らない方が良い結果が出るのでは」という期待と、「何を変更すれば良いかわからない」という不安が混在しています。結果として、本来必要な改善機会を逸し続けてしまいます。

これらのパターンに共通するのは、「改善したい気持ちはあるが、適切な改善方法がわからない」という状況です。従来のPDCAサイクルが機能しなくなり、運用担当者が改善の方向性を見失ってしまっているのです。

このような失敗パターンが生まれる背景を理解するには、RSA普及に伴う構造的な変化を知る必要があります。

RSAが普及した背景とその影響

なぜこれほど多くの運用担当者が同じ問題に直面するのか。それは、プラットフォーム側の大きな方針転換があったからです。

Googleはインテントマッチの推奨や自動入札のデータ母数確保を理由に、広告グループの統合を推進してきました。従来の「1広告グループに1キーワード・1広告・1リンク先」から「できるだけまとめて効率化する」方向にシフトし、運用担当者の役割が「細かい調整と改善」から「大枠の設定と監視」に変化しました。

つまり、運用型広告の現場は「自動化による効率性」と「人間による最適化」の間で揺れ動く構造があります。

こうした変化を経て、「RSAでPDCA停滞」が起こり続ける構造的な原因を深堀りしてみましょう。

なぜこの問題が起こるのか:構造的な原因

個人のスキル不足や勉強不足として片付けられがちですが、実は「RSAでPDCA停滞」には構造的な原因があります。

データの可視性問題

前述の通り、2025年6月以前はアセットレベルで表示回数(IMP)しか取得できませんでした。クリック率、コンバージョン率、コンバージョン数などの成果データが見えないため、「どのアセットが本当に効果的なのか」を判断する材料が不足し、根拠に基づいた改善が困難になっていました。

Googleの推奨方針による制約

Googleは「できるだけ広告グループをまとめる」「アセットのバリエーションを増やす」方向性を示してきました。これにより、従来重要だった「キーワード・広告・リンク先の関連性」を細かく調整する機会が減少し、運用担当者の裁量や改善余地が狭まってしまいました。

運用の本質的課題

RSA導入により、本来やるべき「関連性の検証・改善」が困難になり、「とりあえずアセットを増やす」作業しか残らなくなってしまいました。「ユーザーの検索意図に対して最適な広告とランディングページの組み合わせを提供する」という本質的な思考が軽視される傾向が生まれました。

また、従来のTDトライアル(広告文テスト)による改善スキルが、RSA環境では直接的に活用しづらくなりました。長年培ってきた改善手法が通用しなくなったことで、多くの運用担当者が「何をすれば良いのかわからない」状態に陥り、「考えても仕方ない」「やれることが限られている」という諦めモードが蔓延しています。

これは個人の意識や能力の問題ではなく、システムの問題なのです。

なぜ解決できないのか:よくある対策の限界

「もっとアセットを増やそう」「データを見て判断しよう」「PDCAを回そう」

こうした掛け声はよく聞きますが、なぜうまくいかないのでしょうか。

根拠のないアセット追加の限界として、「とりあえずアセットのバリエーションを増やそう」という対策は、戦略なく実行されることが多く、効果測定も困難です。何を根拠にアセットを追加するのか、どの程度の期間でどのような指標を見て判断するのかが曖昧なまま進められるため、結果的に改善につながりません。

また、データ待ちによる機会損失として、「自動化の学習期間だから」「まだデータが足りないから」と言い続けて、具体的なアクションを先延ばしにしてしまうパターンがあります。確かにデータの蓄積は重要ですが、その間にも改善できる要素は存在します。データ待ちを理由に何もしないことで、本来得られたはずの改善機会を逸してしまいます。

実践的な解決アプローチ:「本質回帰」の重要性

では、どうすればよいのか。私の経験から、実際に効果のあった方法をご紹介します。

Step1:基本設定の見直し

まず、現在の設定状況を客観的にチェックすることから始めましょう。

  • カスタマイザ機能を活用し、検索キーワードとの関連性を高められているか
  • アセット固定が過剰になり、せっかく作成したアセットの表示機会を奪っていないか

アセット固定の適切性確認では、アセットの固定を無駄にしすぎて、せっかく作成したアセットが適切に表示できていないケースがないかをチェックします。固定の目的と効果を明確にし、必要以上の制約をかけていないか見直しましょう。

こうした基本的な設定を見直すだけでも、改善の余地は見つかります。

Step2:データドリブンな改善

2025年6月以降、クリック以降のデータが見えるようになったことを活用し、より精度の高い改善を行います。

実際の改善事例では、私たちが支援したケースでIMPだけでなくコンバージョンデータまで見ることで、「IMPは少ないけどCVにつながるアセット」を発見できました。また、そのような狙いで新しく追加したアセットでもCV獲得を確認できています。

具体的には以下の視点でチェックします。

  • 意図的にリーチしたいユーザーへの広告アセットを残せているか
  • 同じ意味合いの訴求を統一化し、別の訴求を入れる余地はないか
  • IMPが少ないアセットも、CVへの貢献度を確認してから判断する

Step3:ユーザー起点での再設計

RSA導入前の「1広告グループに1キーワード・広告・リンク先」の細かさから、まとめすぎた状態を経て、改めて重要になるのが本質的な思考です。

ユーザーモチベーション×コミュニケーション設計として、キーワード(ユーザーモチベーション)に対して、広告+ランディングページ(コミュニケーション)をどう整えていくべきかを考え直すことが、改めて重要で成果につながります。

キーワード(ユーザーの検索意図)に対して、広告とランディングページがきちんと応えているか。広告で訴求した内容が、LP上で適切に提供されているか。この「ユーザー起点の設計」こそが、成果改善への最短ルートです。

まとめ

RSAに関する悩み(PDCA停滞・改善方法の不明・効果測定の困難)は、運用型広告に関わる多くの方が直面している現実です。

しかし、みんなが諦めているからこそ、地道な改善に取り組む価値があります。「とりあえずアセット追加」から脱却し、ユーザー起点でコミュニケーションを設計し直すことで、成果改善への道は開けます。

AIや自動化技術がどれだけ進歩しても、「ユーザーの検索意図を理解し、最適なコミュニケーションを提供する」という本質は変わりません。

もしあなたもRSAのPDCAで悩んでいるなら、まずは現在の設定状況をチェックし、クリック以降のデータを活用した改善から始めてみてください。小さな一歩が、大きな成果の差につながるはずです。

著者情報

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KENGO MATSUO

松尾 謙吾

Marketing Strategist / Consultant

業界歴17年以上。デジタルマーケティング戦略設計・運用型広告(月額広告費10万円から数億円まで)を中心に支援。新規事業のテストマーケや計画設計も含め、様々なフェーズの支援を経験。

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