広告で事業をグロースさせ続ける人の「目の前に人がいたら、どう話すか」という思考法
「自動入札、広告グループの構成、キーワードの選定…やるべきことは分かるけれど、なぜやるのか説明できない」
「CPAは追っているけれど、この施策が事業成長にどうつながるのか見えない」
「媒体推奨に従っているだけで、自分で判断できていない」
広告運用の現場で、こんな声をよく聞きます。
こういった状況に陥りやすい背景には、施策の複雑化があると考えています。複雑化するほど「どうやるか」に集中してしまい、広告を「コミュニケーション」ではなく「テクニック」として見てしまいがちです。
私はこういった状況から抜け出し、事業をグロースさせる判断をするために、2つの思考法に立ち返ることが重要だと感じています。
事業をグロースさせる判断を生む、私の2つの思考法
代理店時代から事業会社まで17年以上、広告運用を中心に様々な事業のグロースに携わる中で、2つの思考法を大切にしてきました。
1つは、複雑になったものを、シンプルな問いで捉え直すこと。「誰に、何を、どう届けるか」というコミュニケーションの原点に立ち返る視点です。
もう1つは、見ているレイヤーを変えて、全体像を把握すること。実行・全体最適・戦略という異なる視点から考え、今本当に解決すべき課題を見極めます。
この2つの思考法を使うことで、月間数千万規模の広告予算を3倍以上に拡大させた事例や、サービス立ち上げから1年で業界トップ水準へ、競合と大きく差がある状態から2年でNo.1水準へと成長させた事例など、複数の事業グロースに貢献してきました。
それでは、この2つの思考法を具体的にどう使ってきたのか、紹介します。
思考法①:営業視点でシンプルに捉え直す
私は広告を考える時、「目の前に人がいたら、どう話すか」という「営業視点」を常に持つようにしています。
これは、広告を「テクニック」ではなく「コミュニケーション」として捉える考え方です。複雑に見える施策も、「目の前に人がいたら、どう話すか」と考えれば、シンプルな問いに戻すことができます。
例えば、目の前に人が来て「これください」と言われたとき、どう説明するでしょうか。
まず相手の反応を見て、この人は何を求めているのかを考え、説明の仕方を変えるはずです。予算が限られていそうなら手頃なプランを提案する。機能重視なら詳細なスペックを説明する。など、営業や接客では、当たり前にやっていることだと思います。
広告は、目の前にいない人へのコミュニケーションです。1対1ではなく1対多で、顔の見えない人たちに届ける。でも本質は対面の接客と変わらないと考えています。対面なら当たり前にやることを、デジタルでもやる。「この人は何を求めているか」「どう伝えれば届くか」を考える。
つまり、営業視点とは「この商品を誰に、どういうメッセージで届ければその人のニーズに答えられるか」で考えることです。そうすると「よくわからない人になんとなく出している」という状態を回避できると思います。
広告運用では、推奨されるテクニックが変化します。昔は「細かく分けることが正しい」と言われていましたが、今は「まとめることが推奨」されています。機械学習の精度が上がり、AIが自動で最適化できるようになったため、細かく分けすぎるとデータが分散してしまうからです。
こうした変化に対して、もし広告を「コミュニケーション」ではなく「テクニック」として見てしまうと、「推奨されているから」という理由だけで実行してしまう、思考停止の状態に陥りやすくなります。
でも営業視点で考えれば、推奨に従うだけではなく、対応方法を自分で判断できるようになります。なぜなら、判断基準がシンプルだからです。「相手に届けるメッセージが変わるなら、分ける意味がある。変わらないなら、分ける意味がない」。
例えば、昔は「新宿 焼肉」と「焼肉 新宿」のような細かい違いまで人が判断していました。順番が違うだけですが、「新宿 焼肉」はエリア重視、「焼肉 新宿」は料理重視。対面営業なら提案の仕方を変えるように、広告もリンク先も出し分けていました。
今はAIがこうした違いを自動で判断できるようになったので、細かく分ける必要性は減りました。でも、営業視点の判断基準そのものは変わらないと考えています。「ユーザーのモチベーションが違うなら、届けるメッセージも変える」。この考え方があれば、AIに任せる部分と人が判断すべき部分を見極められるのではないでしょうか。
営業視点で考えることで、「媒体推奨がこうだから」ではなく、「このコミュニケーションは伝わるか」で判断できるようになります。推奨されるテクニックは変わり続けますが、コミュニケーションの本質は変わらないと考えています。
思考法②:視点レイヤーを変えて全体像を把握する
営業視点で考えることで、「誰に、何を、どう届けるか」が明確になります。コミュニケーションとして捉えることで、推奨に振り回されずに判断できるようになります。
でも、事業をグロースさせるためには、もう一つの視点が必要だと感じています。それが、見ているレイヤーを変えて、全体像を把握することです。
例えば、「売上と利益、どちらを優先すべきか」「今、この施策に投資すべきか、抑えるべきか」。こうした問いは、営業視点だけでは答えられません。なぜなら、「誰に、何を届けるか」は明確でも、「いつ、どこに、どれだけ投資するか」は別の判断軸が必要だからです。
私は、こうした時に「今、どのレイヤーの課題なのか」を見極めるようにしています。具体的には、「実行・全体最適・戦略」という3つのレイヤーで考えます。
実行レベル: 自分の担当領域をどう伸ばすか。広告なら「このキーワードのCPAをどう改善するか」を突き詰める。
全体最適レベル: 複数の施策を総合して、最大成果を出すには? 広告・SEO・LPをどう組み合わせるか。どこに投資すべきか。
戦略レベル: 事業全体で、何を一番重視するのか。「利益を取るか、シェアを取るか」「今はチャレンジすべきタイミングか」。
これは比喩的に言えば、「営業マン・営業部長・経営者」のような視点の違いです。同じ数字を見ていても、見ているレイヤーによって判断が変わります。
実際にある事業会社の支援で、こんな相談を受けたことがあります。「売上と利益、どちらも伸ばしたい。でも、どちらを優先すべきか分からない」。
この問いは、実行レベルではありません。戦略レベルの問いでした。まず「利益率が商品によって違う」という全体構造を整理し、次にKGI(重要目標達成指標)の優先順位を決めました。
「利益を最優先するなら、売上未達でも受け入れる。シェアを取りに行くなら、一時的に利益率を犠牲にしてでも投資する」。この戦略レベルの判断により、過去最高の投資額で、過去最高の利益を達成できました。
もし、これを実行レベル(「CPAを下げる」)だけで考えていたら、答えは出なかったと思います。
この3つのレイヤーを意識的に切り替えることで、「今はどのレイヤーの課題か」「どのレイヤーで判断すべきか」が見えてきます。事業をグロースさせるには、実行だけでなく、全体最適や戦略のレイヤーでも判断できる必要があると考えています。
本質を見失わないために心がけていること
施策が複雑化するほど、考えることが増えて、難しく感じるかもしれません。
でも、私が大切にしているのは、複雑なテクニックではなく、シンプルな問いに立ち返ることです。
「目の前に人がいたら、どう話すか」「今、どのレイヤーの課題なのか」。
この2つの問いがあれば、複雑な施策もシンプルに整理できます。私自身も、一個ずつ考えていくことを大切にしてきました。
常に心がけているのは、「本当に事業のためになるか」「ユーザーのためになるか」を見失わないことです。推奨されているから、ベストプラクティスだから、ではなく、本質を見て、自分で判断する。そうすることで、事業をグロースさせる施策が見えてくると感じています。
著者情報
KENGO MATSUO
Marketing Strategist / Consultant
業界歴17年以上。デジタルマーケティング戦略設計・運用型広告(月額広告費10万円から数億円まで)を中心に支援。新規事業のテストマーケや計画設計も含め、様々なフェーズの支援を経験。
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