コンテンツマーケティング記事作成術|成果に繋がる戦略的手法
今や「一企業一メディア」といっても過言ではないほど、多くの企業がオウンドメディアを持つ世の中となりました。
そのような中、CV獲得や継続的な流入を確保するための一施策として、コンテンツマーケティングに注力する企業が増えてきたように感じます。
弊社では、オウンドメディアの運営代行を行う傍ら、一部コンテンツ制作を請け負うケースもあります。最近では、その影響もあってか、特にコンテンツSEOに関するご相談や制作のご依頼が増えてきました。
例えばコンテンツSEOの場合、1本10万円からコンテンツの制作をお受けしています。
業界の相場や他のコンテンツ制作会社からすでにお話を聞かれた企業さまにとっては、正直なところ、この値段だけを聞いたら「高い……」と思われるかもしれません。
しかし、私たちは、ただ闇雲に1本10万円という値段設定をしているわけではありません。その値段を付けている、それなりの理由があります。「なぜ、その値段設定なのか?」という質問を多くいただくため、その理由と根拠について説明させていただきたく、今回の記事を執筆いたしました。これからコンテンツ制作を外部に委託しようと考えている企業さまはもちろん、今後自社でコンテンツ制作をしようとお考えの企業さまにもご一読いただけますと幸いです。
※本記事では、コンテンツマーケティングの中でも検索流入を得るための「コンテンツSEO」に関する記事作成方法を解説します。
常に考えるべきは「Google対策」ではなく、目の前にいるユーザー
企業によりコンテンツ制作の方法はさまざまですが、その一つとして、SEOで上位表示を獲得しているコンテンツの中身や要素を真似て量産するというケース(Webだけの情報を100%活用する)があります。
確かに、すでに上位表示を獲得できているコンテンツ(=Googleから評価を受けている)を真似ることこそが、最短距離を歩むことのように思えるかもしれません。
しかし、もしそれらの方法で結果を残せたとしても、Webの情報だけを寄せ集めたコンテンツは、企業として制作するべきではないと考えます。
その理由は、大きく分けて2つあります。1つ目は、本来目を向けるべきはずのユーザーに焦点が当てられない可能性が高くなること。2つ目は、その企業である必要性がないことです。
検索エンジンから評価されるために「ユーザーのためになる良いコンテンツをつくる」ということは、おそらくコンテンツSEOに取り組んでいる多くの人が認識している事実でしょう。また、Googleがオフィシャルサイトを通じて公言しているメッセージでもあります。
しかし、Webだけの情報に頼りきってしまうことで、制作するコンテンツは検索結果の影響を強く受け過ぎてしまうように感じます。つまり、いくらペルソナを設定し、カスタマージャーニーマップを引き、コンテンツ制作をしたところで、そのような制作方法では似たようなコンテンツばかりを量産してしまうことになります。
いってしまえば、それは単なるGoogle対策であり、ユーザーのためのコンテンツではありません。
SEOの検索結果に焦点を当てるのではなく、ユーザーに焦点を当ててこそはじめて価値のあるコンテンツといえるのではないでしょうか。
もしも、ユーザーに焦点を当ててコンテンツをつくった結果、他社の内容と似てしまっても、正直それはそれで良いと思います。
似ているといっても、一言一句、同じではないでしょうし、タイトルや見出しなど詳細は異なるはずです。また、内容をよく読み込めば必ず明確な違いがあるでしょう。
ユーザーに焦点を当てたコンテンツをつくるのか、検索結果に焦点を当てたコンテンツをつくるのか——。この2つには、大きな違いがあります。
また、Webの情報だけに頼ったコンテンツ制作をした場合、情報の信頼性はどうなるのでしょうか? オウンドメディアを通してコンテンツを発信していくということは、その責任の所在が自社にあるということを意味しています。
企業として情報発信をする以上、いくら時間が掛かってコンテンツ本数が量産が難しいとしても、正しい情報を正しく発信していくことこそが重要なのではないでしょうか?
コンテンツ制作で注力すべきは、ユーザーニーズの深掘り
コンテンツ制作で最も注力すべきことは、ユーザーニーズをどこまで深く掘り下げられるのか……ということです。
私たちは、「ユーザーは何が知りたくて、何に悩み、なぜ検索をしたのか」を徹底して考え抜きます。
第1章でも述べた通り、弊社では、ユーザーのニーズを掴むための一ヒントとして、Webで情報収集をする場合もあります。
しかし、それはあくまで「参考」であり、Webの情報がメインとなるコンテンツ制作は基本的には行いません。
100%Webからの情報だと、検索結果だけにとらわれ過ぎて、既存のコンテンツに引っ張られてしまう。また、その企業のコンテンツである必要性がないと考えるからです。
ここからは、弊社のコンテンツ制作プロセスについて、お伝えします。
ユーザーニーズの深掘りは、ペルソナを設定するところから始まります。
設定したペルソナが、どのようにしてそのコンテンツにたどり着いたのか、カスタマージャーニーマップを活用し、ユーザーが達成したいゴールを目指します。
カスタマージャーニーマップは、一般的にキーワードを考える際に用いることが多いですが、弊社の場合ではコンテンツ制作の際にも活用します。
ここからは例を挙げてお話しします。例えば、「新宿 美味しいイタリアン」というキーワードで考えてみたいと思います。
キーワードだけを見ると、その言葉の通り、新宿で美味しいイタリアンを探しているユーザーと読み取ることができます。また、Webで情報収集をする際、同じワードで検索しても、新宿のイタリアンの店が羅列された記事が出てくることが予想できるでしょう。
しかし、ユーザーニーズを深く掘り下げることにより、新たに見えてくる情報があります。
今回さまざまなリサーチを経て、設定したペルソナは以下の通りです。
【ペルソナ】
中野翔太(26歳)、都内在住、独り暮らし
目黒区在住、家賃7万5千円、給料28万(手取り)、年収400万前後、彼女あり
IT会社勤務(マーケティング部)社会人4年目、PCで検索
【このキーワードで検索した背景】
・最近できたばかりの彼女がいる(付き合って最初の記念日である)。
・記念日は平日である、仕事帰りに彼女と食事に行く約束をしている。
・彼女の勤務先と自分の勤務先に中間地点である新宿をチョイス。
・あまり騒がしい店は嫌だ。落ち着いた雰囲気のある店がいい。
・コスパの良い、カジュアルレストランが良い。
・「おいしい」が大前提である(とびきりの店を探している)。
※ペルソナは複数、考えられます。オウンドメディアのターゲットやCV(または目的)から逆算し、それに近しいペルソナを設定し、検索背景を考えます。
当初キーワードやコンテンツの中身だけではわからなかった、「コスパ」「雰囲気の良い」「特別な時間を過ごせる」「落ち着いた、騒がしくない」といったユーザーの本音を見つけることが出来ます。
これはあくまで一例であり、もっと詳細なユーザープロフィール、検索背景、コンテンツまでの道のりを考えれば、さらなる発見があることでしょう。
私自身、これまで多くのメディアに携わってきました。
あくまで持論ですが、コンテンツSEOは、人との「対話」に近いのだと考えます。
ユーザーは、キーワードを通してこちら(書き手)に質問を投げ掛けてきます。私たちは、その質問に答える。しかし、直接話ができないので「コンテンツ」という手段を介して、ユーザーからの問いに答える。
人と話をする際もそうだと思いますが、一方的に話をすることは、会話ではなく単なる独り言です。会話とは、相手がいて初めて成り立つものです。
コンテンツも同じだと考えます。相手の考え(ユーザーニーズ)を無視し、こちらが載せたい情報を載せているだけでは、ユーザーは反応をしてくれません。
相手の意図(ユーザーニーズ)を汲み取り、思いやることで、初めて会話ができるのではないかと考えます。
ユーザーニーズは思いやりです。どこまで相手を思いやり、それを体系化できるのか、ということに尽きるのではないでしょうか?
検索意図を正確に把握するためにはGoogleの検索結果から推測する
このようなユーザーニーズの深掘りをより確実に行うためには、検索意図の調べ方を理解することが重要です。
検索結果の観察やサジェストキーワードの調査といった具体的な手法を用いることで、自分の想像だけに頼らず、実際のユーザーの検索目的を客観的に把握できるようになります。
Googleの検索結果が「なぜその形になっているのか」を深く考え抜くことで、表面的なキーワードの裏に隠された真の検索意図を見抜けるようになります。
これらの実践的なアプローチを活用することで、競合記事を真似るだけでなく独自性のあるコンテンツ設計が可能になり、ユーザーの求める情報を的確に提供して上位表示を実現できるようになります。
企業は正しい情報を正しい方法で発信することが重要
弊社の場合、ユーザーニーズを掘り下げる過程を経て、はじめて本文の執筆に入ります。
書く分野にもよりますが、執筆する際には、書籍や雑誌、インタビュー、取材などをメインの素材とします。
また、企業の一員として制作をするため、それ相応の勉強は欠かせません。0からコンテンツづくりを進める場合がほとんどなので、専門書籍や文献資料など必要に応じて入念に読み込むこともあります。
制作に必要であれば、その道のプロに話を聞き、都度専門家の確認を挟むことも欠かせません。
そのため、コンテンツ制作には時間がかかりますし、必然的につくれる本数も限られていきます。
自分が読者であれば、誰が発信する情報を読みたいのか、またどのような情報を信じるのか。
法律のコンテンツを書くことになり、弁護士が書くのか、何の知識もない一般人が書くのか。どちらのコンテンツを信じるのか、という違いではないでしょうか? その答えはいわずもがな、誰もが同じ答えを口にすることでしょう。
企業が情報発信をする上で、正しい情報を正しく発信することは、絶対に忘れてはいけません。
ここまでのお話で、コンテンツSEOにおいて、検索上位のまとめ記事ではなく、ユーザーニーズに重きをおいたコンテンツをつくること。また、そのコンテンツは企業の顔として情報発信される以上、その道のプロとしての主張や正しい情報を正しく発信することが重要であることはおわかりいただけたかと思います。
獲得できるキーワードの数 ≒ コンテンツの数ではあるが、それは数の話であり、PVとはあまり関係がない
コンテンツ制作を行う上で、もう一つ重要なポイントを最後に述べておきます。獲得出来るキーワードとコンテンツの数は、二アリーイコールではあるものの、PVやCVとの因果関係は必ずしもないと弊社では考えています。
つまり、コンテンツの本数を増やしたところで、必ずしもPVやCV数が伸びるわけではないということです。
では、それらの数値を上げるためにどうすれば良いのか。それは、狙ったキーワードで検索上位を取るしか方法はありません。
極端な例ですが、検索で一位を取ったコンテンツが30本あるメディアと、圏外のコンテンツが100本あるメディアでは、明らかに前者の方が結果が出ているといえるでしょう。
つまり、どんなに的外れなコンテンツを量産したところで、検索で上位表示を取れないことにはユーザーにも見つけてもらえないばかりか、結果もついてこない……ということです。
また、ある企業の一例についてお話しましょう。運営して8カ月になるメディアは月間50万PVあります。
コンテンツの本数はどのくらいあると思いますか? コンテンツ数は100を下回る、80本前後です。
内訳は、検索で5位以内にあるコンテンツが8割を占めます。つまり、いかに狙ったキーワードで検索の上位表示をおさえられているのか、が重要ということを示しています。
本記事冒頭では、いいコンテンツづくりをするためには、Google対策だけではいけないと述べました。
しかし、逆にコンテンツづくりばかりに気を取られてしまっていては、せっかくの苦労が水の泡になってしまう可能性があります。
最短距離で望む結果を出すためには、「良いコンテンツづくり」と「検索上位になるための努力」という両者のバランスを取りながら真摯なメディア運営を行っていくことが大切であると私たちは考えています。
まとめ|ユーザーに寄り添い、徹底的に考え抜かれたコンテンツを制作する
今回の記事では、なぜ弊社の記事単価を10万円という値段で設定しているのか、という内容を中心に、コンテンツSEOの記事を制作する上で大切にしていることについて話を進めてきました。
ぜひ読者の皆さまには、ユーザーに寄り添い、徹底的に考え抜かれたコンテンツを制作していただきたいと思います。
本記事が、貴社のメディア運営の一ヒントとしてご活用いただければ、幸いです。
よくある質問とその回答
コンテンツ制作で最も意識すべきことは、ユーザーニーズをどこまで深く掘り下げられるのか……ということです。
そのため、「ユーザーは何が知りたくて、何に悩み、なぜ検索をしたのか」を徹底して考え抜く必要があります。
具体的には、以下のステップを踏みます。
- ペルソナを設定して、ユーザーニーズの深掘り
- カスタマージャーニーマップを活用して、設定したペルソナが、どのようにしてそのコンテンツにたどり着いたを想定
このように、Web上だとしても相手の意図(ユーザーニーズ)を汲み取り、思いやることで、初めてコミュニケーションが成り立ちます。
より詳しい内容は「コンテンツ制作で注力すべきは、ユーザーニーズの深掘り」でご覧ください。
著者情報

SAORI NAGATA
Strategy & Project Manager
業界歴10年以上。オウンド・コンテンツマーケティングを中心に100社以上を支援。現在はデジタルマーケティングの立ち上げから実行、組織開発・コミュニケーション設計までの総合支援を行う。
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