炎上案件を任された私が、信頼関係を築いてクレーム0にした話

こんにちは、THE MOLTSのコンサルタントの松尾です。

これまでの経験で、炎上案件を任されることが何回かありました。

そのなかでもとくに印象的だったのが、塾の広告案件でした。クレームだらけの状況から、最終的にクレーム0で担当し続けることができたという経験があります。

正直、この経験は今でも私のクライアントワークの基盤になっています。炎上案件って、構造がわかりやすいんですよね。成果が出てない、説明に納得がいっていない。この2つがほぼすべてなんです。

でも、だからこそ立て直すためのポイントも明確だったりします。今回は、実際に私が経験した炎上案件の立て直し方について、リアルな体験をもとにお話ししたいと思います。

もし今、炎上案件で悩んでいる方がいましたら、少しでも参考になればと思います。

厳しい状況で引き継いだ塾の案件

その案件はかなり厳しい状況でした。

目標未達が続いてしまい、その原因や対策の報告についてクライアントが満足していない状況でした。担当者変更などで対処をしても改善がしきれておらず、クライアントの不満が蓄積していました。

営業担当が一人がんばって耐えていて、もう一人外部のコンサルも入って立て直そうとしていたのですが、やっぱりそれでもだめで、私が追加された状況でした。

初めて顔合わせで参加した定例会では、クライアントが一度も笑顔を見せてくれませんでした

空気が重すぎて、営業担当の方とコンサルの方も相当苦しい思いをされてたと思います。普通だったら「うわあ……これヤバいな」って思う状況ですよね。

そして、なぜか私だけ定例会の後に一人残るよう、クライアントからお声がけされました。

「インハウスにするかも」の相談

そこでクライアントから、「ぶっちゃけインハウスにするっていう話も社内で上がっているんですけど、どう思いますか?」と相談されました。そのときはすごく和やかな雰囲気でした。

私は率直に答えました。

「代理店を切り替えるということは、正直たぶん今の解決にはならないと思います。インハウスは担当者の方のリソースがひどい状況になるだけなので、それもおすすめできません」

普通だったら「そんなこと言わないでください」と営業トークになりそうですが、クライアントの事業のことを考えたら、これが一番誠実な答えだと思ったのです。

報告のスタイルを根本から変える

次のタイミングから私が報告するようにしたのですが、やり方を根本から変えました。

数値の実績を読み上げるだけではなくて、「ポイントはここで、だからこうしていかないといけない」ということをちゃんと伝えるようにしたんです。

それと同時に、事業理解をさせてもらうための質問も積極的にしていきました。たとえば、以下のような質問です。

  • 教室別に入塾率の違いがあるか
  • 実際に売り上げになるための問い合わせを増やすために考えないといけないことって何があるか
  • サイト側の問題としてコンテンツのところでどういう課題があるのか
  • 競合と比べてどういう客層が多いのか

クライアントが持っている情報をいろいろ聞くことによって、「それならこういうやり方をしてみましょう」と議論ができるようになりました。

素直に向き合い、信頼関係を築く

ここが一番重要なポイントだと思うのですが、説明責任のところってすごく難しいんですよね。

WEB広告は細かに数値化できるものの、何でもかんでも全部解明できるわけではありません。それを素直に「これ以上は深掘りしても要因わからないです」って線引きを伝えてあげるのが大事だと思います。

「ここからはもう推測でしかないですけど」と前提を伝えて話すとか、「現状の分析に時間をかけすぎるよりも、次のアクションをどう改善していくか、一緒に考えていきましょう」と建設的な方向に導いてあげるんです。

こういうスタンスでやっていくうちに、目標を達成できる月も出てきたり、未達でも先方が納得してくれるようになったりということが大きな変化でした。

クライアントが持っている情報をいろいろ聞いて「それならこういうやり方をしてみよう」と議論ができるようになった。これが信頼関係の基盤になったと思います。

コロナという試練を乗り越える

その後、一番きつかったのはコロナが来たときでした。競合他社がオンラインを先行して強化してテレビCMなどもやっていたので、かなり苦しい状況に……。私たちもオンライン対応をしてもらって活用していったのですが、やっぱり厳しい状況は続いていました。

でも、このときにクライアントから言ってもらえた言葉が印象的だったんです。

「松尾さんがここまで頑張ってくれているのに未達なんだから、もうそれは仕方ない。少しでもできることを一緒に考えてほしい」

もう完全に信頼関係ができているって感じられた瞬間でしたね。コロナという外的要因で、それまでに築いてきた関係性が崩れることはありませんでした。

一方で、施策としては「コロナだからオンラインで」という流れが強かったのですが、それでも塾に通わせたいという本気度の保護者の気持ちを考えるなら、コロナ対策の徹底をちゃんと丁寧に打ち出していくこともやっていきました。オンラインに流れがちななかで、安心感を与える訴求で対策を打つことを試したのです。

炎上案件立て直しの法則

一番大事なのは「本気度」を伝えること

この経験を通して学んだ一番大きなことは、「事業を伸ばすために必死でこっちも考えてます」という姿勢を向こうが感じてくれることが何より重要だということです。

そのためには、まず事業として持っている情報をなんでも引き出しにできるように質問することから始めます。そして理解した上で広告の役割を改めて話すようにする。そして何より大切なのは、分析に固執せず、建設的な次のアクションを提案することです。

炎上の構造はわかりやすい

冒頭でもお伝えしましたが、炎上の理由は実はわかりやすくて、成果が出てないことと、それに対しての説明に納得がいっていないが大半です。

あとはミスが連発してしまうなど別の理由のときもありますが、基本的にはこの構造です。

だったら、この2つを解決すれば炎上は立て直せるんです。成果を出すか、納得してもらえる説明をするか。でも成果がすぐに出ないなら、適切な説明責任を果たすための情報整理と、説明の仕方を工夫して建設的な議論へと導くコミュニケーションを取れるようにすることが重要だと思います。

さいごに

振り返ってみると、あの塾の案件で学んだのは「炎上の立て直し方」というより「信頼関係の築き方」だったのかもしれません。

私が一番大切だと思うのは、広告の数値を説明することではなく、一緒に事業を良くしていこうとする姿勢なんです。

「この数値の意味がわからない」って言われたときに、無理やり理由をでっち上げるのではなく、「だったら一緒に原因を探しませんか?」と提案する。そうすることで、お互いが同じ方向を向けるようになります。

もちろん、すべての炎上案件がうまくいくわけではありません。でも、少なくとも「なぜ炎上したのか」は見えてくるはずです。そして、それがわかれば、次にどうすればいいかも見えてくると思います。

関係が悪化している状況では、精神的に辛いこともあると思います。ですが、その分だけクライアントとの関係が深くなる可能性も秘めているので、これをチャンスと捉えて行動することが大事だと思います。

著者情報

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KENGO MATSUO

松尾 謙吾

Marketing Strategist / Consultant

業界歴17年以上。デジタルマーケティング戦略設計・運用型広告(月額広告費10万円から数億円まで)を中心に支援。新規事業のテストマーケや計画設計も含め、様々なフェーズの支援を経験。

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