「とりあえずテストマーケで広告配信」の前に、一度立ち止まって考えておきたいこと
こんにちは、THE MOLTSのコンサルタントの高橋です。
広告運用の仕事をしていると、「とりあえずテストマーケ的に広告を出稿してみたい」という相談をクライアントからたびたび受けます。
たしかに運用型広告は気軽に出したり止めたりできるため、テストマーケにはもってこいの施策です。しかしながら、この「とりあえず」のアプローチは、ある種「リスク」をはらんでいるとも私は考えています。
今回は、とりあえずテストマーケで広告配信してしまう前に、私がいつもクライアントにお話ししていることを記事にまとめました。
身だしなみを整えずに告白していないか?
新しいサービスやキャンペーンを始めるとき、「完璧を求めていたら永遠にスタートできない」「まずは小さくテストしてみて、そこからPDCAを回していこう」と考えるのは、ごくごく自然なことです。
クライアントから「テストマーケをやりたい」と言われたら、私も「意味がないのでやめましょう」とまでは言いません。
ですがやはり、最低限「競合他社と比較したときに “自社が選ばれる理由” が訴求できている状態」にまでは持っていってから、広告を配信したほうがいいんじゃないか……と私は思っています。
なぜなら、とりいそぎ見切り発車でスタートする広告配信って、まさに「身だしなみを整えずに告白するようなもの」だからです。
一回相手に悪い印象を与えてしまうと、それを払拭するのはとても難しい。フられた相手に繰り返しアプローチしても成功する確率は極めて低いでしょうし、相手に不快感を与えてしまうことすらあります。
この現象と同じように、サービスが未完成な状態でユーザーにアプローチすることはディスブランディングにつながり、未来の顧客を減らしてしまうリスクがあります。
さまざまなサービスで溢れている昨今において、「なんかちょっとイヤだな」というネガティブな印象を一度持たれると、ユーザーは容易に競合他社のサービスに流れてしまうもの。一度失った信頼を回復するためには、「一回生まれ変わる」ぐらいの気持ちでサービスの根本を見直さなければなりません。
多くの企業は、こうした「とりあえずテストマーケで広告配信」がはらむリスクを見落としてしまっているのではないかと思います。
「CVはとれても売上につながっていない」も黄色信号
また、テストマーケに限らず、BtoBサービスでよく見受けられる「広告でコンバージョンは取れているものの、売上につながっていない」ケースも同じリスクが当てはまります。
たとえば、広範囲すぎるキーワードで集客した結果、サービスとのマッチ度が低い見込み客を大量に獲得してしまい、最終的な受注率が極めて低くなるケース。魅力を大げさに訴求して申し込みは集めたものの、実際に提供できる価値とのギャップが大きすぎて契約に至らないケースなどなど。
これらは、コンバージョン数だけで見ればマーケティングの成果が出ていると言えます。ですが売上につながっていないだけでなく、ディスブランディングになっている可能性があることを、広告運用者は理解しておく必要があると思います。
広告費は「消化」ではなく「投資」するもの
マーケティングの現場で働いていると、「広告経由のコンバージョンを増やしたい」「確保した予算を使い切らなきゃいけない」と、どうしてもマーケティング部門の指標を達成するために施策を動かしがちです。
しかし本来広告費とは、「消化」するものではなく、従業員の給料やボーナスと同様に、会社の大切な資源から捻出して「投資」するもの。
従業員が努力して生み出した利益を「とりあえず」「マーケティング部門のために」使ってしまうぐらいなら、「そのお金は従業員のスキル開発やモチベーション向上に投資したほうが長期的な全社の成長につながるのでは?」と、正直私は思います。
だからこそクライアントから広告運用を任せてもらったときは、慎重に、戦略的に、成果にこだわって広告費を投資したい。いつもそう思いながらこの仕事に向き合っています。
「とりあえずテストマーケ」の代わりに
それではいざ、「競合他社と比較したときに “自社が選ばれる理由” が訴求できている状態」を作るためにオススメのアクションを紹介します。
私がよくやるのは、自社と競合他社のLPを徹底的に比較分析することです。この分析は、自分たちのサービスを冷静に、ユーザー視点で見直すよい機会になります。
自社 VS 競合他社 LP比較ワーク
- 主要キーワードで競合5社のLPを選定し、自社と競合の勝因・敗因・引き分けを記入できる評価フォーマットを用意。
- 競合LPと自社LP、ユーザー視点で「どちらでCVするか」を選ぶ。
- 勝因・敗因・引き分けの理由も洗い出す。複数人で結果を持ち寄り、自社に足りない要素を特定。競合に勝てる状態までLPを改善する。
また、LPをブラッシュアップするとき、訴求を研ぎ澄ませるうえで大切にしていることが2つあります。
1つは、「誰をコンバージョンさせるか」「誰をコンバージョンさせないか」を明確に定義すること。
広告主側はつい「あらゆる世代の人たちにこのサービスを使ってほしい」なんて思いがちですが、それは現実的ではありません。その状態で広告を打つのは、渋谷の交差点の真ん中でただ「好きだ!」と叫ぶようなもの。派手に叫べばチラっと見てもらえるかもしれませんが、「なんだか怪しい人だな」とそっぽ向かれるのがオチでしょう。
一方で、意中の相手が定まっていれば、告白の方法をもっと最適化できるはずです。相手のライフスタイルや好みを把握して、適切なシチュエーションで、適切な言葉を選んで告白をする。そうすれば、告白の成功率も当然高くなります。
もう一つは、人間の根源的な欲求に着目すること。
「ノウハウを求めている人に必要な情報を提供する」といった表層的なニーズではなく、より深層にある欲求に訴えかけることで、顧客の行動を促しやすくなります。
人々の生物学的にプログラムされている8つの欲求
- 人生を楽しみ、長生きしたい。
- 食べ物、飲み物を味わいたい。
- 恐怖、痛み、危険を免れたい。
- 性的に交わりたい。
- 快適に暮らしたい。
- 他者に勝り、世の中に後れを取りたくない。
- 愛する人を気遣い、守りたい。
- 社会的に認められたい。
強い欲求ではあるが生物学的な根源欲求には適わないもの
- 情報が欲しい。
- 好奇心を満たしたい。
- 身体や環境を清潔にしたい。
- 能率よくありたい。
- 便利であってほしい。
- 信頼性、質のよさが欲しい。
- 美しさと流行を表現したい。
- 節約し、利益を上げたい。掘り出し物を見つけたい。
参考文献:『現代広告の心理技術101』ドルー・エリック・ホイットマン、ダイレクト出版
さいごに
今回のように、私はよくマーケティングを「恋愛」に置き換えて解説します。
「マーケティング」も「恋愛」も、相手ありきの「コミュニケーション」なので、通ずるものが多いんです。「とりあえずテストマーケで広告配信」は、身だしなみも整っていないのに、ひたすら多くの人に告白するようなもの。「意中の相手に振り向いてもらって長く付き合いたい」と本気で思うのなら、相手をじっくりと理解し、ライバルよりも自分を磨いてから告白することが大切です。
著者情報
SHOTA TAKAHASHI
Marketing Director / Consultant
業界歴9年以上。リスティング広告を中心とする運用型広告の代行、インハウス化支援を担当。また企業の広告担当としての既存代理店との折衝にも従事。
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