CDPは本当に必要か?目的から逆算するデータ基盤の選び方

「顧客データを一元管理したい。CDP(Customer Data Platform)の導入を検討しているが、本当に自社に必要なのか判断がつかない」。こうしたご相談をいただくことが増えています。

実際に支援を進めてみると、CDPが最適解だったケースは限られていました。GA4とGoogle広告の連携で十分だったこともあれば、MAツールのほうが合っていたこともあります。だからこそ私は、まず「何を実現したいのか」を整理するところから始めるようにしています。

この記事では「CDPが必要な場合と、そうでない場合の判断軸」を、支援の中で見えてきた実感とあわせてお伝えします。

※この記事は、2026年2月26日に開催した「GA4とBigQueryで小さく始める顧客データ基盤入門セミナー」の内容をもとに作成したものです。

そもそもCDPとは何をする仕組みなのか

CDPとは、Customer Data Platformの略で、顧客データを「収集・蓄積・統合・活用」するための仕組みです。

さまざまな場所に散らばっている顧客データを集め、データウェアハウスやデータレイクに保存し、掛け合わせて意味のあるものにしていく。そしてセグメントを切って各マーケティングツールに渡したり、分析に利用したりする。これが一連の流れです。

CDPの特徴として押さえておきたいのが、匿名段階から顧客を識別できるという点です。一般的な顧客データベースは、フォーム登録や既存顧客になってから追跡が始まります。一方でCDPは、リード獲得前のクッキーベースの段階からアクセスログを収集し、リード獲得後にはそのクッキーとリードIDを結びつけ、さらに既存顧客になれば顧客IDとも統合していくことができます。

この「未顧客の段階からつなげて見られる」という仕組みが、CDPと一般的な顧客データベースを分ける大きな違いだと捉えています。

MAツールとCDPの境界が曖昧になってきている

私たちはMAツールとしてHubSpotを使っています。その中で感じたのは、CDPとMAの境界が曖昧になっているという事実でした。

HubSpotを例に挙げると、マーケティング・営業活動・顧客管理を統合できるSaaSとして、リード獲得から商談管理までを一つのプラットフォームで扱えます。マーケティングで集めたリードがどれだけ商談化したのか、成約に至ったのか。そうした流れを一貫して追えるのです。

データの収集面では、CSVの取り込み、HubSpot用タグによるサイト行動データの取得、メールやセミナーなど施策の反応データの自動収集が可能です。蓄積されたデータはメールアドレスをキーにIDで統合され、メール・LINE・SMS・広告連携といった活用まで用意されています。

HubSpotに限らず、SalesforceにはData Cloud、KARTEにはKARTE DataHub、BrazeにはBigQueryとのネイティブ連携があり、最近の高機能なMAツールはCRM機能そのものを備えていて、顧客データ基盤として十分に機能するケースが増えています。

私たち自身がその一例です。HubSpotを中心に、リード獲得から商談化・成約までを追い、施策の効果測定も行っています。CDPを別途導入しなくても、MAツールを徹底的に使いこなすことで、顧客データの一元管理と施策実行の両方をまかなえている状態です。

データの収集・蓄積、IDの統合、1to1施策の実行。これらはMAツールでかなり解決できる時代になっていると感じています。

CDPが本当に必要になるのはどんなときか

では、施策だけにフォーカスするならMAで十分なケースもある中で、どういうときにCDPが必要になるのでしょうか。

考えられるケースとしては、大きく4つあります。

1つ目は、MAでは切れないセグメントがあるときです。たとえば、機械学習を使って顧客やリードを分類したいケース。ただし、この領域はMAツール上のAIエージェントも進化してきており、キャッチアップしつつある状況です。

2つ目は、複雑なスコアリングロジックを組みたいときです。さまざまなチャネルのデータを横断的に使ったスコアリングを実現しようとすると、MAだけでは対応しきれないことがあります。

3つ目は、同じセグメントを複数チャネルで共通利用したいときです。MAツールからも各施策への連携はできますが、すべてのチャネルに対応しているわけではありません。CDPにセグメントを集約し、広告・メール・サイト内レコメンドなどに一貫性のある体験を提供したい場合は、CDPの出番になります。

4つ目は、深い分析を行いたいときです。MAツールは分析ツールではないため、LTV分析やアトリビューション分析、さまざまなBIツールとの連携をしていきたいという場合には、分析基盤としてのCDPが求められます。私の支援経験では、この4つ目の理由でCDP導入に至るケースが多い印象です。

逆に言えば、これらに該当しないのであれば、GA4×BigQueryの構成やMAツールで十分に対応できる可能性があります。

GA4×BigQueryで「小さなCDP」を始めるステップ

私がまず提案しているのが、GA4とBigQueryを組み合わせた「小さなCDP」という考え方です。

GA4は単体ではCDPにはなり得ませんが、アクセスログを収集する仕組みとしては強力です。Google広告とのネイティブな連携も備えており、さらにBigQueryエクスポートを使えばデータの蓄積も行えます。

最初のステップとしては、GA4からBigQueryへの連携を構築し、Looker Studioで可視化するという流れがシンプルで始めやすいと思います。このシンプルな構成だけでも、小さなCDPとして機能し始めます。

ここからさらにデータソースを広げたい場合は、ETLツールの活用が選択肢になります。たとえばTROCCO(トロッコ)は200種以上のコネクタを持っており、さまざまなツールからデータを集めてデータウェアハウスに連携できます。基幹データからの商品・購買データの取り込みや、広告費データの収集なども可能です。

私たちが支援したある比較サイト運営会社の事例では、アフィリエイターとして各サイトに広告を掲載しており、コンバージョンポイントがアフィリエイト先のサイトにあるという構造でした。自社サイト上ではコンバージョンが完結しないため、GA4だけでは成果の正確な計測が難しい状況です。

そこで、アフィリエイト先でのコンバージョンデータをETLツール経由でBigQueryに取り込み、オフラインコンバージョンベースで広告やマーケティング施策の効果測定を実現しました。さらに、このデータをGoogle広告にオフラインコンバージョンとしてインポートすることで、広告の費用対効果の改善につながっています。GA4×BigQueryだけでは届かないデータ連携が、ETLツールを組み合わせることで可能になった一例です。

必要に応じて基幹データをアップロードしていけば、より深い分析も行えるようになります。いきなり大きな基盤を構築するのではなく、まずは小さく始めて段階的に拡張していくアプローチが現実的だと考えています。

CDPはいきなり入れなくても大丈夫

顧客データ基盤の構築は大きな意思決定です。一般的なCDPツールを導入すると、年間で数百万円から数千万円のランニングコストがかかることも珍しくありません。

だからこそ、私はまずGA4とBigQueryで小さく始める顧客データ基盤をご案内しています。すべての企業にCDPが必要だとは考えていません。やりたいことに対して正しくツール選定を行い、最小構成でマーケティングに挑むのが、顧客データ基盤の正解だと考えています。

私の支援経験から言えば、ツール選定の前に「何を実現したいか」を整理する時間が、結果として遠回りを防ぐことが多かったように感じています。

「こういうことをやりたいんだけれど、何から始めればいいかわからない」。そんなときは、壁打ちの段階からご相談いただけると、整理がしやすくなることが多いと感じています。

著者情報

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MASAHIRO NISHI

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

業界歴16年以上。データ戦略の立案、アクセス解析、 CVR改善、データ活用基盤の構築など、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援。電通デジタルを経て2019年にTHE MOLTS参画。

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