代理店が事業側に「遠慮しすぎる」ことは、誰のためにもならない

こんにちは、THE MOLTSのコンサルタントの松尾です。

私は広告運用の業界に17年ほどいますが、代理店にいたときも、現在コンサルとして代理店と一緒に仕事をするときも、いつも感じることがあります。

みんな、事業側の人に遠慮しすぎているんじゃないかな、と。

とくに若手の方にその傾向が強いと感じています。クライアント(事業主)からお金をもらう側だから敬意を払うのは当然だと思いますが、自分たちの任されている広告運用の領域でしか話せないといったケースが多すぎる気がしているんです。

正直、これって誰にとってもよくないと思います。クライアントのためにならないですし、代理店自身の価値も下げてしまう。

今回は、なぜそんな状況が生まれるのか、そしてどうすれば本当の意味でクライアントの事業成長に貢献できるのかを、私の実体験をもとにお話しします。

なぜ代理店は自分の領域に閉じてしまうのか

若手の代理店の方たちと話していると、こんな傾向が見えてきます。

「自分は広告運用の専門家だから、それ以外は口出ししちゃいけない」

そう思い込んでしまっているんです。具体的には、事業全体としてどういう戦略なのかとか、ほかでどういうことやっているのかっていう質問をできなかったりする。

これが一番顕著に現れるのが、成果の報告をするときです。要因がわからなかったりすることも、なんとか説明しようと頑張って、クライアントが納得しなかったらそれをまた持ち帰って宿題にしてしまっていたりとか。

でも、これって意味ないんじゃないかと思うんです。広告の数値だけ見ても、本当の要因がわからないケースもあるわけですから。

実践している「領域を超えた」アプローチ

私は意識的に広告運用の枠を超えて、事業全体に関わるようにしています。

一番シンプルなのは、検索広告で変化していたらSEOでの変化があるかとか、事業側で何かしら影響をするようなPRがあるかとかも聞くことです。

要因がわからないときは「ここまで調べたけれど特定できないので、これ以上分析することは意味ないと思います。改善したい指標を考えて、こういう施策をしていきませんか」って議論の方向に持っていくようにしています。

「なぜそれを聞くのか」を明確にする

若手の方には「事業側のこととか、1回教えてもらえなかっただけで引き下がるな」とよく伝えています。

これは聞き方が重要で、「広告のこういうところで使えるから」とか「こういうこと理解した上で一緒に事業成長考えたいんです」って視点で何度でもぶつかりに行かないと、本気度が伝わらないと思うんです。

逆の立場で考えたらわかりやすいと思います。なんとなく聞いてくる人に、機密情報は開示しないですよね。

「事業全体を見る」ことの事例

実際に私が経験したケースを紹介します。

BtoBサービスでの展示会×広告連携

BtoBサービスで、展示会をやっている企業の広告コンサルで入ったときのことです。

普通だったら広告の話だけして終わりなんですが、私は展示会のブースデザインとか、どういうデモをするかとか、何を聞かれることが多いかなどを聞かせてもらいました。

そして、「広告やLPとかに反映できるものはないですか」と一緒に考えたり、展示会で反応が良かったものをバナーにするなどで成果が良くなるケースもありました。

競合代理店3社でチームになった話

別の事例として印象的だったのが、競合代理店・サーチ・ディスプレイで領域を分けて担当していたクライアントと、3社がそろった状態で事業として伸ばすための議論をする場があったことです。

そのときも「これはほかの代理店さんの領域と相性が良いと思うので、そちらでこういうことやりませんか」といったように、「自分たちの領域でやらせてほしい」というのを抜きにして、全員がひとつのチームとして最適な役割分担を考えて話し合いました。

その結果、そのクライアントから他代理店の領域の実績も共有してもらえて、最終的にこちらからその領域に対しての提案などを求められる関係値までもっていくことができました。

経営視点で考える「広告費1000万 vs 営業ボーナス」

ここで重要なのは立ち位置です。私は「マーケティング責任者の視点」でクライアントと話すようにしています。

経営視点で考えると、極端な話「広告費月1000万円より、上位営業マンにボーナスを渡したほうが売上が上がるならそのほうが良い」という発想も選択肢に入ります。だからこそ、広告費の投資を意味あるものにしないとダメなんです。

広告は集客(コミュニケーション)の手段のひとつでしかありません。事業としてどういった集客がされていて、それぞれがどのような成果につながっているのかを俯瞰して考えると、場合によっては、広告予算を減らして展示会への投資を増やすことを提案することもあります。

これは代理店の立場だったら売り上げが下がってしまうので「この広告をやめましょう」ってのは言いづらいですが、だらだらお金だけ使わせて信頼を失うぐらいなら、思い切って方向転換を提案するほうが双方にとって将来的に良い結果につながると考えています。

代理店の立場として思うこと

「遠慮」は誰のためにもならない

今までの経験から、クライアントに対して遠慮しすぎている状態は、結果的に誰のためにもならないと感じています。

クライアントは事業を成長させたいという思いを持っています。そのなかで、広告運用の領域だけでなく、事業全体のことを一緒に考えられる存在になることで、より大きな価値を提供できるのではないかと思います。

質問する勇気を持つ

クライアントから「なぜそんなことを聞くの?」と思われるかもしれません。しかし、「広告施策に活かしたいので教えていただけませんか」「事業の成長を一緒に考えていきたいと思っているんです」と率直に伝えれば、ほとんどの場合は前向きに答えてくれると思います。

また、1回断られても諦めずに、違う切り口で何度も質問することで、徐々に信頼関係が築けていけると思います。本気で事業のことを考えている姿勢は、必ず相手に伝わる。そう信じて、一歩ずつ進めることが大切だと思います。

さいごに

代理店が事業側に遠慮しすぎている問題は、実は誰にとってもマイナスだと思います。クライアントは本当に価値のある提案を受けられないですし、代理店も自分たちの価値を十分に発揮できないのではないでしょうか。

でも、その遠慮を乗り越えて、事業全体を見る視点を持てれば、必ず結果はついてくると思います

私の経験上、そうやって本気でクライアントの事業成長を考える人は、長期的な信頼関係を築けますし、結果的に自分たちの価値も高めることができる。

一緒に事業成長を考えるパートナーとして、今後も取り組んでいきたいと思います。

著者情報

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KENGO MATSUO

松尾 謙吾

Marketing Strategist / Consultant

業界歴17年以上。デジタルマーケティング戦略設計・運用型広告(月額広告費10万円から数億円まで)を中心に支援。新規事業のテストマーケや計画設計も含め、様々なフェーズの支援を経験。

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