ダッシュボード構築で学んだ、プロダクトが強い企業との向き合い方

こんにちは。THE MOLTSのデータアナリストの西です。

先日、とあるIPビジネスのWebサイトでGA・広告・SNSのデータを一つのダッシュボードで表示するプロジェクトを担当しました。

マーケティングダッシュボードの構築案件って、一見すると「データを一元化して見やすくするだけでしょ?」と思われがちですが、実際にはそれ以外にも考えることがあります。

特にIPビジネスのような「プロダクトが強すぎる」企業では、技術的な課題よりもむしろ、クライアントとの向き合い方の方が難しかったりします。

今回は、その案件を通じて学んだプロダクトが強い企業特有の課題と、どう向き合ったらよいのか、私なりの経験をお話ししていきます。

IPビジネス特有の「マーケが育ちにくい」ジレンマ

このプロジェクトで最初に直面したのが、KPI設計の難しさでした。

クライアントには、ブランドサイトとECサイトがそれぞれありました。ECについては売り上げを見れば良いのでシンプルですが、問題はブランドサイトの方。「Google Search Consoleの指名検索数を見る」というのはもちろんありますが、それ以外にWeb指標で何を見ようか……となるんですよね。

特定のコンテンツの閲覧をブランディングに寄与したと位置付けることはできますが、どこまでいっても「本当か?」となってしまう。結局のところ、既存のサイトのコンテンツでは「勢いで決めたブランド指標」にしかならないんです。

この課題について議論していくなかで見えてきたのが、IPビジネス特有の構造的な問題でした。

IPビジネスの場合、プロダクト自体に強力な魅力があるため、従来のマーケティング手法に頼らなくても一定の売上を確保できてしまいます。

これはすばらしいことである一方で、マーケティング部門への投資優先度が相対的に低くなりがちで、結果的にマーケティングノウハウが蓄積されにくいという課題もあります。

以前担当したIP関連のサービスのデータ分析プロジェクトでも、同様の傾向が見られました。サイトデザインよりもプロダクト力で売上を牽引している状況で、これはIPビジネスならではの強みでもあり、同時にマーケティング最適化の余地が大きいということでもあるんです。

好調な時期にこそ必要な「顧客理解」という投資

でも、栄枯盛衰という言葉の通り、いい時代はずっとは続きません。

特に日本においては少子高齢化、人口減少となるシミュレーションが成立しており、国内のIPマーケットは必然的に縮小する。よって、良いときにマーケティングを施していき、顧客理解して、時代に乗り切るという度量が必要だと感じています。

こういうときに、マーケターとして考えたいことはたくさんあります。

  • なぜ売れているのか
  • なぜ我々のプロダクトは強いのか
  • 飽きが生じているお客様はいないか
  • 何に価値を感じてくれているのか
  • どのように楽しんでいただけているのか
  • 手にしてからの最初の働きかけはどのようなものがよいか

こうしたものを、閲覧されているページやサーチコンソールで拾えるキーワード、SNSの反応やソーシャルリスニングからヒントを得て、一つ一つの答えを持つことが重要だと考えています。

でも現実は、「好調なときにこそマーケティングの環境を整えよう」という会社は、正直あまり多くないと思います。どちらかといえば、この好調な時期に売り上げMAXにしようということで、営業や販促、製造拡大などに投資するのではないでしょうか。

プロダクトが強すぎる企業には段階的なアプローチが必要

今回のプロジェクトでも、最初は理想的なダッシュボードを一気に構築する提案を考えていました。GA・広告・SNSデータの統合はもちろん、顧客セグメント分析、ユーザージャーニーの可視化、予測分析まで含めた包括的なものです。

しかし、クライアントとの初回ミーティングで気づいたのは、マーケティング分析に対する理解度や経験値が、新興のマーケティング企業とは大きく異なるということでした。

これまでプロダクト力だけで売上を牽引してきた企業では、データを見る習慣が定着しておらず、KPIの設定や分析の経験も少ない状況でした。そもそも「何を見るべきか」がわからない状態なんです。

こうした状況で、いきなり高度なダッシュボードを提供しても、「数字がたくさん並んでいるけど、で?」となってしまいます。日常業務で活用されずに終わり、結果的に「ダッシュボードって役に立たないね」という認識になってしまいます。

つまり、プロダクト力で成長してきた企業では「マーケティングデータ活用の経験不足」が、ダッシュボード活用において考慮すべき重要な要素だったのです。

「段階的アプローチ」でじっくりと向き合う

この気づきから、今回のプロジェクトでは「クライアントのペースに合わせて、ダッシュボードも段階的に進化させる」というアプローチを採用しました。

理想的なダッシュボードをいきなり作ることはできません。まずは基本的な指標から始めて、クライアントが「もっとこんなデータが見たい」「なぜこの数字が動いているのか知りたい」と感じるタイミングを待ってから、次のレベルに移行していく方針で進めました。

たとえば、クライアントから「商品を買ったあとのファン体験みたいなものが重要そうだが、これってWebの行動データからも分析できるものなの?」と聞かれることもありました。こうした深い分析は確かに重要ですが、まずは基本的なデータの見方に慣れてもらってから、段階的に取り組んでいく必要があります。

重要なのは、ダッシュボードの改良とともにクライアントの理解度も高まっていくというイメージを持つことです。

今までの経験から言えることは、「いくら正しいことを言っても、受け皿がなければ意味がない」ということです。特にIPビジネスのような企業では、マーケティングに対する理解度にも時間をかけて向き合う必要があります。

さいごに

プロダクトが強すぎる企業との仕事は、短期的な成果を求めがちなマーケターには向かないかもしれません。

でも、長期的な視点で「じっくり付き合う」ことができれば、非常に価値のある関係を築くことができると感じています。

ダッシュボードを用いて少しずつ解像度を高め、マーケティング活動に活かしていく。派手さはありませんが、プロダクトが強すぎる企業においては、そのようなスタンスで向き合うことも必要だと考えています。

著者情報

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MASAHIRO NISHI

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

業界歴16年以上。データ戦略の立案、アクセス解析、 CVR改善、データ活用基盤の構築など、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援。電通デジタルを経て2019年にTHE MOLTS参画。

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