広告運用で成果が出ないときの「本質的な要因」の見つけ方
こんにちは、THE MOLTSのコンサルタントの菊池です。
「CPAが高いキーワードを抑制して、CPAが低いキーワードを強化する。でも、上げる下げるを繰り返すだけで、本質的な改善にならない」
広告運用の現場では、このように管理画面のデータやレポート上で見える数値だけで判断してしまい、本当の要因やボトルネックを特定できず、改善策がズレてしまっていることが多いです。
私も長年広告運用に関わってきて、このような状況に何度も直面してきました。
そんななか、「なぜ成果が出ないのか」「どこに本当の原因があるのか」と数字を追いかけているうちに、答えは管理画面やレポートには現れないところにあるのではないかと感じるようになりました。
今回は、なぜ表面上のデータ以外も見ることが重要なのか、そしてどうやって本質的な要因を見つけるのかについて、私の経験を交えながらお話しします。
データの表面だけでは見えない本当の要因
データ分析では、管理画面の数値だけで原因や対策を考えがちですが、その裏に本当の要因が隠れていることも少なくありません。
私が実際に経験した事例を紹介します。
ケース1:在庫切れが要因でCVRが低下していた
アパレル業界で、靴カテゴリの売上が前年より落ち込んだことがありました。
管理画面上ではCVRが下がっていることが分かりましたが、なぜ下がっているのかは見えてきません。
現場のミーティングでは、「悪化要因はCVRの減少です。対策として靴カテゴリは抑制し、CPAの低い〇〇カテゴリを強化します。」というような報告をすることがあります。
一見正しく聞こえますが、上司やクライアントが気になるのは、「そもそも、なぜCVRが下がったのか?」です。
CVRの減少は悪化要因ではなく、事象の変化にしか過ぎません。
そこで、市場動向やサイト全体のデータも含めて多角的に分析した結果、前年と比べてゲリラ豪雨の影響でレインブーツの在庫がごっそりなくなっていたことが判明しました。
つまり、このケースでは広告の調整やキーワードの見直しではなく、「在庫を補充すること」と「急速な天候の変化をキャッチすること」こそが本当の解決策だったのです。
ケース2:広告以外の要素が要因で効率が悪化していた
もう一つ印象に残っているのが、航空業界の案件です。
ブランドワードのCPCが高騰し、ブランド名での指名検索の割合が高く、全体の効率を圧迫していました。当然、ブランドワードを抑制して、一般ワードでリカバリーを図るのですが、ブランドワードよりもCPAが高いため、なかなか回復には至らない。
CVがシュリンクしていく状況で、競合分析を行い、ブランドワードで出稿していた企業に指摘を行うものの、抜本的な解決には至りませんでした。
そこで、広告経由の実績や効率性だけでなく、サイト全体や競合状況を分析してみることに。その結果、以下のような戦略を実行しました。
- 単ワードの出稿を停止し、サイト全体の売上が減少するかの調査
- SEOで上位ワードかつ競合が出稿しているキーワードをクロス分析
- SEO上位かつ競合出稿がないキーワードの出稿を停止
結果として、広告経由だけの成果は、ブランドワードを停止することでCVは減少し効率は悪化しましたが、サイト全体の売上は減少せず、コストカットを実現でき、投資対効果が改善しました。
この事例から、管理画面や広告だけのKPIに閉じず、視座を上げサイト全体の売上やKGIを考慮することの重要性を学びました。
なぜ本質的な要因を見落とすのか
こうした経験を重ねるなかで、なぜ本質的な要因を見落とすのかを考えるようになりました。
目標設定の落とし穴
現場でよくあるのは、担当者やチームが「広告経由の売上」など、目の前の数字だけを追いかけてしまうことです。
私も、管理画面の数値を達成することばかりに気を取られ、本質的な要因を見落としていた時期がありました。
数字を追うこと自体は大切ですが、それだけにとらわれてしまうと、分析の視野がどんどん狭くなってしまう。気づけば、現場のリアルな課題や、事業全体の流れを見失ってしまうのです。
代理店視点・ROI固定思考の罠
もう一つ陥りがちなのが、「代理店視点」や「ROI固定思考」です。代理店や外部パートナーの立場だと、どうしてもCPAやROIなど、目先の指標を守ることに意識が向きがちです。
しかし、実際に事業のPLや利益構造を見ていくと、必ずしもCPAやROIだけが正解ではない場面が多々あります。たとえば、ROIを下げてでも利益拡大を狙うことで、結果的に事業成長につながったケースもありました。
「本当にこの数字だけを守ることが、クライアントや事業のためになるのか?」と自問自答することが、データの向こう側を見る第一歩だったように思います。
現場でよくある“依存症”3タイプ
こうした見落としが起きる背景には、現場でよく見かける「依存症」の存在があります(私がそう呼んでいるだけですが)。この依存症は、3つのタイプに分けて考えています。
タイプ1:管理画面依存症
このタイプは、広告管理画面のデータだけを見て判断してしまいがちです。
たとえば、「管理画面の数値だけを見て、CPAが下がったから強化、上がったから抑制」のように、“上げ下げ”の繰り返しで終わってしまうことがよくあります。
一見、数字をコントロールしているようですが、実はトップラインは伸びず、効果も限定的。数字の動きに一喜一憂しているうちは、本質的な改善にはなかなかたどり着けません。
タイプ2:単一視点分析症
また、「広告経由」「前週比」など、分析の視点が狭く、軸が単一になってしまうことも多いです。
このタイプは、前週比だけを見て施策を考えたり、広告だけに注目して全体像を見失ったりすることがあります。
本当は、WEB全体やカテゴリ別、長期的な推移や複数の比較軸で見ていくことで、初めて見えてくる課題やチャンスがあるのに、つい“手軽な分析”に頼ってしまう。これも現場でよくある落とし穴です。
タイプ3:組織分断型分析症
さらに、部署間の壁によって重要な情報にアクセスできず、手軽な分析に依存してしまうタイプもいます。
たとえば、顧客インタビューは別部署が担当していて、外部パートナーの自分はなかなか参加できない。だから競合分析やデータ分析ばかりに頼ってしまう。でも、実際に顧客の声を直接聞いてみると、「必要な機能だけを簡単に使いたい」という本音が見えてきたりする。
こうした現場のリアルな声や、組織の壁の存在を意識することも、データの向こう側を見るうえで欠かせないポイントだと感じています。
「本質的な要因」を見つけるための3つのアプローチ
では、どうすれば本質的な要因にたどり着けるのか。私が現場で実践してきたアプローチを、3つにまとめてみました。
1. 3軸(単位・期間・比較)で深掘る
まず意識しているのは、「どの単位で」「どの期間で」「何と比較して」評価するか、という3つの軸で深掘ることです。
たとえば、
- 単位の軸:WEB全体/広告経由/カテゴリ別/キーワード別
- 期間の軸:前日/前週/前年比/月次推移
- 比較の軸:前週比/前年比/日次推移/月次推移
こうした複数の視点で数字を見ていくことで、見えてくる景色がまったく変わってきます。
2. 3C分析を多角的に活用する
次に大事にしているのが、3C分析(自社・競合・市場)を管理画面のデータに閉じず、多角的に活用することです。
たとえば、以下のように考えます。
- 自社:自社の顧客データやサイトの変更点、サービス内容のアップデート、事業全体の動向などを把握し、広告以外の要因も含めて分析
- 競合:競合の出稿状況やクリエイティブの傾向、競合が強化しているキーワードや新たに参入してきた領域などもチェック
- 市場:市場全体の変化やトレンド、媒体のアップデート情報、ユーザーの行動変化など、外部環境の変化も意識
事象の変化が外的要因なのか内的要因なのかを整理し、多角的に情報を集めて全体像をつかむことで、表面的な数字に惑わされず、より本質的な課題やチャンスを見つけやすくなります。
3. 事業全体の文脈を理解し、合意形成を図る
そして最も重要なのが、事業部会に参加させてもらい、他部署とも連携を図ることです。事業全体の文脈や、現場のリアルな課題を理解することが、本質的な改善につながってきます。
また、CPAとCVのトレードオフを明確にし、どこまでCPAの悪化が許容できるか、どこまでCVを伸ばしたいかを関係者と合意形成することも重要です。
私は、松竹梅での具体的な広告運用シミュレーション数値を提示し、複数のデータソース(オークションレポートや媒体社のトレンドデータなど)を統合して、機会損失がないようにしています。
さいごに
広告運用の現場では、つい管理画面の数値だけに目が行きがちですが、本当に大切なのは、表面的なデータ以外にある本質的な要因を見抜くことです。
私自身、現場で何度も壁にぶつかりながら、次の「4つの目」を意識するようになりました。
1.管理画面や広告に閉じず事業全体を俯瞰する、鳥の目
2.過去の推移やトレンドを掴む、魚の目
3.様々な切り口で多角的に深堀する、虫の目
4.そもそものKPIや前提を疑い、視点を変えるコウモリの目
こうした視点を持つことで、表面的な数字に惑わされず、本質的な課題やチャンスを見つけやすくなると思います。
著者情報
SHINYA KIKUCHI
Marketing Strategist / Consultant
業界歴16年以上。運用型広告のコンサルティング、インハウス化支援、代理店の組織構築などを行う。 成果を最大化するためのチームビルディングが得意。
記事をシェア