なぜ優秀なアシスタントは、プロジェクトの違和感を察知できるのか

長年、いろいろな人と一緒に仕事をしてきた。その中で、ずっと不思議に思っていたことがある。

「この数値、おかしくないですか?」

あるアシスタントの方から、そう指摘されたことがあった。私は特に気にしていなかったレポートの数値だったが、確認してみると確かに計算式に間違いがあった。

一方で、同じような間違いがあっても、そのまま提出してくる人もいる。技術的なスキルに大きな差があるわけではない。なのに、なぜこんなにも結果が違うのだろう?

いろいろな方と仕事をさせていただく中で、少しずつ見えてきたことがある。仕事の成果に差をつけるのは、実はちょっとした「気づき」の差なのかもしれない、ということだ。

私はこれを「違和感察知力」と呼んでいる。

「違和感」を見逃さない人の3つの行動パターン

そういう方たちは、単に作業をこなすのではなく、結果に疑問を持ち、自ら調査・分析を行う姿勢を持っている。

具体的にどんな行動として現れるのか?いくつかのパターンを見てきた。

1. データの異常を見逃さない

たとえば、月次レポートを作成してもらった時のことだ。売上データの一部が前月と大きく乖離していることに気づき、「この部門だけ数値が急変していますが、何か特別な理由があったのでしょうか?」と確認してくれた。

私自身、見落としていた重要な変化だった。単にデータをまとめるだけでなく、その中身の妥当性まで見てくれていたのだ。

2. 先回りして改善提案をする

資料作成を依頼した時も印象的だった。指定したフォーマットで作成してくれただけでなく、「このグラフだと比較しづらいので、別の見せ方も作ってみました」と、複数のパターンを用意してくれた。

さらに「来月も同じ資料が必要になると思うので、テンプレートを作っておきました」と、次回の作業効率化まで考えてくれていた。まさに「1依頼して10返ってくる」ような体験だった

3. 自律的に問題解決する

新しいシステムやツールを使う必要が出た時も、「使い方がわかりません」で終わらない。自分でマニュアルを調べ、試してみて、「こういう手順でできました。他の方も使えるようにまとめておきますね」と共有してくれる。

この違和感察知力は、単なる細かさや几帳面さとは違う。作業内容に対して「これは本当に正しいのか」「もっと良い方法はないか」という健全な疑問を持ち、それを放置せず解決まで導く力なのだ。

なぜ「違和感」に気づけるのか?

違和感察知力の正体は、「目的思考」を持っていることだと思う。

作業ベースで考えるのではなく、なぜその作業が必要なのか、その先に何を達成したいのかを理解した上で行動してくれる。この違いは、実際の業務で驚くほど大きな差となって現れる。

ある時、私が粗い依頼をしてしまったことがある。「先月のレポート作ってもらえる?」という、なんとも雑な依頼だった。

作業ベースのアシスタントなら「どのレポートですか?」と聞き返すか、とりあえず何か作って提出するだろう。しかし、目的思考を持つアシスタントの反応は違った。

「確認させてください。どの単位で集計しますか?比較期間は必要ですか?」「納期はいつまでですか?」「このレポートは、予算会議で使うものでしょうか?それとも日々の運用改善用ですか?」

私が曖昧にしていた部分を、向こうから明確にしてくれる。しかも、ただ質問するのではなく、用途を推測しながら確認してくれるのだ。

レポート作成一つとっても、単にレポートを作ることがゴールではなく、その先にある分析や成果改善、目標達成のためのレポート作成だと理解している。だからこそ、私が依頼した内容以上の気づきや提案をしてくれる。

この目的思考があるからこそ、違和感察知力が生まれ、付加価値を提供できるようになるのだ。

「1を聞いて10返す」人の思考法

最終的なアウトプットは同じレポート作成や入稿作業でも、作業の進めやすさやクオリティは格段に違ってくる。では、この差はどこから生まれるのだろうか?

私が観察してきた「1を聞いて10返す」人たちには、共通する思考プロセスがある。

第一に、「Why」から考える習慣だ。「この作業は何のため?」「誰が使うの?」「どんな判断に使われる?」という問いを、無意識レベルで持っている。

第二に、「So what」を追求する姿勢がある。「で、それで何がわかるの?」「次のアクションは?」という視点で、常に一歩先を見ている。

第三に、「What if」の想像力を働かせる。「もしこの数値が間違っていたら?」「他の見方はないか?」という健全な疑いの目を持っている。

この3つの思考法が組み合わさることで、単なる作業者ではなく、真のパートナーとして機能するようになるのだ。

「違和感察知力」を育むヒント

こうした力は、どうやって身につけていけばいいのだろうか?私なりに考えてみた。

一緒に働く人を理解するための問いかけ

新しい人と一緒に仕事をする時、こんな話をしてみるといいかもしれない。

「最近の仕事で、何か気になったことはありますか?」 日常的に違和感を持つ習慣があるか、自然な会話の中で聞いてみる。具体的なエピソードが出てくると、その人の視点が見えてくる。

「そのプロジェクトで一番大変だったことは?」 困難に直面した時にどう考え、どう行動したかがわかる。目的を見失わずに進められたかも見えてくる。

「もっとこうしたらいいのに、と思うことはありますか?」 現状に満足せず、より良い方法を考える習慣があるかがわかる。

チームで違和感を共有する工夫

「なぜ?」を気軽に聞ける雰囲気を作る 「この作業、何のためにやってるんだっけ?」という素朴な疑問を、お互いに投げかけ合える関係性が大切だ。私も聞かれて初めて気づくことが多い。

小さな気づきを大切にする 「あ、それいい視点だね」「なるほど、そういう見方もあるか」という反応を心がける。違和感を共有することが、チームの財産になる。

失敗から一緒に学ぶ 問題が起きた時は責めるのではなく、「次はどうしたら気づけるかな?」と一緒に考える。私も含めて、みんなで成長していけばいい。

一緒に仕事をしたいと思う人

業務内容がどんなに変わっても、ツールがどれだけ進化しても、結局のところビジネスは人と人の繋がりで成り立っている。

私も日々、いろいろな失敗をする。雑な依頼をしてしまうこともあるし、重要なポイントを見落とすこともある。そんな時に、「あれ、これで大丈夫ですか?」と声をかけてくれる人がいると、本当に助かる。

仕事において大切なのは、ミスをしないことではなく、みんなでより良いものを作っていくことだと思う。そのためには、健全な疑問を持ち、それを声に出せる関係性が必要だ。

「違和感察知力」は特別な才能ではない。日々の仕事の中で、ちょっとした疑問を大切にすることから始まる。

私もまだまだ学ぶことが多い。でも、お互いに違和感を共有し合いながら、一緒に成長していける。そんな仕事の仕方が、きっと一番楽しいのではないだろうか。

著者情報

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SHINYA KIKUCHI

菊池 真也

Marketing Strategist / Consultant

業界歴16年以上。運用型広告のコンサルティング、インハウス化支援、代理店の組織構築などを行う。 成果を最大化するためのチームビルディングが得意。

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