「権限移譲」がマーケティング成果を左右するワケ
「優秀なマーケティング担当者を採用したのに、なかなか成果が出ない」
そんな悩みを抱えている経営者やマネージャーは多いのではないだろうか。
私自身、この問題について実体験を通じて考える機会があった。
今回は、マーケティング成果の速度を決める本当の要因について、実際の事例をもとにお話ししたい。
権限移譲の効果を実感した体験
私が代表を務める月曜日のトラ(MOLTSグループの子会社)では、インバウンドマーケティングとしてセミナーやメルマガを展開し、リード獲得の取り組みを短期間で着実に成長させることができた。
この成果の背景を振り返ると、私が代表として施策の方向性や実行判断を素早く行える立場にあったことが大きく影響していたと思う。
細かい設定や準備は他のメンバーにお任せしているところも多々あるが、施策をやるかどうか、どの方向性で進めるか、リードや商談のステージ設計をどうするかといった意思決定は、基本的にトップダウンで行った。その結果、スピード感を持って実行できたと確信している。
振り返ってみると、もし立場が異なり、上位の承認を逐一求める必要があったなら、どんなに優秀な担当者でも「この方向性で良いでしょうか?」という確認が発生し、都度のフィードバックで時間を消費していたはずである。
メルマガやセミナーを企画する際も、担当者の立場であれば「なぜこの施策なのか」「効果は見込めるのか」といった資料作成と承認プロセスが必要になる。一方、意思決定権があれば、重要なポイントを把握した上で最小限の検討で判断できるのである。
つまり、意思決定権の有無が、施策実行の速度を大きく左右するということを実感した。
担当者の能力不足が原因ではない
ここで重要なのは、これは担当者の能力不足が原因ではないということである。
確かに、全体を把握し主要施策を理解できる担当者でなければ、スピードは出ない。しかし、その能力を最大限に活かせるかどうかは、どれだけ権限を移譲されているかで決まるのではないだろうか。
私の場合、これまでのWebアナリストとしての経験から、施策のプランニングや成果の見立てにはある程度の自信があった。しかし、それ以上に大きかったのは 「代表としての意思決定権を持っていた」 ことである。
だからこそ施策を止めずに進められたのであって、もし上位の承認を逐一待つ立場だったなら、この速度は実現できなかっただろう。
成果速度を決める要因の正体
つまり、マーケティングの成果速度は、経営層が直接動くかどうかではなく、現場の担当者やその直属の上司に、どれだけ意思決定権が渡されているかに左右される。
言い換えれば、こんな関係が成り立つのかもしれない。
成果速度 = 担当者の能力 × 権限移譲の度合い
どれだけ優秀な担当者に依頼しても、権限移譲が不十分であれば、その能力は50%程度しか発揮できないかもしれない。一方で、適切な権限移譲があれば、担当者の能力を100%発揮できる環境を作ることができる。
権限移譲こそが、担当者の能力を成果に結びつける重要な要素なのではないだろうか。
効果的な権限移譲のポイント
もちろん、権限移譲は単に「任せる」だけでは成功しない。理想的には意思決定者自身が直接実行するのが最も早いのは確かである。
ただし、リソースの制約でそれが難しい場合は、段階的に担当者に権限を移していく必要がある。その際に大切なのは、なぜその権限を移譲するのか、その背景や意図も一緒に伝えることだと感じている。
そこで月曜日のトラで取り組んでいるのは、担当領域と責任範囲の明確化である。今後は品質を保ちながらスピードアップするためにも、各タスクのゴール設定や「何を達成してほしいか」という期待値の言語化・数値化が重要だと考えている。
スピードを生む組織作りとは
マーケティングの成果速度を上げたいなら、まず組織の意思決定構造を見直すことをおすすめしたい。
私が意識しているチェックポイントは以下の通りである。
- 担当者に適切な権限が移譲されているか?
- 意思決定のボトルネックがどこにあるか?
- 権限移譲の背景や意図が正しく伝わっているか?
あくまで現在の私の取り組みであるが、これらを見直すことで、優秀な担当者の能力をより引き出せるのではないかと感じている。
著者情報
MASAHIRO NISHI
Marketing Strategist / Data Analyst
業界歴16年以上。データ戦略の立案、アクセス解析、 CVR改善、データ活用基盤の構築など、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援。電通デジタルを経て2019年にTHE MOLTS参画。
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