タグってなんですか?と聞かれたので解説します
こんにちは、THE MOLTSのデータアナリストの西です。
以前、クライアントから「タグってなんですか?」と聞かれたことがありました。
データアナリストとして日々「タグ」という言葉を使っていますが、いざ説明しようとすると意外と言葉に詰まるものです。この質問をいただいたことで、クライアントのご担当者にとっては「謎の専門用語」だったと気づかされました。
そこで今回は、「タグ」という言葉がなぜ分かりづらいのか、どんな種類や役割があるのか、そして組織でタグを適切に運用するために大切なポイントについて、私なりの視点で解説していきます。
なぜ「タグ」は分かりづらいのか
「タグを貼ってください」と依頼を受けるたび、私たちは条件反射的に「計測タグのことだな」と理解しています。しかし、クライアントのご担当者の頭の中では、まったく違うイメージが広がっている可能性があります。
正直なところ、「タグ」という名前は本当にややこしいと感じています。広告業界で「タグ」と呼んでいるものは、実際にはJavaScriptのコードです。HTMLの「タグ」とは全く別物なのに、なぜか同じ名前を使っているのです。
混乱を解消する「5つのタグ分類法」
そこで私は、タグを5つの役割で分類する説明法を考えました。
1. データ収集のタグ
- 役割:ユーザーの行動を記録する
- なぜ必要か:「どのページが見られているか」「どの広告から来たか」を知るため
- 具体例:Google Analytics、Facebook Pixel
2. 機能実行(ツール)のタグ
- 役割:ウェブサイトに新しい機能を追加する
- なぜ必要か:サイトの使いやすさや成果を向上させるため
- 具体例:チャットボット、A/Bテストツール、EFOツール
3. タグマネジメントのタグ
- 役割:ほかのタグをまとめて管理する
- なぜ必要か:タグが増えすぎて管理が大変になるのを防ぐため
- 具体例:Googleタグマネージャー、Adobe Launch、Tealium
4. Cookie同意管理(CMP)のタグ
- 役割:法的要件に対応する
- なぜ必要か:GDPR等の法律に準拠するため
- 具体例:OneTrust, Webtru
5. データ連携のタグ
- 役割:異なるツール間でデータをやり取りする
- なぜ必要か:バラバラのツールを連携させるため
- 具体例:dataLayerタグの設定
この分類で説明すると、クライアントの反応が劇的に変わりました。「なるほど、タグにはこんなに種類があるんですね」「それぞれに明確な目的があるんですね」と、理解してもらえた瞬間の表情を見るたび、説明の仕方がいかに重要かを実感します。
タグ運用で起きがちな組織課題とその解決
タグの説明をしていくなかで、多くの組織に共通する問題が見えてきました。
制作チームの本音:「よくわからないコードを埋め込んでくれって言われた」
マーケティングチームの本音:「なんで思うように計測できないんだ」
お互いが何をしようとしているのか、なぜそれが必要なのかを理解していない。これが、多くの組織で起きている現実です。とくに会社規模が大きくなると、この問題は深刻化します。部署間の壁が高くなり、「誰が何のためにそのタグを設置したのか」が見えなくなってしまうのです。
そこで私たちが取り組んでいるのが、「透明性のあるタグ運営」の構築です。
- 権限設計:「編集はできるけど公開はできない」などの役割分担
- 運用ルール策定:どんな手順でタグを追加・変更するか
- ドキュメント整備:なぜそのタグが必要なのかを明文化
これらは厳しくしすぎると柔軟性を失いますが、緩すぎるとリスクが高まります。
このバランスを見つけるため、関係者全員で約2〜3ヶ月をかけて話し合いを重ねます。決して短くはない作業ですが、その価値は絶大だと感じています。
この取り組みを行うと、ほぼ必ずと言っていいほど、何らかの問題が発覚します。
「あれ、この計測、実は動いていませんでした」
「重複してタグが設置されていました」
「必要のないタグがずっと残っていました」
成果の正確な測定は、ビジネスにとって死活問題です。間違った数字に基づいて意思決定をしていたとしたら……考えるだけでゾッとします。
だからこそ、タグの管理体制をしっかりと構築することが重要なのです。
「共通タグ」の落とし穴
「各ツールのタグって、共通のものを貼っておけば動くんでしょ?」
この質問も本当によく聞かれます。たしかに、基本的な計測であればそれで十分なケースもあります。
でも、本当の価値は「きめ細かい設定」にあると私は考えています。
たとえばECサイトでKARTEを使う場合、
- 商品詳細ページ用のタグ
- カート用のタグ
- 購入完了ページ用のタグ
これらを適切に設置することで、カート落ちしたユーザーへの的確なアプローチが可能になります。共通タグだけでは、この価値を得ることはできません。
もう一つ、見過ごされがちな問題があります。
MAツール(Salesforce、HubSpotなど)を使っている企業で、HTML直書きでタグを設置しているケースが非常に多いのです。
営業やマーケティングオートメーションの専門家は、その分野では非常に優秀です。でも、タグ管理の領域は専門外。だから「タグを貼ってください」と言われると、知っている方法(HTML直書き)で対応してしまうことが多いんですね。
でも、Googleタグマネージャー(GTM)を使えば、以下のようなメリットがあります。
- タグの追加・削除・修正が簡単
- 「なぜこのタグを設置したか」の管理も楽
- 他のマーケティングツールとの連携も可能
リードの行動トラッキングは、営業活動にとって宝の山です。「どのページを見て、どの資料をダウンロードして、どのタイミングでコンバージョンしたか」がわかれば、営業アプローチが激変します。
この価値を最大化するためにも、タグ管理ツールの活用を強くおすすめしています。
さいごに
「タグってなんですか?」という素朴な質問から、私自身も多くの気づきを得ることができました。
タグは単なる技術的な仕組みではなく、組織のコミュニケーションや成果に直結する大切な存在です。だからこそ、専門用語の壁を取り払い、関係者全員が納得できる運用体制をつくることが、ビジネスの成長につながると感じています。
もし今、タグ運用や管理に少しでも不安や疑問があれば、ぜひ一度立ち止まって「なぜこのタグが必要なのか」「どんな目的で設置しているのか」を見直してみてください。
その積み重ねが、組織全体の成果や透明性を大きく高めてくれるはずです。
著者情報
MASAHIRO NISHI
Marketing Strategist / Data Analyst
業界歴16年以上。データ戦略の立案、アクセス解析、 CVR改善、データ活用基盤の構築など、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援。電通デジタルを経て2019年にTHE MOLTS参画。
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