マーケティングダッシュボードの活用方法|意思決定を速くする設計と運用の考え方

「今やっている施策、効いているのかよくわからない」
「数字は見ているけど、確認で終わってしまい行動に結びつかない」
「チームで数字の話をしても、認識がバラバラで議論が進まない」

マーケティングの現場で、よく聞く悩みです。

ダッシュボードを活用することで、こういった課題の改善や解決につながることがあります。数字を見て、問いを立て、次の行動につなげる、意思決定を速くするためのダッシュボードの設計と活用するための考え方について、ご紹介します。

マーケティングダッシュボードの役割:「変化に気づく装置」として使う

ダッシュボードという言葉を聞くと、「数字がきれいに並んでいて、状況がひと目で分かるもの」そんなイメージを持つ人が多いように思います。

HubSpotやGA4、Looker Studioなど、最近はツールを活用して、数値を並べた画面が以前より手軽に作れるようになりました。ものによっては、数分触るとグラフが並んだ「それらしいダッシュボード」が完成するものもあります。

ただ、作っただけでは使われなくなることが多いのも現実です。ダッシュボードを作成した当初は盛り上がっていたものの、いつの間にか誰も開かなくなる。更新が止まってしまう。結局スプレッドシートに戻る。そんな光景はそこまで珍しくありません。

使われ続けるダッシュボードと、使われなくなってしまうダッシュボード。その差はツールの機能差というよりも「どう設計されているか」で生まれているケースが多い、と日々の支援の中で感じています。

私はダッシュボードを、日常的なモニタリングのための装置と捉えていますなにかを深く分析する場所というより、「いつもと違う動きに早く気づくための場所」というイメージです。

数値が悪くなっていないか。想定より伸びているのか、落ちているのか。

まずはそこが分かるだけで十分、くらいの立ち位置で構わないと考えています。いつもと違う数値や、想定からズレた数値があれば、そこから仮説が生まれ、議論につながっていく。

ダッシュボードは、定期的に数値を確認し変化に気づけることで活用されていきます。作ることを目的にせず、日常的なモニタリングができる状況をまずは整えることが大切です。

ダッシュボード活用の2つの役割:ヘルスチェックと進捗確認

現場で使われているダッシュボードを見ていると、役割はおおよそ2種類に分かれているように思います。

ひとつはヘルスチェック。「調子が悪くなっていないことを見ること」です。「今やっている施策、効いているのかわからない」という課題に対しては、まずこれが必要です。

たとえばメルマガの施策に取り組んでいるとします。普段は開封率40%前後なのに、ある回だけ35%に落ちた。5%の差が生じているので、ダッシュボードを見ていると「あれ?」と気がつきます。数値が下がった、いつもより調子が悪い、という気づきから仮説がたちます。件名が悪かったのかもしれない。テーマが読者の関心とズレたのかもしれない。そんな仮説が立つことで、次のメールの件名や内容を工夫したりと次のアクションが変わります。

普段の数値を知っているからこそ、いつもと違う動きに気づける。これがヘルスチェックとしてのダッシュボードの価値だと感じています。

もうひとつは進捗確認。リードを増やす、商談を増やす、といったプロジェクトは、頑張っている感覚だけでは前に進みません。数字で「伸びている」「まだ足りない」が見えると、チームの会話も具体的になります。「チームで数字の話をしても、認識がバラバラ」という課題には、進捗確認としての活用が効きます。

KPIが明確にある場合は、目標達成に向けて順調かを見る。期日までに達成するために、いつまでにどのくらいの数字が必要か。それを満たしているかどうかで、次の打ち手が変わってきます。共通の認識で数字を見ることで、「議論がはかどらず、打ち手が見えにくい」という状態から抜け出せることが多いです。

まずは、ダッシュボードで、この2つが機能していれば十分だと思います。

ダッシュボード設計でよくある失敗:「完璧を目指す」という罠

では、こうした役割を持つダッシュボードをどう始めるか。まだ、ダッシュボードを構築していない場合は、「一般的によく見る指標」でいいので、形にしてしまうことをお勧めします。

初期の設計で陥りやすいのが「最初から完璧を目指す」ことです。ダッシュボードは作りこもうとすると、なかなか終わりを決められず、使い始められないという状況にはまってしまうことがあります。でも初めはそこまで構えずに、基本的な数値が見られる状態になったらモニタリングをはじめ、数字を見る習慣を作る。

メルマガなら開封率やクリック率。セミナーなら申込数や参加率。まずはそこから始めて問題ありません。定期的に数字を見ることで、だんだんと平均値が見えてきます。平均値がつかめてくると、数値が変動したときに「いつもと違う」に気づけるようになる。

完璧に作りこむよりも、まずは一般的な指標のモニタリングを始め、自社の施策の平均値をつかむ。最初から完璧なものを作るより、無理なく更新できること。そして、なぜこの数字を見るのかがチームで共有されていること。この2つが整っているほうが、結果的にうまく回る気がしています。

なぜ「作ったのに見られない」が起きるのか

とはいえ、作って運用を始めても、気づけば使われなくなっていた、ということは珍しくありません。使われなくなる理由は、わりとシンプルです。

ひとつは技術的な要因。CSVアップロードが必要で手動更新の手間がかかったり、連携が壊れても直せる人がいなかったり。正しい設計でも、運用が重いと続きません。

もうひとつは、「なぜこの数字を見るのか」が共有されていないこと。自分の仕事とどう関係しているのか分からない。達成できなくても何が困るのか曖昧。この状態だと、ダッシュボードはただの飾りになります。結局のところ、腹落ちしていないKPIは、どれだけ正しくても見られないというのが実感です。

ちなみに、自社で回せる範囲を超えてきたと感じたら、プロに任せる選択肢もあります。GA4や広告、CRM、MAなどを横断して1箇所に集約したい時はエンジニアリングの力が必要ですし、指標が増えすぎて絞れない時は、経験のある人が「これは見なくていい」と削るだけで一気に使いやすくなることもあります。

ダッシュボードを育てる:活用サイクルの回し方

ヘルスチェックや進捗確認だけでなく、「この数字って本当に必要だっけ?」「もっと上流を見るべきでは?」そんな会話が出てきてから、初めてKPIは研ぎ澄まされていきます。最初から正解を当てにいくというより、運用しながら育てていくものという感覚でいると、始めやすく活用されるダッシュボードになるように思います。

数字を見る → 「いつもと違う」に気づく → 問いを立てる → 仮説をもとに施策を実行する → 結果をダッシュボードで確認する。このサイクルを繰り返すことで、ダッシュボードは磨かれ、マーケティング施策も良くなっていくのではないかと考えています。

最初から正解を当てにいくというより、運用の中で少しずつ磨かれて、気づけば自然と議論が始まる場所になっている。「ああ、やっとダッシュボードが機能してきたな」と感じる瞬間が出てくる。そのあたりが「施策が効いているかわかる」「チームで認識が揃う」「意思決定が速くなる」というゴールに近づいているフェーズなのかもしれません。

ダッシュボードは、きれいな画面を作ることより、意思決定が早くなることのほうがずっと価値があります。まずは今あるダッシュボードを開いて、「この数字、最近どう動いているだろう?」と眺めるところから始めてみてください。そこから問いが生まれれば、ダッシュボードは少しずつ育っていくのだと思います。

著者情報

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MASAHIRO NISHI

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

業界歴16年以上。データ戦略の立案、アクセス解析、 CVR改善、データ活用基盤の構築など、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援。電通デジタルを経て2019年にTHE MOLTS参画。

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