ABMとは?導入に向いている企業や成果を出すための手順を解説

武田 大

Marketing Director / Consultant

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ABMとは?導入に向いている企業や成果を出すための手順を解説

BtoB領域において2000年台初頭に開発された「ABM(アカウントベースドマーケティング)」が今再び注目されています。

現在ABMが注目されている理由としては、優良企業の選別や、選別した企業ごとのマーケティング施策立案などがSFAやCRM、MAといったシステムを使うことで従来より簡単に導入できるようになったことが大きいでしょう。

また、新型コロナウイルスの影響でオフラインでの新規顧客営業や展示会が従来のように行えなくなったことも理由の一つと考えられます。

本記事では、ABMとは何かという基本情報から、どんな企業に向いているのか、またどのように導入すればいいかなどを紹介します。

ちなみに、ABMを正しく導入すると、売上に繋がる顧客に注力できROI(費用対効果)を高めやすいというメリットがありますが、必ずしも全てのBtoB企業に役立つものという訳ではありません。

ABMの導入を検討している担当者は、ぜひ本記事をご覧になって理解を深めてください。

ABMとは?

ABMとは、「アカウント・ベースド・マーケティング(Account Based Marketing)」の略称で、BtoBマーケティング手法の一つです。

ABMでは、顧客データの分析に基づき、自社にとって価値のあるアカウント(企業)を選別。その上で、それぞれのアカウントに合わせた戦略を個別で立案し、利益を最大化していきます。

このように定義をすると、やや難しいと感じるかもしれませんが、ものすごく平易にすると、ABMは「会社に利益をもたらすターゲットを正しく選び、そこに集中的にアプローチする」という手法です。

一般的なマーケティング手法との違いを明確にするために、「リード・ベースド・マーケティング」との違いを見ていきましょう。

リード・ベースド・マーケティングとの違い

ABMとリードベースどマーケティングの違い

ABMとリード・ベースド・マーケティングの最大の違いは、対象が「アカウント(企業)」であるか、「リード(個人)」であるかという点です。

ABMでは、どのアカウントをターゲットにすれば利益が最大化するかという視点から、「(アカウントの)特定」を始めます。その上で、既存のパイプラインの接点を拡大していくことで、最終的な受注へと繋げます。具体的なターゲットが定っているため、予算やリソースを集中させやすいという利点があります。

「リード・ベースド・マーケティング」では、不特定多数のリードを生み出すことからマーケティングがスタートし、カスタマージャーニーマップに沿ったさまざまなコンテンツを用いて、自社への興味や関心を高めることにより、最終的な受注へと繋げます。

多くのリードにアプローチするので、予算やリソースが分散しやすいという側面を持ちつつも、自社が想定していなかったターゲットからも受注を得る可能性があるという利点があります。

その他、リード・ベースド・マーケティングとABMの違いは下記表のようになります。

リード・ベースド・マーケティングABM
対象リード(個人)アカウント(企業)
重要指標
企業規模スタートアップ・中小企業向け大企業向け
ビジネスタイプ新規ビジネス既存ビジネスの拡大
主な営業方法インバウンドアウトバウンド

ABM導入のメリット

自社のマーケティングにABMを導入するメリットは主に、以下の3つです。

  1. 売上に繋がる顧客に注力できる
  2. 顧客に合わせたキャンペーンができる
  3. マーケティングと営業の連携がスムーズになる

売上に繋がる顧客に注力できる

ABMでは、自社の売上に貢献するアカウント(企業)にターゲットを絞り、マーケティングを展開します。そのため、他のマーケティング手法よりも、営業やマーケティングのROIを高めやすいというメリットがあります。

顧客に合わせたキャンペーンができる

限られたターゲットにアプローチするため、一つのアカウントに費やせるリソースや予算が増えます。個々のターゲットへの理解を深めることができ、顧客に合わせたOne to Oneのキャンペーンを実施できるようになります。

また消費者の心理として、不特定多数に発信されたメッセージよりも、自社に向けられたメッセージの方が刺さりやすい傾向があります。深い顧客理解の上でキャンペーンを実施することにより、高い成約率を期待できるでしょう。

マーケティングと営業の連携がスムーズになる

リードを対象としたマーケティング活動では、リード創出までをマーケティング部門が担い、その後工程を営業部門が担うケースが多くあります。

このようなケースでは、マーケティング部門は「より多くのリードを獲得すること」、営業部門では「多くの受注を獲得すること」と部門ごとにそれぞれ目標が異なり、実際の施策ベースで動きがバラバラになりやすいという問題があります。

ABMでは、顧客が持つニーズや置かれている状況が明確になることから、マーケティング・営業をはじめとして組織全体で顧客に提供すべき価値が統一化されます。「あの顧客を口説き落とすためには、何をすべきか」という視点から、部門を超えた連携を行いやすくなります。

ABM導入の注意点

今からABMを本格的に取り組んだとしても、実際に運用が軌道に乗るためにはある程度の時間を必要とすることを頭に入れておきましょう。ABMは、部署や部門単位ではなく組織全体で取り組むべきことです。

特に営業部門にとっては、今まで受注に繋がっていたいわゆる「アツい顧客」を放棄するといった決断を迫られるかもしれません。個別の営業担当者としては、「受注できそうなセグメントにアプローチできなくなる」といったイメージを持ち、ABM導入の方針に従わないことも十分に考えられます。

また営業とマーケティングの関係だけでなく、扱っている商材やサービスによって部門や事業所が異なる場合には、部門間や事業所間を超えた連携が必要になります。

ABMの導入は明日明後日でできることではなく、全社やグループ各社にABM導入の意図や狙いをしっかりと伝えた上での運用が求められるでしょう。

ABMが向いている会社の特徴

ABMの最大の利点は、リソースを特定のアカウントに集中させることによって、売上を最大化できる点です。逆に言えば、ターゲットが多い商材であればあるほど、ABMの導入は向いていないと言えます。

例えば、中小企業やベンチャーは、日本企業のうち約99.7%を占めると言われています(※中小企業庁データ)。仮に「従業員が十名以上の企業」を対象とするのであれば、国内でも100万社以上をリストアップしなければいけません。これでは、ABMの利点であるリソースの集中ができません。

そのため、ABMは基本的には「エンプラ」と呼ばれる中堅〜大企業をターゲットとした商材を扱う企業に向いていると言えるでしょう。

また、このほかにABMの導入に向いている企業には以下のような特徴があります。

  • 高単価商材を扱っている
  • 自社に顧客データが蓄積されている
  • 意思決定者やキーパーソンが複数の部署にわたっている
  • アップセルやクロスセルが期待できる

ABM導入のステップ

ここからは実際にABMを自社に導入し、運用していく手順を見ていきましょう。

STEP1:事業目標から逆算し、ABM導入が必要か判断する

当然ですが、全ての企業でABMの導入が必要な訳ではありません。むしろABMを積極的に導入すべき企業は、上の章でも解説したように「ターゲットが限られている」「高単価な商材を扱っている」など特定の条件があります。

ある意味、最近のバズワードとなっている「ABM」ですが、本当に自社にとって必要な戦略なのかを今一度、事業目標と照らし合わせ、判断するようにしましょう。

STEP2:ABMチームを作る

ABMの導入にあたり、デマンドセンターの役割を果たすチームが必要不可欠と言えます。

例えば、自社で労務管理システムを提供していると考えてみましょう。これをターゲットとなる企業に展開する際に、アプローチする相手が人事担当者であれば、給与計算や人事評価に関するシステムがどれだけ使えるかが導入の判断基準になるかもしれません。一方で、アプローチする相手が経営層であれば、タレントマネジメントの機能や会社の生産性向上にどれだけ寄与するかを重視するかもしれません。

このように同じ商材を売るにしても、アプローチする相手の役職や部署などによって、訴求ポイントや刺さるメッセージは異なります。そのため、ターゲットアカウントの「誰に向けて」「どんなメッセージを」「どのタイミングで」送るべきかを、しっかりと社内でコントロールする必要があるのです。

マーケティングや営業・インサイドセールスなど部門単位で場当たり的な施策を展開しては、ABMを導入するメリットは薄れてしまいます。デマンドセンター、つまり顧客データを元にアカウントに対して適切にアプローチできるように調整する役割を持つチームが欠かせないと言えるでしょう。

STEP3:アカウントリストを作る

ここからは実際に、ターゲットとなるアカウントのリストを作成していきます。すでにリードの保有数が充分にある場合はリードに優先順位をつけ、これからリードを集める場合は​​ホワイトリストに合った会社を探しアプローチをしていきます。

リスト作成において重要なのが、ABMの本質である「顧客データの分析に基づき、自社にとって価値のあるアカウントを選別する」ことです。

自社にとって価値のあるアカウントとは、売上が最大化する顧客のことを指します。そのため、以下のような点を考慮してリストを作成することがおすすめです。

  • 売上規模の大きさ
  • アップセル / クロスセルの可能性
  • リピーターになる可能性
  • 成約の確度

これまでの取引において社内に蓄積された顧客データをしっかりと分析し、売上規模や業種・業界・社員数・所在地など、どのような属性を持つ企業にアプローチすべきなのかをリストアップしていきましょう。

STEP4:意思決定者やキーパーソンを見つける

続いて、リストアップしたアカウントの意思決定者やキーパーソンを見つけましょう。従業員規模の大きい会社では、基本的に意思決定者が複数人存在します。それぞれ、どのような立場や役職なのかを抑えるようにしましょう。

もし、意思決定者やキーパーソンとのタッチポイントがない場合は、タッチポイントを創出する必要があります。展示会やセミナーでの名刺交換やコールドコールといったダイレクトマーケッティングの手法を用いることが一般的ですが、Facebook広告など役職や職業でセグメントをかけてWeb広告を配信する手法も効果的です。

STEP5:届けるコンテンツやメッセージを決める

誰にアプローチすべきかを決めたら、どんなメッセージを送るべきかを明確にしていきます。該当企業の中にいる既存顧客の検討プロセス、また受注に至るまでの課題は何だったのか営業とコミュニケーションをしながら検討プロセスの整理と課題の仮設立てて、コンテンツを作っていきましょう。

特にターゲットパーソンにフォーカスし、その人にとって重要な情報をコンテンツ化し、それを定期更新しながら行動を解析することで、パーソナライズしたコンテンツを作り出すことができます。

STEP6:チャネルを決める

意思決定者やキーパーソンが日常的に使用している媒体などを加味した上で、接触するチャネルを決定します。メールや電話・Web広告だけでなく、タクシー広告といった交通広告といったチャネルも検討しましょう。

STEP7:キャンペーンの実施と効果検証

実際にキャンペーンを実施します。この際に、ターゲットのエンゲージメントが高まっているのかをしっかりと分析しましょう。エンゲージメントは次に紹介する、MAツールで測ることが可能です。例えば、意思決定者やキーパーソンと接触できているか・商談に至った回数が増えているか・既存顧客のLTVが高まっているか・対象アカウントの新規顧客を獲得できているかといった点が、評価基準になります。

ABMの導入におすすめのツール

ABMの導入には、徹底した顧客データの分析が必要です。顧客データの分析や管理に用いられる主なツールを見ていきましょう。

MAツール(マーケティング・オートメーション)

MAツールは、企業のマーケティング活動において、マーケターが手動で行なっている膨大な業務を自動化して、効率を高めるシステムを指します。様々な機能を搭載していますが、大量の顧客情報を蓄積できると共に、Web上の行動把握やスコアリング(成約確度の点数化)が可能になります。このスコアリングにより、ターゲットのエンゲージメントが今どれくらいなのかということを知ることができます。

▼関連記事
MAツールの機能や導入ポイントの詳細については別記事「マーケティングオートメーション(MA)とは?機能や導入のポイントを解説」をぜひご覧ください。

CRM / SFAツール

CRMとは、顧客情報や顧客とのコミュニケーションを一元で管理できるツールです。顧客の購入頻度や単価・商材などをリサーチすることで、自社に大きな利益をもたらしている優良顧客(ターゲット)を見つけ出すことができます。

一方のSFAとは、商談の履歴や進捗状況といった営業に関する情報を管理し、営業活動を効率化するツールです。過去に商談した担当者や話した内容・断り文句といった情報を蓄積することで、ABMにおける意思決定社やキーパーソンの特定や、実際にアプローチする際の戦略立案に役立ちます。

ABMツール

ABMツールとは、ABMの実践に特化して設計されたツールです。企業単位でデータを管理することができ、ターゲットアカウントやキーパーソンの選定、エンゲージメントの測定といった機能を持っています。

まとめ|顧客データの正しい管理や分析が、ABMを成功に導く

ABMは、自社の顧客データを正しく管理・分析し、「どのようなお客さんが会社に利益をもたらしているのか」を明確にすることから始まります。この管理や分析を行うためには、社内に点在する顧客情報をしっかりと一元で管理し、可視化できる仕組みや体制が不可欠になってきます。

また、ターゲットとなるアカウントを定義できたら、それぞれの企業が直面している課題について深い理解を行います。課題解決に繋がる強いメッセージを、ターゲット企業ののキーパーソンに届けることができたらABMはグッと成功に近くでしょう。

ただし、一般的なリード起点のマーケティングからABMに移行するためには、部署や部門を超えた理解や納得が欠かせません。なぜ自社でABMを取り組む必要があるのか、その意図や狙いを現場レベルまで浸透させることを忘れてはいけません。

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BtoB向けの広告運用でしっかりと成果を出すために知っておきたいBtoBマーケティングの基本については、別記事「1から分かるBtoBマーケティング|具体的な手法や成功事例を解説」で紹介しています。
広告やコンテンツマーケティングといった手法の前に、考え方の基本を学ばれたい方はぜひ合わせてご覧ください。

この記事を書いたメンバー

DAI TAKEDA

武田 大

Marketing Director / Consultant

1986年生まれ。リクルートでの法人営業、中小企業向けのマーケティング会社で勤務した後、2019年4月にMOLTSに参画し、2020年3月より子会社KASCADEに所属。延べ30社以上のBtoBマーケティングを支援。リードジェネレーション、インサイドセールス立ち上げ/改善、MA活用、CSなどのインバウンドマーケティングの戦略立案、改善/実行支援やABM戦略の立案/改善/実行、インハウスでの戦略設計、施策実行のオンボード支援など、一気通貫してBtoBマーケティングを支援する。2020年9月より同社執行役員に就任。

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