マーケティングファネルとは?種類や活用法・新フレームワークを解説

武田 大

Marketing Director / Consultant

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マーケティングファネルとは?種類や活用法・新フレームワークを解説

マーケティングファネルとは、見込み客が製品・サービスの成約・購買に至る行動過程を段階的に分けたフレームワークの一つです。

マーケティングファネル
マーケティングファネルの例

「名前を聞いたことはある」という方も多いかと思いますが、意外とその重要性や種類、場面に応じた適切な活用方法については知られていません。

そこで本記事では、累計100件以上のクライアントのマーケティング支援を行ってきた弊社の知見を基に、マーケティングファネルとは何かといった基礎知識から、マーケティング担当者が知っておくべき自社での活用方法を解説します。

マーケティングファネルとは?

マーケティングファネルとは、顧客が商品・サービスを認知してから、実際に購入するまでの一連の流れを図で表したものです。ファネル(英:Funnel)とは、日本語で「漏斗(じょうご)」を意味する言葉で、逆三角形の形をしているのが特徴です。

もともとは、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した広告宣伝における消費者の心理プロセスを示した「AIDMA(アイドマ)」の発展形として登場したと言われています。

認知〜購買までの消費者の購買行動を捉えるためのフレームワークとして、しばしばマーケティング施策の中で活用されます。

実際の購入プロセスに当てはめて考えてみると….

実際に、家電を購入するシーンを例に、消費者が購買するまでの一連のプロセスがどのようにマーケティングファネルに当てはまるのかを見ていきましょう。

(※次章で詳しく解説しますが、以下の例はあくまでも一般的な購入プロセスで、消費者全ての購買行動に当てはまる訳ではありません。)

例えば、自宅の冷蔵庫が壊れてしまい、新しい冷蔵庫の購入を検討していたとします。

マーケティングファネルの認知

「日立」や「東芝」「シャープ」「三菱」といった代表的なメーカーは、特に調べずとも頭に浮かんでくる人は多いかもしれません。しかし消耗品とは異なり家電の購入には慎重になりがちなあなたは、自分の選択がベストなのかを判断するために、ネットで検索する・家電量販店に足を運ぶ・家電に詳しい知人から話を聞くなどをして、冷蔵庫に関する情報収集を始めます。

ここでもしかしたら「アクア」や「ハイアール」といった新興メーカーも知ることになるでしょう。これが「認知」の段階(ファネルの最上部)です。

マーケティングファネル 興味

そこから、それぞれのメーカーや商品の価格帯やデザイン・機能・容量といった情報を調べ、自宅の冷蔵庫として適しているのかについて検討していきます。この段階で、特定のメーカーや商品に対して強い関心や興味を抱きます(ファネルの2段目)。

マーケティングファネル 比較・検討

候補が絞られた時点で、実際にどの冷蔵庫を購入するのか、改めて予算やサイズ・機能面を総合的に見比べるとともに口コミを参考に、商品を比較していきます(ファネルの3段目)。

まーケティングファネル 行動

そして最終的に、最も購入に適していると消費者が考えた冷蔵庫が選ばれます(ファネルの最下部)。

このように一般的な購入プロセスにおいて、認知から購入に至るまでに、段階ごとにどんどん人が絞り込まれるので、逆三角形の図になります。

なぜ、マーケティングファネルが重要なのか?

マーケティングファネルを活用する最大の利点は、消費者の一連の購買プロセスの中の、どこに問題があるのかを浮き彫りにし、適切な施策を打てるようになることです。

当然ですが、ファネルのフェーズ(タッチポイント)によって消費者に対するアプローチを適切なものに変えていく必要があります。メーカーや商品について認知したばかりの消費者に対して、すぐに購入を促すようなアプローチをかけても、良い結果には繋がらないでしょう。

マーケティング活動で得られた成果を、実際にマーケティングファネルに当てはめることによって、どの段階の施策が正しかったのか、また間違っていたのかを認識し、改善に役立てることができます。

マーケティングファネルの種類

マーケティングファネルには、大きく分けて3つの種類があります。

  1. パーチェスファネル
  2. インフルエンスファネル
  3. ダブルファネル

マーケティングファネルとして、よく知られているのは「パーチェスファネル」と呼ばれるものですが、最近では購入後のフェーズも加味した「インフルエンスファネル」や「ダブルファネル」も頻繁に用いられます。ここからは、それぞれの違いについて見ていきましょう。

パーチェスファネル

マーケティングファネル

パーチェスファネルとは、最も基本的なマーケティングファネルです。ユーザーの購買決定プロセスを説明する有名なフレームワークである「AIDMA(アイドマ)」の考えを基本として作られたモデルです。

特徴は、「認知」→「興味・関心」→「比較・検討」→「購入」と、段階を経るにあたって人数が少なくなっている点です。実際のマーケティング施策で得られるデータを当てはめていくことで、ファネルのどこに対する施策がうまくいっていないのか、またうまくいっているのかを明確にすることができます。

インフルエンスファネル

インフルエンスファネル

パーチェスファネルが、認知〜購入までを表しているのに対し、インフルエンスファネルは、購入後の購入者の行動を表した図になっています。サブスクリプションやSaaS・ECサイトなど、利用者の継続利用が重要なビジネスモデルで特に使われます。

このようなモデルが生まれた背景には、SNSでの評判や知人・友人からの口コミ、比較サイトでのでの評価が、新規の顧客の購買行動に対して大きな影響を与えていることが分かったことにあります。

総合マーケティングの会社であるトランスコスモス社が実施した調査では、購入の結果、商品やサービスのファンになった顧客の約84%が「家族や知人に好意的な評価を伝える」、41%が「SNSやブログで発信する」ことを明らかにしています。反対に商品やサービスに不満を覚えた顧客の62%が「知人やSNSに悪評を広める」と回答しています。

また、やや古いデータになりますが2013年にニールセン社が実施した調査では、「どの宣伝媒体や情報ソースを信頼していますか?」というアンケートに対して、「知人からの推奨(84%)」と回答した人が最も多くなっています。

このように、消費者はその商品やサービスについて満足度が高ければ、周囲の人やSNS上に良い評価を口コミし、一方で満足できなければ悪い評価を伝えることが分かっています。

そのためマーケティングにおいて、企業は消費者を購入へと導くと同時に、商品やサービスの満足度を高め、いかに口コミを生むかが重要です。インフルエンスファネルを用いて、購入後に顧客が「紹介」や「発信」をするための施策や仕組みが整っているのかを検証できます。

ダブルファネル

ダブルファネル

ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルの2つを組み合わせたものです。消費者の認知段階から購入、そして発信までの分析に役立ちます。

従来のマーケティング戦略では、新規顧客獲得や既存顧客の囲い込みと、顧客獲得後のCRM戦略などが、各フェーズごとに統一感なくマーケティング施策が実行されることが往々にしてありました。

ダブルファネルを活用することで、認知〜購入、そして顧客の継続利用〜発信までをフェーズごとに分けつつ、一気通貫で見ていくことができます。

マーケティングファネルが「もう古い」と言われている理由

ここまでマーケティングファネルとは何か、そしてその種類について解説してきましたが、最近では「マーケティングファネルはもう古い」といった意見も多く聞かれるようになりました。このような意見が出る理由は、大きく分けて2つあります。

  1. 消費者の購買行動が多様化し、認知〜購入まで直線的に進むものでなくなったから
  2. 購入体験そのものや、購入後の体験について認識できないから

1. 消費者の購買行動が多様化し、直線的に進むものでなくなったから

マーケティングファネルでは、消費者の購買行動が認知のフェーズから購入フェーズまで、直線的に進むことが前提に考えられています。しかしながら、マーケティングファネルは人々の行動を一般化したフレームに過ぎないので、モバイル端末の発達やSNSの普及などにより複雑化した消費者の購買行動を表すには十分ではないのです。

【例】かつての消費者行動

自動車の購入を考えた時、実際にディーラーに足を運び、興味のある車種を確認し、最終的に購買に至る。

このように直線的な購買プロセスを踏むのが一般的でした。しかし、検索エンジンやSNS・YouTubeなどインターネット上でたくさんの情報を得ることができる現代では、決して認知〜購買まで一直線ではないプロセスを取る消費者が増えました。

【例】現在で起こり得る消費者行動

インターネットで調べては飽きたらやめ、また興味が出た段階で今度は雑誌やSNSなど違う媒体で情報収集を開始する。

このように購買行動が多様化した現代において、全ての消費行動を無理にマーケティングファネルに当てはめようとすると、消費者について正しく捉えることが難しくなってしまいます。

2. 購入体験そのものや、購入後の体験について認識できないから

消費者の購買行動だけでなく、ビジネスモデル自体も多様化しています。例えば、「所有から利用・体験」「モノ消費からコト消費」などの言葉に代表されるように、サブスクリプションモデルやSaaSといったサービスが広く一般的になりました。

このようなビジネスモデルの変化に伴い、企業は消費者をいかに購入に導くかだけでなく、購入体験そのものや購入後に顧客をどれだけ継続的に満足させられるかが、マーケティング活動において非常に重要になっています。

一方の従来のマーケティングファネルでは、「購入」や「発信」がゴールに設定されており、ゴール達成後の消費行動について追うことはできません。例えば「一度買った人が同じ商品をもう一回買う」といった繰り返しが見過ごされてしまうのです。これが、「マーケティングファネルは古い」と呼ばれる一つの要因です。

自社でマーケティングファネルを活用する方法

消費者がファネルのどの段階にいるかによって、企業が取るべきコミュニケーションの方法は異なります。認知段階にいる消費者と、いままさに購入を検討している消費者では考えていることや、心理状態が変わってくるためです。

例えば、認知フェーズの消費者には、まず興味を持ってもらえるような情報(コンテンツ)が必要であり、興味関心フェーズの消費者には、比較検討材料となる情報(コンテンツ)が必要です。

このように消費者がどの段階にいるのかを整理し、どんな情報を提供すれば次のフェーズに進んでもらえるのかを考えるための枠組みが、マーケティングファネルと言えるでしょう。

またマーケティングファネルを活用し、定量的な分析を行い、どこのフェーズの施策に注力すべきかを見つけることも大切です。

例えば、認知フェーズの総数が多いのに対して、極端に購入の件数が少ない場合(ラッパ型)は、「興味・関心」「比較・検討」の段階で多くのユーザーがファネルから離脱してしまっていることが予想されます。このケースでは、現段階で該当のフェーズで行っているナーチャリングの施策を見直すことが求められるでしょう。

一方で、ファネルの上部に位置する認知から購入まで、総数があまり変わらずに筒状になっている場合は、ナーチャリング施策がうまく機能しているため、認知拡大の施策に注力すべきと言えるでしょう。

このように、実際のマーケティング施策の成果をファネルに当てはめることによって、現状の問題点や今後の注力すべき点について浮き彫りにできます。

▼関連記事
見込み客(リード)の購買意欲を高め、受注や商談へと導くためのリードナーチャリングについて詳しく知りたい方は、別記事「リードナーチャリングとは?求められる背景から手法まで解説」で解説していますので、そちらも合わせて参考にしてください。

カスタマージャーニーをもとに、最適なコミュニケーションを考える

マーケティングファネルのとあるフェーズで、多くの顧客が離脱していることを発見できた場合、どのような施策を打つべきか迷われるかと思います。そんな時には、顧客が購入や登録に至るまでの考え方や行動を時系列順に整理する「カスタマージャーニーマップ」を用いることをおすすめします。

カスタマージャーニーマップは、それぞれの段階で「何を考えているのか」「どんな悩みを抱えているのか」といった顧客の心理状態を表します。認知から興味の段階に消費者を態度変容させるためには、顧客の思考や課題感を理解し、最適なコミュニケーションを取ることが求められます。

▼関連記事
カスタマージャーニーマップについて詳しく知りたい方は、別記事「カスタマージャーニーマップとは?活用方法から作り方まで解説」を合わせて、参考にしてください。

マーケティングファネルに取って代わる新しいマーケティングのフレームワーク

消費者の購買行動の変化を受けて、マーケティングファネルに取って代わる新しいマーケティングのフレームワークが近年注目されています。これらは直線的なプロセスを取るマーケティングファネルとは違い、循環型プロセスを重要視しているのが特徴です。

4つのフェーズを経る「消費者の意思決定の旅」

消費者の意思決定の旅

一つ目は2009年にアメリカのコンサルティング会社であるマッキンゼーが提唱する、4つのフェーズを経る「消費者の意思決定の旅」です。意思決定の旅を構成する要素は、以下の4つです。

  1. 初期段階(Initial-consideration set)
  2. 積極的な評価(Active evaluation)
  3. 購入の瞬間(Moment of purchase)
  4. 購入後の体験(Postpurchase experience)

マーケティングファネルとの最大の違いは、認知〜購入にかけて、必ずしも消費者の数が経るとは限らない点です。初期段階でブランドが認知されなくても、積極的な評価、つまり購入候補品を調査するプロセスで新たなブランドが追加されることが加味されています。

実際にマッキンゼーの調査では、パソコンの購入を検討しているユーザーは初期段階では平均1.7つのメーカーが候補だったものの、積極的な評価の段階では新たに1.0のメーカーが候補に追加。また自動車の購入においては、3.8つのメーカーの候補に2.2.のメーカーが追加されることが明らかになっています。

また、購入の瞬間が企業のマーケティング活動の終わりではなく、購入後の顧客体験がロイヤリティを高め、更なる購入に導く(Loyallty loop)ことが示されてます。

循環型のフレームワーク「フライホール」

引用:https://blog.hubspot.jp/our-flywheel

同様にアメリカのマーケティング会社であるHubspotからも、循環型のフレームワーク「フライホール」が提唱されています。フライホールとは、日本語で「弾み車」を意味し、回転運動のエネルギーを効率的に伝えるもので、自動車等に利用されている機構(部品)です。

同社では、顧客を獲得しても、その顧客が自社の成長を後押しする存在にならない点をマーケティングファネルの問題点として指摘、一連のマーケティングプロセスを一種のエネルギーとして捉えるフレームワークを考えました。

フライホイールでは、ビジネスの成長を持続させるためにエネルギーを活用できます。しかも、フライホイールはエネルギーを蓄積できるので、さらにエネルギーを加えて回転速度を引き上げれば、ビジネス全体が拡大していくようになります。
引用:https://blog.hubspot.jp/our-flywheel

フライホールでは、回転速度・摩擦の大きさ・サイズの3つが(企業の成長を後押しする)エネルギー量に大きく左右するとされています。

  1. 回転速度:①Attract(惹きつける)・②Engage(信頼関係を築く)・③Delight(満足させる)を素早く回すこと
  2. 摩擦の大きさ:摩擦(顧客との誤ったコミュニケーション・部門間の情報共有の不足)を生まないこと
  3. サイズ:顧客の数

マーケティングファネルと比べるとやや抽象的なフレームワークで、定量的に分析する際にはややハードルが高いですが、消費者の新しい購買行動を捉えたフレームワークと言えるでしょう。

まとめ|ファネルを理解することで、マーケティング施策の問題点を発見しよう

本記事では、マーケティングファネルとは何かといった基礎知識から、その重要性、活用のポイントを解説しました。

マーケティングファネルの代表的種類である「パーチャスファネル」は比較的、古くからあるフレームワークですが、最近では購入後の消費者の行動を示した「インフルエンスファネル」や「ダブルファネル」といったものも登場し、マーケティングファネルはより有効に活用できるようになりました。

マーケティングファネルを活用することで、現状のマーケティング施策のどこに問題があるのかを発見、消費者のインサイトを表すカスタマージャーニーマップと照らし合わせて見ていくことで、フェーズごとの最適にコミュニケーションを模索できるでしょう。

この記事を書いたメンバー

DAI TAKEDA

武田 大

Marketing Director / Consultant

1986年生まれ。リクルートでの法人営業、中小企業向けのマーケティング会社で勤務した後、2019年4月にMOLTSに参画し、2020年3月より子会社KASCADEに所属。延べ30社以上のBtoBマーケティングを支援。リードジェネレーション、インサイドセールス立ち上げ/改善、MA活用、CSなどのインバウンドマーケティングの戦略立案、改善/実行支援やABM戦略の立案/改善/実行、インハウスでの戦略設計、施策実行のオンボード支援など、一気通貫してBtoBマーケティングを支援する。2020年9月より同社執行役員に就任。

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