インターネット広告費が年々増加し続けるなかで、リスティング広告をはじめとするインターネット広告の出稿をしている企業が増えています。

適切な広告費がわからない、広告費をいくら投資すればいいのかわからないといった悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

本記事では、デジタルマーケティング業界歴12年、広告代理店のコンサルタント・事業会社のマーケティング責任者を経験してきた筆者の目線から、広告予算の算出根拠と事業成長にかかわる広告費の考え方について説明していきます。

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・目標設定(KGI・KPIの設計)が無謀か見極めたい

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広告の予算を決めるために必要な観点

広告の予算の具体的な組み立て方をお伝えする前に、まず前提として、今まで50社以上の広告運用に関わってきた筆者の考えをお伝えします。

それは、広告を出稿するにあたって最も重要な視点は、「何を目的とした投資なのか」をブレずに考えられているかということです。

立てた目標を達成するために必要な予算がいくらかを算出していく方法、事業の状況から捻出できる広告費を決める方法など、その考え方は様々です。

いずれにせよ弊社では、広告を出稿する目的を明確にしたうえで、広告予算・各KPIを決めていくことが重要であると考えています。広告の費用対効果を図るためにも、その目的さえ明確であれば、考え方はシンプルにしていくことができるようになります。

そのために必要な観点は、下記の2つです。

  1. 何のために広告を打つのか
  2. どういう事業フェーズにいるのか

何のために広告を打つのか

まずは、具体的な広告配信の「目的」と、それを達成するための「KPI」について、考えていきましょう。

広告費は企業にとっての「投資」ですから、その結果何を達成したいのか(広告費の算出根拠)によって、予算の決め方は変わってきます。

広告費を使う目的は、販売促進、ブランド認知といった大枠で捉えることができます。販売促進のケースにおいても、直接的な商品購入促進(売上・利益増加)、リード獲得、来店促進、といった様々な要素分解をしていくことができます。

広告費に対して、比較する対象となる対価(コンバージョン数・売上・利益)が何なのか、その費用対効果が計算できているのかが不明ならばKPIがどんどん揺らいでしまい、広告費もいくら使えばいいのかなどが決められなくなってしまいます。

ここからは、ECサイトを例に見ていきましょう。

ケーススタディ:ECサイト(目的と指標の関係性)

例えば、あるECサイトで下記を目的とした広告配信をしようとしていたとします。

目的:新規顧客の最大化をしたい
目標:新規顧客人数を2,500人獲得
ただし、目標の単価は2,000円程度に抑えたい

必要な広告費を算出するための計算式は、以下の通りになります。

ここで「500万円」という広告費が妥当であるかは、新規顧客2,500人がどういう役割を持つのかによって変わります。

A)会員登録をしただけでの2,500人
B)会員登録をしてかつ商品も購入した2,500人

いずれも「新規顧客」には変わりありませんが、事業的な評価はどうなるでしょうか。

本ケースでの広告の目的は「新規顧客の最大化」ですが、事業としての本質的な目的は「新規顧客からの売上をどれぐらいの期間で獲得できるか」にあると考えられます。つまり上記のケースは、会員登録をしてかつ商品購入も行った(B)のほうが、価値評価が高くなるのです。

これは、短期的に売上を見たケースですが、この2,500人という会員が実際にどれぐらいのLTVになるのかを考えていることが本質としては重要です。

つまり、一番重要である目的をきちんと細分化していかないと、必要な広告費がわからなくなってしまうということです。

ケーススタディ:ECサイト(実際の広告費計算)

同じ例で、筆者が考える現実的なラインで広告費を予想してみます。

目標とするCVsの2,500の内訳をきちんと考えます。

通常、会員登録のみでそのタイミングで購入しない比率が50%とすると、期待する内訳は下記の通りになります。

会員登録のみ 1,250件
会員登録かつそのタイミングでの購入 1,250件


また、会員登録のみのユーザーが3ヶ月以内に購入をする確率は60%とすると

750件の購入が発生する

 

会員登録かつそのタイミングでの購入したユーザーが3ヶ月以内に購入をする確率は80%とすると

1,000件の購入が発生する

 

こうしたことも考えられます。

これらの関係を考慮した場合、会員登録時に購入までしているユーザーを確保できると、その後の期待売上は少なくとも3ヶ月以内での期待売上は3倍ほどになります(下図、赤囲み部分)。

そして登録時売上が500万円のためCPA2,000円の場合、その時点で広告費と同等の売上があり、その後の売上が粗利になっていくという計算になります(下図、青囲み部分)。

ちなみにこの例では、下の表のように、登録時に購入もしているユーザーの獲得に対してはより登録CPAを高くしてもその後の売上も伸びることがわかります。

CPA目標の2,000円を、「会員登録のみ」「会員登録 + 商品購入」のユーザー双方で守って広告費を500万円に留めるよりも、両者のCPAを調整して広告費もより多く使っていく方が、結果的に多くの利益を生む結果になります。

▼「会員登録のみ」「会員登録 + 商品購入」のCPAを、それぞれ目標値の「2,000円」にとどめた場合

最終利益は700万円と予想される。

▼「会員登録 + 商品購入」のCPAが、目標値を上回り「2,700円」とオーバーした場合

最終利益は1,012万5千円と予想される。

このように、あくまで重要なのは「目的の明確化」とその「根拠の細分化」にあります。指標を理解し、本質的な事業成長のためにどういう計算式を付けていくことができれば必然的に必要な広告費の目安を決めていくことができるようになります。

BtoBビジネスにおいても同様に、商品問い合わせや資料ダウンロードでのリード獲得に関しても、その後のアポイントにつながる確率、契約率や受注単価がどうなるかで1件当たりのリードの評価が変わります。

どの時点までの数値をコミットするために広告費を投資するのかの線引きをして行くかを目的を明確化していくことが大事です。

どういう事業フェーズにいるのか

広告の予算を決めるために必要なもう一つの観点は、自社の事業フェーズです。

成熟した状態からの成長を目指すのか、これから始める状態なのかによって、計画の立て方も変わってきます。

継続事業を成長させる場合

これまで継続してきている事業である程度安定している状況からの成長をする場合であれば、改めて投資を行って一気に伸ばすことを目指すのか、安定した利益を出し続けて成長をしていきたいフェーズなのかという違いがあります。

安定して利益を伸ばしたいという観点であれば、今の現状が市場シェアをどれぐらい取れているのかという観点で、そのシェアを増やすためにどれだけの期間で到達したいのかを考えていきます。

例えば1年間でその状態まで到達しようと考えた場合、目指すべきシェアに対しての売上計画を立てそれに対しての現実的な必要広告費を算出していきます。現状の成果の効率(例えばCPA)をそのまま当て込んで増やそうとするのは、現実的な計画にはならない、ただの根性論になってしまいます。どこまでの効率悪化を覚悟できるのか、より踏み込むライン、撤退するラインを決めたうえで計画を立てることが必要になります。

新規事業を立ち上げる場合

新規に立ち上げていく事業であれば、いつまでにどれだけの市場シェアを取りに行きたいのか、投資ができる資本力がどれだけあるのかということで大きく変わります。

競合他社の業界No.1がどれぐらいのシェアを持っているのかに対して自分たちがその市場シェアになるまでどれだけの投資が必要かから考えることができます。

自社と競合の差異を、ブランド力・商品力といった観点で比較をしてみるとその比率がわかります。

全体の市場における競合のシェア状況を考えた際に、その投資の必要性が変わってきます。例えば業界の上位3社が市場シェアの9割以上を持っており、サービス利用が継続性の強いもので、それぞれがユーザーを取り合いしているような場合、その中で大きくシェアを変動させようとするなら、単純に広告費を伸ばせば上がるというものではなく、そのサービス優位性を高めることができるかによっても結果が大きく変わってきます。

例えば比較サイトや一括見積サイトのように、競合との差異が生まれにくいサービスの場合は、競合のシェアをとりに行く場合に、ユーザーがそのサービスに対してのニーズを感じたときにどれだけ先に接点を持つことができるかがキーとなってきます。

このケースであれば競合よりも広告費を投資し、ユーザーに対しての接触機会を先に取れるための広告予算の想定が必要になります。

事業計画に適切な広告費を反映する2つのポイント

P/Lにおける広告宣伝費は全体の合算値が入っているだけです。しかし、その裏側には、どの媒体にいくらをかけていくか、何のために使っている広告費なのかなど細かい内訳が存在しています。

では、その見立てはどのように考えていけば良いでしょうか。

事業として広告費をどこまでかけて良いのかを判断できるか

事業計画の中で、広告費はかける必要がないなら掛けたくないというのが経営者の考えでしょう。

その一方で、投資した分だけの対価が返ってくるならば、いくらでも投資をしたいという考えが表裏一体になっているはずです。

広告費のかけ方については、

・自社の広告費が業界の競合と比べてどれくらい乖離があるのか
・Google・Yahoo!などの見積ツールで算出した市場規模に対してどれぐらい乖離があるのか

といった情報を活用し、自分たちが持っている市場シェアに対してどれぐらいの伸び率があるのかを算出していきます。

競合が月間で5,000万広告費をかけている市場の中で、自社が2,000万の広告費をかけているとした場合、単純計算で言えば3,000万円の追加投資が可能という想定になります。もちろん、競合との採算ラインの違いなどがあるため、そういった差異は考慮が必要になります。

リスティング広告であれば自社が出稿してる場合は算出がしやすく、IMPシェア・ページ最上部インプレッションの割合などからも、出稿強化の割合を算出することができます。

ディスプレイ広告やSNS広告については、広告費を使おうとすればいくらでも使うことができてしまいます。そのため媒体社と連携をしながら業界的な広告費の水準などを把握しながらその投資を決めていくことが必要になります。

P/Lで今後の計画を立てるときの試算方法

通常P/Lにおいては、月別に「販売費及び一般管理費」の中に広告宣伝費を入れ、売上との引き算がされるだけの形にまとまっています。そこに入れる数字をどれだけ根拠をもって入れられているのかで、事業成長の確度が決まるといっても過言ではありません。

では、そのシミュレーションはどう作って行けばよいのでしょうか。

ポイントは以下を整理することです。

  1. 日別(曜日・祝日情報)
  2. 流入元・媒体
  3. 成果影響指標(IMP・CTs・CTR・CPC・CVRなど)
  4. 売上までの影響指標(キャンセル率・リピート率などの指標)

1. 日別(曜日・祝日情報)

P/L上での広告予算計画は、日別に推移を作るという考え方が基本となっています。過去のデータを元にして、曜日・祝日の情報をつけた表を日割りで作成し、各媒体別の数値をまとめていきます。曜日や祝日情報は、事業によっての成果変動があるケースを漏らさず加味するために重要となってきます。

また日別で設計をすることで、シーズナリティについても前年実績などを踏まえて、いつのタイミングでボリュームが伸び始めるのかといった変動をより正確に加味できるようになります。

2. 流入元・媒体

自然検索やSNSといった流入チャンネルを整理し、それが反映されるスケジュールを日別で立てておくことで実際のズレがどれぐらい発生しているかを後から検証し、他でどうケアしていくべきかといったことを考えやすくなります。

3. 成果影響指標

事業部内でのリソース状況などから成果改善に向けて施策を実施できるスケジュールの反映をすることで成果変動要因を明確化し、精度を高めることができます。

この観点が非常に重要で、例えばCVRがただ毎月1.2倍に上がるとかいう計算式を組むよりも、月に何度LPを制作することが可能で、その際の施策の成功率も加味して成果変動を試算できるため、現実的な変動として加味することができるのです。

4. 売上までの影響指標(キャンセル率・リピート率など)

前年実績と比べていった場合に、前年はTVCMを打っていた、または自社製品がバズったために急激な伸びが見られたなどのイレギュラー要因については、当年の試算からその変動を省くことで、各指標の変動を簡単に反映していくことができるようになります。

各年の施策実施スケジュールと照らし合わせながら、適切なシミュレーションを作成しましょう。

事業成長をさせていくための広告費の考え方

広告費の計画は前項までで述べたように、どれだけの目標を達成するためにどういったスケジュールで実現させるのかを考慮できていることが必要です。

一方で計画を精緻に立てることは、その計画通りに実行をできていないとだめなのではないかという制約が生まれてしまうケースもあります。

広告費は計画通りに使うべきか

結論として、計画通りに広告費を使うべきなのは、想定した目標に対して適切な成果が得られているときのみです。

目標を達成するためには、その媒体・施策ごとの予算アロケーション自体も手段の一つになります。いつ広告予算の見直しをかけるべきかというタイミングについては、少なくとも14日間の成果判断期間をとるというのが一つの目安になります。

もちろん投資している広告費によってその判断期間の長短はあり得ますが、先に述べた曜日別変動などがあるケースにおいては、少なくとも14日間、つまり全ての曜日のデータを最低でも2回取得することで、一時的な変動によるブレを防いだ判断がより可能になります。

いずれにせよ、立てている計画が詳細であればあるほど、その想定に対して何がずれているのかが明白になるため、その乖離を埋めるために行うべき施策も明確になります

例えば、CVRが想定よりも大幅に下回っている場合、広告費を計画通りに使っても想定未満の利益しか生み出せない、その差分だけ赤字を掘らなければいけないということになります。そうなった場合は、最重要とする指標が売上のトップラインなのか、利益なのかなど、それぞれによって判断が必要になります。売上のトップラインの場合はその差分を埋めるために必要な広告費を追加するという観点になりますし、利益を最重要視する場合は利益率の状況からそれぞれの広告費を絞るという判断になります。

このように広告費は必ずしも初期の計画通りに使われるわけではありませんが、計画が崩れてしまったときにすぐに微調整が効くように、目標はしっかりと設定しておきましょう。

広告費はどれぐらいの期間で考えていくべきか

広告費の予算は、目安としてどれぐらいの期間で判断すればいいという正解はありません。

広告費については月額で考えることが一般的です。しかしながら、その「月」という単位を絶対視しすぎることは計画に縛られているだけで、予定通りに広告費を使うということが目的となってしまった本質からずれた運用に過ぎません。

参考としては、前項で述べたように、成果判断については最低でも14日という期間をとることが一つの目安にはなります。広告の成果に応じて、より投資をすべきなのか、抑制をすべきなのかについては、都度判断していくしかありません。この時、他の媒体へのアロケーションなど単純な予算の割り振りでクリアができるかによっても、その判断は変わります。

もし、すぐに乖離を埋められなさそうと判断される場合は、その月に使う想定でいた広告費を翌月以降にずらしていくなどの判断が必要になります。日・週・月・Q・半期・年などのそれぞれの単位で何が乖離をしているのか、それに対して打てる施策が何なのかを同時に考慮して現状評価を行い、限られた広告費を何に使うかを判断する必要性があります。

時には計画に入れていない新しい広告媒体への出稿のチャレンジ、制作費への充当など目標を達成するための予算という考えで、選択肢を縛らずに取り組めるかが重要になります。

したがって、目安としてどれぐらいの期間で判断すればいいという正解はなく、あくまでも目的に対しての計画を精緻に設定し、現状を正確に把握することが必要です。

また、計画を精緻に立てるためにはそれなりの時間がかかります。そして、計画を立てている間は施策を実施できているわけではないため事業の成長は止まっていると言える状況です。

毎週毎月計画を立て直してということをやり続けてもそこに時間をかけすぎてしまうことになるため、見直す目安としてはQに一度ぐらいにすることをおすすめします。

予算に柔軟性を持たせることと、事業を成長させることの関連性

これまで述べてきたように、広告費についてはその活用の柔軟性を持てることが事業成長のカギになります。

実際に聞く極端なケースとして、広告費を媒体別に稟議申請をしなければならず、成果が良い媒体に予算を寄せたくてもその稟議の承認が下りるまで変更を掛けられないということもあります。

そこまで縛りを掛けることは、これまでの弊社の経験上でもプラスに働いているケースはありません。稟議を申請している時間、その稟議が下りるまでの期間、本来獲得ができたであろう成果を獲得できない状況を作らなければいけないためです。

最近では、月ごとの広告費でその内訳は自由にという判断がされる企業が大半になっていますし、年間での予算内であればそのアロケーションは自由という企業も多くなってきています。

しかし経営者から考えれば計画性もない広告配信に大切な予算を預けるということは不安でしかなく、そのために先に述べた精緻な計画を立てることは重要です。

何のために広告を打つのか、その予算をとっているのかという本質に立ち返り、事業を成長させるための弊害になりそうな縛りについては可能な限り排除することをおすすめします。

広告運用の肝は、成果の要因を明確にすること

本記事では、広告費の算出根拠と事業成長に係る広告費の考え方について述べてきました。

重要なのは、何のために広告を打つのかという目的の明確化、その目的を達成するための根拠の設計を精緻にしていくことです。

限られた経営資源を有効活用し、最大の事業成長をするために、成果の要因を明確にするための計画が必要です。

広告費をいくら使うかに縛られるのではなく、目的を達成するために必要なものは何なのかという観点から包括的な判断をしていきましょう。

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