事業に活かすデータ戦略の考え方!活用成功事例やプロセスを解説

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

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事業に活かすデータ戦略の考え方!活用成功事例やプロセスを解説

民間だけでなく、官公庁でも急ピッチで進むデータの利活用。昨今では、政府がビックデータの活用を推進していることや、2021年9月を目処に「デジタル庁」の新設を明言したことから、データへの注目度はさらに高まっています。

データの利活用で重要になってくるのが、データをどのように収集〜分析し、施策に活かしていくのかという「データ戦略」です。

本記事ではデータ戦略とは何か?といった基本的な定義から、データ戦略の考え方、具体的な成功事例について解説します。社内でデータをうまく活用できていないという経営者や、デジタル部門の担当者はぜひ参考にしてください。

データ戦略とは?

「データ戦略(Data Strategy)」という言葉の定義は、一部の企業やプレイヤーそれぞれで定義されており、一般的に確立された定義がある訳ではありません。

その時々のシチュエーションによって、さまざまな解釈がされますが、弊社としてはデータ戦略を「データの重要性を全社的に理解し、社内の分析基盤を整備・構築、あらゆる施策の実行〜改善に活用するための戦略」と定義しています。

似たような考え方に「データドリブンマーケティング」がありますが、これはデータによって意思決定を行うマーケティング手法を意味します。「データ戦略」とほぼ同義と捉えて問題ありませんが、データ戦略は、よりデータの重要性を全社的に理解することにフォーカスが当てられています。

そのため、トップレイヤー(経営層)がデータによって意思決定を行うだけでなく、トップから現場レベルまでレイヤーに限らずデータを積極的に活用し、施策の実行〜改善に活かしていくような組織づくりを指した言葉と捉えると良いでしょう。

つまりデータ戦略の範疇は、マーケティングに留まらず、データを用いた採用活動の最適化やカスタマーサポートの満足度の向上など、あらゆる業務を含んでいると言えます。

データ戦略に用いられる「データ」とは

データ戦略に活用されるデータは、Web上での閲覧履歴や購入履歴といったアクセスログに限らず、オフラインの場で収集できる様々なデータも含まれ、非常に多岐に渡ります。

  • 顧客データ
  • 経理データ
  • アクセスログ
  • POSデータ
  • eコマースにおける販売データ
  • GPSデータ
  • センサーデータ
  • 交通量 / 渋滞情報データ
  • 気象データ
  • 防犯 / 遠隔監視カメラデータなど

例えば、ユーザーのスマートフォンから得られる位置情報(GPS)データを活用することにより、ユーザーの消費行動や移動に関するデータを収集し、マーケティング施策に活用することができます。

また、店舗に備え付けられた防犯カメラのデータから、店舗内で消費者がどのような回遊をしているか、どんな商品に興味を持っているのかといったデータも収集できるようになりました。

企業にデータ戦略が求められる背景

ここで一度、基本的な問いに立ち返ってみましょう。多くの企業がデータの重要性は認識していると思いますが、「データ蓄積」でも「データ分析」でもなく「データ戦略」が求められる理由は何でしょうか。

データ戦略は前述の通り「施策の実行〜改善」に活かすことを目的とした考えですが、それが企業に求められるようになった背景として「取得できる顧客データが格段に増えた」「データ処理・可視化のツールが一般化された」の2点が主に挙げられると考えています。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1. 取得できる顧客データが格段に増えた

企業に戦略的なデータ活用が求められる背景の一つとして、企業が取得できるデータが格段に増えたことがあります。かつては顧客に関するデータを集めようと思っても、アンケートや店舗調査などオフラインの手段もしくは架電などの人力作業に限られていました。

しかし、最近では顧客のWeb上の閲覧データや、位置情報を活用したリアルな顧客の行動データ、店舗に設置したカメラから解析した顧客の店舗内の行動データ、SNSの口コミデータなど様々なデータを比較的容易に取得できるようになりました。

多くの企業では、自社で取得できるデータの利活用を進めており、マーケティングやプロモーションへの利用はもちろんのこと、在庫管理や売上予測、カスタマーサポートなどあらゆる領域で有効に利用しています

このように業界全体でデータの利活用が進む中で、自社だけは過去の経験や感に基づいた意思決定や組織づくりを行なっていると、他社に出し抜かれ、企業として競争力を失っていくのは明白です。そのため、データ戦略への積極的な投資が急ピッチで進んでいる背景があります。

2. データ処理・可視化のツールが一般化された

また、データ処理や可視化のツールが従来よりも一般化されたのも、データ戦略が進む要因です。

例えば、データ自体は社内に蓄積されているものの、「社内にデータが点在している」「データをうまく可視化できていない」「データ分析に精通している人材がいない」といった理由から、施策にうまく繋げることができないといった課題を抱える企業が多くありました。

そこで登場したのが、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)です。BIツールを活用すると、社内の基幹系システムと連携することで、複雑な統計処理を行わなくても、データを分析・収集、見やすいようにレポーティングすることができます。

このように社内に専門家がいなくても、ツールを活用することで、ある程度のデータ分析が行えるようになったのも企業のデータ戦略が進む要因だと言えるでしょう。

しかし、ツールによるデータ分析の効率化は、根本的な戦略立てとは到底言えません。戦略を戦略たらしめるためには、考え方のフレームワークが存在します。次からは、事業担当者が押さえておくべき考え方を説明します。

データ戦略の考え方

データ戦略の考え方には、簡単に以下のステップがあります。

STEP1:データ活用の目的を定義する

まずは、データを経営にどう活かしていくのかを明確にする必要があります。目的がないまま走ることができる施策はありません。店舗の売上アップを目的としたデータ活用なのか、ブランドイメージの向上を目的としたデータ活用なのか、その目的よって収集すべきデータは異なってきます

【企業のデータ活用の主な目的】

  • 売上の増加
  • コストの削減
  • 採用活動の最適化
  • ブランドイメージの向上
  • 新規事業の創造

また、データ戦略は経営層だけではなく、現場のデータ活用を進めるものです。データ活用を進めた結果、自社のどのような課題が解決できるのかを明確にして、社内に浸透させなければ、各部署や部門の協力を仰ぐことはできないでしょう。

特にデータ戦略の初期フェーズでは、各部署に点在しているデータを整備することから始めるケースが多々あります。データ戦略の担当者は、経営層を巻き込みながらトップダウンで、全社的にデータ戦略を進めていくことをアナウンスしていくことが欠かせないでしょう。

STEP2:分析したいテーマを決める

何のためにデータを活用するかを明確にしたら、具体的に分析したいテーマを決めましょう。例えば、売上の増加を目的とするのであれば、新規顧客の獲得数や、既存顧客のリピート率・購入頻度・1回あたりの購入単価・解約率などが挙げられます。

この際に、重要になってくるのが正しいKPIツリーを作成することです。売上の最大化を最終的なゴールである「KGI(重要目標達成指標)」に据えた時に、中間目標としてどのような要素が必要になってくるのかを強く意識する必要があります

このKPIツリーを正しく構成することができなければ、いくらデータを元に施策の実行や改善を繰り返しても、最終的な目標を達成できない可能性があります。

STEP3:必要なデータを収集する

続いて、必要になるデータを決めて収集を始めていきます。データの収集方法は、大きく分けて2種類あります。

  • 自社で収集する(ファーストパーティデータの活用)
  • 他社のデータを利用する

自社で収集する場合は、部署や部門ごとに点在しているデータを集約する動きが必要になってきます。

リード獲得までのデータはマーケティング部門に、商談のデータは営業部門に、顧客管理のデータはカスタマサポートにといったように、一連のマーケティングフローのデータが各部門に点在しています。これらのデータを統合し、一連のフローとして見えるようにしていく必要があります。

また、企業によってはそもそもデータの収集がなされていないケースもあります。こういったケースでは部署や部門の協力を仰ぎ、意識的にデータを収集しなければなりません。

例えば、顧客の解約率を下げたいと考えた場合、カスタマサポートに寄せられるクレームや解約理由・トラブルなどは、都度、現場の担当者がログを蓄積する仕組みを作る必要があるでしょう。

自社で収集できないデータに関しては、他社のデータを利用する必要があります。例えば、ブランドイメージの向上を目的としてデータ戦略を進めた場合、企業やブランドに関する顧客の想起率や好感度を定点で調査する必要があります。こういった場合には、マーケティング会社や調査会社に依頼をしてデータ収集をしていくことが求めれます。

また最近では「セカンドパーティデータ」の活用も進んでいます。セカンドパーティデータとは、他企業が保有するデータを、マーケットプレイス経由で取引・利用できるデータのことです。個人情報保護の観点から「サードパーティデータ」への規制が強まる中、信頼できるデータソースから提供されるデータを有効に活用することで、自社で収集できないデータを活用することが可能になります。

STEP4:実際に分析をする

続いて、実際に収集したデータを分析していきます。ここで重要なのが、データの分析に特化したチーム(個人)を作ることです。

仮にマーケティング部門の担当者のみで、データを分析してしまうと、データを恣意的に見てしまう可能性が発生してしまいます。同じデータでも、誰が見るかによって、そのデータに対する解釈は異なります。

場合によっては、売上が上がらないのは、マーケティング部門の責任ではなく、営業やカスタマサポートの責任であるといった見方もできてしまうのです。

このような事態に陥らないためにも、客観的にデータを分析するチームが必要になってくるのです。データの分析には高い専門性を必要としますので、社内に人材が不足している場合には、新たにデータアナリストを採用する・外部の分析パートナーと組むといった動きが必要です。

STEP5:課題に対する施策を実行する

データを分析した結果、見えてきた課題に対して、施策を立案〜実行していきます。なお、データ戦略を進めていく場合、データを活用するのは必ずしもデータの見方に精通した社員とは限りません。

現場レベルのマーケティング担当者や、営業・カスタマーサポートの担当者もデータを活用し、日々の業務に活かしていくことが求められますので、「誰でもデータを見やすく整備する」「データ分析に特化したチームと現場の連携」を強化する必要があるでしょう。

STEP6:課題を発見し、改善へと繋げる

データの分析によって導き出された施策が必ずしも、最終的な目標達成に結びつくとは限りません。

施策の実行後に、設定したKPIがどのように変化したのかをモニタリングしましょう。また、改善に繋がっていないのであれば、施策の何が問題だったのかを社内で議論し、施策の改善へと繋げていく必要があります。

データ戦略の2つの成功事例

データ戦略の考え方のステップに沿って成果をあげている例を2つご紹介します。

モノタロウ|データ戦略を推し進め、顧客体験を向上

2000年に創業し、事業者向けに工具や資材販売を行うECサイト「モノタロウ」を運営する株式会社MonotaROでは、全社的なデータ活用を目的とした組織づくりを構築しています。

その中心を担っているのが、データマーケティング部門です。約90名のメンバーの内、約6割がエンジニアで、SQLを用いた解析スキルや高い統計スキルを持ったメンバーをアサインし、ECサイトの売上の最大化や各種システム基盤の開発・運用を行なっています。

モノタロウは、1,800万を超える大量の商品を扱っています。ECサイトではユーザーが求めている商品が素早く見つけられることこそが、良い顧客体験(CX)に繋がると考え、収集した顧客データを分析し、それぞれの顧客に対して適切なタイミングで求めている商品をレコメンドする仕組みを整えました。

また、従来はマーケターが入念なデータ分析を行い、仕様書を書いた上で、関係各所の了承を得た上でマーケティング施策を実行していました。しかし、これでは実際の施策実行までに時間がかかってしまうことから、CXプラットフォーム「KARTE」を導入し、環境を開発することなく、A/Bテストをはじめとする様々な施策の実行ができるように変革。

その結果、施策の立案から実行、そして改善までのプロセスが短縮化され、PDCAサイクルが高速で回るようになり、施策を試す回数が約3倍に向上しました。

2020年現在、モノタロウの売上は1,053億円を超え、384万もの事業者を抱えるまで成長を遂げています。データ戦略に重きをおき、顧客体験の向上を実現した好例と言えるでしょう。

無印良品|アプリを活用し、顧客データ収集。顧客とのより良い関係構築を実現

小売ブランド「無印良品」を展開する株式会社良品計画では、店舗での販売に加えて、2000年にECサイトを立ち上げたものの、ネットストアでの売上が思うように伸びていかないという課題を抱えていました。

そこで、理由を調査してみると、ECサイトへ訪問した多くのユーザーが購入ではなく、「新商品のチェック」や「購入前の商品チェック」であることが明らかになりました。そこで、ECサイト単体で施策を打つのではなく、店舗とECサイトがそれぞれの短所を補い、相乗効果を生み出すような施策の実現に着手しました。

2013年にスマートフォンアプリ「MUJI passport」をリリース。顧客が口コミの投稿や、改善アイデアの提供、店舗へのチェックインを行うと、マイルを獲得できる仕組みを導入し、顧客が求めている商品や閲覧履歴・位置情報といったデータの収集を開始しました。

社内では、MUJI passportから得られたデータを誰でも活用できるように、専門知識を持たないスタッフでもデータを理解できるよう操作を簡易化・簡略化を推進。データから読み取れる課題を、店舗の接客や、商品開発、あらゆるマーケティング施策の実行に活用することで、顧客体験の向上、そして売上のアップに貢献しています。

データ戦略・活用を外注した方が良いケース

ここまでお読みくださって、データ戦略を立てたいが自社で正しく設計・実施・分析ができるのか不安に思われた方もいらっしゃるでしょう。

「社内にデータ分析ができる専門の人材がいない」「大規模な事業のため、データ分析の基盤構築が困難」「そもそもデータ分析をどうのように施策と結びつければ良いかわからない」といったケースでは、外部のパートナーと協力してデータ戦略を進めていくのも一つの手ではあります。

特にデータ分析ができる専門家の不足は、多くの企業抱える問題です。いわゆるデータサイエンティストや、データストラテジストと呼ばれる人材は採用市場でも非常に限られており、高いスキルを持った人材のリクルーティングは困難を極めます。

仮に採用ができたとしても、全社的にデータ戦略を進めていくためには上層部の理解や、社内調整力が欠かせません。そのため、現段階で社内に人材がいない場合は、積極的に外部パートナーに依頼することをおすすめします。

外注先としては、主に3種類が挙げられます。

  1. 戦略コンサルティングファーム
  2. 大手Sler
  3. デジタルマーケティング・DX(デジタルトランスフォーメーション)支援エージェンシー

アクセンチュアや野村総合研究所(NRI)のような戦略コンサルティングファームの場合、データ分析だけでなく企業の現状の課題を踏まえたマーケティング施策の提案までを実行してくれます。

一方の、大手Slerのデータ分析部門やシステム開発企業の場合、データ分析基盤の構築に強みを持っており、大量のデータが社内に点在している場合や、複雑な統計処理を必要とする場合におすすめです。

また、両者のバランスをとったポジションにいるのがデジタルマーケティング・DX支援エージェンシーです。開発力という側面ではSIerには劣るものの、データをデジタルという側面においてどのように活用できるのか、打ち手の多さという面からデジタルマーケティング・DX支援エージェンシーを選択するのも良いでしょう。

まとめ|データ戦略は、これからの企業の競争力を大きく左右する

本記事では、データ戦略とは何かという言葉の定義や、戦略を立てる上での考え方、そして具体的な企業のデータ戦略事例について解説しました。

市場の移り変わりが激しい現代において、経営者の経験則や勘ではなく、過去のデータを正しく分析することによって、施策の確度を高めていくような動きや、組織づくりが欠かせなくなっています。

何のためにデータを活用するのかを明確にすると共に、しっかりとトップダウンでデータ戦略の重要性を全社的に浸透させて、現場レベルでデータを活用して行くことが求められています。

この記事を書いたメンバー

MASAHIRO NISHI

西 正広

Marketing Strategist / Data Analyst

1983年生まれ。大手不動産賃貸事業会社におけるWebディレクション・デジタルマーケティング業務後、インターネット専業広告代理店・株式会社電通デジタルにてアクセス解析・DMP・レコメンデーション・BIツールなどの導入・活用支援に取り組む。 2019年7月よりMOLTSに参画し、2020年より子会社KASCADEを設立し、取締役に就任。データに基づくサービス改善、ビッグデータ活用のコンサルティング、インハウス運用、データドリブンなマーケティング組織の構築を支援する。

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