一人体制から立ち上げ、半年でSAL300件超を創出。
事業起点でマーケを再設計し、商談を生み出す組織へ
中国発の物流向け自律移動ロボット(AGV/AMR)メーカーを母体に、日本資本とのジョイントベンチャーとして設立されたギークプラス株式会社。主力であるロボット事業は、AGVカテゴリーにおいて国内・グローバル双方でシェアトップクラスを誇り、日本国内においても大手物流企業を主要ターゲットとして事業を展開しています。
今回の取り組みでは、ひとりマーケター体制におけるBtoBマーケティングの立ち上げと、コンテンツSEOやWeb広告、リッチレター施策などを組み合わせたリード獲得からナーチャリング体制の構築を、THE MOLTSグループの株式会社KAAANが支援しました。今回は、同社マーケティンググループでGMを務める夏 在樹氏と、本案件を担当したKAAANの田島 光太郎、東山 博行を交え、エンタープライズ企業を対象にしたBtoBマーケティングにおける挑戦と、その裏側にある具体的な取り組みを振り返りました。
ひとりマーケで挑む、超エンタープライズ向けのBtoBマーケ。立ち上げと体制づくりの課題とは

田島:ギークプラスさんでは、主に日本国内の物流企業を主な対象に、倉庫ロボットやソフトウェアの提供、自社倉庫によるフルフィルメント事業と、三位一体のサービスを提供されています。改めて、ギークプラスさんのマーケティングにおけるターゲット層とその特徴について教えてください。
夏:「超エンタープライズ」と呼んでいい企業規模のお客さまがほとんどです。1案件の導入金額、つまり1ディールあたりの契約金額が数億円規模になることが多く、さらにその規模の金額をフリーキャッシュフローからしっかり投資できるお客さまに自ずと絞られてしまうため、ターゲットとなる企業数は限られます。
「超エンタープライズ」企業向けのBtoBマーケティングの特徴として挙げられるのは、いわゆる「組織攻略」の難しさです。登場人物の数がとても多く、その中からキーマンや推進者を特定して適切にアプローチしていく必要があります。もうひとつの難しさが「タイミング」です。上場企業の場合、IRで事業計画を公表し、その計画に沿った投資が行われます。その投資の流れと当社の提案、導入タイミングをどうアラインさせていくか、その調整が特に難しいポイントだと感じています。
また当社サービスの特徴として、減価償却だけをみても10年単位のスパンであり、非常に長い期間のお付き合いが前提となります。だからこそ、マーケティングの段階から誠実なコミュニケーションを第一とし、お客さまの期待値から外れたことは絶対にしないことが重要だと考えています。
田島:もともとはフィールドセールスの立ち上げが先行し、既存のご縁やリファラルで案件を獲得されていました。そこからどのようにBtoBマーケティングに取り組んでこられたのでしょうか?
夏:事業立ち上げ当初は、いわゆる“選択と集中”の考え方に基づき、アーリーフェーズのお客さまに絞ってリファラル中心のアプローチをしていました。しかし自分たちが知っている範囲だけのリファラル施策では、いつかは事業の成果が頭打ちになるでしょう。より広く事業領域を広げていこうとすると、どうしても一定のBtoBマーケティングは必要になります。
私自身、BtoBマーケティングには比較的長く携わってきたこともあり、「定石通りの施策は、定石通りに効く」という実感を持っていました。ですので、まずはメルマガやSEOといった“定石通り”の施策をしっかりやり切ること、そしてお客さまに喜んでいただくためのチャレンジが、BtoBマーケティング立ち上げのポイントだと考えました。
田島:BtoBマーケティングの立ち上げで、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
夏:マーケティング立ち上げ当初から私ひとりで進めていたこともあり、どうしても施策の実行部分のリソースが足りなくなってしまうという課題を抱えていました。ハイストレッチな目標を掲げていたこともあり、「明らかに私ひとりでは回せないな」と早い段階で判断したのです。そのため、早急に“定石通り”のマーケティング施策をしっかりやり切れる状態を目指すことになりました。
もうひとつの課題が、当社サービスにおけるBtoBマーケティングの難易度の高さです。私自身、複数の企業でBtoBマーケティングに携わってきましたが、過去の経験と比較しても当社のサービスは契約金額が非常に大きく、かつ「超エンタープライズ」に振り切っていることは特徴的であり、私にとっては未経験のチャレンジでもありました。そのため、第三者の立場から壁打ち相手になっていただき、適切なアドバイスをいただける存在が必要だと感じるようになったのです。
変化に対応できる外部スペシャリストを採用。未経験領域でも成果を出せる安心感が決め手に

田島:BtoBマーケティングの立ち上げにあたって、自社でマーケティング担当者を採用するのか、外部パートナーと組むのかという選択肢があったと思います。今回、外部パートナーと組むことを選択された背景を教えてください。
夏:マーケティング実務の経験者を採用するという選択肢も検討したのですが、昨今はマーケティング施策の「当たる・当たらない」が変わりやすく、広告の形もどんどん変わっています。そうした中で、いま持っているケイパビリティが1年後には通用しなくなってしまう、ということが起きやすい環境だと感じていました。そのため、マーケティングのスキルセットを重視した採用はリスクが高いと判断したのです。結果として、その時どきでスペシャリストの外部パートナーとご一緒していくほうが、双方にとってハッピーなのではないかと考えました。
田島:夏さんとはもともと過去にコンテンツSEOの取り組みでご一緒させていただきました。今回のBtoBマーケティングの立ち上げでもお声がけいただいたきっかけを教えてください。
夏:まっさらな状態からマーケティングを立ち上げるにあたり、一通りチャレンジできるチャネルはまず検証するという方針を取り、その中の一つとしてGoogle経由のリード獲得、つまりコンテンツSEOにトライしようと考えました。
大手の広告代理店からWeb専業の代理店、SEO記事に特化した制作会社まで、10社ほどにまんべんなくお話を伺う中で、やはり物流の専門知識を持ちつつ、Googleを意識したSEOライティングができるライターさんは、おそらくマーケットにほぼ出てこないだろうと感じたのです。だからこそ、こちらから要件とナレッジを伝え、それをうまく調理して記事に落とし込めるパートナーでなければ、コンテンツSEOの施策をやり切れないだろうと考え、そこでふと思い出したのが、前職時代の田島さんとの取り組みでした。
田島:ありがとうございます!具体的には、どのような印象を持たれていましたか?
夏:前職時代のコンテンツSEOで高品質なアウトプットを出していただいたことに加え、オリエンテーションのキャッチアップ能力の高さと、SEO記事に仕上げていくプロセスがずば抜けていたことが印象に残っていました。そのため、業界未経験でも自らリサーチし、必要に応じてインタビューしながら、お互いが納得できる品質まで記事を仕上げてくれるだろうという安心感があったのです。
さらに私個人として、社内外を問わず「一緒に楽しくやれるチーム」で仕事をしたいという考えがありまして、『美味い、酒を飲む。』というTHE MOLTSグループのコンセプトにも親近感を覚えていました。そこで今回のコンテンツSEOのパートナーとして、田島さんにお声がけさせていただきました。
事業インパクトの視点から、スコープを全面的に再設計。BtoBマーケティング全般へ拡大

田島:コンテンツSEOの取り組みが始まってからは、“定石通り”の施策をやり切ることはもちろんのこと、“点”の施策と成果に留まらないよう意識しました。具体的には、経営の構想や事業展開の裏側を共有いただき、「何が事業を伸ばすドライバーなのか」「どこに投資をしていくべきなのか」という文脈を突き詰めて考えていくと「コンテンツSEOはいまこのフェーズでの最適解ではない」との考えに至りました。改めて、当時の状況について教えていただけますか?
夏:当時はコンテンツSEOに取り組み始めたものの、事業の数字を伸ばすドライバーを見極める必要性を強く感じていました。そこで田島さんと会話していく中で、コンテンツSEOを強化すれば成果が出るというシンプルな話ではなく、良質な商談につながる“金脈”を探るためにBtoBマーケティング全般に取り組む必要があるとの結論に至りました。
もうひとつ、田島さんにBtoBマーケティング全般をお願いするようになった背景には、私がマーケティングの業務に加えて経営管理も兼務するようになったことです。私がPMOの役割を担い、複数社さんとマルチベンダー体制で取り組んでいくという、当初想定していた座組では難しくなっていました。
田島さんには日頃から丁寧にコミュニケーションしていただき、そこで信頼関係が積み上がっていたこと、それと同じことを私たちのナーチャリング施策に対しても実行していただければ、間違いなく良い商談がつくれるはずだと確信し、Web広告やウェビナー、メルマガ施策といったBtoBマーケティング全般へと取り組みの範囲が広がっていくことになりました。
Web広告の運用をお願いした東山さんをはじめ、KAAANさんのメンバーには各施策ごとに専門性を持った方が多く、打ち合わせをしていても前提のすり合わせにかかるストレスがなく、安心してBtoBマーケティング全般をお願いできています。
データによる運用の判断が難しいBtoB広告で成果を伸ばせた理由。ポイントはユーザー視点

東山:BtoBマーケティングの一環として、主にWeb広告の運用でご支援させていただきました。もともと他代理店さんが運用されていた広告アカウントの診断からスタートし、最適化できている部分と、まだ伸ばせる余地がある部分を精査しました。その診断結果をもとに施策をご提案したことが、スピーディな取り組みにつながったのかなと思います。
その一方でBtoBマーケティングの広告運用に共通する悩みとして、コンバージョンのサンプル数が少なく、限られた広告予算とデータから正しい判断を下さなければならないという難しさがありました。そこで少ないながらも安定してコンバージョンが発生するように運用に取り組んでいます。加えて、いくつか仮説をたてたうえでユーザー視点の広告文や見せ方を工夫したことで、リード化一歩手前のクリック率が大幅に向上するといった成果が得られ実際のリード数にも反映されました。
夏:東山さんにWeb広告をお願いする以前から、ある程度は自分たちで広告運用を最適化できていると考えていました。実際、広告予算に対して得られるコンバージョンが頭打ちになっており、これ以上の改善は専門的なテクニックを必要としていたのです。実際に東山さんから広告文のディスクリプション案をいただいたとき、こちらの意図とのフィットが早かったと記憶しています。
田島:Web広告領域を含め、マーケティング全体のマネジメントでは、あえて「関与し過ぎない」ことを意識していました。その領域ごとのスペシャリストに一任したほうが成果につながると考えているからです。このスタンスがSEOやウェビナー、リッチレター、MA/SFA設計など幅広い施策を実施できた要因のひとつだったと思います。
SAL目標300件を半期で達成。パイプラインは数百億円規模に拡大し事業に貢献

田島:マーケティング全体では、リード件数とそこから温度感の高い状態までナーチャリングしたホットリード件数、そしてホットリードの中から初回商談に至ったSAL(Sales Accepted Lead)数の3つの指標を追ってきました。コンテンツSEOから始まり、BtoBマーケティング全般の取り組みに移行してからおよそ半期が経った現時点で、どのような成果が得られているのでしょうか?
夏:特に重要な指標であるSALでは、半期で300件獲得という目標を置いていました。この300件とは、フィールドセールスのメンバー全員のカレンダーがほぼ毎日埋まっている、つまり「全員必ずどこかで商談している」という状態を目指した数字です。正直かなり高い数字だと考えていたのですが、ふたを開けてみれば少し超過する数字で着地することができました。
月次はもちろん、デイリーでどれくらいアポが積み上がっているかを地道に確認していきながら、日次・週次・月次で運用を地道に改善していった積み重ねが、達成できた一番の要因だと感じています。一つひとつ課題を特定し、解決していく地道な運用力とやり切り力が、KAAANさんの強みだと改めて実感しています。
東山:私たちのカルチャーとして、施策単体を見るのではなく、その先にある事業の成果を見るように意識しています。広告だけ、ウェビナーだけで良い数字が出ても、事業インパクトがなければ意味がありません。一つひとつの施策に当たり外れがあるのは当たり前ですので、やり続けていくこととトータルで成果がでていることを常に重視していました。
田島:フィールドセールスや経営層からは、どのような反応がありましたか?
夏:私たちマーケティングが供給するリードといった「受注の源泉」が止まってしまうと、確実に業績は伸び悩んでしまうと思います。今回の取り組みによって、フィールドセールスへのリード供給は5倍、多いときで6倍まで伸び、パイプラインも数百億円規模を創出できました。おかげでフィールドセールスが常に商談や提案を行えるようになり、これは経営の観点から見てもフィールドセールスのリソースをしっかり活かせているという評価につながっています。
また、私たちが対象としている超エンタープライズのお客さまは、私たちが作成したリストでも1,500社ほどしか該当しません。そのうちの5分の1、20%にあたる300社に対して初回商談を半年でつくれたというのは、かなりの成長だと捉えていますし、そこに大きく貢献いただいたことには本当に感謝しています。
一方で、300件という数字の裏には、企業ごとにまったく違う課題を抱えており、その課題一つひとつにマーケティングを通して向き合おうとする姿勢に、田島さんらしさ、KAAANらしさを感じました。数字だけを追うだけでなく、「300件のリードの向こう側にいる300人の担当者」にきちんとコミュニケーションしてくれていることが、今回の成果を生んだ一番のポイントではないかなと思います。
誠実さを第一に、お客さまに選ばれるコミュニケーションを軸にしたBtoBマーケを展開

田島:3つの既存サービスに加え、新規事業も立ち上がりつつある状況かと思います。今後のマーケティング戦略と展望について教えてください。
夏:主力事業では着実にマーケティングの成果が出ており、あわせて施策の型化も進んでいます。今後はKAAANさんと一緒に、その型化された施策をこれまでの水準を保ったままでインハウス化していきたいと考えています。その一方で、浮いたリソースは現在進行している新規事業のマーケティングの立ち上げに投じていきたいですね。「どんなお客さまがこのプロダクトを好きになってくれるのか」「どう伝えればプロダクトの価値が届くのか」といった探索でも、KAAANさんにはご一緒いただきたいと考えています。
事業やサービスは今後も拡大していきますが、誠実なコミュニケーションを第一とする方針に変わりはありません。その代表的な施策として、KAAANさんと取り組んでいるリッチレター施策は引き続き取り組んでいきたいですね。実は先日、私たちがぜひご提案させていただきたいと考えていたお客さまから「手紙の内容に感激しました。私たちが抱えている課題が書かれており、ぜひ相談したいと思います。CEOの方によろしくお伝えください」と、丁寧なお電話をいただきました。今後も私たちが理想とする「お客さまのほうから問い合わせが来る」コミュニケーションを継続していきたいと考えています。
田島:最後にマーケティング施策に悩む企業の担当者へ、アドバイスをお願いします。
夏:本音を言えば、他社の案件を受けないでほしいくらい独占したくなるパートナーです(笑)。ただ、他部署とのブリッジや予算獲得で孤軍奮闘しているひとりマーケターの方には、真っ先に思い出してほしい存在だと思います。立ち上げフェーズでも、既存組織の改善フェーズでも、デジタル領域を効率化・型化したいというニーズに対して寄り添ってくれるので、まずは一度、いま抱えている課題を率直に相談してみてはいかがでしょうか。
田島:ありがとうございました!
著者情報
KOTARO TAJIMA
Media Planner / Consultant
業界歴8年以上。BtoBマーケティング、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。コンサルタント・PMとして戦略設計、インハウス化・グロース支援を行う。
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