「予約台帳だけのイメージを脱却」トレタがサイトリニューアル&強化でSAL数約3倍増を実現した裏側
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにデジタル活用が急速に広まりつつある外食産業で、いち早く「飲食店のDX」に取り組んできた先駆者として知られる株式会社トレタ。2023年には創業から10周年を迎え、創業初期からのサービスである「トレタ予約台帳」やモバイルオーダー「トレタO/X」やデジタルスタンプカードの「トレタスタンプ」を開発、運営しています。
同社では新サービスのマーケティング強化をきっかけに「トレタ=予約台帳」のイメージを払拭するため、Webサイトのリニューアルを実施することになりました。その一環として、これまで注力できていなかったオウンドメディア施策を実施することになり、これらのマーケティング施策全般の支援を目的に、THE MOLTSへお声がけいただきました。
今回は同社のセールス&マーケティング部 マーケティンググループのマネージャーを務める野口さまとオウンドメディア施策を担当した藤代さまに加え、本プロジェクトを担当したTHE MOLTSの永田 さおりを交えて取り組みを振り返りました。
創業10周年を迎えた「トレタ」を支えるマーケティングチームとその役割
永田:創業初年度からサービスを提供している飲食店向けの予約・顧客管理ツール「トレタ予約台帳」をはじめ、現在では「トレタO/X」「トレタスタンプ」を運営されています。そもそもどのようなきっかけから、現在の事業展開に至っているのでしょうか?
野口:弊社の代表は「トレタ」をリリースする以前から飲食店オーナーを経験しており、その頃に感じた外食産業の課題を解決すべく、株式会社トレタを設立しました。コロナ禍という大きな危機もありましたが、昨年の2023年に創業から10周年を迎えています。
私を含めて7名の社員が所属するマーケティンググループのミッションは、各サービスの売上を向上することです。その中でもマーケティング部門では、リードを創出、評価、ナーチャリングしてセールスに渡すまでを担っており、その最終的な目標になっているのが、セールスに渡すリード(SAL:Sales Accepted Lead)の最大化です。
私たちマーケティングチームではまず、MQLをより多く獲得するためにさまざまな施策を行いますが、そのMQLの中には弊社のサービスに適さない飲食店、たとえば予約不要な飲食店などのリードも含まれます。そこでMQLを精査し、ナーチャリングによって売上に繋がりそうな見込みが一定水準を超えたリードをSALとしてセールスに渡しています。
私自身はマネジメントも業務範囲で、マーケティングチームの各メンバーのKPI管理や他部署との調整作業に日々取り組んでいます。
「トレタ=予約台帳」のイメージを払拭し、「トレタ=飲食店の課題を解決できる」にリニューアルしたかった
永田:過去に貴社宛に作成したお見積りを見ると、ちょうど1年半前の2022年6月頃にご相談をいただきました。貴社がちょうどWebサイトをリニューアルしたタイミングだと思いますが、改めて当時はどのような状況だったのでしょうか?
野口:もともと弊社では飲食店向けの予約・顧客管理ツール「トレタ予約台帳」を主軸に事業展開をしていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、モバイルメニューツール「トレタO/X」やモバイルスタンプカードの「トレタスタンプ」といった新しいサービスの展開をスタートさせました。
しかし、外食産業の方々にとっては「トレタ=予約台帳」というイメージはとても根強いようで、「トレタO/X」や「トレタスタンプ」の認知はなかなか広まらなかったのです。「トレタ=予約台帳」というイメージから脱却し、「トレタは外食産業が抱えるさまざまな課題に向き合ったソリューションを展開している」と伝えるためには、予約台帳サービスに特化していたWebサイトをリニューアルする必要があると判断したのです。
永田:2022年春頃にはWebサイトリニューアルを検討し始めていたと聞いています。当時THE MOLTSにご相談いただいた背景には、どのような課題があったのでしょうか。
野口:Webサイトのリニューアルと目的は決まっていたものの、「具体的にどのようなデザインに落とし込んでいくべきか」「リニューアル後のWebサイトからの流入に対してどのようなKPIを設定すべきか」など、マーケティングに関する詳細部分がほとんど決まっておらず、ふわっとした状態でWebサイトリニューアルが進められかけていました。
さすがに良くない進め方だと感じ、マーケティング観点からWebサイトのワイヤーフレームを作成でき、かつSEOといったWebサイト経由のリード獲得に強みがあるパートナーを探すことになりました。
藤代:「トレタ予約台帳」のサービスサイトは、「トレタ」という指名検索KWで流入してくることが多かった一方、「飲食店 予約管理」といった顕在層向けのKWはSEOへの対策ができておらず、他社サービスサイトにリードが流れている状態でした。
Webサイトのリニューアルをきっかけにオウンドメディア施策といったSEOにも注力したいと考えるようになり、パートナーにはSEOの実績も求めていました。
また、ちょうどユニバーサル アナリティクスがGoogleアナリティクス4に切り替わるタイミングだったこともあり、Webサイトのアクセス解析をあわせてお任せしたかったのです。
課題を解決するのは当たり前。その先の「あるべきビジネスの姿」を深くまで考えるパートナーとして依頼
永田:今回のお取り組みは、藤代さんにお声がけいただいたことから始まりましたね。もともとは藤代さんが前職で同じくマーケティング業務を担当されていた頃にご一緒しましたが、当時どのような感想を抱いていましたか?
藤代:前職ではオウンドメディアの立ち上げで永田さんとご一緒しましたよね。立ち上げから半年後には、「働き方改革」というとても大きいKWで1位を取れるくらいのメディアに成長し、さらに月数百件以上ものCVを獲得するなど、事業に大きく貢献いただきました。
定量的な成果が得られていただけでなく、私個人として一緒にお仕事をしやすいなと感じていたこともよく覚えています。一般的なパートナー企業であれば、施策単位の施策だけの関係になりがちです。しかし、THE MOLTSと永田さんは、課題を解決するのは当たり前であり、その先にある「あるべきビジネスの姿」を深くまで考えてくださっていたことが印象に残っています。
特に永田さんはガッツがある人で、前職は規模の大きい会社だったにも関わらず、社長に直接提案しにいこうとするほどでした(笑)。
施策単位の目先のことではなく、会社全体を経営目線で俯瞰してくれること、そして積極的な行動力で前に進んでいく姿を信頼しており、今回もお力になっていただけないかとお声がけしたのです。
野口:藤代から永田さんをご紹介いただき、弊社がWebサイトリニューアル当時に抱えていた課題をご相談させていただきました。そのヒアリング内容をもとに「飲食店のDX」をどのようにお客さまに見せ、どのように新しい商材を売るかという出口戦略を一気通貫で設計し直すといった内容の提案書をいただきました。ご提案の内容には、まさに当時のマーケティングチームに足りていなかった視点が多く盛り込まれており、2022年8月からご支援いただくことを正式に決定しています。
Webサイトのリニューアルやオウンドメディア施策、さらにはマーケ組織のKPI設計と体制まで
永田:最初の取り組みとして、まずリニューアル予定だったWebサイトのワイヤーフレームを作成することから始めさせていただきました。貴社代表の外食産業に対する熱い思い入れを反映しつつ、BtoBマーケティングとして数字の成果につながるような構造をご提案させていただいたと思います。Webサイトリニューアル当時、どのような印象を持たれましたか?
野口:私たちがターゲットである飲食店にお伝えしたかった「飲食店がDXに取り組むことでどのようなメリットがあるのか」をWebサイト内に記載しつつ、飲食店の課題を解決するソリューションを私たちが提供していること、そして各サービスごとのLPへ誘導するようにワイヤーフレームを引いていただきましたよね。
また、ダウンロード施策用のPDF資料の作成やLP内に資料ダウンロードを促す工夫をしていただいたことも印象に残っています。
藤代:私が永田さんと一緒に取り組みをさせていただいたのは、Webサイトリニューアル後のSEOの取り組みです。
まずは永田さんとどのKWを選定するかを協議し、その後に飲食店オーナーの経験があるライターさん2名をご紹介いただきました。選定したKWをもとにライターさんと記事の骨格を作り、初稿を作成いただいたあとに何度かフィードバックをさせていただく、という流れで記事を一つひとつ作成しています。
ご一緒させていただいたライターさんは、ただ依頼通りの記事をライティングするのではなく、弊社の事業理解を深めつつも、マーケティングとしての定量的な成果を念頭に置いてコンテンツ制作を捉えていたため、私たちと同じ視座を持って自走しながら記事を書いてくださっていたので、安心できました。
永田:Webサイトリニューアル時のワイヤーフレームの作成、オウンドメディア施策、さらに要所ごとにアクセス解析をさせていただきました。ただ、オウンドメディアの施策は成果が得られるまでにどうしても時間がかかってしまいます。
そこで他の施策でトレタさんにどのような価値貢献ができるのかと自問自答しつつ、本質的な事業課題を特定すべくマーケティングチームへのヒアリングを重ねていく中で、組織体制とKPI設計という深い部分までお力添えできるのではとご提案させていただきました。
野口:永田さんにご指摘いただく以前は、オウンドメディアというひとつの施策の中で複数の担当者がそれぞれのKPIを追うという体制でした。具体的には、セッション数をKPIにする担当者、コンバージョン数をKPIにする担当者、といった体制です。このKPI設定と体制の場合、自分だけの努力だけでなく、関連するKPIに責任を持つ別の担当者のパフォーマンスによっても数字に変化が出てきます。その結果、自分のどのような行動が数字に影響したのか判断しにくくなり、自身のKPIに対する当事者意識が薄まりやすい状態だったのです。
もうひとつ永田さんからは、「オウンドメディアに限らず現在実施している施策単位でもKPIや体制を改めて見直すことでもっと事業成長できる余地があるのではないか?」とのご指摘がありました。当時の目標数値や施策は、毎年自分たちで考えられる範囲の上積みから考えられたものであり、そもそも社外からの意見を取り入れる発想がこれまでになかったのです。
具体的には、事業成長から逆算して現在の組織やそれに紐づく目標数値を永田さんと見直すことから始めています。毎週の打ち合わせで「どこに課題があるのか」「何をすべきなのか」を模索しながら壁打ち相手になっていただき、そこから見えてきた課題を施策ベースに落とし込みました。さらに、各チャネルごとに担当を置くというシンプルな組織体制に刷新し、各チャネルに紐づくKPIも設定し直しています。
また、将来的なマーケティング施策の内製化も目標の1つだったこともあり、オウンドメディアの施策であれば永田さんに相談するといった、各チャネルごとに外部の頼れるアドバイザリーが伴走する形の取り組みもスタートさせています。
藤代:私のミッションやKPIもその頃に変わったのですが、自然と施策に対する意識が変わったように感じます。以前であれば、自分の施策と向き合うときでも、まずは別の担当者に確認を取ったり、自分のKPIに影響がありそうであれば施策の変更をお願いすることもあったのです。しかし担当者とKPIが施策ごとになったことで、別の担当者はプラスの意味で気にならず、マーケティング全体の視点でコミュニケーションができるようになりました。
また、担当者自らが数字を判断して行動できるようになり、自走したマーケティング組織になりつつあると感じています。
毎月300件のSALを獲得、以前の2〜3倍に。狙ったKWを獲得し、オウンドメディア施策は自走できる体制に
永田:Webサイトリニューアルから始まり、オウンドメディア施策やマーケティング組織のKPIと体制の再設計など、さまざまな取り組みがありました。現在進行形で取り組みが続いていますが、現時点でどのような成果が得られましたか?
野口:最も事業へのインパクトが大きい定量的な成果として、マーケティング全体のKPIであるSALが、以前の2〜3倍になったことですね。取り組み以前は単月で100件ほどしか獲得できていませんでしたが、現在では毎月300件近くのSALを獲得できています。
Webサイトのリニューアルについても、リニューアル前後でコンバージョン数が200から300へと1.5倍増の変化がありました。Webサイトへのセッション数には大きな変化はなかったことから、Webサイト内のCTA改善や構成へのテコ入れだけでCVRを劇的に改善していることになります。
藤代:セッション数の増加については、Webサイトリニューアルから少し時間を置いて成果が出始めました。そもそもSEOにまったく力を入れられていなかった状態から始まり、1万ほどしかなかったセッション数が3万以上にまで成長しています。
また、当初より狙ってたKWのほぼすべてで、上位の検索順位を獲得しています。「トレタ=予約台帳」のイメージを払拭するため、提供しているサービスに近いKWだけでなく、「飲食店 DX」のような飲食店を経営するにあたっての課題や困りごとにフォーカスしたKWでも1位を取れています。
今では永田さんは離れ、私とライターさんだけでオウンドメディア施策を運用しているのですが、しっかりKPIを達成しながら自走できており、とてもありがたい取り組みでした。
「まるで当事者のよう」。表面でなく、本質の課題解決まで伴走してくれるパートナー
永田:私個人の感想ですが、改めて飲食店向けのマーケティングの難しさを感じた取り組みでした。「トレタ=予約台帳」のイメージからの脱却と新サービスの展開について、どのような展望を描いていますか?
野口:理想として描くゴールとして、飲食店の方が何か迷ったり、困ったりしたら「まずは『トレタ』のWebサイトでも見てみよう」と行動してくれる状態になれば嬉しいですね。予約台帳だけでなく、飲食店のDXをしっかり支援できるパートナーとして活動していくことはもちろん、その活動をトレタを知っている人も、知らない人へも届けていきます。
藤代:自走してオウンドメディアに取り組めるようになったことで、他にも新しいマーケティングの取り組みにもチャレンジしていきたいですね。「トレタ」をまだご存じない飲食店の方は、そもそもあまりインターネットを活用したことがない方も多いので、Webマーケティング以外のオフライン施策などで新規層を掘り起こすことも考えています。
永田:藤代さんは前職から引き続き弊社とお取り組みいただきました。事例取材の最後に、THE MOLTSはどのような企業におすすめできそうか、お聞かせください!
藤代:自分たちでも気がつく「マーケティングの悩み」は、すでに表面化された状態の課題であって、それを解決しても本質的な課題解決までには至らないことは、しばしばあると思うのです。しかしTHE MOLTSさん、永田さんに悩みを相談すると、まるで当事者のようにしっかり本質的な課題解決まで考えてご提案していただけます。
表面的ではなく、本質的な課題解決まで伴走してくれるパートナー企業を探しているマーケターにこそ、THE MOLTSさん、永田さんはおすすめできると思っています。
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