企業の成長には、徹底した顧客体験(UX)の最適化と、そのための正しい顧客理解が欠かせません。担当者の勘や経験だけに頼り、「自社の顧客はこうである」と決めつけてしまうと、誤ったマーケティング施策を招いてしまうだけでなく、市場の急激な変化に対応していくことができなくなってしまいます。

そこで重要になってくるのが、顧客データの分析です。顧客の属性データや購買データといったファクトに基づいて、マーケティングの意思決定をすることにより、事業の成長を加速させていくことができます。

本記事では、顧客データ分析がもたらすものや、分析手法、実際の活用事例について解説をしていきます。

顧客データ分析は、自社の事業成長の要となる

顧客データ分析は、自社が保有する顧客の「属性情報」や「購買履歴」といったデータを分析することで、顧客をより深く、そして正しく理解するために行う施策です。

例えば、顧客の属性データを正しく分析することで、どこの地域の誰が、いつ商品を購入してくれたのかが分かるようになります。また、購買データを分析すれば、顧客がどのくらいの頻度で、何にいくら使ったのか、商品がよく売れる組み合わせなどを可視化できます。

このような顧客データの分析によって、担当者の勘や経験とは異なった事実が浮かび上がることがあります。

とある化粧品ブランドでは、20代の女性が実店舗に来店することが多かったことから、20代の女性をターゲットとしてマーケティング活動を行なっていました。しかし、いざ顧客データを詳細に分析すると、30代の女性は来店回数こそ少ないものの、1回の来店あたりの購入金額が多く、売上に大きく貢献していることが分かりました。

何となくの顧客理解は、誤ったマーケティング施策を招いてしまうことがあります。データに基づいて顧客を理解することによって、誰に・何を・いつ売れば良いかといった正しいマーケティング戦略を描くことが可能になります。

また、最近では新型コロナウイルスの影響で、今まで当たり前だった顧客の購買行動が急激に変化しています。顧客データを定点分析することで、市場の変化や顧客のニーズの変化に気づき、いち早く対応することができるでしょう。

顧客データ分析の主な手法

ここからは、顧客データ分析を行うにあたり、よく用いられる代表的な4つの手法を解説していきます。

  1. セグメンテーション分析
  2. バスケット分析
  3. RFM分析
  4. デシル分析

1. セグメンテーション分析

セグメンテーション分析は、顧客の年齢や性別・居住地・行動パターンなどで切り分けることで、顧客をグルーピングする方法です。顧客データ分析の中では、もっとも導入しやすく初めての分析に適している手法です。

セグメンテーション分析には、以下のような切り口で行われます。

  • 地理的変数:国・地域・人口・宗教など
  • 人口動態変数:年齢・性別・職業・家族構成・所得など
  • 心理的変数:価値観・趣味志向・ライフスタイルなど
  • 行動変数:曜日・時間・サイトの訪問頻度など

例えば、人口動態変数でセグメントすると、自社の商品がどんな年齢層で、どんな職業や家族構成の人に売れているのかを把握することができます。

2. バスケット分析

バスケット分析とは、顧客の買い物カゴ(バスケット)の中身を分析する手法です。ECサイトであれば購入履歴、実店舗であればレジのPOSデータといった購買データを用いて分析を行います。

バスケット分析で分かる主な事柄として、特定の商品と一緒に売れている商品を見つけることができます

代表的な事例として、アメリカの小売りチェーンがPOSデータの分析を行った結果、「おむつ」と「ビール」がセットでよく売れていることが分かりました。これは、おむつの買い出しを頼まれた父親が、一緒にビールを購入していることが推測されます。

このようにセットで売れている商品を見つけることで、一緒に購入される可能性が高い商品をレコメンドする、店舗の陳列位置を変えるといった施策に繋がり、客単価のアップに繋がります

3. RFM分析

RFM分析とは、R(Recency:直近いつ)・F(Frequency:頻度)・M(Money:購入金額)の3つの指標を用いて顧客を分析する手法です。

それぞれの指標を、High・Middle・Lowに切り分けることで、顧客を27のグループに分類。各グループを「優良顧客」「非優良顧客」「新規顧客」「離反顧客」などに定義し、グループごとにマーケティング戦略を最適化することができます

4. デシル分析

デシル分析は、購入履歴のデータから、全ての顧客の購入金額を高い順に10等分(デシル1〜10)して、各グループの購買データを分析する手法です。各グループが全体の売上のどれくらいの比率を占めているかを算出することができます。

例えば、1,000名の顧客を、購入金額順に並び替えて、それぞれ100名の10グループを作成します。そうするとグループの構成人数は同じですが、売上の比率がそれぞれ異なってくることが分かります。

仮に、上位1〜3位のグループが全体の売上比率の90%、上位4〜10位のグループが全体の売上比率の10%だった場合、上位3位までの300名の顧客が売上のほとんどを占めていることが判明します。

これら売上構成比率の高い顧客に集中的に、クーポンを配布する・キャンペーンを実施するなどのマーケティング施策を講じることにより、リピート率のアップや売上アップを期待できるでしょう。

顧客データ分析の実際の活用事例

自社に蓄積された顧客データを分析し、実際のマーケティングに活用している事例について解説していきます。

ECサイトと実店舗のデータを統合・分析し、顧客の行動を明らかに

ECサイト「STRIPE CLUB」を運営する株式会社ストライプインターナショナルでは、ECサイトと実店舗の購入データを統合し、顧客が購入した商品やECサイトの利用の有無を分析。

その結果、ECサイトを利用する顧客の9割が、実店舗での購入を経ていることが分かりました。また、実店舗のみで商品を購入している顧客と、実店舗とECサイトの両方で商品を購入している顧客では、約4倍のLTVの差があることが判明しました。

このようにオンライン(ECサイト)とオフライン(実店舗)のデータを統合して分析を行うことによって、実店舗は利用しているがECサイトは利用したことがない顧客に対して、ECサイト限定のクーポンを配布するなど、LTV向上の施策に繋げることが可能になりました。

参照:実店舗とECサイトのデータを統合し、お客様一人ひとりと信頼関係を結ぶ。ストライプインターナショナルがKARTE で目指すもの

顧客の購買データを分析し、売上アップを実現

日本に本社を置く飲料メーカー、ヤクルトでは顧客の購買データを集約・分析することで、オランダでの売上を15〜20%アップさせることに成功しました。

ヤクルトは1つのカテゴリ内に100〜150点の商品が存在し、自社の商品で店頭の客を奪い合っているという課題がありました。また、購買データが商品ごとに社内に分散しており、従業員が個人的に作成したスプレッドシートに格納されているケースもありました。

そこで、アナリティクスパッケージ「Spotfire」を導入し、散らばっていたデータを集約。一元で分析できる基盤を構築しました。

その結果、通常サイズのヤクルトの7本パックと15本パックを購入する客層が異なることを発見し、並べて店頭に置くと、双方の売上がアップすることが分かりました。また、この他にも、女性客は少しずつ頻繁に購入するが、男性客は大量のパックをまとめ買いするといった顧客の購買傾向を発見。

商品の店頭位置を工夫するといったマーケティング施策に繋げることで、売上の向上へと繋がった事例です。

参照:ヤクルトの売り上げを大幅に伸ばしたデータアナリティクスの秘密 – ITmedia エンタープライズ

サイト上の行動データと、来店データを組み合わせることで接客満足度の向上に貢献

大手自動車メーカーA社では、Googleアナリティクスから読み取れるユーザーのサイト上の行動データと、来店データ(もしくは会員データ)を組み合わせることで、接客時のスタッフの満足度の向上や、受注確度のアップに繋げました。

ユーザーは、自動車メーカーのサイトに、車種の詳細ページの閲覧やオンライン見積もりを目的に訪れます。この際に、カタログ請求やディーラー来店予約をしたユーザーに対して、見積もり番号を付与し、Googleアナリティクスで計測します。

こうすることでユーザーが実際にディーラーに来店した時に、スタッフが興味のある車種や予算を事前に把握した上で、接客することが可能になります。顧客一人ひとりのニーズに合った接客ができるので、結果的に顧客満足度の向上や、受注確度のアップに繋がりました。

まとめ|経験則でなく事実に基づくマーケティングを実行しよう

本記事では、顧客データ分析によって分かることや、代表的な分析手法、そして活用事例について解説をしてきました。

顧客データ分析というと、難しく考えてしまうかもしれませんが、既存の顧客の年齢や性別、住所を洗い出してグルーピングするだけでも、十分な顧客データ分析と言えます。

顧客データ分析において、重要なのは分析で判明した事象をいかにマーケティング施策に落とし込むことができるかです。分析をして終わりではなく、マーケティング施策を実行し、売上アップやリピート率の向上に繋げる必要があるでしょう。

株式会社MOLTSでは、顧客をより深く知るためのデータベースの集約・統合をサポートします。企業が持つ大量のビッグデータを用いて、いかにマーケティングに活用していくかといった企画設計や実際の導入プラン構築までの支援をしています。

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