リスティング広告の戦略設計|事例から学ぶ運用成功のポイントとは

菊池 真也

Marketing Strategist / Consultant

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リスティング広告の戦略設計|事例から学ぶ運用成功のポイントとは

多くの企業がリスティング広告運用への投資を進める中、競合性の高まりやクリック単価(CPC)の高騰が原因で、以前のような成果が上がらなくなったと、お困りの担当者も多いのではないでしょうか。

そこで、重要度を増してくるのが、広告運用を最適化するための正しい戦略設計です。「リスティング広告への出稿を通して企業のどんな課題を解決したいのか」といった目的から、効果的な施策を打つことが求められます。

そこで本記事では、リスティング広告の戦略がなぜ重要なのか、そして具体的に戦略を立てていくためのポイントについて解説します。

リスティング広告において「戦略」が重要な理由

「リスティング広告において、戦略が重要である」といった話はよく聞かれますが、なぜ戦略が大切なのか、その理由を十分に理解している担当者は多くないように思われます。

戦略の重要性を認識するためには、まずはリスティング広告における「戦略」と「戦術」の違いを正しく理解することが大切です。

部分的な最適化ではなく、ビジネスゴールから逆算した「戦略」が欠かせない

戦術とは、クリック単価の調整や、広告文・入札キーワードの選定など、広告運用の具体的な手法論のことを指します。

実際に、運用にお悩みの担当者とお話をさせていただくと、「クリック単価が高い」「品質スコアが低い」「CVRが低い」「ターゲティングがいまいち」といったように、局地的な手法論(戦術)での課題を抱え、それらの改善に奔走しているケースがほとんどです。

しかし、広告運用の本来の目的は、クリック単価を下げることでも、品質スコアを高めることでもありません。仮に、プロダクトの売上拡大を目的として運用していた場合、クリック単価を高く設定しても、より多くのユーザーを獲得した方が、最終的な目的の達成(売上拡大)に近づくといったケースは往々にしてあります。

そこで重要になってくるのが、「戦略」を立てることです。ここでいう戦略とは、リスティング広告の最終的なビジネスゴール(KGI)を達成するために、最適なKPI構造を設計することです。

手法論で考えると「とにかくクリック単価を安くしよう」という部分最適な動きに陥ってしまいますが、正しいKPI構造を組み立てることによって「クリック単価が〇〇円以下で、△△件の流入、◇◇件のコンバージョンがあれば、目標を達成できる」といったように、目標達成(全体最適)のための最適なルート(打つべき施策)を描くことが可能になるのです。

▼ポイント
運用の担当者は、「CPA〇〇円以下」「CVs何件以上」など、与えられたルールの中で、施策を考えてしまいがちです。注力している施策が本当にビジネスゴールに向かっているのかという全体的な視点で、改めて広告の戦略から見直すことで、運用を最適化していくことができるようになるでしょう。

リスティング広告の戦略の成功事例

戦略を立てることが重要だとは言え、その具体例を思い浮かべるのは容易ではないと思います。事業を成功させる戦略は業界や企業によって千差万別で、全ての事業に適応できる”万能な戦略”があるわけではないからです。

しかし、必要となる考え方には、一部共通して学べることはあります。

そこで本章では、弊社が実際にリスティング広告の戦略設計のサポートを行い、成果を出した事例についてご紹介します。

事例①|ゼロから自社ECを構築。事業フェーズに合わせて広告戦略を設計

女性向け美容機器を販売しているA社では、アマゾンや楽天といったECモールから集客を行なっていたものの、出店料や手数料がかかることや、他社との価格競争に巻き込まれることから、「思うように利益が伸びていない」という課題を抱えていました。

そこで、弊社では、メーカーの自社ECサイトを立ち上げ、ECモールを介さずに消費者にアプローチする「D2C戦略」の構築をサポートしました。

まずは、事業の初期フェーズにおいてかけることができる適切な広告予算額を算出するために、事業責任者と「事業のP/L(損益計算書)」や「プロダクトの単価・利益率」から、KPIを設計。

まずは、投資するフェーズであったため、獲得見込みの高いユーザーに絞って、事業の限界利益の範囲内でリスティング広告の運用をスタートしました。

順調に利益が拡大したため、リスティング広告に限らず、自社サイトのリニューアルや、SEOコンテンツの制作・インフルエンサーの活用などのマーケティング施策に予算を配分。

リスティング広告ではアプローチできないユーザー層への訴求に成功し、プロジェクト開始わずか半年で、自社ECサイトの売上がECモールを上回り、自社EC単体での販売に移行することに成功しました。

事例②|リスティング広告の戦略を見直し、CV数300%アップ・CPA70%削減を達成

マリンスポーツやスカイダイビングなど、観光地のオプションツアーを販売するB社では、リスティング広告を運用していたものの、「獲得数が伸び悩んでいる」という課題を抱えていました。

そこで弊社では、従来から進めていた「既存のCPAの範囲内で、コンバージョンを最大化する」方針を見直し、商品単価や限界利益から改めて適切なポートフォリオを設計。短期的にはCPAを高めつつも、キーワードバリエーションを増やし、コンバージョン数を拡大する施策を打ちました。

これは、事業の売上目標を達成するためには、CPAを抑えるのではなく、コンバージョン数並びに売上の最大化をさせることが、最短の手段だと考えたためです。

その後、機械学習による自動入札を活用し、獲得に繋がらない不要なキーワードを精査することで、CPAを抑えつつもコンバージョン数の最大化を実現。プロジェクト開始前の前年と比べて、コンバージョン数を約3倍に、CPAを70%削減することに成功しました。

事例から学ぶリスティング広告の戦略のポイント

ここまで、リスティング広告戦略の成功事例について解説しました。戦略の内容は異なれど、成功に導くために共通して重要なポイントが見えてきたと思います。

本章では、そのポイントを整理します。

運用の目標や目的を明確にする

「CPAをできるだけ抑えつつ、獲得を増やしたい」

広告運用者なら、誰もがそう考えるのは不思議ではありません。もちろん、これは理想ではあるのですが、CPAを抑えることを考える前に、まずはリスティング広告運用の本来の目的に立ち返ることが大切です。

一つ目にご紹介した事例では、「リスティング広告」という手段に絞る前に、「事業のP/L(損益計算書)」を見直すことで、そもそもリスティング広告が最適であるかを吟味した上でKPIを設計しました。

つまり事業売上の最大化が目的なのであれば、正しい戦略を描いた結果、「広告運用をしない方が良い」が結論となる可能性もあるのです。既存のCPAの範囲内で限られた施策を打つのではなく、コンバージョン数を増やすためにCPAを一時的に高めるのも一つの手です。

広告運用を通じてなんの事業課題を解決したいかという広告運用の目的から、最適なKPIツリーを描くことで、本当に打つべき施策が定まります。

立てた戦略は必ず外れることを前提に動く

次に、広告運用の担当者が必ず頭に入れて置かなければならないのが、「立てた戦略は必ず外れる」ということです。

どれだけ綿密に戦略を設計したとしても、リスティング広告の成果は、競合の入札状況・市場や環境の変化などに、非常に多くの変数に左右されます。例えば、新型コロナウイルスの影響により、消費者の行動変容やニーズの変化があったため、特定のキーワードで競合性が高まったという話も多く聞かれます。

そのため、当初に立てた戦略に縛られるのではなく、あくまでも運用を行いつつ成果をモニタリングし、常に施策を改善してく柔軟性が求められます。

可能な限りパートナーにデータを開示する

リスティング広告の運用を外注する場合、既存の運用データや事業計画書を外部パートナーと共有することをおすすめします。

よくありがちなのが、事業側で考えた広告予算やCPAをもとにして、外部パートナーに運用を依頼するケースです。

事例の紹介でもお伝えしましたが、リスティング広告の戦略を正しく設計するためには、短期的な広告予算やCPAだけでなく、そもそもの事業計画や事業フェーズ・商品の利益構造などを加味する必要があります。

外部パートナーにできるだけデータを開示したくないという考えもわからなくはありません。しかし、データを開示せずに事業側が一方的に設定したCPAやCV数の達成だけを目的とした運用では、事業側と運用側(パートナー)でコミュニケーションのずれが発生し、結果的に事業の成長に貢献しないケースがほとんどです。

外部パートナーをただの運用代行のリソースとして丸投げするのではなく、データをしっかりと開示し、「ともに戦略を立てていく仲間」として捉えるのがリスティング広告運用を成功に導くポイントの一つです。

自社でリスティング広告の戦略設計が難しい場合の対策

自社で戦略設計をする場合には、同業界でどれくらいのコンバージョン率が見込めるのか、想定される平均クリック単価はいくらなのか、キーワードのボリュームはどれくらいなのかといった情報が欠かせません。

自社での運用経験が少ない場合や、専門性も持った人材がいない場合には、これらの情報を広告代理店などのプロフェッショナルに聞いた上で、戦略設計を行うことをおすすめします。

リスティング広告のインハウス化に関しては、別記事で詳しく解説していますので、そちらも合わせて参考にしてください。

まとめ|事業計画やフェーズ、商品の利益構造などを加味した戦略を立てよう

本記事では、リスティング広告の戦略の重要性や、戦略設計の具体的な事例やポイントについて解説しました。

リスティング広告の戦略を設計することによって、「クリック単価が高い」「CVRが低い」といった手法論から脱却し、事業の課題解決に向けた本質的な運用を行うことができます。

また外部パートナーと連携して運用をする際も、出稿を丸投げするのではなく、事業計画やフェーズ、商品の利益構造などを加味して戦略を設計していきましょう。

この記事を書いたメンバー

SHINYA KIKUCHI

菊池 真也

Marketing Strategist / Consultant

1982年生まれ。広告代理店で100社以上のリスティング広告を運用し、株式会社アイレップにて総合通販、大手人材会社の運用型広告コンサルタントを経験。中小から大規模の広告運用を経験したのち、GMOペイメントゲートウェイ株式会社にてEC企業の集客支援を行う組織を構築。2018年3月にMOLTSへ参画し、子会社STAUTに所属。業界問わず、また大手企業からスタートアップまで幅広く事業成果の獲得を軸とした運用型広告のコンサルティング、インハウス支援を行う。2020年3月よりSTAUTの代表取締役に就任。

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