営業戦略とは?定義や戦略の立て方、基本のフレームワークを解説

武田 大

Marketing Director / Consultant

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営業戦略とは?定義や戦略の立て方、基本のフレームワークを解説

「営業戦略を立てよう」「営業戦略のプレゼンをして欲しい」など、営業戦略というワードは、営業部門を中心に非常に多く用いられています。しかし、そもそも「営業戦略」という言葉自体が、何を意味するのかはっきりと分からない方も多いのではないでしょうか

「売上高を10%アップしよう」「新規顧客を2倍にしよう」といった目標を立てることを営業戦略と呼ぶこともあリますが、それは本質的ではなく、決して戦略と呼べるものではないように思われます。

私たちが定義する営業戦略は、営業がなすべき目標やミッションを明確に定め、それらを達成するまでの、道筋(ストーリー)を鮮明に描くことです。例えば、「売上高を10%アップする」という目標を立てたのであれば、どのような施策を用いて、どのツールを活用し、社内のリソース(人やモノ・時間)をどう配分すべきなのか、など具体的なアクションを決めていきます。

営業戦略を立てていくためには、自社(製品・サービス)の強みや、社内のリソース、営業課題をしっかりと把握するだけでなく、マーケットの状況・競合分析なども欠かせません。 本記事では、営業戦略を定義すると共に、営業戦略の立て方や代表的なフレームワーク、そして事例をご紹介します。


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まずは営業戦略と戦術の違いを理解する

営業戦略を理解していく上で、「戦略」と「戦術」の違いをはっきりと理解することが大切です。これらを混同して捉えてしまうと、個々の施策の最適化のみに終始してしまい、事業全体を加速させる営業戦略の構築とは、かけ離れてしまうといったことが起こりかねません。

例えば、「売上高を10%アップする」という事業部の目標があったとします。

営業戦略では、この目標を達成するために、必要に応じてインサイドセールス・並びに適切なCRMツールを導入し、顧客満足度を高めることによって、サービスの解約率を◯◯%引き下げて、LTVを△△%向上させる……といったように具体的な数値を交えながら、目標達成のための大枠のストーリーを描きます。 一方の営業戦術は、導入するインサイドセールスは具体的にどのように誰が運用していくのか、またCRMツールを活用し、どのようなデータを収集し、解約率の低下やLTVの向上に役立てるのかなど、個別の施策に関わる計画を立てることを言います。

戦略は「大局的・長期的」、戦術は「局面的」

そもそも、「戦略」「戦術」という言葉は、元々は軍事用語として使われていたものです。

  • 戦略:戦いに勝つために大局的・長期的な視点で計画するもの
  • 戦術:戦いに勝つためでの戦地での兵士の動かし方など、局面的な方針

「戦略なき戦術」という言葉がありますが、マーケティングにおいてもしばしば戦略を立てずに戦術のみを考えてしまうケースがあります。戦略と戦術は並列ではなく、戦略の下に複数の戦術が紐づくといったように階層的なものです。戦略なくして、戦術は本来存在しないのです。 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの業績をわずか数年で再建させたことで知られる森岡毅氏は、自身の著作「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門のレビュー」で以下のように語っています。

“決して具体的で発想しやすい戦術から考えないということです。目的と戦略が定まらない限り、戦術に費やす時間は無駄になる可能性をはらんでいるのです。”

“戦略の方が戦術よりも大事なのです。戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできないからです”

引用:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門のレビュー

日々の営業戦略会議で議論されていることは、果たして本当に「戦略」でしょうか。大前提となる明確な戦略がなければ、戦術(個々の施策)の最適化が難しいことを、まずは理解していただければと思います。

営業戦略の重要性を理解する

営業戦略と戦術の違いについては理解できたけれども、本当に営業戦略は時間を費やしてまで立てるべきものなのか疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。ここからは、営業戦略の重要性について、より深く見ていきましょう。

営業戦略がなぜ重要なのかを一言でいうと、「企業のリソース(ヒト・モノ・カネ・時間)は有限」だからです

先の例で考えると、「売上高10%アップ」のミッションがあり、しかもこれを3ヶ月以内に達成しなければならないとします。リソースをいくらでも使えるのであれば、テレビCMやWeb広告を活用して新規顧客を獲得する、既存顧客にクーポンを配信することでLTVを高めるなど、いくらでも施策を打つことができます。

しかし、そのようなことができる企業は現実的には存在しないでしょう。予算の大小はあれど、どの企業の事業でも、限られた予算、限られた人員で目標を達成しなければならないはずです。

目標やミッション達成に向けて何をすべきかを明確にすること

そこで重要になってくるのが、営業戦略です。営業戦略を構築することで、目標やミッション達成に向けて、やるべき施策・取るべき行動・個々の施策にかけるべき予算が明確になります

例えば、100万円という限られた予算で売上高10%アップを達成しなければならない時に、やるべき施策の最適解は何でしょうか。企業によっては、新規顧客の獲得かもしれませんし、既存顧客のLTV向上かもしれません。

これらを、闇雲な選択ではなく、「既存顧客の購入頻度が5%改善すれば目標を達成できるので、既存顧客のフォローアップ施策に100万円を投下しよう」といったように確固たるロジックを持って決定することが、営業戦略を構築するということです。

営業戦略がなければ、目標やミッション達成に積極的に寄与しないことに時間や予算を費やしてしまうかもしれません。100万円という限られた予算を、「新規顧客獲得」「既存顧客のLTV向上」の両方に分散させては、本来達成できたはずの目標も達成できなくなってしまうかもしれません。

目標やミッション達成のためにやるべきことを決める、またやらないことを明確にすることが営業戦略を構築する肝です。営業全体の成績が上がらない、月によって成績が不安定、出たところ勝負なのは、営業戦略の構築ができてないからではないでしょうか。

もしハッとされた方は、次章で具体的に営業戦略の構築方法を解説していますので、読み進めていただけますと幸いです。

営業戦略の構築を成功に導くポイント

営業戦略の構築方法は企業の体制や課題によっても異なりますし、厳密には綺麗に段階を描くのではなく同時並行で取り組むべき項目もあります。ここでは一例を紹介しますが、あくまでも多くの企業に共通する項目であって絶対ではないものとしてご参照ください。

STEP1:目的を定義する

営業戦略の構築をしていく上で最初にすべきことは、営業戦略の目的の定義です。ここで言う「目的の定義」とは、「何を・いつまでに・どれくらいのレベルで」解決すべきなのかを決めることを指します。

例えば、「売上高を6ヶ月後に現状の120%にアップさせる」「受注数を1年後に、現状の200%にアップさせる」といったことです。

STEP2:現状の課題を明確にする

現状の営業活動において、どこに問題があるのかを具体的に洗い出しましょう

例えば受注数アップを目的に掲げたときに、そもそもマーケティング部隊の獲得しているリード件数が足りていないのか、リードは確保できているものの受注に繋がる質の高いリードではないのかなど何かしらの課題点があるはずです。

リード件数が少ない、リードの質が悪いのであれば、マーケティング部隊と連携して戦略を練る必要がありますし、受注率が悪いのであれば営業トークや顧客へのアプローチの仕方を根本的に変える必要があるでしょう。

このように、目指すべき姿と現状を比較して今なにが不足しているのか、どうすれば不足を補うことができるのか等を明確化して、目標達成に対して最もクリティカルなポイントを明確にすることが大切です。

STEP3:徹底的に顧客を理解する

営業戦略の構築にあたり、最も重要なのが顧客理解です。このステップなしで営業戦略が成功に到ることはないと言えます。

顧客の属性(年齢・性別・地域・役職・業種など)をはじめ、顧客が抱えているニーズ、つまり顧客がなぜ自社の製品やサービスに興味を持っているのか、またなぜ契約に至ったのか(逆になぜ契約に至らなかったのか)などを分析していきましょう。

顧客を理解する際にぜひ取り組んでもらいたいのが、ペルソナの設定とカスタマージャーニーマップの作成です。

ペルソナとは、サービスや商品を利用する具体的なターゲット像のことです。ペルソナを設定することで、顧客が抱えている課題や問題点を浮き彫りにさせたり、ユーザー視点での施策立案に役立てることができます。詳しくは、別記事「ペルソナとは?作成方法とマーケティングにおける活用例」で解説していますので、合わせて参考にしてください。

カスタマージャーニーマップは、このペルソナ(具体的なターゲット像)が、自社サービスや製品と出会い、実際に購入やリピート化していくまでの、ユーザー行動や心理的・感情的な変化を言語化し、一枚のマップにしたものです。その時々のユーザーに対して、どのような施策を用いて、コミュニケーションを取っていくべきかを明確にすることができます。

また、顧客理解には、顧客データの分析が重要になってきます。例えば、「マーケティングオートメーションツール(MA)」や「CRM(顧客管理システム)」を活用することで、メルマガの開封やセミナー参加、架電への反応など顧客のアクションを記録し、受注確度の高い順にスコアリングできます。

今まで闇雲に営業活動していたものを優先順位をつけてアプローチすることで、営業効率を高めることが可能になるでしょう。

STEP4:内部環境・外部環境を分析する

内部環境分析とは、営業活動に使えるリソースを具体的に把握することを指します。例えば、実際に顧客と対面して商談ができる営業は何人いるのか、四半期で投下できる予算はいくらなのか、利用できるツールは何なのか、など自社のヒト・モノ・カネ・情報について理解します。

一方の外部環境分析とは、市場における自社の立ち位置や、市場自体の成長性などを分析することです。わかりやすい例が、新型コロナウイルスの影響による営業環境の変化です。

日経BPコンサルティングが2020年8月に実施した、「新型コロナウイルス感染拡大による影響とデジタルシフトへの現状と課題について」のアンケートでは、「新型コロナウイルスの影響を受けて、どのような営業課題があるか」という問いに対して、48%が「顧客のもとへの訪問を断られる」と回答しています。

このような外部環境の変化を捉えることで、既存の営業活動を抜本的に変えて、オンライン商談をメインにするといった対策を取ることができます。

新型コロナウイルスは非常に大きな例ですが、この他にも競合他社が新製品を発売した・価格やプラン変更を行ったなど外部環境は常時変化します。

STEP5:施策の実行と成果判断の基準を明確にする

戦略は立てるだけでは意味を成しません。必ず施策の実行へと移す必要があります。そのため戦略に基づき、具体的に誰が担当するのか、いつから開始するのか、どれくらいの期間行うのかといったスケジュールも決めていきましょう。

また、施策を実行した結果、どのような状態になれば成功と言えるのか、その成果判断の基準を明確にすることも大切です。

営業戦略の立案に使えるフレームワーク例

ここからは営業戦略の立案に使えるフレームワークを、3つ見ていきましょう。ただし、営業戦略のフレームワークは必ずしも使わないといけないものではありません。内外部の環境や具体的な施策の立案に息詰まったときに、それぞれの目的を理解した上でお役立てください。

1. 3C分析

3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」をそれぞれ分析することで、外部環境や競合・市場における自社の立ち位置を理解し、成功要因(KSF)を導き出すために用いられます。

出典:Truth, Inc.

マーケティング戦略や経営戦略の構築時によく用いられるフレームワークですが、営業戦略にも十分活用できます。例えば、競合にあたる他社製品の価格や機能・顧客からのイメージを分析することで、自社製品の強みを理解する際に用いられます。価格で負けているのであれば、品質や購入後のフォローアップの充実さを顧客に訴えるなど、営業トークに活用できます。

2. SWOT分析

SWOT分析とは、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの頭文字を取ったものです。こちらも、3C分析と同様に、内部環境(自社の強み・弱み)と外部環境(機械・脅威)をそれぞれ分析することで、営業戦略の構築に役立てることができます。

SWOT分析では、強み・弱みといった各項目だけに着目せず、それぞれの項目を掛け合わせたクロス分析を行います。

例えば、(競合と比較して)全国に営業の拠点数が少ないという「弱み」に対して、新型コロナウイルスの影響による対面営業の減少という「機会」を掛け合わせることで、オンライン営業ツールを導入することで全国で営業機会を創出するといったリカバリー施策に繋げることができます。

3. 4P分析

4P分析とは、「Product:製品」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の頭文字を取ったもので、どんな製品をいくらで、どこで、どのように売っていくかを決めていくフレームワークです。

基本的にはマーケティング戦略の立案に用いられるフレームワークですが、自社製品が顧客に提供するメリットや、市場においての自社製品の価格の妥当性といったものをフレームワークを通して客観的に理解することができます。

4. 4C分析

4C分析とは、「Customer Value(顧客にとっての価値)」「Cost(顧客にとってのコスト)」「Convenience(顧客にとっての利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」の4つの要素を分析するフレームワークです。

戦略を考える上で、どうしても売る側(企業側)の視点で、ものごとを考えてしまいがちです。上記でご紹介したフレームワークも、企業側からみた顧客や市場という角度のものですが、4C分析ではあくまでも主体を買う側、つまり顧客に置いています。

営業戦略の事例

ここからは自社が抱える課題をしっかりと理解し、営業戦略を構築、具体的な施策につなげることで成果を出した事例を2つご紹介します。

事例①:営業の範囲を拡大し、粗利益75%アップを実現

都心部に拠点を置き、SaaS商材を扱うA社では、地方にも顧客となり得るターゲットがいるのにも関わらず、営業のリソースや、移動交通費がかかることから、営業活動が首都圏に限られてしまうという課題がありました。

これらの課題を解決するために、インサイドセールス部門の立ち上げを決定。メンバー2名をアサインし、施策を開始しました。マーケティング部門が獲得する月500件のリードに対して、マーケティングオートメーションツールでターゲットのセグメント(選別)を実施。

興味や関心の度合いが高いターゲットにインサイドセールス部隊が架電を行い、訪問のアポイントもしくは地方で定期的に開催するセミナーへの参加を促し、フィールドセールスへのトスアップを行いました。

セミナーの開催がない地域を含む一部ターゲットに関しては、インサイドセールスがそのまま商談〜受注を獲得する役割も果たしました。インサイドセールスの立ち上げ前は、5名の営業メンバーが月20件前後の受注を獲得している状況でしたが、インサイドセールス部隊によって新たに月15件の受注を生み出すことに成功従来の粗利益と比較して75%アップを実現しました。

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インサイドセールスについて知りたい方は、別記事「企業の売上に繋がるインサイドセールスを、プロはどう実践しているか #MOLTS潜入」を参考にしてください。

事例②:オンライン商談ツールを用いることで、営業コストを大幅に削減

企業の福利厚生サービスの導入支援を行うC社では、商材の説明がやや複雑なため、対面での営業を基本としていました。

しかし、自社の認知度拡大に伴い需要自体は増えたものの、フィールドセールスの訪問数には限りがあり、売上機会の損失を招いてしまうという課題を抱えていました。

そこで、オンライン営業ツールでのコミュニケーションをベースとした、インサイドセールス部隊を立ち上げ。資料を共有しながら営業ができるので、複雑な説明が必要な場面でも対面と同等のレベルで行うことを可能にしました。

プレゼンテーションがどうしても必要な場合などは除き、インサイドセールスで受注まで完結する仕組みを構築。1日の商談数を約3倍に増やすことができた他、外回りの営業活動が減ったため、社員の満足度向上にも寄与しています

まとめ|営業戦略を構築し、営業効率の最適化を図ろう

本記事では、そもそも営業戦略が意味するところは何か、戦略と戦術の違いといった基本的な定義から、成功に導くためのポイント、事例について解説しました。

曖昧な定義がされがちな営業戦略ですが、本質的には、営業がなすべき目標やミッションを明確に定め、それらを達成するまでの、道筋(ストーリー)を鮮明に描くことを指します。

営業戦略が明確になることで、限りある社内のリソースを的確に分配し、優先順位をつけて、施策の実行へと繋げていけるでしょう。

この記事を書いたメンバー

DAI TAKEDA

武田 大

Marketing Director / Consultant

1986年生まれ。リクルートでの法人営業、中小企業向けのマーケティング会社で勤務した後、2019年4月にMOLTSに参画し、2020年3月より子会社KASCADEに所属。延べ30社以上のBtoBマーケティングを支援。リードジェネレーション、インサイドセールス立ち上げ/改善、MA活用、CSなどのインバウンドマーケティングの戦略立案、改善/実行支援やABM戦略の立案/改善/実行、インハウスでの戦略設計、施策実行のオンボード支援など、一気通貫してBtoBマーケティングを支援する。2020年9月より同社執行役員に就任。

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