オウンドメディア運用戦略|成果創出の5つのポイントと実践法
この記事でわかること
業態・業種・企業規模に関わらず、すでにさまざまな企業がオウンドメディアを運用しています。
オウンドメディアとは、企業の事業・採用課題を解決するための手段としてのWebサイトです。オウンドメディアを単に情報を発信をする場として捉えるのではなく、「いかに企業の収益を増やし、人を集め、事業に貢献するのか」といった視点が、オウンドメディアの運用には重要です。
解決する課題を何とするか、オウンドメディアの運用目的を何に定義するかは企業により様々ですが、例えば、サービスや商品のお問い合わせや資料請求といった「リード獲得」を目的とするケースが、BtoBオウンドメディアでは多いです。
では、オウンドメディアの運用でどれくらいの成果を出すことができるのか?ですが、実際に弊社が関わらせていただいた案件では、半年でCV(リード獲得)が3.8倍になるなど、オウンドメディアの実績達成と、社内で自走できる体制を整えることができ、お取り組みを終えることとなりました。
しかし、輝かしい実績を残すオウンドメディアがある一方で、日々の運用に苦難する企業担当者も少なくありません。成果を出すメソッドや運用方法を知らないままでは、ただ予算と人員をつぎ込むだけのメディアに成り果ててしまいます。
本記事では、これまでエージェンシーとして20社以上のオウンドメディア運用に携わってきた筆者の視点から、オウンドメディア運用で成果を出すためのポイントをご紹介します。
オウンドメディアの本質は「事業課題の解決」

オウンドメディア運用によくある失敗例は、明確な目的や成果指標が定められていないまま運用されているケースです。
そもそも、オウンドメディアは何のために運用されるのでしょうか。
オウンドメディアは直訳すると「自分たちが所有するメディア」、「企業が保有するメディア」などを意味します。広義の意味では、コーポレートサイトや採用サイトをはじめ、SNSアカウント、メルマガ、アプリ、あるいは冊子、パンフレット、自社商品のパッケージなど、Web媒体に限らずあらゆる媒体が当てはまるでしょう。
弊社はその中でも、オウンドメディアの位置づけを「事業課題の解決に導く手段としてのメディア」と定義しています。企業としてオウンドメディアを運用していく以上、最終的には事業貢献、事業課題の解決のために運用するべきと考えます。
解決すべき企業課題からオウンドメディアの役割、ひいてはそこから得られる成果を定義し、その成果を得るためにどのように運用していくか、といった一連の流れを踏まえて考える必要があります。
目的が変われば適切な運用方法も異なる
オウンドメディアとよく混同されるものとして「商業メディア」があります。オウンドメディアと商業メディアには、どのような違いがあるのでしょうか。
商業メディアは、メディア自体を一つの事業として、マネタイズを成立させることを目的に運用されます。いかに1PVあたりの収益を伸ばすかを考えた上で「SSP(Supply-Side Platform)」や「アフィリエイト(ASP)」「記事広告」などを利用します。そこではPVやUUといったトラフィックが非常に重要な指標となってきます。
一方オウンドメディアは商業メディアと違って、トラフィックが多く集まったからといって必ずしも成果が上がるとは限りません。オウンドメディアの目的は、あくまで事業貢献、事業課題の解決だからです。
オウンドメディアを運用する時は、ぜひともこの商業メディアとの違いを意識して行うようにしましょう。
商業メディアとの違いを理解した上で、具体的に、どのようなステップでオウンドメディアを運用していくべきかを見ていきましょう。
「成果を出すための運用」に必要な5つのポイント

1. 運用目的(ミッション)は明確か
オウンドメディア運用に欠かせないのは「何のためにオウンドメディアを運用するのか」といった目的の明確化です。オウンドメディアの本質は「事業貢献、事業課題の解決」と述べたとおり、事業貢献のためのオウンドメディア運用、事業課題の解決のためのオウンドメディア運用であるべきです。
企業が抱える事業課題は、当然ながらその事業内容によってさまざまです。これまで弊社が携わってきた企業のメディアでは、たとえば以下のようなケースがありました。
サービスを伸ばしていくために、リード獲得が必要
相談、問い合わせ件数が伸び悩んでいる
ECサイトの販売数を伸ばしたい
見込み顧客との接触機会がない
自社サービスの認知・好意度を高めたい
企業規模、事業フェーズ、BtoB/ BtoCといった事業形態など課題も異なりますが、オウンドメディアを用いてどのような課題を解決するか、どのようなオウンドメディアであるべきか、オウンドメディア運用が成すべきミッションを定義しましょう。
本来は立ち上げ時に設定すべき項目ですが、運用フェーズであっても常に目的の達成に向かっているかを振り返ることは大切です。もし、いますぐミッションを口に出して言えないのであれば、すぐに社内で認識合わせを行いましょう。経営陣や事業責任者を交え、共通した言葉でミッションを言語化しておくことが大切です。
2. 成果指標が設定されているか
オウンドメディアの目的を果たす上で、その達成度合いを定量的な指標で定義します。
たとえばリード獲得を増やしたい場合には「問い合わせ数」、サービスの認知度を上げたい場合には「新規ユーザー数」や「指名検索数」、あるいはアンケートによる「ブランド純粋想起の獲得数」を設定する、などです。これらはあくまで一例ですが、オウンドメディア運用の成果を測る上で非常に重要です。
リード獲得数(問い合わせ数、相談件数)
商品購入数
新規ユーザー数
リピート率
指名検索数
ブランド認知度
採用エントリ数 など
重要なのは、その指標の達成が事業課題の解決に紐づくものかどうかです。「商品購入」などは売上に直結しやすい分かりやすい例ですが、「指名検索数」などはそれ自体は直接的な売上にはなりません。事業売上や利益の拡大にどう紐づくかを定義した上で設定する必要があります。
このとき、最終的な成果指標の達成に対し、マイルストーンとして中間目標を立てておくとよいでしょう。たとえばメディアを立ち上げてすぐに「売上を◯◯円にする」といった指標を立てても、日々の運用で達成に向かっているかを正しく把握できません。経営判断としてもすぐに「失敗」の烙印を押されることになります。
そのため、事業フェーズや進捗に応じて適切な中間目標を設定しましょう。いつ、どのような状態になっていればオウンドメディアとして良い評価とするのかを定めることが大切です。必ず事業目的の達成が先にあり、その達成度合いを測るために成果指標を定める、という順序を押さえておきましょう。
3. 戦略が設計されているか
目的、成果指標を決め目指すべき方向が明確になったところで、ゴールに到達するための戦略設計を行います。
ここまでは、何をもって「成果」とするかを整理してきましたが、実際に成果を出すためには、オウンドメディア運用における戦略設計を考える必要があります。この戦略設計が、オウンドメディアの成果を大きく左右するといっても過言ではありません。
実際、多くの企業が戦略設計を課題として抱えており、これまでにもご相談をいただく機会が多かったです。これまでの経験から、ほとんどのケースでは以下のような項目に着目し、メディアの戦略設計を行っています。
- ターゲット、カスタマージャーニーの設計
- KPI設計
- チャネル設計
- キーワード設計
- コンテンツ設計
- コンバージョン設計
- サイト設計(UI設計、UX設計)
では、具体的にどのような戦略が考えられるのか、過去実際に取り組んだケースをもとにご紹介します。
【事例】BtoB向け運用型広告のツールベンダーの場合
BtoB事業として運用型広告ツールを提供する企業から、「自然検索流入によるリード獲得の増加」といったご相談をいただいたときのことです。
それまでのリード獲得は広告に依存しコストがかかっていたり、自然検索ではほとんどサイトが表示されないなどの課題がありました。加えてサービス内容の変更に伴うサイトリニューアルを控えているという状況でした。
一方で、企業自体の知名度が高いことから被リンクの獲得やリファラ流入の獲得はできており、検索トラフィックをあげるポテンシャルが高い状態でもありました。
そこで、「自然検索経由でのリード獲得」を成果指標とし、年間目標数値の達成に向けてプランを練っていきました。
まずはターゲットユーザーのカスタマージャーニーを整理した上で、チャネルごとにコンテンツのタッチポイントと役割を定義します。
- 広告、リファラルを中心に、課題認知〜興味関心層を獲得
- 自然検索経由で、興味関心〜比較検討層を獲得
その上で、自然検索経由のリード獲得に向け、下記の施策を実施しました。
- 主要サービスのキーワードを起点として構造化したサイト設計
- 訪問から問い合わせに至るユーザー行動に合わせたコンテンツの経路設計
- ブランドおよび関連キーワードで上位獲得するためのコンテンツSEOの実施
詳細は後述の事例記事にて紹介していますが、リニューアル以降の半年弱でコンバージョン数が約3.8倍まで伸長しました。検索経由のトラフィックも23倍近く伸び、プロジェクト終了後もなお伸び続ける、右肩上がりの曲線を描くことができました。結果的に、広告が占めるトラフィックの割合も1%程度にまで下がっています。
KOTARO TAJIMA
Media Planner / Consultant
業界歴8年以上。BtoBマーケティング、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。コンサルタント・PMとして戦略設計、インハウス化・グロース支援を行う。
提供領域
ただ闇雲にコンテンツをつくる、キーワードで1位をとる、ではなく、成果獲得につなげるためどのようなコンテンツをつくるべきなのか、どのようなキーワードで1位をとるべきなのか、この戦略設計が非常に重要です。
戦略を立てることは、やるべきことを決めると同時に、「やらないこと、諦めること」を決めることでもあります。上記の例では、クライアントが複数持つ商材の中でも「やらない商材」を決め、着手する商材でもリード獲得になり得ないキーワードはつくらない、と明確に定めていました。
可能性が広がるオウンドメディアだからこそあれこれと手をつけたくなりますが、やることを絞り、目の前の実績を積み重ねることに注力することが、結果的にオウンドメディア運用の成功につながっていきます。
4. 実行するためのプランや体制はあるか
いくら理想的で美しい戦略が描けても、実行できなければ成果は生まれません。戦略設計に基づいて実行していくために、具体的な計画を立て、そのための運用体制を構築し、実運用を進めていきます。
弊社MOLTSには、コンテンツSEOを強みとするメンバーが多く在籍しています。これまでにもコンテンツSEOを用いた成果獲得のプロジェクトに携わってきましたが、たとえばどのような計画を立てているのでしょうか。
「コンテンツSEOを用いてリード獲得を最大化」といったケースを想定した場合、たとえば以下のような項目を整理していきます。
▼チェックポイント
| 設計・企画フェーズ | 運用フェーズ |
|
|
キーワード設計では、目的のリード獲得に繋がるであろうものとそうでないものを分け、あらかじめコンテンツの方針を定めていきます。その上で、全体の目標から逆算し、いつまでにどれだけのコンテンツを制作すべきかスケジュールを立てていきます。
同時に、コンテンツ設計や制作、運用において、だれが、どのような流れで、何を行うのか、会議体やコミュニケーションツールも含めて、一連の流れが滞りなく進行するまで詳細を詰め、具体的な行動計画まで落とし込んでいきます。
このときのポイントは、はじめからキレイな計画を立てようとしないことです。特にメディア立ち上げ初期などの場合はスモールスタートさせ、目の前の成果を積み上げていきましょう。その後、メディアの成長に合わせて人材の確保や、社外のパートナーなど外部リソースの活用を検討することをおすすめします。
基本的に、立てた戦略や計画は100%思い通りにいきません。何かしらのひずみや、予測できない事態は起こりえます。そのような先の読めないことを考えるよりも、まずは必要最低限の体制・計画をつくり、あとは実行していくことが大切です。成果獲得に向けてトライアンドエラーを繰り返し、改善を積み重ねることがオウンドメディア運用には欠かせません。
オウンドメディア運用で自走する組織をつくる
オウンドメディアの成功には、継続的な運用と成長を担う自走する組織が不可欠です。
こうした組織の構築には、まず明確な目標設定と、責任感のあるリーダーの見極めから始まります。立ち上げ初期は信頼関係構築を重視し、成果が出るまでは積極的に褒め、行動量を最大化することが重要です。
メンバーが小さな成功体験を積み重ねることで自信が生まれ、やがて質問から確認へとコミュニケーションがシフト。リーダーの裁量が広がり、最終的には外部サポートに頼らない真の自走組織へと成長します。
こうした段階的なアプローチにより、持続可能なオウンドメディア運用体制が確立できるのです。
オウンドメディア運用の自走する組織づくりで得られるメリット
- コンテンツ制作の判断軸が組織内で共有され、一貫性のある発信ができる
- 成功体験の積み重ねによりメンバーの主体性が高まり、質の高いコンテンツが生まれる
- 外部依存から脱却し、コスト効率よく持続可能なメディア運用が実現できる
5. 適切な評価がされているか
成果指標の達成に最短距離で向かうためには、オウンドメディア運用の正しい評価が必要です。設定した指標が達成されているかを振り返り、達成・未達の要因分析と、次のアクションを定めましょう。
オウンドメディア運用の評価において、重要なのは多くの指標を見ないことです。
Googleアナリティクスを入れて分析を行うメディア担当の方は多いと思いますが、日頃どのような指標を分析されているでしょうか。実際に筆者が携わってきたオウンドメディア運用において観測していた指標は、6〜7つ程度です。先ほど触れた事例も含め、ほとんどが高度な解析レポートを使わずとも成果を出してきました。
たとえば、リード獲得に向けてコンテンツSEOを運用する場合、Googleアナリティクスでは以下のような指標をおもに評価しています。
- 対策キーワードの検索順位、表示回数、クリック数 など
- コンテンツのセッション数、ページ/セッション、CV、CVR など
特にオウンドメディア立ち上げ初期では上記のデータすら溜まらない状況で、分析する意味もほとんどありません。そのようなケースでは、Googleアナリティクスを見ず、まずは戦略の実行に注力します。「月間コンテンツ公開本数」などを設定し、適切な行動量を評価したりします。
あくまで筆者が携わってきたオウンドメディアの事例ではありますが、見るべき指標が多すぎるとかえって混乱してしまい、意味のない分析に時間を費やしてしまうことになります。戦略設計でやるべきアクションを絞ったにも関わらず、それが実行できなければ意味がありません。評価についても見るべき指標を絞り、まずは成果に繋がる行動を徹底的にこなしましょう。
オウンドメディア運用において重要となるコンテンツ制作の考え方
オウンドメディアを用いてコンバージョン獲得を目指す上で、戦略の一つとして良質なコンテンツ運用、つまりコンテンツマーケティングの実行が大切になります。ユーザーが求める情報で、かつその企業が発信することに価値があるコンテンツを届けることで、ユーザーとのコミュニケーションを築き、自社の求める成果の獲得につなげられます。
実際のオウンドメディアの運用フェーズでは、コンテンツ運用が中心となるケースも多く、メディア全体の戦略設計と併せて、コンテンツマーケティングについての理解も重要です。
なかでも「検索」をタッチポイントとした手法をコンテンツSEOと呼び、たとえば、BtoBのオウンドメディアがコンバージョン獲得を目的とする場合、商品・サービスの比較検討段階のユーザーの集客が戦略上有効であり、このコンテンツSEOが相性が良いです。
ここからは、オウンドメディア運用において重要な施策の一つ、コンテンツSEOの運用についてご紹介していきます。
コンテンツSEOで重要なのはキーワード設計
コンテンツSEOを行う上で最も大切なのが「キーワード設計」です。このキーワード設計が、コンテンツSEOの成否を左右するといっても過言ではありません。コンテンツSEOにおける戦略設計と同義と捉えてよいでしょう。
具体的には、どのキーワードで上位獲得を狙うのか、どのような優先順位で狙っていくのか、そしてどのキーワードを諦めるのか、といったことを決めていきます。

キーワード設計の方法はさまざまありますが、重要なキーワードを考える上で「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」などが有効です。
ペルソナ設定では、顧客となりうるユーザーの行動属性を定義し、どのようなユーザーにリーチするかを定めます。その上で、ユーザーが商品・サービスの購入や利用に至るまでにどのような過程を経ていくかをカスタマージャーニーとして整理していきます。
どのような状況に置かれ、どのような情報ニーズがあり、どのような行動を行うのか、それらに対して自社がどのようなタッチポイントを築き、どのように解決に導くのか、といった情報を定義します。
その際、上図のAISASモデルが参考になります。オウンドメディアでコンバージョンを獲得を目的とする場合、「購買」に至る前の段階、つまり「検索」の段階のユーザーにアプローチすることで、効果的にユーザーを集客し、結果的にコンバージョンを獲得できます。
良質なコンテンツを生み出す
コンテンツSEOを実施する上で、「良いコンテンツを生み出すこと」が大前提となります。いくらキーワードをうまく設計したとしても、あるいはコンテンツを量産したとしても、肝心な中身が伴っていなければコンバージョンを獲得することはできません。
なぜなら、「検索」をタッチポイントとする以上、コンテンツSEOにおいては検索順位が重要な指標であり、コンテンツの質こそが検索順位を左右するためです。
Advanved WEB RANKINGでは、検索順位とCTR(クリック率)の相関を調査しており、ここから検索順位の重要性を読み解くことができます。同サイトによれば、検索順位1位を獲得した場合、CTRは平均30%程度なのに対し、2位の場合は15%程度とおよそ2分の1まで落ち込んでしまいます。3位、4位と順位が低下するほどその差は大きくひらいていきます。
この検索順位を決める要因は、コンテンツの質にほかなりません。キーワード設計によって温度感の高いユーザーに狙いを定めると同時に、実際にコンテンツへ訪れてもらうためにも、検索順位の上位獲得、ひいては良質なコンテンツを生み出すことが大切なのです。
「良いコンテンツ」の定義はさまざまありますが、少なくとも「読み手の悩みや課題が解決されること」、そして「その企業だからこそ発信する価値があるもの」だと筆者は考えます。他社のコンテンツの真似事にならず、届けるべきユーザーに目を向け、自分たちだからこそできるコンテンツ発信を心がけましょう。その徹底こそがオウンドメディア運用においても重要です。
検索で上位表示させるために、どれくらいの文字数が必要か?
オウンドメディアの運用をサポートする中で、とてもよく聞かれる質問が、「検索で上位表示させるためには、何文字以上のコンテンツを作れば良いですか?」というものです。
しかし、結論から言うと、コンテンツSEOで上位表示するための文字数には決して正解がありません。
本章でも述べましたが、コンテンツ作成の目的は文字数を増やすことではなく、あくまでも「良いコンテンツを生み出すこと」です。
文字数が他社のメディアよりも多くても、読み手の課題や悩みを解決できないのであれば、コンテンツを発信する意味はありません。
何文字以上のコンテンツを作ることを意識するのではなく、ユーザーが何に悩んでキーワードを検索してきたのか、どんなコンテンツがあればユーザーの悩みを解決できるのか、といったことを念頭にコンテンツを作る必要があります。
当然、文字数が多いコンテンツであれば、ユーザーが知りたい情報にたどり着くまでに時間がかかってしまうかもしれませんし、逆に文字数が少ないコンテンツであればユーザーの知りたい情報が不足してしまうかもしれません。
何文字以上といったテクニック論ではなく、検索してくるユーザーを第一に考えて、最適なコンテンツを作ることが求められるでしょう。
求める成果に対する「キーワード設計」の実施
ユーザーファーストとオリジナルコンテンツを意識した「良質なコンテンツ」の発信
何文字以上のコンテンツといったテクニック論に走らない
上記を満たす継続的なコンテンツ発信ができる「制作体制」の構築
公開後も、コンテンツを育て、運用する
さらに、コンテンツは公開して終わりではなく、長い目でコンテンツを育て、運用していく必要があります。とくにSEOの視点に立つと、コンテンツが評価されるには一定の時間がかかり、公開すれば読んでもらえる、というわけにはいきません。
上位表示され多くのターゲットユーザーに訪れてもらうには、コンテンツを改善しつづけていく必要があります。そのため、「成果が出るまで半年〜1年程度かかる」ということも多く聞かれるのです。
では、どのような方向性でコンテンツを改善していけばいいのでしょうか。誤解して欲しくないのは、目先のテクニック論だけでコンテンツを考えてはいけないということです。
もちろん、検索エンジン最適化の施策として一定の施策は評価につながります。しかし、コンテンツは検索エンジンのためではなく、あくまでユーザーの課題解決のために存在します。コンテンツの改善には、ユーザーの課題解決のためにいまなにが不足しているのか、どうすれば課題解決へ結びつくのか、を第一に考えましょう。
Googleが掲げる10の事実では「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」と提言しています。このことからも、ユーザー目線のコンテンツこそが、ユーザーの利便性を高め、課題解決を促すということを示しています。
まずはコンテンツの課題を明らかにするために、ニーズリサーチ、ソーシャルヒアリングなどのニーズの深堀り、あるいはGoogleアナリティクスやヒートマップ分析といったユーザー行動の分析を行います。現状の課題を把握し、どのように改善すべきかを設計した上でコンテンツの改修、運用を行いましょう。
成功企業にみるオウンドメディアの運用事例
オウンドメディアには数多くの成功事例があります。そのほとんどが明確な「事業課題」を定め、今回あげた5つのポイントを意識して運用しています。成功事例として、4つのオウンドメディアをご紹介しましょう。
リード獲得|ウィルオブ・ワーク
求人サイト「WILLOF(ウィルオブ)」を運営する株式会社ウィルオブ・ワークは、「Chance-Making Company」というブランドビジョンのもと、人材派遣、人材紹介事業のオウンドメディアを運営しています。
もともとはテレアポを中心とするアウトバウンド営業を中心に展開していましたが、より効率的に新規顧客を開拓するためにインバウンドマーケティング(オウンドメディア施策)の取り組みに注力していました。
しかし、「とりあえず思いついた記事を書こう!PVを伸ばそう!」など、成果指標や事業成長に基づいたプロセスを描くノウハウがごっそり抜けていたため、なかなか事業に直結する成果が出ないという課題がありました。
そこで、まずはPV数が出ていたとしても、自社の認知並びにリード獲得に繋がっていないコンテンツを一斉に削除。その上で、本質的な成果とは?を定め、目先の数字ではなく、成果から試算したオウンドメディアの運用を開始。リード獲得を成果指標と定めた上で、事業成長に基づいた戦略を練り記事を作成していきました。
結果、お取り組み以前の2021年1月頃は、毎月の4、5件ほどだった弊社サービス全般への問い合わせ件数が、2022年6月時点で毎月130件前後まで急増し、26〜32.5倍もの急成長に繋がりました。
また、単なるお問い合わせだけではなく、オウンドメディア経由で獲得した問い合わせから数億を超える売上を作り出すことに成功しました。
TAISHI TERAKURA
Marketing Planner
業界歴10年以上。事業開発、オウンドメディア、コンテンツマーケティング支援を展開し、延べ100以上のプロジェクトを経験。藍染職人、株式会社LIGを経て、マーケティングプランナーへ。
リード獲得|SAKIYOMI

Instagramの運用代行やコンサル、運用支援ツールの提供をする株式会社SAKIYOMIでは、自社のリード獲得を目的としたオウンドメディアを運営しています。
当初から、将来的にはオウンドメディアを軸にインバウンドでCV獲得ができる体制を目指し、社内で制作を全て内製化。その後、3カ月で100記事ほどのコンテンツを制作しました。
しかし、コンテンツの掲載である程度の流入は見込めたものの、想定していた成果に繋がっていないという運営上の課題がありました。
ある程度の流入の確保ができていたこと、またそれに連動する形で検索の上位表示が獲得できていた背景から、課題は「成果に結びつけるための動線がないこと」という現状を加味し、CTA改善施策と戦略的リライト施策を実行しました。
結果、リード創出は月10件→500件増加し、そのうち月間40〜50件が安定してアポ獲得、月5件はオウンドメディアから安定して受注できる体制を整えることができました。
SAORI NAGATA
Strategy & Project Manager
業界歴10年以上。オウンド・コンテンツマーケティングを中心に100社以上を支援。現在はデジタルマーケティングの立ち上げから実行、組織開発・コミュニケーション設計までの総合支援を行う。
利用者の獲得|ビギナーズ

株式会社マーケットエンタープライズは、「ReReレンタル」というネット型レンタル事業を展開してきました。カメラ・スポーツ用品・楽器・モバイルWi-Fiといった幅広いアイテムをWebサイトからレンタルできるサービスです。
同社は「ReReレンタルの利用者を増やしたい」という事業課題から、2017年6月よりBtoC向けのオウンドメディア「ビギナーズ」の運用を開始しました。
ビギナーズは、これから趣味を始めたい人の多くが「道具をすぐに購入するのではなく、まずはレンタルしたい」というニーズを抱えていることに着目し、「趣味と出会うメディアサイト」というコンセプトを定めました。その上で、趣味の魅力やその上達方法、道具などに関するコンテンツを発信し続けました。
その結果ビギナーズは、ReReレンタルの利用者獲得に大きく貢献し、事業課題に大きな成果を納めることができました。こちらも、目的や成果指標の設計、戦略設計がうまく機能した、オウンドメディア運用の成功事例といえるでしょう。
認知拡大|大手飲料メディアのケース
大手飲料メーカーのオウンドメディアでは、自社が持つ複数の事業をまたいで情報発信するために立ち上げられました。事業課題として全社の横断的なマーケティング活動ができておらず、そのハブとしてオウンドメディア運用プロジェクトが立ち上がったわけです。将来的に自社事業の顧客となりうるユーザーとの新たな接触機会を作ることを目指し、弊社も設計・運用に携わりました。
新規ユーザー数を成果指標として設定し、継続的にトラフィックが集まる設計を実施。具体的には、見込み顧客のペルソナ像やカスタマージャーニーを作成した上で、検索流入中心の設計を行い右肩上がりのトラフィック獲得を目指しました。
立ち上げ前のまったくゼロの状態からスタートし、結果1年強で新規ユーザー数は月間10万UUを達成。検索クエリをみると、ほとんどが想定どおりのキーワードで流入しており、初期のキーワード設計がうまく機能しました。
今後はオウンドメディアを中心に、ECサイトの強化やオフラインのコンテンツ強化にもつなげていくとのこと。まさに、オウンドメディアをハブとして各事業部が動き始めた状態になりました。
事例から読み取れるオウンドメディアの戦略のポイント
前章で紹介したオウンドメディアの事例は、事業分野、従業員数、オウンドメディアの担当メンバー体制から運用予算まで、何一つとして同じ条件ではありませんでした。
したがって、成果に結びついた要因として検索をタッチポイントとしたコンテンツの改修はあったものの、同じ戦略で進められた訳ではありません。オウンドメディアの戦略設計は、オウンドメディアの数だけ多様といっても過言ではないでしょう。
ただし、そんな中でも共通して学び取れるポイントがありますので、ここでは3つに絞って整理したいと思います。
1. 戦略を考える前に「目的から成果を定義」する
そもそも弊社では、オウンドメディアは、企業が抱えている事業・採用課題を解決するための手段としてのメディアであると捉えています。
そのため、まずはしっかりと「何のためにオウンドメディアを運用するのか」といった目的を決める必要があります。目的は企業によって様々で、事業拡大のために商品やサービスの売上拡大といった目的もありますし、求職者に自社の魅力を伝えて採用エンゲージメントを高めることが目的になる場合もあるでしょう。
目的が定まったら、オウンドメディアを運用する目的を達成したと言うためには、「どのような状態になれば成果と言えるのか」を考える必要があります。
仮に、商品やサービスの売上拡大が目的であれば「お問い合わせ数」や「資料請求数」といったリードの総数が成果になりますし、採用エンゲージメントの向上であれば、採用のエントリー数といったものが成果になります。
2. オウンドメディアの戦略はフェーズを分けて考える
企業によっては、「資料請求やお問い合わせといったリードを獲得したい」「ブランディングをして商材の知名度を上げていきたい」「オウンドメディアを直接的に収益化したい」といったように、オウンドメディアを運用する目的が一つではない場合があります。自社で所有しているサイトですから、あれもこれもと多くを願ってしまうのはごく自然でしょう。
このように目的が複数ある場合は、同時並行で進めていくのではなく、目的ごとにフェーズを区切り、戦略を立てていく必要があります。
例えば、オウンドメディアを直接的に収益化するためには、その前提として、一定のトラフィック数が必要です。そのためマネタイズに関しては、オウンドメディアの運用初期ではなく、ある程度メディアが成長した時点で取るべき戦略と言えるでしょう。
また、リードの獲得とブランディングのどちらを先のフェーズで行うべきかは、自社の優先度合いによります。まずリードの獲得が最優先なのであれば、リードをいかに取るのかといった戦略から先に組み立て、一定の成果が得られた時点でブランディングの施策へと移行していきましょう。
3. 最短ルートを歩むために、リソースの選択と集中が必要
オウンドメディア運用は、目的の達成までに最短のルートを歩むことを意識しなければいけません。
多くの企業では、オウンドメディアにかけることのできるリソースは限られています。そんな中で、「検索向けコンテンツ」も「ソーシャル向けコンテンツ」も両方作る、動画もSNS配信もやってみる、など闇雲に施策を取っても、成果に直結せず、目的を達成するためにかえって時間がかかってしまうでしょう。
オウンドメディアは企業が運営している以上、成功すれば投資に、失敗すれば、ただ資金が流れ出ていくだけの媒体になってしまいます。
「いかに無駄なく成果を出せるか」という視点で、正しい戦略設計を元に、リソースの選択と集中を行う(「やるべきこと」「やらないこと」を明確に切り分ける)ことが大切です。
行動量なくしてメディア運営の成功はない
全ては事業の成功を定義し、そこから逆算した指標の設定を行う必要があります。しかし矛盾するようなお話になってしまうかもしれませんが、初期フェーズでガチガチに指標を設定することはありません。
もちろん、施策が進めば、お問い合わせを獲得するために、記事のセッション数やCTAのCTR、サービスページへの送客など細かいKPIを設定することは非常に重要だと言えます。
しかし、これら全てはコンテンツがきちんと上がりある程度のセッション数があった全体の話になってきます。つまり、最初に肝心なのはお問い合わせ数を増やすために必要な数値を追うというよりは、成果を上げるための基盤作りが重要なのです。
そのためには、初期でコンテンツを作るためのチーム体制をゴールにしたり、そのチームで月10本の記事を作る、などの基盤を整えるためのKPIを設定することがほとんどです。
オウンドメディアで成果を上げるためにはやはり行動量は欠かせません。行動量がないところに戦略があっても意味がありませんし、戦略を正しく実行させるためにも行動量は必要不可欠です。
これまで成果を上げてきた多くの企業もまた必ずといっていいほど一定の行動量を積んでいたことでしょう。
目的なきオウンドメディアは、やらないほうがよい
冒頭でも触れましたが、オウンドメディアの本質は「事業課題の解決」です。そのように考えると、「世の中で流行っているから」「競合他社がやっているから」という理由でオウンドメディアを始めるべきではないことは自明でしょう。オウンドメディアの運用そのものが目的になってはいけません。
これからオウンドメディア運用を検討している企業は、解決すべき事業課題はなんなのか、そもそも解決手段としてオウンドメディアは適切な選択肢なのかを、今一度熟考してみてください。
また、すでに運用しているものの成果がなかなか出ない、という方は、あらためてオウンドメディアのミッションや成果指標を定義し、達成に向けた戦略やアクションプランを見直してみましょう。見るべき指標をできるかぎり減らした上で、まずは目先の成果を出すための行動量を徹底することをおすすめします。
よくある質問とその回答
オウンドメディアで成果を上げるためには、目的・KPIの明確化、戦略設計、運用、改善を繰り返していく必要があり、短くても成果が出始めるまでに半年〜1年程度はかかってきます。
オウンドメディアで目指すべき成果を見据えながら、改善を繰り返し、長期に渡って継続できる運用体制が必要です。
オウンドメディアを新たに立ち上げたい、今あるメディアを成長させたいという担当者様に、MOLTSでは成果にこだわったオウンドメディア支援を提案しております。
まずは一度「オウンドメディアの支援内容」をご覧ください。
オウンドメディアの最終的な目的は、事業貢献すなわち事業課題の解決にあります。しかし、多くの企業がオウンドメディア運用時、目先のタスクにばかり追われてしまい、本質的な部分が見えなくなります。
そこで、オウンドメディアの目的を果たす上で、その達成度合いを定量的な指標で定義しましょう。以下は成果指標のほんの一例です。
- リード獲得数(問い合わせ数、相談件数)
- 商品購入数
- 新規ユーザー数
- リピート率
- 指名検索数
- ブランド認知度
- 採用エントリ数 など
事業売上や利益の拡大にどう紐づくかを定義した上で、定量的な目標を設定しましょう。詳しくは「成果指標が設定されているか」をご覧ください。
オウンドメディアの運用が正しく評価されるためには、多くの指標に目移りしないことです。実際に観測する指標は、6〜7つ程度です。
たとえば、リード獲得に向けてコンテンツSEOを運用する場合、Googleアナリティクスでは以下のような指標をおもに評価しています。
- 対策キーワードの検索順位、表示回数、クリック数 など
- コンテンツのセッション数、ページ/セッション、CV、CVR など
見るべき指標が多すぎるとかえって混乱してしまい、戦略が果たして正しいのかがわからなくなってしまいます。適切かつ細かな指標を観測し、目標とのギャップを埋めていきましょう。
詳しくは「適切な評価がされているか」をご覧ください。
著者情報
KOTARO TAJIMA
Media Planner / Consultant
業界歴8年以上。BtoBマーケティング、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。コンサルタント・PMとして戦略設計、インハウス化・グロース支援を行う。
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