オウンドメディアの立ち上げ完全ガイド|成功事例から学ぶの4つのポイント
この記事でわかること
- オウンドメディアの始め方
- オウンドメディアの立ち上げ手順や必要なリソース
- 費用対効果を最大化させた企業の成功事例
株式会社THE MOLTSでオウンドメディア・コンテンツマーケティングを用いたプロジェクトの立ち上げ・戦略設計、インハウス運用支援、運用代行を行っている田島光太郎です。
今回取り上げるテーマは、「オウンドメディア立ち上げの全体像」。
本記事では、オウンドメディア立ち上げの全体像を解説し、筆者が「オウンドメディアの設計」を行うケースを想定して、実際に立ち上げのステップや成果を上げるポイントをご紹介します。
オウンドメディアはただ立ち上げただけでは成果を上げることが難しく、目的に応じた「設計」が重要です。
ここでいう「設計」とは、サイト制作ではなく、あくまでマーケティング手段としてのオウンドメディアの設計です。オウンドメディアを立ち上げる際にどのように設計すれば成果を出せるのか、あるいは事業課題の解決に向けてどのように設計すればよいか、といった観点で考えます。
- これからオウンドメディアを立ち上げたい
- オウンドメディアを立ち上げるときの手順を知りたい
- オウンドメディアを運用しているが、戦略的な運用ができていない
- 改めてオウンドメディアのあり方を見直したい、リニューアルを検討している
といった、インハウスで運用されている方々に参考になるよう取りまとめたので、ぜひご一読ください。
オウンドメディアの立ち上げや運用にお困りのご担当者へ
マーケティング活動におけるオウンドメディアは、適切な戦略設計に基づき正しく運用することで、リード獲得・認知拡大・ブランディングなど、企業が持つ課題を解決する手段になります。
- オウンドメディアを立ち上げ、インバウンドでの顧客獲得を行いたい
- すでに運用しているものの、思うような成果が得られていない
- 社内にリソースがなく、最適な運用ができていない
このようなお悩みは、数々のオウンドメディアマーケティングの支援で成果をあげてきたTHE MOLTSにご相談ください。業界歴10年のプロフェッショナルが、戦略設計や実行支援、組織構築など、貴社の事業成長に必要なご提案をいたします。
オウンドメディアの立ち上げに必要なもの

まずは、オウンドメディアをこれから立ち上げるときに「予算はいくら確保すべきか」「どんな役割の人員が必要なのか」「どのような事業計画や設計を考えればよいのか」など、必要な準備をお伝えします。
オウンドメディアの立ち上げは、おおまかに「計画」「準備」「運用」の3つの段階に分けられます。各段階ごとに、以下の要素の準備が必要です。
▼「計画」段階で検討すべき内容
- 運用目的やミッション
- 成果指標や目標
- 予算やそれに適した運用体制(人員など)
- ターゲット設定・リサーチ
- オウンドメディア設計
▼「準備」段階で必要な要素
- 予算の確保(構築費、運用費など)
- 人材の確保(オウンドメディア責任者、ディレクター、ライター、デザイナーなど)
- サイト構築(ドメイン、サーバー、コーディング、各種ツールなど)
▼「運用」段階で必要な要素
- コンテンツ制作(自社で作成するか、外注するか)
- 効果測定・分析(SEOや分析に関するスキルが必要)
- 改善施策の立案・実施
オウンドメディアの立ち上げは、事前にリソースや予算の確保、サイト構築などさまざまな準備を行い、運営しなければいけないため、成果を上げるのは容易ではありません。
「競合がオウンドメディアを始めたから始める」というようにオウンドメディアの立ち上げを目的にするのではなく、自社にとってオウンドメディアが施策として適しているのかを見極めることも重要です。
リソースの確保が難しい場合や、どのような戦略で運営すればよいのか悩んでしまった場合は、オウンドメディア支援を行うWeb制作会社やマーケティング会社に相談してみるのもひとつです。
オウンドメディア立ち上げの費用相場
オウンドメディアを外注して立ち上げる場合、大別すると以下のように2つの費用が掛かります。
- 構築費:コミュニケーション設計や戦略、デザイン、コーディングなど
- 運用費:サーバーやドメイン、コンテンツ制作、分析など
オウンドメディアの立ち上げ時の構築費は、100万円~300万円程度掛かるのが一般的です。立ち上げ後の運用には、毎月90万円~130万円ほど掛かることも多いです。社内だけでコンテンツ制作や改善を行う場合は費用を抑えられますが、その分社内のリソースや人件費が必要な点に注意しましょう。
そのため、運用にかかる費用は、初年度でみると1,000万円ほど掛かる場合も珍しくありません。依頼する範囲や工程によって外注に掛かる費用が変わるため、自社で対応する業務と依頼する業務を決めてから予算を組みましょう。
事業課題をオウンドメディアで解決するための「設計」を考えてみる
オウンドメディアはただ立ち上げれば、利益拡大に繋がるわけではありません。成果を上げるには、事業課題の解決など目的に沿って設計を考えることが重要です。
具体的な設計を決める前に、オウンドメディアにおける設計とはなにを意味するのかを考えてみましょう。
一般的に「設計」が指す意味合いは、「計画を立てること」や「図面に表すこと」などとされます。オウンドメディアをマーケティング手段のひとつとして捉えるとすれば、「マーケティング課題を解決するためのオウンドメディアの設計」であり、そのための「計画」と置き換えることができます。
そのため、オウンドメディアを用いて事業課題をどのように解決に導くかという観点で設計していくことが重要です。
- 現在の事業課題
- 達成したいゴールや目標数値
- 中間指標
- 戦略(集客経路やコンバージョンポイント、売上創出のためのフローなど)
- リソース配分(誰が何をいつ行うのかなど)
といったことを定め、その計画をもとに行動を積み重ねていく必要があります。
あるいは、そもそもその事業課題を解決するために本当にオウンドメディアが適切か、という点も議論されるべきでしょう。
私はこれまで「オウンドメディアを立ち上げコンテンツを大量に公開したものの、全く成果に繋がっていない」という企業をたくさん見てきました。事前の設計無しにスタートするとうまくいかないケースもあるので注意が必要です。
- 将来の顧客となりうる潜在層のリーチ最大化を軸としたコンテンツ設計
- マネタイズ設計から行い、広告収益モデルと基盤としたメディア戦略を構築
- リード獲得に繋がるキーワード設計と良質なコンテンツを量産できる制作体制の構築
- 顕在層〜潜在層までアプローチできるキーワード設計と回遊性を考慮したサイト構造の設計
オウンドメディアの立ち上げ手順・全体像

オウンドメディアを用いて、どのように課題解決に導くかという観点で、オウンドメディアの立ち上げの全体像を、順を追って見ていきましょう。
1. 運用目的、成し遂げたいミッションを定義する
まずは、オウンドメディアがどこへ向かっていくのか、オウンドメディアの成すべきミッション(使命)はなんなのか、目指すべきゴールともいえるオウンドメディアの運用目的やミッションを定めていきます。すでに運用されている場合は、チームメンバー全員の認識を合わせるステップと置き換えても構いません。
定めたミッションに対して達成状況を定量的に計測し、進捗を把握できるよう、成果指標を設定しておきましょう。結果を良し悪しが判断でき、再現性をもってさらなる拡大につなげられるためです。
▼ミッションの例
- 検索からのコンバージョンを獲得し、広告費を抑制しながらも売上を伸ばす
- インバウンドでのリード獲得基盤を構築する
- 認知を拡大し採用のエントリー数を増やす
ミッションをあらかじめ定義しておくことは、設計や運用フェーズにおけるすべての判断基準になります。オウンドメディア自体、やれることは本当にさまざまありますが、なにが最適な手段となるかはすべてミッションに紐づきます。
解決すべき課題の優先度、とるべき戦略、運用体制など、あらゆる意思決定の基準となるため、必ずチーム全体でミッションの認識をあわせましょう。
2. 成果達成までの戦略、ストーリーをフェーズごとに設計する
目指すべきゴールを定義できたら、続いてその達成に向けたストーリーを描いていきます。
戦略の設計においてはリソースをどこに投下するかが大切です。「やる」と決めたことに振り切るためにも、同時に「やらないこと、諦めること」も明確に定めましょう。あれもこれもと欲張りになると、かえって中途半端になってしまいます。すでに運用しているが成果が出ていないというオウンドメディアにおいて、やるべきことを絞るだけで運用がうまく回りだしたケースもあります。
成果まで最短距離を走るためには、どこにリソースを投下すべきか、どこで戦うべきかを定めることが戦略設計において重要なポイントです。
たとえばBtoB向けオウンドメディアにおいて、「リード獲得」を目的としてメディア上の「サービス資料ダウンロード数(CV数)」を成果指標とした場合、CV数獲得に向けた戦略を設計していきます。例外もありますが、比較検討系のキーワードで検索結果の上位獲得をすることで継続的な流入、継続的なCVを獲得できるコンテンツSEOを用いた戦略が相性が良いです。
▼比較検討キーワードの例
- 「リスティング広告 コンサルティング会社」
- 「勤怠管理システム 比較」
- 「Wi-Fi 選び方」
この場合、ユーザーとのタッチポイントを「検索」と定め、サービス資料のダウンロードに繋がるであろうキーワードの上位獲得に注力するという意思決定を行い、同時にそれ以外の集客チャネル(SNSなど)を諦める、という捉え方です。
もちろん、アクションの部分だけでなく、時間軸で見ても「いまやること」「いまはやらないこと」といった具合で分けることができます。たとえば、「立ち上げから1年は基盤づくりに注力する」などと決め、そのうえで、
- 初月はキーワード設計を徹底的に行う
- 2ヶ月〜6ヶ月目は、ひたすら新規コンテンツを作成し、運用体制を構築する
- 7ヶ月目〜12ヶ月目はメンテナンスにシフトし、CV獲得に注力
と、計画を時間軸で区切っていきます。もちろん、上記はあくまで一例であり、適切なフェーズの切り方は目的によって異なります。仮に1年よりも短期的にCV獲得が必要であれば、「初月からメンテナンスに注力」が最適なケースもあるでしょう。
3. タッチポイントを設計する
成果までのストーリーを描いたら、オウンドメディアにおけるユーザーとのタッチポイントを設計していきましょう。タッチポイントとは顧客との接点や接触する場所を指すもので、ユーザーに情報を届けるために考えておくべき重要な設計箇所です。オンラインではWeb広告の媒体やオウンドメディアなど、オフラインでは店舗スタッフや商品そのものなどがあります。
例えば自社サービスのターゲットが、Google検索によって情報収集を行い、サービスの利用に至ることが分かったのであれば、タッチポイントは「検索エンジン」が有効だと判断できます。
このとき、設定したペルソナのカスタマージャーニーから考えると設計しやすくなります。

カスタマージャーニーを考えるフレームワークのひとつであるAISASをベースに、認知獲得〜興味関心〜比較検討〜アクションといったフェーズに分けて考えた場合、
- どのような状況で、どのような課題を抱え、どのようなアクションを起こすか(情報ニーズの整理)
- そのとき、ユーザーとどのようなタッチポイントを築けるか(チャネル、メディア)
- どのような情報を提供すべきか(コンテンツ企画、コンセプト設計)
- どのような態度変容を起こすか(コンテンツのゴール)
- なにをもって成否を測るか(KPI設計)
などといった情報を整理していきます。

上記はヒアリングに基づき作成した、スキンケア商品を購入した女性のカスタマージャーニーマップの例です。上記のカスタマージャーニーマップでは「美容液に関する情報収集」の段階にいるユーザーが、Google検索で美容液を探したり、美容インフルエンサーが紹介した商品を参考にしたりすることが分かりました。そのタッチポイントに合わせて「Googleリスティング広告」「コンテンツSEO」「SNSマーケティング」といった施策を検討することが考えられます。
検索エンジン(オウンドメディア)がタッチポイントとなり得ることがわかれば、コンテンツマーケティングの文脈に落とし込んで考えることができます。
「アンチエイジングのために日常的にやるべきケアは何か」といったユーザーが求める情報ニーズに併せてコンテンツを企画・設計し、未認知から認知へ、認知から興味関心へ、興味関心から比較/検討へと次のフェーズに態度変容を起こす仕掛けを用意しましょう。
それらをカスタマージャーニーとして整理したうえで、オウンドメディア全体で成果獲得までの流れを設計します。成果獲得までの流れについては、サイトマップやコンテンツマップで整理していくと良いでしょう。まさに「設計図」のようなイメージです。
「だれに、いつ、どこで、どのような情報を届け、どのように成果を得るか、なにを以て達成とするか」が分かるように整理しましょう。

各コンテンツにそれぞれの役割を持たせ、オウンドメディア全体で成果を獲得していくことこそが、オウンドメディアマーケティングの肝です。ターゲットユーザーとのタッチポイントを整理し、成果獲得のためのオウンドメディアのあるべき形を組み立てていきましょう。
- サービス検討ユーザーにフォーカスして、検索流入を主軸にしコンテンツを設計
- サービス未認知層に向けてInstagramを主軸に設計し、そこで発生する検索行動に対してオウンドメディアを設計
- 未認知〜サービス検討に至るまでを自然検索を中心に設計、接触機会を増やし指名検索で流入する仕組みを設計
4.メディアの制作準備~公開を行う
タッチポイントを設計し、成果獲得に必要なコンテンツを導き出したら、制作の準備に移りましょう。
まずは、ワイヤーフレームを作成し、費用な機能や各ページの要件定義をおこないます。ワイヤーフレームとは、ページレイアウトの設計図で「どのようなコンテンツを配置するか」「ファーストビューで何をアピールするか」などページの構成や要素を決めます。さらにサイト内検索や問い合わせページ、会員登録ページなど、必要機能やページを定めていきます。外注する際は、制作会社と一緒に進めていきます。
また一からオウンドメディアを立ち上げる場合は、ドメインやサーバー、サイトの運営や管理をおこなうCMSなどを準備しなければいけません。
ドメイン名は企業名やサービス名、サイト名から決めるのが無難です。ユーザーにとってわかりやすいドメインを選びましょう。
サーバーは「自社専用のサーバーを準備するか」「クラウド型のサーバーを使用するか」など、運用方法を選定します。たとえば、自社専用のサーバーはセキュリティ面での安全性が高いものの、運用費用が高額になりやすいというデメリットがあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、予算や運用方法にあわせて検討しましょう。
コンテンツの管理や編集などをおこなうCMSは、WordPressを利用するのが主流です。CMSによっては、HTMLやCSSなどの専門知識がなくてもオウンドメディアを構築できます。ただし、ランニングコストが掛かる場合もあるため、予算や運用体制など費用対効果を出した上で選びましょう。
オウンドメディアの構築ができたら、Webサイト設計の仕様に沿ってコーディングをおこないます。要件定義から実装までは、制作会社に依頼するケースが多いです。
テスト環境で各デバイスでのデザインの崩れや画面遷移、リンク設定に問題がないかを確認しましょう。問題がなければ、本番環境に実装すればオウンドメディアの立ち上げが完了です。
5. モニタリング環境を構築する
成果指標を定め、達成までのストーリーを描き、そのためのオウンドメディアを設計し、実装できたら、あとは実行あるのみです。まずは定めた戦略に沿って行動量を積み重ねていきましょう。
その際に大切になってくることは、検証・振り返りのステップです。つまり、やったことの結果が良かったのか、悪かったのか、それがどの程度良い/悪いものなのか、を把握し、改善へとつなげることが大切です。
数々のオウンドメディア運用に携わってきたなかで、やはり重要なのは、可能性を広げ続け、成長し続けることだと考えます。そのためには、継続的かつ戦略的な運用が必要です。検証・振り返りは、再現性を以てオウンドメディアを運用するために欠かせないステップなのです。
検証・振り返りを行ううえでは、定量的にモニタリングできる環境を構築しておくと便利です。「お問い合わせ数」「キーワードの検索順位」「指名検索数」「コンテンツ制作本数」など、見るべき指標はフェーズによってさまざまですが、いずれも数値で把握ができ、施策の結果が反映されるものが望ましいです。

GoogleでもデータポータルのようなBIツールを無料で提供しており、かんたんに数値状況を一覧で把握することができます。ただ、ツールを使用すること自体が目的にならないよう注意したいところです。便利で高機能な分、多くの指標を見ることができますが、指標が多すぎるのは得策ではありません。
戦略設計と同じく、指標設計も見るべきもの、見なくてよいものを振り分けるようにしましょう。
6.運用を行う(コンテンツ制作など)
オウンドメディアの運用で成果を上げるには、成果指標に対して達成度合いを見て、適切な運用を行うことが重要です。
たとえば、検索エンジンをタッチポイントにする場合は、検索上位を目指す必要があります。検索1位を取るために、SEO対策を考慮したコンテンツの作成や、メンテナンスを徹底することが必要です。
検索したユーザーがどのような課題を解決したいのか、検索した意図やニーズを満たせるようにコンテンツを充実させましょう。
たとえばコンテンツSEO(検索エンジンをタッチポイントにする)の場合、キーワード設計およびコンテンツ設計が戦略のカギを握るといっても過言ではありません。キーワード設計がコンテンツSEOの戦略設計であり、コンテンツ設計がその成否を左右します。
弊社がコンテンツ制作に携わる場合は執筆前の設計を重視しています。コンテンツの設計なくして成果の獲得には繋がらないと考えているからです。
コンテンツ設計は、ユーザーのニーズと向き合い、どのようなコンテンツをどんな順番で提供すれば、ユーザーを最高のゴールに導けるかを考えることを指します。例えば以下のような項目を洗い出します。
- 検索背景
- 検索キーワード
- 顕在ニーズ
- 潜在ニーズ
- ユーザーにとっての最高のゴール
- そのゴールに導くためのストーリー
- 具体的な見出しや本文の内容

オウンドメディアで成果を上げるためには、このように徹底してユーザーと向き合い、運用を続けることが重要です。
- オウンドメディアを新規で立ち上げたい
- メディアを立ち上げ、運用を続けているものの、一向に成果が出ない
- 外部のパートナーに任せっきりで社内にノウハウがなく、運用をインハウス化していきたい
【事例】フェーズによって異なるオウンドメディアのKPI(中間指標)の例

オウンドメディアで追うべきKPI(中間指標)が、オウンドメディアの特徴やフェーズによって異なることはすでに説明しました。
例えばコンバージョン獲得を目的としたメディアであれば、一例としてコンバージョンを以下のような数式で表すこともできます。
セッション数(KPI)×コンバージョン率(KPI)=コンバージョン数(KGI)
コンバージョン数を増やすためには、「セッション数を増やす」または「コンバージョン率を高める」施策に取り組む必要があります。
コンバージョン率が極端に低いのであれば、改善することでコンバージョン数の増加が見込めるわけです。コンバージョン率が低い原因を突き止め、上げるために何をすれば良いのか考えることで具体的な施策を打ち出せるようになります。
このようにKPIによって、施策の効果検証を行い、具体的なアイデアを施策に落とし込んでいけるようになるため、追うべき指標を決めることは重要です。まずは、オウンドメディアの特徴やフェーズに適したKPIを設定することが大切です。
ここでは実際の弊社の成功事例から、オウンドメディアのKPI例を見ていきましょう。
1. 検索順位が指標になるケース
BOXILマガジンは、スマートキャンプ株式会社が運営しており、「勤怠管理システム」「人事評価システム」といった、法人向けSaaSサービスの比較を行えるBtoB向けのオウンドメディアです。
ユーザーがBOXILマガジンを経由して資料をダウンロードすることで、メディアの収益化に繋がるため、実際にサービスを比較検討しているユーザーにより多く見てもらう必要がありました。
そこで、検索を接点としたコンテンツSEO軸としコンテンツマーケティングを展開。サービスを実際に検討しているユーザーが検索するであろういわゆる比較検討ファネルに位置するキーワード(例:福利厚生サービス 比較、勤怠管理システム おすすめなど)で上位表示を獲得することをKPIとして設定。
その成果として、同メディアのコンテンツ「勤怠管理システム価格・機能比較 – おすすめをカテゴリー別で76サービス紹介」は、「勤怠管理システム 比較」をはじめとする複数の比較検討ワードで検索上位を取り続けることができ、メディアの収益化に大きく貢献しました。
2. コンバージョンが指標になるケース
オウンドメディアがすでに一定数の集客に成功している場合に、コンバージョンをKPIに設定するケースもあります。
とあるテレワーク系ベンダー企業のオウンドメディア(to B向け)では、プロジェクト第一段階において十分なPVを獲得できており、他メディアとの連携などからも、市場においてある一定の認知は得られていました。
そこで、認知されてから実際のコンバージョン率を高めることを課題とし、成果指標をコンバージョン数(下記の総数)に置きました。
- 問い合わせ数
- 資料ダウンロード数
- 無料体験申し込み数
この段階では、PVや検索順位をKPIとして追わない分、比較検討段階のユーザーに訴求するためのサイトリニューアルおよびコンテンツ制作、また広告運用も合わせて包括的な施策を行いました。
短期間集中型でコンテンツ制作とメンテナンスを展開し、プロジェクト開始から1年2ヶ月後に設定していた目標に対して3倍以上のリード獲得に成功。結果、サイト全体のトラフィックが一気に底上げされ、リニューアル時に設計していた、企業とサービスの認知促進にも貢献しています。
ちなみに、「アフィリエイトサイトは収益化してなんぼなので、コンバージョンを指標とするのが正しいですか?」とは良く聞かれる質問ですが、これに対する弊社としての答えは、「場合による」です。
ECサイトやアフィリエイトサイトなど収益化を目的としたWebサイトでは、最終的な購入や問い合わせのみを追いかけがちになってしまうかもしれませんが、極端な話、PVがゼロのWebサイトにいくらコンバージョンポイントを設けても、最終成果には結びつきません。
まずは、オウンドメディアが「見られている」状態を作る必要があります。
3. 行動量が指標になるケース
PVやCVRのようなカスタマージャーニーに基づいたKPIではなく、「コンテンツを◯本公開する」といった行動指標をあえて設けることもあります。
必ずしも多くの人に読まれることを想定していないニッチな産業のWebサイトや、事例集・資料ダウンロード専用の情報サイトなどがこれにあたります。
オウンドメディアの目的や事業フェーズによって、成果指標を見直し最適化させることは常に意識しましょう。
オウンドメディアの成功事例

オウンドメディアの費用対効果の考え方をご紹介しましたが、実際に費用対効果を高めてオウンドメディア運用をしている事例をご紹介します。
ウィルオブ・ワーク|リード獲得件数が26〜32.5倍に
ブランドビジョンに「Chance-Making Company」を掲げる株式会社ウィルオブ・ワーク。
同社ではもともとアウトバウンド営業を中心としたリード獲得を行っていましたが、より効率的にリードを創出するための施策として、検索をタッチポイントとしたオウンドメディアの運用に取り組むことになりました。
成果指標を、法人リードの獲得に設定し、検索からの流入を増やすために、コンテンツSEOに取り組み記事数を確保することに注力しました。
デジタルマーケティング部のマネージャー自身が、およそ3ヶ月間、1日1本のコンテンツを作成することに。とことんユーザーと向き合いながらオウンドメディア運営をし続けた結果、取り組みから約1年半でリード件数は毎月130件前後まで急増しました。
また、お問い合わせ件数が増えるだけではなく、獲得した問い合わせから億を超える売上を作り出すことに成功しました。

SAKIYOMI|半年でリード数10件→500件へ成長

Instagramの運用代行やコンサル、運用支援ツールの提供をする株式会社SAKIYOMIでは、自社のリード獲得を目的としたオウンドメディアを運営しています。
当初から、将来的にはオウンドメディアを軸にインバウンドでCV獲得ができる体制を目指し、社内で制作を全て内製化。その後、3カ月で100記事ほどのコンテンツを制作しました。
しかし、コンテンツの掲載である程度の流入は見込めたものの、想定していた成果に繋がっていないという運営上の課題がありました。
ある程度の流入の確保ができていたこと、またそれに連動する形で検索の上位表示が獲得できていた背景から、課題は「成果に結びつけるための導線(今回の場合はCTA)がないこと」だと判断。今までは「PV」をKPIに設定していましたが、「コンバージョン獲得数」へ変更し、CTA改善施策やリライト施策を実行しました。
結果、リード創出は月10件から500件弱へ増加し、そのうち月間40〜50件が安定してアポ獲得、月5件はオウンドメディアから安定して受注できる体制を整えることができました。

レイビー|運用から2年で総額数億の受注を産むメディアへ

資産運用を主目的とするマンションの土地仕入、企画・開発、販売、管理までをワンストップで提供している株式会社グローバル・リンク・マネジメント。同社が運用する不動産投資に関するオウンドメディア『レイビー』は、運用から2年で総額数億の受注を産むメディアになりました。
当初オウンドメディアは運営されていたものの、月間PV数は2,000〜3,000程度にとどまっており、いかに見込み客数を最大化させてリード獲得へと繋げていくかという課題がありました。
見込み客の集客を増やすために、まずは「キーワード設計に基づいて毎月10本の記事公開をする」という行動量をKPIにして運用を開始。日々の運用を経てキーワードの上位表示を増やしながら、CTAの設計・作成も行うことでCVへの導線を強化していきました。
さらに、単なる見込み客(リード)で終わらせず、受注につなげていくためにインサイドセールスを強化。SFAデータの分析を行い、顧客のニーズを捉えてメールマガジンを配信することで、リードからの商談数を確実に増やしていきました。
その結果、運用からわずか2年で資料請求は10倍以上に増加し、受注数も改善されたことで、年商数億円を生み出すメディアへと成長。いまではオウンドメディアが集客の柱の1つになっています。

HR NOTE|運用から5年で年数万件の法人リード獲得

採用支援から人材サービス、またHR Techサービスに至るまで、30を越える事業を展開している株式会社ネオキャリア。2016年にHR Techサービスの「jinjer」の集客基盤として立ち上がったオウンドメディア『HR NOTE』は、運用から5年で、ゼロから年数万件の法人リード獲得するメディアへと成長しています。
もともと同社はテレアポ文化が根強く、オウンドメディアの知見が十分でないことから、オウンドメディア経由でリード獲得に結びついていないという課題を抱えていました。
そこで、「リード数を最大化し、着実に成約に繋げること」を目的とし、外部パートナーをアサインしてオウンドメディアに力を入れていきました。具体的には、ターゲットユーザーである人事担当者を効率的に集客するべく、課題解決軸でコンテンツSEOを拡充。愚直に運用し続け、1年後には単月100件のリードを獲得するメディアへと成長しました。
さらに『HR NOTE』をjinjer以外のサービスにも横展開することで全体のリード数を増やし、SFA(営業支援システム)で営業との連携を強化することで受注率を高めるなど、施策を重ね、オウンドメディアの成果を積み上げていきます。
その結果、運用から5年たった今では年間数万件の法人リードを獲得できるメディアへと成長。もともとアウトバウンド中心だった同社がインバウンドカルチャーへとシフトしつつあり、今では全社的にインバウンドに力を入れるようになりました。

事例から読み取れるオウンドメディアの戦略のポイント

前章で紹介したオウンドメディアの事例は、事業分野、従業員数、オウンドメディアの担当メンバー体制から運用予算まで、何一つとして同じ条件ではありませんでした。
したがって、成果に結びついた要因として検索をタッチポイントとしたコンテンツの改修はあったものの、同じ戦略で進められた訳ではありません。オウンドメディアの戦略設計は、オウンドメディアの数だけ多様といっても過言ではないでしょう。
ただし、そんな中でも共通して学び取れるポイントがありますので、ここでは3つに絞って整理したいと思います。
1. 戦略を考える前に「目的から成果を定義」する
そもそも弊社では、オウンドメディアは、企業が抱えている事業・採用課題を解決するための手段としてのメディアであると捉えています。
そのため、まずはしっかりと「何のためにオウンドメディアを運用するのか」といった目的を決める必要があります。目的は企業によって様々で、事業拡大のために商品やサービスの売上拡大といった目的もありますし、求職者に自社の魅力を伝えて採用エンゲージメントを高めることが目的になる場合もあるでしょう。
目的が定まったら、オウンドメディアを運用する目的を達成したと言うためには、「どのような状態になれば成果と言えるのか」を考える必要があります。
仮に、商品やサービスの売上拡大が目的であれば「お問い合わせ数」や「資料請求数」といったリードの総数が成果になりますし、採用エンゲージメントの向上であれば、採用のエントリー数といったものが成果になります。
2. オウンドメディアの戦略はフェーズを分けて考える
企業によっては、「資料請求やお問い合わせといったリードを獲得したい」「ブランディングをして商材の知名度を上げていきたい」「オウンドメディアを直接的に収益化したい」といったように、オウンドメディアを運用する目的が一つではない場合があります。自社で所有しているサイトですから、あれもこれもと多くを願ってしまうのはごく自然でしょう。
このように目的が複数ある場合は、同時並行で進めていくのではなく、目的ごとにフェーズを区切り、戦略を立てていく必要があります。
例えば、オウンドメディアを直接的に収益化するためには、その前提として、一定のトラフィック数が必要です。そのためマネタイズに関しては、オウンドメディアの運用初期ではなく、ある程度メディアが成長した時点で取るべき戦略と言えるでしょう。
また、リードの獲得とブランディングのどちらを先のフェーズで行うべきかは、自社の優先度合いによります。まずリードの獲得が最優先なのであれば、リードをいかに取るのかといった戦略から先に組み立て、一定の成果が得られた時点でブランディングの施策へと移行していきましょう。
3. 最短ルートを歩むために、リソースの選択と集中が必要
オウンドメディア運用は、目的の達成まで最短のルートを歩むことを意識しなければいけません。
多くの企業では、オウンドメディアにかけることのできるリソースは限られています。そんな中で、「検索向けコンテンツ」も「ソーシャル向けコンテンツ」も両方作る、動画もSNS配信もやってみる、など闇雲に施策を取っても、成果に直結せず、目的を達成するためにかえって時間がかかってしまうでしょう。
オウンドメディアは企業が運営している以上、成功すれば投資に、失敗すれば、ただ資金が流れ出ていくだけの媒体になってしまいます。
「いかに無駄なく成果を出せるか」という視点で、正しい戦略設計を元に、リソースの選択と集中を行う(「やるべきこと」「やらないこと」を明確に切り分ける)ことが大切です。
4.現状を把握し、課題分析を行うことも重要
弊社がオウンドメディア運用のコンサルティングに入るケースでは、すべてが立ち上げ段階とは限りません。すでに運用を行なっているもののうまく成果がでていない、といったご相談をいただくこともあります。
そのようなケースでは一から設計を行うのではなく、まずは直近の課題解決に着手します。その方が求める成果の獲得につながりやすいためです。
もちろん、ここまでの考え方と大きく変わりはありません。果たすべき目的と成果指標をすり合わせ、そのためのストーリー設計を見直していきます。その際、課題となっているのが、指標設計なのか、戦略設計なのか、あるいは戦略に基づいた実行プランや体制なのか、といったネックポイントを探っていきます。
うまく戦略が立てられていない、指標が定められていない、といったケースでは、改善すべき指標を明確に定め、それ以外の指標を見ないよう指示出しすることもあります。前述のとおり、やるべきことと同時に、やらないこと・諦めることを決めるのも戦略の一つだからです。
- オウンドメディアを新規で立ち上げたい
- メディアを立ち上げ、運用を続けているものの、一向に成果が出ない
- 外部のパートナーに任せっきりで社内にノウハウがなく、運用をインハウス化していきたい
まとめ|設計はあくまで計画の段階。実行・改善あるのみ
最後に、オウンドメディア運用における重要なポイントをお伝えします。ずばり、実行・改善あるのみです。
ここまでオウンドメディアの立ち上げ手順や、成果を上げるためには「設計」が重要であることを述べてきましたが、設計はどこまでいっても設計でしかありません。住宅建築でも、設計図ができたからといってその顧客は満足しません。むしろ、設計図ができあがってようやくスタートといえるでしょう。
その中には実行部隊としてチームを作ったり、各メンバーに役割を与えることも「設計」の要素として必要になってきます。
オウンドメディアもまた然り、いくらキレイな戦略を描いたところで、実行しなければなにも意味はありません。十分な行動量を以て実行し、改善を積み重ね続けることで、ようやく成果の獲得につながっていきます。
しかし、設計なくして行動ができないのもまた事実です。迷いなくチーム全員が同じ方向に突っ走れるのも、向かうべき先があるからこそです。設計フェーズも実行・改善フェーズもどちらが欠けてもいけませんし、両方が機能するオウンドメディアこそ、成功を勝ち取れるといえるでしょう。
オウンドメディアの戦略設計や運用は、プロにご相談ください
オウンドメディアの可能性は非常に大きく、リード獲得や認知拡大、採用への貢献など、企業が持つさまざまな課題解決に貢献する可能性を秘めています。しかし、できることが多いがゆえに、ノウハウやリソースが不足し、適切な設計や運用に課題を抱える企業も少なくないでしょう。
事業成長やマーケティング成果のためのオウンドメディア運用を検討されている方は、ぜひTHE MOLTSにご相談ください。オウンドメディア運用を通じた数々のプロジェクトで成果を上げてきたプロフェッショナルが、貴社の事業成長を支援いたします。
- 月数件のリード獲得が約2年の運用を経て年5,000件へ成長
- 片手間で運用していたオウンドメディアが、直接売上約6億を稼ぐ事業へと変革
- 広告CPAの高騰をきっかけに始まったオウンドメディアが、4ヶ月で売上140%アップ
まずは貴社のお取り組み状況についてお聞かせください。オウンドメディアマーケティングのプロが、事業成長の観点から成果を出すための最適なご提案をいたします。
著者情報
PICK UP
-
半年間で「リード数10倍以上、受注率3倍増」と、爆速でBtoBベンダーのマーケ施策が成長したワケ
株式会社ブイキューブ
-
億超の広告運用を引き継いだ未経験者が、2ヶ月でROAS30%改善した裏側
株式会社Techouse
-
「0から年間数万件の法人リードを生み出す組織へ」ネオキャリアがインバウンド文化へ変化していく5年の歴史
株式会社ネオキャリア
-
なぜ、外部パートナーがインハウスの強いマーケティングチームに信頼されたのか?じげん『アルバイトEX』の事業成長の裏側
株式会社じげん
-
「約200の商材から何を狙うか」パーソルHDオウンドメディアが1年で流入3倍、CV5倍に伸長した理由
パーソルホールディングス株式会社