インバウンドマーケティング|基礎知識とBtoBの成功事例も紹介

武田 大

Marketing Director / Consultant

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インバウンドマーケティング|基礎知識とBtoBの成功事例も紹介

インバウンドマーケティングとは、「顧客が求めているコンテンツや体験を創出することで、顧客とを惹きつけファンに転換していく」ビジネスあるいはマーケティングの考え方を指します。

ポイントは、顧客が興味を持たない製品・サービスを一方的に売り込むのではなく、あくまでも顧客に取って価値あると考えられるコミュニケーションをもって信頼関係を築いていくことです。顧客の課題解決をベースとして、最終的に組織の貢献(購入・登録など)に繋げます。

一方で、テレアポなどのアウトバウンド型営業が定着してしまっており、費用対効果を考えられたインバウンドでの顧客獲得に悩んでいる声もよく聞きます。

そこで本記事では、創業5年で100社以上とお取り組みをしてきた弊社の知見を元に、インバウンドマーケティングとはそもそも何かという基礎知識から実践にあたって担当者が意識すべきポイントについて解説します。

Result Driven.
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インバウンドマーケティングとは

インバウンドマーケティングとは、Webサイトや動画・SNS・メルマガなどで、顧客にとって価値のあるコンテンツを創出し、顧客から自発的に企業に興味・関心を持ち、最終的に顧客やファンになってもらうまでの一連のマーケティングプロセスの概念や考え方のことです。

インバウンドマーケティングが重要視される理由

インバウンドマーケティングが重要性を増している理由として、顧客を取り巻く環境が大きく変化したことが挙げられます。2000年代以降、急速にインターネット環境やデバイスが普及したことにより、情報を収集することが容易になりました。

以前であれば、家電を購入する時、テレビCM・広告チラシなどで商品を認知し、気になった商品があれば家電量販店や街の電気屋さん回り、性能や価格を比較し、最終的に購入に到るといった購買行動が一般的でした。しかし現代において、そのような行動を取る人はそう多くないのではないでしょうか。

皆さん自身も、求めている家電で検索を行い、ECサイトや価格比較サイトで情報を収集、場合によってはメルカリ等のフリマアプリ中古品の有無をチェックした上で、オンライン上で購入を完結、もしくは店頭に足を運ぶことが多いのではないかと思います。

つまり、顧客がオンラインを含めた多様なタッチポイントで能動的に情報収集〜購入にまで至るという行動変化が起こったのです。そのため、企業発信のプロモーションに固執するのではなく、顧客が求めているニーズに対して的確にコンテンツを発信すること、そしてコンテンツを用いて顧客に製品・サービスを見つけてもらい満足させることができるかというインバウンドマーケティングの重要度が増しました。

企業がインバウンドマーケティングに取り組む最大のメリットは、こうした顧客行動やタッチポイントの変化においても「顧客が自発的に商品やサービスに関して興味や関心を抱きやすくなること」、そして「顧客の購入への意欲を計測しやすく、効率の良い営業活動を展開できること」にあります。

それぞれ、どういったことか詳しく説明します。

1. 売り込むのではなく、自発的な認知や興味・関心を促す

従来のテレビCMやテレアポといった「プッシュ型」のマーケティングでは、顧客が求めていない情報を企業が一方的に押し付けてしまうという側面があります。これに対し、インバウンドマーケティングでは、顧客と企業の双方向のコミュニケーションを重視し、あくまでも顧客が求めている情報に対して企業が答える「プル(引き込み)型」が特徴です。

具体的にイメージするために、顧客側の視点からインバウンドマーケティングを見てみましょう。

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あなたがとある企業の人事・労務部門の責任者だったとします。自社の従業員の勤怠管理や給与計算に多くの時間を要しているため、勤怠管理システムを新たに導入したいと考えています。

従来であれば、展示会やセミナーに足を運ぶ、もしくは営業担当者のテレアポや訪問営業によって、複数のサービスを認知し、実際に営業担当者のセールストークを聞き比べ、最終的に導入を決定するといった流れが一般的でした。

しかし最近では、上記のような工程を踏むことはあまり多くありません。多くのケースでは、「勤怠管理システムとは」「勤怠管理システム 比較」といったキーワードで検索を行い、予め情報収集した上で、気になるサービスに関しては資料請求を行う、電話をかけるといった行動をとるのではないでしょうか。その上で、必要があれば営業担当者との時間を設け、実際に商談を行います。

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このように、現代の購買行動では、BtoB / BtoCに限らず、事前にインターネット上で情報収集するのが一般的です。そのため企業側からしてみると、顧客が情報収集している段階で、コンテンツ(オンライン記事、ホワイトペーパー、メルマガ、オンラインセミナーなど)を用いていかにサービスを認知してもらうか、また興味や関心を持ってもらえるかが非常に重要になってきます。

顧客が求めている情報に対して、質の高いコンテンツを作ることで、顧客との接点を生み出し、またコンテンツを能動的に読み進めてもらうことで、ブランドやサービスの認知にも繋がります。

2. 効率の良い営業活動に繋がる

インバウンドマーケティングの2つ目の特徴として、効果計測がしやすく、購入確度の高いであろう見込み顧客に対して優先的にアプローチすることで、営業にかかるリソースを大幅に減らし、効率的な営業活動を展開することができます

例えば、何の接点もないリストに対して企業がテレアポ営業を実施し、仮にアポイントメントを獲得したとしましょう。営業担当者が実際に商談へと向かうわけですが、この段階では、相手が「どんなニーズを抱えているのか」「どれくらい本気でサービスの導入を検討しているのか」を把握することは難しいかもしれません。

もしかすると、テレアポ営業を断りきれずにアポイントメントを設定してしまったという可能性や、サービス自体に若干の興味があるものの直近での導入を考えていない見込み顧客かもしれません。

このように購入確度の低い見込み顧客に対して、営業リソースを割いていては、受注件数や受注率の向上を見込むのは難しくなります。

インバウンドマーケティングでは、顧客がなんらかの課題解決のために能動的に情報を探したときにコンテンツを当てるため、コンテンツをそもそも読んでもらえたのか、どのくらいの頻度でサイトに訪れているのか、どんなコンテンツに興味があるのかなど、定量的なデータを計測し、顧客の現在の状態を推測することができます。

コンテンツマーケティングとの違い

インバウンドマーケティングは、価値のあるコンテンツを創出することで、最終的に顧客になってもらうまでの一連のマーケティングの概念や考え方のことでした。これを聞くと「コンテンツマーケティングと何が違うの?」という疑問が生じるかもしれません。

実際のところ、インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングは非常に似通ったものです。ほぼ同じものと捉えても問題はありませんが、強いて違いを挙げるとすれば、インバウンドマーケティングはより大きな概念を意味し、コンテンツマーケティングは一つの手法に近いイメージです。

インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違い

インバウンドマーケティングという概念に基づき、コンテンツマーケティングの手法を実践すると思ってもらうと分かりやすいかもしれません。

いずれにせよ、インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングは切っても切り離せない関係にあり、インバウンドマーケティングの成功には、コンテンツマーケティングのしっかりとした設計が欠かせません。

アウトバウンドマーケティングとの違い

インバウンドマーケティングの対になる概念として「アウトバウンドマーケティング」があります。アウトバウンドマーケティングは、企業から顧客に向けて、積極的に商品やサービスの売り込みを行います。訪問営業やテレアポ・DM(ダイレクトメッセージ)・ポスティング・展示会・テレビCMなどがその代表的な例です。

インバウンドマーケティングアウトバウンドマーケティング
メリット顧客との双方向のコミュニケーションが可能短期間で成果を出しやすい不特定多数にアプローチできる
デメリット短期間での成果を見込みにくい企業からの一方的なコミュニケーションに陥りやすい効果計測が難しい

最近では、インバウンドマーケティングの手法に多くの注目が集まっており、「アウトバウンドマーケティングはもう古い」といった意見も見られますが、必ずしもそうではありません。コミュニケーションを取りたいユーザーや事業のフェーズによっては、アウトバウンドマーケティングの手法がより効果的になるケースも多くあります。なぜなら、カスタマーの購買行動に変化が合った業界とそうでない業界があるからです。

そのためどちらが優れているかという視点ではなく、事業で達成すべきことは何かという目的に応じて、正しく使い分けることが大切になってきます。

アカウントベースドマーケティング(AMB)との違い

ABMは、インバウンドマーケティングと同じくマーケティング戦略の一つで、BtoBマーケティングに特化し、リード(個人)ではなく、アカウント(企業)をターゲットとしている特徴があります。

対象を「個人」ではなく「企業」単位で見ているため、例えば同じ会社の複数人から資料ダウンロードがあった場合も、スコア上は同一のものとしてカウントします。

対局の考えはリードベースドマーケティング(LBM)と言い、こちらはリード=個人として考え計測・分析するのでBtoC領域でも馴染みのあるマーケティング手法でしょう。もちろんインバウンドマーケティングにおいても「個人」を対象とすることが間違いではないのですが、BtoB領域では企業単位での意思決定のためのコミュニケーションが重要になるため、マーケティング活動においても指標を分ける方が望ましい場合があります。

具体的な方法は、インバウンドマーケティングを実践するにはでも後述します。

インバウンドマーケティングにおけるコンテンツの考え方

ここからはインバウンドマーケティングでどのようなコンテンツを用いて、どのようにユーザーとコミュニケーションをはかり、企業の成果につなげていくのか、そのキーとなるポイントについて解説します。

フェーズごとに最適なコミュニケーションを模索する

コンテンツと聞くと、オウンドメディアをはじめとする記事コンテンツを思い浮かべるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。コンテンツマーケティングには、記事コンテンツだけでなく動画・音声・eBook・ホワイトペーパー・音楽など様々なコンテンツが含まれます。

フェーズ

そしてインバウンドマーケティングの成果は、顧客にブランドや製品を知ってもらうだけでなく、興味・関心を高め、最終的に購入・ファンになってもらうことで発揮されます。そのため、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」など、顧客のフェーズごとに最適なコンテンツを用いて、コミュニケーションを図ることが重要です。

常にタッチポイントが重要

顧客が情報収集する手段や媒体は、非常に多岐に及びます。トライベック・ブランド戦略研究所が実施した「BtoBサイト調査 2020」によると、約半数の66.6%の人が「企業のWebサイト」から情報を収集していると回答しています。

しかしながら、「営業員・技術員の説明」「カタログ・パンフレット」「業界サイトや専門サイト」から情報収集していると回答した人も、それぞれ40%を超えています。

約半数の66.6%の人が「企業のWebサイト」から情報を収集している

画像引用:BtoBサイト調査 2020 | トライベック・ブランド戦略研究所

従来よりWebサイトをはじめとするオンライン上での情報収集が一般的になっていることは事実ですが、必ずしも全てのケースが当てはまるとは限りません。

例えば、高額のサービスや機材の導入の際には、初期の情報収集の段階ではインターネットを利用するものの、実際に比較・検討段階や購入の意思決定をする際には、パンフレットや営業担当者の話を聞くというケースも多いのではないでしょうか。

そのため、顧客が今どのような状態にいるのかをしっかりと見極め、オンラインコンテンツに限らず、適切なタイミングで適切なアプローチをしていくことが求められます。

インバウンドマーケティングは究極の営業効率化

ここまでインバウンドマーケティングを、顧客の行動変容によってニーズが高まったという視点で見てきましたが、それとは別に企業側には営業の効率化に繋がるという大きなメリットがあります。

営業担当が担う業務

従来のアウトバウンド中心の営業では、営業担当者(フィールドセールス)がやるべき業務の範囲は多岐に及びます。まずは展示会やセミナーへの出展・広告出稿など「認知拡大施策」から、見込み顧客(リード)のリスト化・実際の訪問〜商談・受注までを担う必要がありました。

inboundmarketing

しかし、インバウンドマーケティングへと転換を図ることで、コンテンツを用いてリードを獲得〜育成。また、頻繁にWebサイトに訪れている・メルマガを開封しているといった自社サービスへの関心度の高い見込み顧客を、定量的に発掘することが可能になります。

そのため、営業担当者が担うべき業務の範囲は限定され、それぞれの顧客に対しての提案にリソースを割くことができます。

インバウンドマーケティングを実践するには

ここからは、企業が実際にインバウンドマーケティングを実践するにあたり、意識しておきたいポイントについて解説します。

1. ABMかLBMか、適切な手法を選ぶ

インバウンドマーケティングを実際に始める前に、リード(個人)を対象としたマーケティングを行うのか、アカウント(企業)を対象としたマーケティングを行うのか大枠を決めましょう。前者はリードベースドマーケティング(LBM)、後者はアカウントベースドマーケテティング(ABM)と呼ばれ、いずれもインバウンドマーケティングの手法になります。

下図はそれぞれのフローを図式化したものですが、LBMはリードを個人で捉えて「認知」してもらうことからスタートするため、同じ会社内でもより多くの担当者に、説明会参加や資料ダウンロードなどで接点を持ってもらうことが重要になります。

リード(個人)ベースとアカウント(企業)ベース

対してABMでは、どれだけ多くの担当者が認知してくれても企業が同一であれば1カウントしかされず、したがって闇雲に認知を広げるのではなく、自社にとって価値がある企業に絞ってマーケティング活動を行う特徴があります。そのためABMでは優良ターゲットの「特定」が起点となっており、LBMとは対局の考え方に基づいていることがわかります。

インバウンドマーケティングの枠組みの中で、最終的に自社への貢献度が高い「ホットリード」を定義し、適切なコミュニケーションをもって購入・成約まで結びつけることは共通していますが、最初に間口を広げてから対象を絞っていくのか、最初から効率的かつピンポイントで優良顧客のみに焦点を当てるのかでその後のプロセスが大きく異なるため、どちらの戦略を描くべきかは最初に判断しましょう。

2. インバウンドマーケティングのステージを理解する

インバウンドマーケティングのステージ

インバウンドマーケティングを時系列で分解すると、以下の4つのステージに分けることができます。

  1. ATTRACT(惹きつける)
  2. CONVERT(転換する)
  3. CLOSE(顧客化する)
  4. DELIGHT(満足させる)

ATTRACT(惹きつける)

先述したLBM・ABMいずれの場合も、序盤のステージでは、顧客に見つけてもらうこと、つまり接点を持つことから始まります。多くのケースの場合、自社の製品やサービスについて知られていないことがほとんどですので、製品やサービスについて訴求するのではなく、あくまでも顧客が抱えている事業・業界課題の解決に繋がる情報を訴求することが求められます。

またこの段階で「獲得したい顧客とは誰なのか?」をしっかりと定義する必要があります。過去の取引データから、顧客の年齢層や性別・地域・役職といった属性情報、また日頃どんなことに悩みを抱えているのか・何に困っているのかといった情報を集め、ペルソナを設計しましょう。そして、このペルソナに基づいてコンテンツを制作していきます。

具体的な施策としては、ニーズが既に顕在化している顧客に対しては、検索エンジンで顧客が検索するであろうキーワードを洗い出し、自社サイトやブログでSEO向けのコンテンツを制作します。

また、顧客が顕在化していない潜在層に対しては、日頃使っているであろうソーシャルメディアやよく訪れるであろうメディアを特定し、コンテンツを発信するといったことが有効です。

いづれにせよ、この段階ではまず「知ってもらうこと」が重要です。企業が伝えたい情報を一方的に発信するような形にならないように注意が必要です。

CONVERT(転換する)

続いて、自社の商品やサービスを認知した訪問者をリード化(見込み顧客に)します。ここで言うリードとは、氏名や会社名・メールアドレス・電話番号といった連絡先を獲得することです。

リード化の施策として用いられるのが、ホワイトペーパーやebookといったコンテンツです。より価値の高い情報を提供する代わりに、リード情報を獲得していきます。

コンテンツの内容はもちろんのこと、コンバージョン率を上げるためのランディングページやフォームの最適化といった施策が求められます。

CLOSE(顧客化する)

獲得したリードを実際に顧客へと転換します。この際に大切なのが、適切なタイミングで適切なコミュニケーションを取ることです。

ホワイトペーパーやebookをダウンロードしたからといって、今すぐ商品やサービスの導入を検討しているとは限りません。この温度感を取り違え、一方的な営業活動をしてしまうと、せっかく獲得したリードが離れてしまう可能性もあります。それぞれのリードが今まさにどのような温度感なのかをしっかりと見極める必要があるでしょう。

この際に有効なのがMA(マーケティングオートメーション)です。MAは、大量のリード情報を一元で管理すると共に、スコアリング機能を使うことで、それぞれのリードの温度感を定量的に測ることができます。一定の点数を超えたリードに対して、テレアポをする・商談の打診をするといった流れを組むことで、リードの取り逃しを防ぎ、受注率を高めることができます。

また、温度感の低いリードを放置するのではなく、インサイドセールスを活用し、適切にナーチャリングしていくといった施策も求められます。具体的には、電話やメール・チャットなど非対面コミュニケーションでリードの課題感を把握し、それぞれのリードに最適なコンテンツ(例えば、メルマガなど)を継続的に配信するといったことが挙げられます。

▼関連記事
インサイドセールスの本質的な考え方や企業での実践方法については、別記事「企業の売上に繋がるインサイドセールスを、プロはどう実践しているか #MOLTS潜入録」を合わせてご覧ください。

DELIGHT(満足させる)

インサイドマーケティングは、リードを顧客化して終わりではありません。獲得した顧客を満足させ続ける必要があります。

SaaSやサブスクリプションモデルのサービスでは顧客に解約されないために、ECサイトであればLTVを高めるために、また通常の製品やサービスでは他社に乗り換えされないために顧客満足度を高めなければなりません。

例えば、クラウド型のサービスであれば、導入後に使い方がわからない・うまく活用できないといった悩みが寄せられるかもしれません。このような悩みに適切に対応できなければ、顧客はすぐに離れてしまいます。

具体的には、カスタマーサポートといったチームを構築し、すぐに顧客の悩みや疑問に対応できるような体制を整えるといった施策が求められます。

また、顧客を満足させることは、既存の顧客を維持するだけでなく、新たな顧客を呼び寄せる可能性も秘めています。

やや古いデータにはなりますが、2011年にNTTレゾナント株式会社が実施した「購買行動におけるクチコミの影響」に関する調査では、何らかの商品・サービスを選定する時に「口コミを参考にして購入を決める」と回答した人は全体の39.3%、「口コミが気になる」と回答した人は全体の81.6%にも上ることが明らかになっています。

つまり、既存の顧客が商品やサービスに満足し、レビューサイトやSNS・また知人や友人に口コミを拡散することによって、「顧客が顧客を呼ぶ」といったサイクルを生み出すことに繋がります。

3. インバウンドマーケティングの考え方に組織全体を向かせる

ここまで、インバウンドマーケティングについて解説してきましたが、決して「今まで実行していたアウトバウンドマーケティングを直ちにすべて中止してください」と言っている訳ではありません。

実践にするにあたり、今までアウトバウンドマーケティングに投下していた費用を、初めは少しでいいのでインバウンドマーケティングに割り当ててみてください。そして、得られたデータを分析して、インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの成果を比較してみてください。

顧客の獲得にかかるコストがインバウンドマーケティングのほうが安いようなら、少しずつインバウンドマーケティングへシフトしていけばいいのです。

インバウンドマーケティングを構築する5ステップ

インバウンドマーケティングは会社組織全体を巻き込む大掛かりな体制変更であり、ゼロから立ち上げてしっかり機能させることはそう容易ではありません。インバインドマーケティングを取り入れようとしている企業が「何を」「どのような手順で」考えれば良いかを5つのステップに分けて解説します。

  1. 目的・ミッションの定義
  2. 自社の現状把握
  3. 戦略立案
  4. 戦術選定
  5. PDCA

STEP1:目的・ミッションの定義

インバウンドマーケティングを始めるにあたっては、まず目標に対してインバウンドチームが担う役割を考えます。アウトバウンドの割合をどこまで減らすのか、「いつまでに」移行を達成できれば良いのか、などインバウンドマーケティングが担う割合を具体的な目標に落とし込みます。

そして、目標達成のために

どれくらい予算を各月で投下できるのか

・投下予算に対してどれくらいペイが毎月発生しなければならないのか

といった、費用対効果を加味した中間目標値とアクションを設定します。

STEP2. 自社の現状把握

戦略立案に向けて、STEP1で定めたミッション・目標と現状がどれくらい乖離しているか把握するために、自社の現状の姿を把握します。

分析すべき「現状」は、既存のリード獲得のパフォーマンスや、自社の営業・マーケティング活動に影響を及ぼす市場情報を含みます。

CRM(顧客管理ツール)やSFA(営業支援ツール)などで正確なデータが計測されていない段階であれば、テレアポやフィールドセールスの担当者、あるいは顧客へ直接ヒアリングし顧客像を明らかにしましょう。

STEP3. 戦略立案

戦略立案で必ず行うべきことは、「ターゲットの選定」、「活用するリソース・予算の確保」、そして「人材のアサイン」です。

ターゲットの選定とは、「顧客獲得の可能性が高いターゲット属性は何か」を言語化することです。今狙っている、または今後狙いたいターゲットやセグメントを今一度明確にしましょう。そのうえで、その顧客とどのように接触し続けるのかといった「タッチポイント」、そして自社商品の購入やサービス契約、継続的な購入や利用に至るまでの各段階(認知や興味、購入など)での理想的なコミュニケーションプロセスを「コミュニケーション戦略」として計画します。

ターゲットをより深く理解したい場合は、「ペルソナ」や、見込み客が購入に至るまでの考え方や行動を時系列順に整理してまとめた「カスタマージャーニーマップ」を作成することをおすすめします。

また、人材のアサインには細心の注意を払う必要があります。「思っていた仕事とは違う」「常に数字を見て考えなければならない仕事に苦痛を感じる」といった理由で、異動や退職を希望するケースも多くあります。戦略実行を妨げないためにも、事前に業務内容について説明する・複数人をプレイヤーに配置して適性を把握するといった工夫が求められます。

STEP4. 戦術選定

具体的にどのような戦術を実行するのか、その施策の内容を決めていきます。目的の達成が見込めるのであればなにを利用しても問題ありません。基本的には、​自社での実現可能性と成果への貢献度が最も高いと思われる施策に注力します。

▼態度変容別の施策例

STEP5. PDCA

ここまで設計できたら、とにかくスタートすることを最初の目標に定め、それに向けた準備を進めます。具体的には、STEP4で設計した施策を実行しつつ、カスタマーサポートチームを構築し、顧客の悩みや疑問にすぐに対応できる体制を整えることが求められます。ただしスタート当初から多くのコストを投下してしまうと、運用の方向性を変更するときに後戻りできなくなってしまう可能性があります。運用開始当初は、コスト面・人的リソース面でスモールスタートし、小さな成功体験を積み重ね、徐々に運用を拡大していきましょう。

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本章で説明したインバウンドマーケティングを構築する5ステップについて、より詳しい方法やポイントについては「テレアポ会社がインバウンド企業に変わるために必要な5のステップ」で解説しておりますので、参考にしてください。

インバウンドマーケティングに欠かせないMAツール

MA(マーケティングオートメーション)とは、企業のマーケティング活動において、マーケターが手動で行なっている膨大な業務を自動化して、効率を高めるシステムです。MAツールは、獲得したリードを一元管理することができるため、インバウンドマーケティングの実施を目指す企業には欠かせないツールです。

MAツールには、リードを生み出す作業(リードジェネレーション)、リードを育成する作業(リードナーチャリング )、リードを選別する作業(リードクオリフィケーション)の一連の流れに対応する機能を備えています。

例えば、メール配信や自社サイトへの誘導を通じて、リードの購入意欲を育成し「定量・定性の両面で効果測定」することで、営業が適切なタイミングで見込み客にアプローチすることが可能になります。

▼関連記事
MAツールの機能や導入のポイントについては、別記事「マーケティングオートメーション(MA)とは?機能や導入のポイントを解説」もご覧ください。

インバウンドマーケティングの企業成功事例

最後に、インバウンド文化でのリード獲得のノウハウがない課題から実際にリードを創出し事業成長に貢献した弊社の事例を紹介します。

5年間で0から年間数万件の法人リードを生み出す組織へ

人材採用のプラットフォームを提供する株式会社ネオキャリアでは、アウトバウンドマーケティングを中心とした組織体制から、インバウンドマーケティング中心の組織へと変革を遂げ、大きな成果を出しています。

弊社では、2016年よりネオキャリアの対人事向けオウンドメディアのコンサルティング支援を約3年にわたり実施。当初は、オウンドメディアに関するナレッジがなく、どのように運用すべきか分からない状況であったため、オウンドメディアについて解説するとともに、コンテンツ制作の教育やリード獲得の戦略設計を実施しました。

結果的に、オウンドメディアから多くのリード創出に成功。弊社の支援が終了したあとも、成長を続け。5年間でテレアポ中心のマーケティングから脱却し、年間で数万件の法人リードをインバウンドで獲得できる組織へと変化しました。

また、オウンドメディアの成功事例が社内に浸透したこともあり、オウンドメディアだけでなく広告やCRMといったインバウンド領域への投資も加速。2016年は1名だった事業部のメンバーも2021年時点で50名を超える組織となっています。

インバウンド組織を立ち上げ、アポ獲得率は60%以上・LTVも向上

クラウドサービスを提供するA社では、これまでアウトバウンド中心の営業を行っていましたが、事業スケールの拡大を目指し、新たにゼロからインバウンドマーケティングのチームを構築しました。

具体的には、CRM(顧客管理システム)・SFA(営業支援ツール)に蓄積された顧客データをもとに、自社サービスを導入する顧客とはどのような顧客なのかを定義。ターゲットを絞り、広告アカウントを設計しました。

また同時に、広告で獲得したリードを育成〜抽出するためにMA設計と運用への取り組みを開始し、顧客とどのようなコミュニケーションを構築すべきかを明確にしていきました。

結果的に、少人数のチーム構成でゼロからインバウンドマーケティングの仕組みを構築したのにも関わらず、プロジェクト開始から半年程度で、アポ獲得率60%以上を達成。さらに受注率も高く推移していき、毎月安定的に受注創出ができる状況にまで至っています。

まとめ|正しいインバウンドマーケティングは顧客の理解から

本記事では、インバウンドマーケティングとは何か、そしてアウトバウンドマーケティングの違い、インバウンドマーケティングを実践するにあたり、意識すべきポイントについて解説しました。

インターネットの発展により企業と顧客の関係は変化し、インバウンドマーケティングがより重要な時代になってきています。インバウンドマーケティングの根幹は、顧客が求めている情報をコンテンツとして提供することです。

インバウンドマーケティングは成功すると、営業の効率化に直結しますが、実践すれば必ず成功する「飛び道具」ではなく、まずは顧客をきちんと知ることから始める必要があります。

顧客が本当に求めているものは何なのか、実際に顧客と対面してヒアリングした経験や、ウェブ上の顧客の行動から得られるデータを元に、しっかりと紐解いていくことが大切です。

この記事を書いたメンバー

DAI TAKEDA

武田 大

Marketing Director / Consultant

1986年生まれ。リクルートでの法人営業、中小企業向けのマーケティング会社で勤務した後、2019年4月にMOLTSに参画し、2020年3月より子会社KASCADEに所属。延べ30社以上のBtoBマーケティングを支援。リードジェネレーション、インサイドセールス立ち上げ/改善、MA活用、CSなどのインバウンドマーケティングの戦略立案、改善/実行支援やABM戦略の立案/改善/実行、インハウスでの戦略設計、施策実行のオンボード支援など、一気通貫してBtoBマーケティングを支援する。2022年3月より同社取締役に就任。

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