freee株式会社
広告大苦戦から1年で、主力獲得チャネルへ大転換freee税理士コーディネーターが実現した広告施策改善のリアル

Summary
- 概要
- freee株式会社が2023年11月に始めた税理士紹介サービス「freee税理士コーディネーター」。相談予約の獲得単価が高止まりしていた広告運用を、2025年8月から立て直しました。相談予約の先の商談・契約まで見据えた成果指標の見直しや、法人獲得に向けた訴求開発を経て、約1年で広告を相談予約の3分の1を担う第2のチャネルに育てるまでを振り返ります。
- 業種
- 通信・IT
- 従業員規模
- 1001名以上
- ビジネスモデル
- BtoB オンラインサービス・SaaS
- 支援領域
- 運用型広告
有料課金ユーザー企業数69万件を超えるクラウド会計ソフト「freee会計」を中心に、人事労務や販売管理まで統合型のバックオフィスSaaSを展開するfreee株式会社。同社では、税理士を探す個人事業主や法人を対象に、freee認定資格を持つ全国約2,000件以上の税理士事務所の中から無料で紹介するサービス「freee税理士コーディネーター」(以下、税理士コーディネーター)の提供を2023年11月に開始しました。
サービス立ち上げ当初は既存ユーザーへのアプローチが主体でしたが、拡大フェーズに伴い、新規獲得を目的とした広告運用に着手。税理士コーディネーターとの相談予約の獲得単価が高止まりしていた状況を受け、2025年8月よりTHE MOLTSによるマーケティング支援を開始しました。確定申告期に向けた新規獲得をはじめ、相談予約の先にある商談・契約を見据えた成果指標(KPI)の再構築、法人獲得に向けた新たな訴求開発などをお任せいただき、取り組み開始1年で運用型広告を相談予約の3分の1を担う、第2のチャネルに育てました。
今回は、同社の税理士マッチング事業部でマーケティングマネージャーを務める中川 杏珠氏、セントラルマーケティング本部で広告を担当する高橋 宏和氏、そして本案件を担当したTHE MOLTSの東山 博行、香西 俊哉を交え、成果創出までの取り組みを振り返りました。
多くのプロダクトやサービスを展開するfreeeが考える、インハウスとパートナーの線引き

東山:freeeさんは「freee会計」を中心としたバックオフィスのSaaSを展開されています。今回ご一緒した税理士コーディネーターについて、改めて事業の成り立ちと、主なターゲット層を教えてください。
中川:ユーザーのお悩みをヒアリングし、信頼できる税理士をマッチングするサービスが税理士コーディネーターです。サービスを利用されるのは、個人事業主の方や、会社設立中・会社設立し立ての法人・会社をさらに伸ばしていきたい法人などが中心です。
東山:高橋さんはセントラルマーケティング本部のご所属で、複数の事業のマーケティング実務を担当されています。freeeさんは多くのプロダクトを提供されていますが、広告運用のようなマーケティング実務をインハウスで担うべき事業と、外部のパートナーと取り組む事業の住み分けについて、どのように考えているのでしょうか?
高橋:マーケティングの取り組みと体制は、基本的にプロダクト単位で切り分け、そのサービス規模の大小や事業のフェーズなどを考慮して判断しています。大まかな傾向では、予算の規模が小さいほどインハウスで回した方がPDCAを回しやすく、一方で予算が大きくなるほど、媒体のアップデートへの対応も含めてパートナー企業と一緒に運用していく、という棲み分けです。
今回の税理士コーディネーターは、予算規模的にちょうどその中間であり、私が複数のプロダクトと平行して担当しつつ、中川が専任でマーケティング実務を担い、そして広告運用のように専門的な知識と経験が必要になる領域は、外部のパートナーと組む形を取ってきました。
CPAの高止まりで露呈した課題。新規事業の集客に立ちはだかった構造と体制の壁とは

東山:2025年8月以前の広告運用は、どのような状況だったのでしょうか?当時の体制と、抱えていた課題について教えてください。
中川:広告運用の実務を広告代理店にお願いし、弊社側は私を含め2〜3名でKPIと運用目標を立て、提出された運用レポートを受けて施策を検討するといった体制です。当時お願いしていたのは大規模な予算を扱う広告代理店で、どうしても新規事業のスピードに合わせたPDCAのサイクルが回りきらない状態でした。実際にMeta広告に取り組んだ際には、「インターネット広告はうまくいかない」との結論に至る寸前でした。
高橋:広告運用の観点では、税理士への相談ニーズを持つユーザーのうち、より顕在層に絞って配信できるかどうかを課題に感じていました。訴求の幅が限られるぶん、配信で相談ニーズの高い層をどこまで捉えられるかが、そのままCPAを下げられるかどうかに直結します。そこまで設計しきれていなかったことが、獲得単価の高止まりにつながっていたと考えています。
香西:これまでの広告運用の経験から、第一印象でその難しさを感じた案件でした。まず競合との知名度の問題です。freeeさんが税理士マッチングサービスを提供していることは、まだ充分に知られていない一方で、すでに高い認知度を誇る他社サービスが存在しています。そのため、同じ一般キーワードで広告を出稿しても、そこで競り負けてしまうのです。
もう1つは、勝ちパターンがまだ蓄積されていないこと。サービスの立ち上げから日が浅いため、競合との差別化や訴求軸の当たりが付きにくい状況だったと思います。
広告の運用だけでなく、その先の成果まで。事業の計画から一緒に取り組む姿勢が決め手に

東山:もともと税理士検索サイトのSEO領域で、THE MOLTSの岸 晃がご支援していたところから、広告の運用だけでなく、その先の商談や契約まで含めてご相談をいただきました。数ある支援会社の中から、私たちにご依頼いただいた経緯と決め手を教えてください。
中川:SEOも広告も同じグループのマーケティング支援会社にお願いしたほうがよいのではないかと考えました。大きな広告予算を扱える会社と、一緒に伴走してもらえる会社とは、単に役割と最適な案件が違うだけで、単純な良し悪しの問題ではありません。
税理士コーディネーターは体制も機能もアップデートされ続けているサービスだからこそ、密にコミュニケーションを取れるパートナーと一緒に取り組んでいきたい、という想いがありました。
最終的な決め手は2つありました。1つは、専門用語を噛み砕きながら「今の状況なら、〇〇の理由でこちらの方が良いです」と示していただいたことです。当時は私自身、広告運用の知見が不足していたので、ご提案の趣旨を理解できたことが大きかった。もう1つは、予算をどれだけ確保すればどのくらいの成果が見込めるのか、香西さんと一緒にシミュレーションを重ねられたことです。広告の実務だけでなく、事業の計画から一緒に組み立てられる相手だと感じました。
香西:私たちが意識したのは、事業フェーズに合った提案です。事業として本質的な目標を目指していくことはもちろん大事ですが、まずは目の前の目標を達成し続けなければなりません。目の前の件数目標をしっかりと達成しつつ、社内への連携までを含めてご期待に応えること、そこから一つひとつフェーズを進めていくという方針でご提案させていただきました。
中川:シミュレーションの結果に手応えを感じたタイミングで社内合意を得て、正式にご依頼させていただきました。
取り組みから3ヶ月で月次目標を達成。難易度が高い繁忙期の広告運用も乗り切った

香西:引き継いだ直後の2025年8月から11月までは、土台を整える期間でした。以前のパートナーさんから引き継いだ広告アカウントを診断し、そこで見えたボトルネックを潰しながら、配信の良し悪しをトライアンドエラーで見極めていきました。エリアを絞った配信も試しましたが、思ったほど反応が取れませんでした。
振り返って良かったと思うのは、指名検索への出稿です。一般的には、指名検索は自然検索で取れるのが理想で、広告を出しても自然検索の流入が減るだけ、という考え方があります。ただ、実際に「freee 税理士」と検索すると、freeeさんの税理士検索サイトや別のプロダクトのページ、さらにはfreee対応の税理士を紹介する他社サービスまでが上位に並びます。つまり、freeeさんに税理士を紹介してほしい方が、すぐには目的のページにたどり着けない状態でした。
そこで数多くのサービスの中から税理士コーディネーターを指名して検索したユーザーに対し、確実に上位へ表示されている状態を作るために出稿したところ、自然検索が減ることはなく、反響そのものが増えていきました。
中川:正直、指名検索で取れるとは思っていませんでしたね。11月には月ごとの目標件数を安定して達成できるようになり、目標CPAも6ヶ月連続で達成しています。広告が事業のレバーとして計算できる状態になりました。そこからは予算をしっかり確保するための社内向け資料を、一緒にまとめる勢いでご相談しました。
東山:無事に予算を確保でき、続く12月から3月は、確定申告に向けた繁忙期です。確定申告の時期に広告を配信するのは初めてのことでしたよね。
中川:前例がなかったので、大きく2点が気がかりでした。ひとつはリードの質が落ちないかということ、もうひとつは個人事業主の方に予算が寄りすぎないかということです。この時期は確定申告の相談が一気に入ってくるので、とにかく税理士に無料相談がしたい、というニーズも高まります。一時的に相談したい方ではなく、税理士としっかり契約していただける方をどう確保するか、つまり量と質の両方を追わなければならない時期でした。
そこで香西さんからご提案いただき、繁忙期は法人と個人でキャンペーンを分け、それぞれに予算を持たせたことで、なるべく質の良い相談予約を獲得できるように調整いただきました。
東山:繁忙期は、相談予約が取れても対応する人が足りない状況でした。そこで私たちから、こちらのリソースも出せるのではないかと提案させていただきました。
中川:本当にリソースが不足していた時期だったので、率直にうれしい提案でした。提案が直接つながったわけではありませんが、その後、社内で営業体制が拡充されました。弊社の場合、相談予約をどれだけ最大化できるか、その後に何人の悩みを解決できるか、そこからどれだけ契約につなげられるか。この3つでほぼ決まるので、そこまで踏み込んでくださったのは大きかったです。
相談予約の件数から、その先の成約まで。税理士へのヒアリングを訴求とキーワードに反映

東山:繁忙期も、月次の目標達成は続いていました。そのうえで2026年4月以降、成果の見方を相談予約の件数だけでなく、その後の歩留まりや契約まで含めて捉え直すことになりました。見る指標が変わったことで、広告運用に対する取り組みはどのように変わったのでしょうか?
中川:広告運用を始めて半年ほどが経ち、運用で得られたデータが蓄積され、予算も確保でき、改めて投資対効果が問われるタイミングでした。この時期にTHE MOLTSとの取り組みで私が意識していたのは、自分が見ている数字と景色をできるだけ素直に開示することです。
広告運用の先にある事業の数字だけでなく、社内が慌ただしい様子であれば「今は慌ただしい」と、私が見ている景色をそのまま共有しました。等身大の状況をお伝えすることで、柔軟にご提案いただけると見込んでのことです。
高橋:成果の定義そのものが変わりました。最初はCPAだけを見ていたところから、インサイドセールス、フィールドセールスまで含めた後ろの指標を見たうえで、手前のファネルでどんな広告施策ができるかを議論するようになりました。
だからこそ、要件をふわっとさせないことは常に意識しています。「これが目的で、現状はこうで、ギャップがあるので、こういうアプローチがあると思っているのですが、どうですか」という聞き方をする。決めるべきところは弊社側で決めたうえで、複数の選択肢や別の観点のアイデアをいただけると、互いに結果も出ますし、良い循環が作れると思っています。
中川:見る数字が決まったことで、8月に計測環境と広告のグループ構成を整理していただき、課題が見えるようになりました。
香西:広告運用の目標達成が安定したこと、数字や社内のご状況を積極的にご共有いただいたことを受けて、これまで着手できていなかった施策に取り組み始めました。
中でも印象に残っているのが、ユーザーの業種を絞った訴求の開発です。広告運用で得られた定量的なデータだけでなく、freeeさんの別の部署の方やfreee認定資格を持つ税理士の方へのインタビューで得られた定性的なデータを材料に、訴求を改善していきました。成果を最大化できるクリエイティブの開発を進められたと考えています。
東山:ヒアリングで得た内容は、訴求だけでなく検索キーワードやLPにも反映しました。税理士の方から伺った話をそのままLPに入れたり、オフラインでの言われ方を検索語句に加えたり。相談予約の先の成約率まで見て、キーワードの出し方とLPの見せ方を調整し続けています。
1年で相談予約の3分の1を担う第2のチャネルに。予約の先の成約率まで、量と質を両立

東山:2025年8月の支援開始から約1年が経った2026年9月時点で、どのような成果が得られているのでしょうか?
中川:広告が新しいチャネルとして安定したことが、一番の大きな成果です。法人のお客さまを税理士に送客した数は、広告経由が2番目に高い割合を占めるまでになりました。これは税理士コーディネーターへの相談予約のうち、3分の1を占める大きなチャネルです。
そして送客した後の成約率も、高い水準で推移しています。当初は、広告経由のユーザーは比較検討のフェーズであり、成約までつながりにくいのではと懸念していました。しかし実際には、相談予約後もしっかり成約まで至っており、量も質も担保できているのは素晴らしい成果です。キーワードの出し方や、クリエイティブ・LPの見せ方など、細かく調整いただいたことが効いているのだと思います。
AI時代のパートナーへ求める専門性と企画力。変化と正解のない問いを楽しんでいきたい

東山:今後のマーケティング戦略と展望について教えてください。
中川:約1年で広告がこれだけ大きなチャネルになったことを、本当にありがたく思っています。ここからは潜在層を取りにいくこと、インサイドセールス経由のリードを増やすことなど、新しい試みを増やしていきたいですね。そのためには、クラウド会計ソフトを提供するベンダーとしての強みを活かし、サービス自体がもう一歩進化しなければいけません。そしてサービスの進化とともに、広告運用も一緒にアップデートしていけるとありがたいですね。
東山:最後にマーケティング施策に悩む企業の担当者へ、アドバイスをお願いします。
高橋:AI時代にマーケティングのパートナーへ求めるものは、2つあると考えています。1つは、超スペシャリストであること。アウトプットの数自体はAIの力で何でも作れるようになります。だからこそ、作るにあたって何を絶対に押さえなければいけないのか、「これはダメだ」と分かるくらい、そのドメインに本当に詳しいかが問われます。1から10まで自分で構築できるプロフェッショナルの専門性は、より重要になる場面が増えるはずです。
もう1つは、企画力です。結局何が変わるのか、世の中やお客さまのニーズ、トレンドを考えながら、「次はこれをやるべきだ」「これを変えるべきだ」と決められること。パートナーさんにもそれぞれ強みがあるので、自社が目指す道に合わせて選ぶことが大事だと思います。
中川:AI時代に人が介在するサービスは、そのあり方が大きく変わってくると感じています。それに伴って、チャネルのあり方も、広告の役割も変化してくるはずです。この正解のない問いをTHE MOLTSさんと一緒に考え、楽しみながら、試行錯誤を続けていけたらうれしいです。
東山:ありがとうございました!
担当者

Marketing Project Lead
東山 博行
HIROYUKI HIGASHIYAMA
業界歴15年以上。広告代理店で金融比較サイトの広告運用を経験。ダイレクト案件中心に、リスティング・ディスプレイ・SNS広告などの運用型広告の実行、コンサルティングを担当。
担当者

Marketing Project Lead
香西 俊哉
TOSHIYA KOZAI
Web制作会社のセールスを経て広告運用コンサルタントに。月額20万〜5,000万円超の案件を担当。顧客理解を起点に、広告運用からLP改善・GA4分析、インハウス化支援まで手がける。
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